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憑依奮闘記 第十五話

 2008-07-16
 何かを成すためには、絶対に何かを失わなければならない。 それがこの世に存在する等価交換の法則だ。 例えば、何か一つの技術を習得するには、それ相応の時間を消費しなければならない。 それがこの世界の原則だ。 俺の場合は、それがかなり顕著である。 何せ、才能が無い。 悲しいことに才能が無い。

 天才とか言うのは多分に飲み込みの速い奴や、勘の良い人間のことを言うのだと思う。 奴らは凡人が十の時間をかけるのを五とか三とか更に小さい時間で成すことが出来る。 それが羨ましく無いと言ったら嘘だ。 誰もがそれに憧れ、誰もがそうであったらと思うはずだ。
 けれど、考えてもみて欲しい。 連中だとて、必ず時間を消費しなければ成せないのだ。 そこだけは、それだけは平等に俺たちに与えられている。 ならば、奴らの時間よりも多くの時間をつぎ込むことができれば、理論上はその場所まで辿りつくことができるのではないだろうか? 最近特にそう思えてならない。 手段を作る時間。 更に足掻くための時間。 それが俺たちに最も必要な通貨なのではないだろうか? だからこそ、俺は時間を捻出した。 そのことに後悔は無い。 進路が厳しくなろうが、やっておかなければならないことがある。 ならば、”試して”おかなければならない。

 俺は一体何なのか? 奴の存在を知ったときから、俺は常に前提の揺らぎに怯えている。 それを解消する方法は一つしかない。 それをはっきりと証明し、自分自身で消化する。 そして、その後に控えているかもしれない厄介ごとに立ち向う礎としなければならない。

 風が吹いた程度で揺れる土台では、家は成り立たない。 ”クライド”という名で出来た家が何なのか、自分なりの回答を見つけなければならない。 だからこそ、”彼”と戦うことが面倒くさいことにならないのだ。 答えは多分、戦えば出る。 そんな気がするなんていうのは、少しばかり格好をつけすぎだろうか?

 無論、初めはそんなことで噛み付こうとしたのではない。 ある種の反発精神というか、反骨精神だけだったように思う。 だが、時間を置いて少しばかり冷静になってくれば、自然とそんなことも考えるようになっていた。 今まで信じていたモノが本物かどうか、確かめなければならない。 ”偽者”が紛れ込んでいる今の世界で、その修正力というか摩擦に挑まなければならないわけだ。 辻褄を合わせるために、奴がいるのか。 それとも、俺の考えていた前提が単純に間違っているのか。

――成り代わった者として、その宿命と向き合わなければならない。

 ただ、どちらにしてもこんなのは心の贅肉である。 ただの臆病者が、”分かりやすい”理由をつけて安心したいだけ、単なる通過儀礼にしようというだけなのだ。 他でも無い自分のために。 だからこそ”負けたく”はない。 負けてやる”理由”が無い。 例え、その結果の果てに俺がまた別の人間を間接的に殺すことになったとしても、”止められない”。

(多分、ジレンマなんだこれは)

 分かりやすい例を言えば、俺は今生きているだけで一人の人間の存在を殺している。 殺して、その人生を奪い取っている。 それが事実。 そのことに、時折得も知れぬ罪悪感を感じている。 今ある環境の全ては、本来ならその存在が持っていたはずのものなのだ。 だからこそ、その潜在的な罪の意識から逃れるために戦うための武器を得ようとしてきたのかもしれない。 小細工などその典型。 諦めることは、多分絶対に”許されない”。 その方向で無理ならば、また別の方向からそれを成せるようにしなければならない。 これはそういう俺自身が生み出す波及効果に対する無意識レベルでの防衛行動の表れなのだ。

――だが、俺は矛盾もしている。

 もっと確実に平和を享受できる方法はあったのだ。 魔導師やデバイスマイスターなど目指さず、”ただの一般人”であり続ける選択肢があったのだ本当は。 ただの防衛本能にしても、リスク計算の勘定がその時点ですでに間違っている。 管理局員と一般市民ではそもそもの平均的な危険度に差があるのは明確であるのだから。

 偶に想像することがある。 俺が魔導師など目指さず、ただの一般人として過ごしていたとしたらどうなっていたかを。 多分、生涯俺は徹底的に”一般市民”であろうとしたはずだ。 魔法に触れず、夜天の魔道書は叔父さんに相談するなりして、”どうとでも”すれば良い。 そうして、生涯を”クライド・エイヤル”として過ごす。 そんな、自分がいたかもしれない。

 けれど、そんなのは幻である。 現にこうして”ここ”にいる俺にはそんな想像は意味が無い。 ただの現実逃避の娯楽でしかない。 想像する分には楽しい。 有る意味で癒される。 だが、それを現実にしてはならない。 ”間違っていても理解してやっている”のだからやりきらねばならない。 そのために”安全”ではないルートを選んだのだから。

 
 天は快晴だった。 暖かい日差しが、朝っぱらから俺たちを攻めてくる。 予備の模擬戦場へと向かいながら、俺は紐を持つ。 それはブラブラと空中で揺れながら、隣を歩くは我が使い魔<守護獣>たるザフィーラの首に繋がっていた。 別段必要ではないが、首輪は必要である。 保健所に通報されたり変な奴に浚われたりしたら大変だからだ。 まあ、そんなことをしたら大変なことになるのは相手の方だろうがな。

「ふむ、で主よ。 どうするのだ?」

「ああ、とりあえず散歩だ。 この馬鹿に広い模擬戦場を全部歩き通して、地形データを取りながら頭の中にも全部叩き込む。 まずは地の利を確保しておく」

「なるほど、道理だな。 だが、それだけでは到底足るまい? 件の執務官を倒すには圧倒的に力不足だ」

「勿論、それだけじゃあないさ。 差を埋める方法はそれから作る。 まあ、魔力が馬鹿に必要だからザフィーラにはそっち方面でもフォローを頼むわ」

「それは構わないが……主よ、私にも内緒なのか?」

 存外、興味津々の様子だった。 無論、俺の想定する戦術の粗を探すために彼には話すつもりだがもう少しザフィーラの反応を楽しむとしよう。

 実際、思いついた戦術は二つある。 一番堅実な手段である切り札を使う戦術が一つ。 そして、もう一つは一応確認は取ったが、これまた例外的な戦い方である。 一つ目の方がリスクは低い。 問題はそれを成すための状況を作ることの難しさだが、それはもうクリアできる算段がついている。 二つ目はまあ、コレは半分博打に近い。 ただ”執務官殿”と真正面から戦えるのである意味で爽快な気分を味わえるだろう。 小細工などその後にはいらない。 理論上互角かそれ以上の力で戦えるのだから当然か。 低ランク魔導師でありながら高ランク魔導師をまるで蟻を踏み潰すような気持ちで戦えるだろう。 それはもっとも”えげつない方法”であるといえる。

「まあまあ、落ち着け。 時間はまだたっぷりとある。 その間に話すさ、色々と準備もいるしな」

 含みを笑いをしながら、俺は言葉を濁す。 歴戦の勇士であるザフィーラがもし納得する作戦であれば、何も問題は無いだろう。 そのときには、俺は何の憂いも無く戦えることになる。 そういう意味で彼を納得させることができるかどうかで、今後やることが変わってくるわけだ。

 さらに他の戦術も思いつけば臨機応変に実行できるようにしておきたいところだ。 相手は総合Sランク。 こちらは総合Cを持っているだけの訓練生。 スペックの差を埋めるにはどうしても相手をこちらの術中に嵌めなければならない。 その戦術を回避された瞬間、俺は面白いほど呆気なく敗北するのだ。 それが高ランク魔導師と戦う上での普遍の真理であるのだから。 同じ土俵で戦えば、勝つのはより強い方。 そんなことは子供でも分かる理屈だ。

「時にザフィーラ、ザフィーラなら俺がどうやれば勝てると思う?」

「ふむ?」

 逆に質問してみる。 もしかして、鋭い意見が返って来るかもしれない。 とはいえ、そういえば守護騎士の連中は口を揃えて無理と言っていたか。

「まあ、私には正直思いつかないな。 力の差が余りにもありすぎる。 ランク差が一つぐらいならばどうとでもすることができるとは思うが、さすがにこれは離れすぎだろう。 これで勝てたら奇跡だ」

「……やっぱり思いつかないか」

「すまない。 厳しい戦いになることだけははっきりと分かるのだがな」

 俺が弱いのはまぁ、知っているからもう凹み慣れてはいるのだが、さすがに勝利する方法さえ浮かばないというのは悲しいことだ。 一番無難に戦えるザフィーラがそういうのだから、今更ながらに釣られすぎなのではないかと自覚してしまう。

 正直、ヴォルク提督に乗せられている感があるのだ。 そもそも、リンディの”婚約者候補”を決めるから戦えとはいうが、”普通”に考えれば”どちら”が優良物件かなど分かりきっている。 片やその変に転がっている石ころ。 片や既に頭角を現している”ダイヤの原石”だ。

 本来ならば比べるべくも無い。 では、俺に求められているものはなんだ? ということになる。 ラーメン屋で語っていた言葉が百パーセント本心であるという可能性は多分低い。 嘘は言って無いだろうとは思うが、それだけというわけでも決して無いはずだ。 俺がもし爺さんだったとしたら、工夫でもって戦ってくるクライド・エイヤルを打倒した”クライド・ディーゼル”という方を選ぶ。 何せ、彼が欲しい資質はそういう”資質”であるのではないのか? 小細工を凌駕する”完全無欠の魔導師”の完成を待っているのではないかと邪推してしまうのは、俺の被害妄想だろうか?

 結論からいえば、少なくとも俺を使う理由といえばそれぐらいしか思いつかない。 本気でアレを言っていたというのならば納得しても良いのだが、どうしてもそれだけだと納得もできないのだ。 まあ、俺が勝ったら勝ったで逆に”Sランク執務官”を倒したという称号を得るわけで、向こうは別段どっちに転んでもいいのかもしれないが。 深く考えることには意味は無いか。

「主? どうかしたのか?」

 少し考えていた俺を訝しんで、ザフィーラが再び声をかけてくる。 どうやら俺が凹みすぎたのかかと心配したらしい。

「ああ、いや。 ちょっと考え事をな」

「なら良いのだが……」

「わりぃな。 じゃあええと……なんだ。 逆に俺が勝つためには何が無いといけない?」

「経験……も欲しいが、この場合は違うな。 相手を倒すための方法だ。 まずはそれが無くては話にならない」

「そう、それがまずあることが前提だな。 まずはそれが無いと話にならない。 だが、それは元々一つは俺は持っていたんだ。 だから勝つためには基本的にはそれを使って勝てるような状況を作り出さなければならない。 だが、相手はSランクだ。 その状況を作るのは酷く難しい。 そう思ってずっと俺は悩んでいたんだが、この前なんとなく一つ浮かんでな。 なんとかできそうな目処はたった。 けどな、最近もう一つ方法が浮かんだんだ。 こっちは相手にSランク魔導師としての力を発揮させない方法。 敵の絶対のアドバンテージ事態を破壊する方法だ。 ただ、これは物凄くリスクが高くてさ。 大前提として俺が単独で執務官と剣を交えられなけきゃならない。 だが、決まれば”確実”に俺が勝てる」

「……そんな魔法染みた戦術があるのか?」

 ゴクリと唾を飲み込むようにして、ザフィーラが息を呑んだ。 自分が思いもしない方法があるとういうのだ。 無論、それが机上の空論だという可能性は無きにしも非ずである。 だが、俺があまりにも当然にそういうので、さらに興味を引かれたらしい。

「一つ目はまあともかくとして、二つ目は本来なら想定していることなど絶対にありえない。 冷静に考えれば、アレほど確実に魔導師を潰す方法は無いんだけどな」

 恐らくは、”こんな”馬鹿げたことを仕掛けられる訓練学校生は普通はいないだろう。 これはそれほどに馬鹿げている方法なのだから。

「さて、とりあえず散歩を続けようか。 何にしても状況を操作するためには、色々と知ってなければ話にならないからな」

「ああ」

 デバイスに情報を記録させながら、マップを作成していく。 どこに何があり、そこはどんな地形なのか。 また、隠れられそうな場所はどこなのか? ちょっとした何かでも、利用できそうなものを探していく。 無論、無ければ無いで自分で配置しよう。 そのための下準備でもある。

 色々と有用な地形が多い。 元々予備地として確保されているところだから整備はほとんどされていない。 だが、それゆえに潜みやすそうだ。 奇襲をかけるなりなんなりするための布石に利用できるだろうものは結構多いように思える。

 ザフィーラと共にそれら一つ一つをチェックしながら、ついでに思いついている作戦を話す。 一つ目の案の時点でザフィーラは呆れ、二つ目の案を話した時にはポカンとしていた。 さすがの彼もそんなことをしようとした魔導師を知らないらしい。

「……うーむ。 目から鱗だな。 確かに、二つ目は決まればその時点で主の勝ちだ」

「だろ?」

 くくくっと邪笑しながら、俺は笑う。 だが、冷静なザフィーラは続けた。

「だが、それを決められるのかが問題だ。 下手をすれば、一瞬で倒されるぞ?」

「ああ。 だからこそ、今回は勝てば官軍方式で周辺全員を騙すやり方でいく。 気づかれたら終りなんだが、まぁ……向こうが変に経験豊富でスレてなければなんとかなると思う」

「間違いなくブーイングが起こると思うが……」

「そのときは一つ目をやるしかないな。 だが、態々二回目を”やってやる”んだからそれで相手から次の模擬戦方法について譲歩を引き出す」

「む? つまり、この二つは――」

「そういうこと。 初めから二段構えの作戦でいく。 両方のリスクを限りなく抑えるためには、この方法しかない。 二つも手の内を晒してやるんだ。 それで納得しないってんなら俺はそのまま戦わずに帰る。 何せ、これ以外に普通に勝つ方法が無いし”態々”手の内を見せてやることはない。 ザフィーラはどう思う? こういう卑怯臭いやり方は嫌いか?」

「……いや、卑怯などという言葉は敗者の戯言だ。 今までの歴史が証明しているように、勝った方が最後には正義だからな。 それに、実戦ならばもう苦言を呈することなくその者は屍を晒しているだろう。 どこに比重を置くかという部分は人それぞれだし、私にはそれを否定できない。 個人的にはやはり生の全力で戦うのが清いとは思うが、この勝負はそもそも”前提”がおかしいからな。 主の立場からすれば合法だろう」

「そう……か。 よっしゃ、お前が理解を示してくれるんならオーケーだ。 これをやって一番悲しいのは理解されずに否定されることだからなぁ。 これで憂いは無くなったぜ。 当日は絶対にあの野郎をぶちのめしてやるから楽しみにしておいてくれよ!!」

「ああ、私も楽しみにしているぞ主」

 それは、なんてことは無いただのやり取りだったが俺の不安を拭うには一番の言葉だった。 正直に言えば、後ろめたさとかそういうのが若干俺の中にあったのだろう。 踏ん切りのつかない背中を押してもらいたかった。 単純にそういうことだったのかもしれない。

 勝つために何でもして良いわけでは決して無い。 だが、どこまでやって良いかなどというのは自分でルールに照らし合わせて決めるものだ。 だが、それがもし常識の範囲外のものの場合はそれに押しつぶされないかという恐怖が出てくる。 多分、小心者だけが感じるものなのだろうが、俺は少しばかりそれを感じていた。 けれど、やはり迷うことは無いのだ。 ”これが俺のやり方”であるのだから、それを成すために全力を尽くすしかない。 そのための時間は確保したのだ。

「よし、とりあえずしなきゃいけないことだけは沢山あるな。 看板作りに、仕掛けに、後は会場設営が必要だな? あ、それと補給物資の調達とかも必要か」

「サポートは任せてくれ。 できることなら手伝おう」

「おう、”いつも通り”よろしく頼むぜザフィーラ」

「うむ」

 いつの間にか少年姿になっていたザフィーラとグッと拳を突きつけ合うと、俺たちはひとまず物資の調達に向かった。 既に休学届けは出しており、俺が手に入れた時間は模擬戦の準備時間としては法外だろう。 だが、時間は有限だ。 全てをやり終えて渾身で挑まなければ勝てはしない。 心強い味方のサポートを得ながら、俺は決戦の日のために悪あがきを続けた。

――最後の追い込みはもう始まっていた。















憑依奮闘記
第十五話
「虹の力」
















――エーリッヒ、二年に転入してきたハラオウンの娘とできるだけ仲良くしておけ。
  

 それは、一月程前に父が言った言葉だった。 野心家である父からすれば、それは当然の言葉だった。 とはいえ、それを自分にまで押し付けてくるのは如何なものか。 全くもって面白くない。
 割と亭主関白を地で行く彼の父は、困惑する息子にそれだけ言うと颯爽と通信を切っていた。 実に半年振りの会話だったのだが、全くもって笑えない。 これが”世間一般で言う”親子の会話なのか。 自分のことはまあ良い。 だが、母と妹には何か無いのか? それに、偶には家に帰ったらどうなのだ?

 ふつふつと湧き上がってくる感情に任せて、殴り飛ばしてやりたいぐらいだった。 だが、まだそれはできない。 それだけの実力が足りない。 だからこそ、彼は反抗した。 ”あのとき”いつものように道化の仮面を被ったまま彼女に会って、敢えて彼女の友人たちに阻まれるような態度を取って敗北したのだ。

 これで、自分は変な奴だ。 変で、そして下級生に負けるような弱い人間だと彼女は思ったに違いない。 それで良い。 それなら、父の目論見通りになどなるまい。 ちっぽけで餓鬼臭い反抗だとは思ったが、割と痛快だったことだけが彼の心の慰めだった。 だが、やはりそれでも面白くは無い。

「ああ、思い出すだけでも面白く無いね」

 虹男――エーリッヒ・ビフレストはため息をつきながら言う。 そして、今日戦うべき相手を真っ直ぐに見据えた。 黒のバリアジャケットに黒の髪。 年下ながらにして総合Sランクを所持しているという執務官だ。 真面目そうな顔をしているが、どうやらこの馬鹿げた話に乗り気らしい。 訓練学校生程度に対してさえ隙を見せない彼には、少なくともこの話を拒否する気は無いように見えた。


――これはチャンスだ。 勝てとは言わん。 だが、誠意と熱意をハラオウン提督に見せろ。


 よく分からないが、あの妖精の様に可憐な少女の婚約者を決める戦いに参加しろとのことだった。 そのために担ぎ出された候補者が目の前の執務官クライド・ディーゼルであるそうだ。 簡単にヴォルク・ハラオウンと名乗る管理局の提督にそう説明をされたのだが、それを聞いてさらに彼は内心でため息をついてしまった。

(まったく、偉い立場の人間ってのはどうしてこうも”本人”の意思を尊重しようとしないのかな。 意思など関係ない? 雑魚にはそれがわからんのです? はっ冗談もその法外な魔力量だけにして欲しいねぇ)

 全くもって馬鹿げているとエーリッヒは思う。 今は従うことしかできない自分も自分だが、こういうことを平然とできるということに、信じられない思いだった。

(まあ、人様の家の事情に首を突っ込むのは好きじゃあ無いから言わないけどね)

 だが、それでもやはり思うことは有る。 一度しか直接会話したことは無いが、リンデイ・ハラオウンという少女は余りにも権謀術数の知識が無さすぎる。 ”ビフレスト”の名を聞いても無反応だったことから考えると、彼女自身はあまり管理局の内部のことを教えられていないということなのだろう。 

 正直、初めて名乗ったときに名を警戒ぐらいはされるとおもっていた。 それぐらいでなければハラオウンの名を継ぐ者としては危険だと思う。 彼の家、ビフレスト家の先代もそうだったし、現在の権力者である父はそれはそれは上昇志向が強いのだ。 息子の彼が危険だと思うほどに。

 上に行くためならばグレーゾーンにまで手を伸ばすほどに、ギリギリまで彼らは利益を追求する。 魔導師としてのランクは劣ろうとも、彼の父は権謀術数ではヴォルク・ハラオウンとも渡り合えるのだから。

 母もそうだったという。 知らず知らずのうちに外堀を埋められ、いつの間にか何も言えない立場になって、そして家から出られないような生活を送らされているのだ。 そのせいで、息子と娘は普通の感性を持つことができた。 そこだけは、彼らにとっても誤算だったろうが。 

(温室栽培は多いに結構だけどね、どんな綺麗な花も守りすぎたら抵抗力を失う。 そうなったら、害虫に集られてしまうよ?)

 ハラオウンの名は強大だ。 そして、ビフレストの名はまだそれよりも下に位置している。 だからこそ、こういう機会に色々と繋ぎを作っておこうとしているのだろう父は。 それに、まだハラオウンの家には彼女しかいない。 次の次の跡継ぎが彼女しかいないというのであれば、この機会を狙っている輩など掃いて捨てるほどいるだろう。 そう考えるといろいろと逆に、エーリッヒは心配に思うのだ。 提督自身が選んだというこの目の前の真面目そうな執務官も、もしかしたらそういう腹に一物を持つ曲者なのかもしれない。

(いや、さすがにそれはないかな?)

 内心で苦笑する。 自分のことさえ満足にならない癖に他人の心配などしてどうするのだろうか、と。

「さて、二人とも準備は良いかね?」

 二人の側で初老の男が口を開く。 ヴォルク・ハラオウンだ。 信じられないような魔力量を持つ時空管理局トップクラスの魔導師。 そんな彼に向かってさえいつもの道化の仮面を被ると、エーリッヒは言う。

「ええ、いつでもいいですよ? ふふふ、妖精を手に入れるために貴方には踏み台になってもらうとしますよディーゼル君!!」

「よ、妖精?」

「ふふふ、彼女と一度会ったことがありましてね、いやぁ正に可憐。 さすが噂に聞こえし可愛らしさに、思わず一緒に訓練をと誘ったこともあります」

「そ、そうなのかい? 僕はこの前デートしてきたけど……」

「――ほう? それはそれは……尚更負けるわけにはいきませんね」

 予想外の言葉に、エーリッヒは一瞬眉を顰める。 食いついてきたということは割と本気なのだろうか? どういう意図でそういう流れになったのかエーリッヒには分からないが、合意の上であるというのならますます勝つわけにはいかないと思った。

 無論、勝てるとは思わない。 純粋に力の差がありすぎる。 少し驚かせるぐらいはできるかもしれないが、そこまでだろう。 自分にはそんな力は無い。 そんなことは分かっている。 そして、例え勝てるとしても勝つわけにはいかない。 そんな結末は認められない。 自分には、リンディ・ハラオウンという少女の未来を背負うようなことはきっとできないのだから。 これはそういう戦いなのだ。

 虹色のバリアジャケットを展開。 そして同時に杖型インテリジェントデバイスを起動。 普段使っているあんな玩具のような支給品デバイスではなく、彼用に特注されたオーダーメイド品をその手に握り締める。 

 それを見て、ヴォルクが左手を掲げる。 振り下ろしたときが、試合の始まりである。

「それではレディ……ゴー!!」

 振り下ろされる左腕。 それを合図に、二人の少年が一斉に動き出す。 ディーゼルはジャベリンの魔法を展開しながら突っ込み、それを迎撃するためにエーリッヒは弾幕を放つ。

「レインボー・シューター!!」

 放たれる七色の弾幕。 彼のレア・スキル『マジックパレット』によって様々な色に変化するその誘導操作可能な弾幕が、カラフルな色を咲かせながら高速でディーゼルに向かって飛来する。

「――魔力光が変化する?」

 通常、魔力光が変化することなどありえない。 虹色もそうだ。 あんな不可思議な魔力光は通常ではありえない。 飛来する弾幕をジャベリンで叩き落し、さらにシールドを張って防御する。 攻撃力それ自体は高いわけではない。 だが、それでも確実に”最低限の武装隊”レベルの威力は保持していた。 訓練学校生だとは聞いていたが、想定よりも威力が格段に強い。

(だが、それだけだ。 何も問題は無い)

 至近距離に迫る敵を見据え、ディーゼルは杖を振るう。 ジャベリンを纏ったデバイスが真横に振るわれ、エーリッヒを襲う。 咄嗟にエーリッヒはそれを自分のデバイスで防御の構えを取る。 だが、威力が悲しいかな違いすぎた。 握り締めたデバイスが弾き飛ばされ、返す刀で突き出されようとしているジャベリンに襲われる。

「――がっ!?」

 だが、その青い槍はエーリッヒには届かない。 衝撃が、腹から伝った頃にはディーゼルの身体が後方に”弾き飛ばされていた”。

「――な、に!?」

 何かをエーリッヒがしたわけではない。 デバイスは弾き飛ばしているし、エーリッヒは何もしていないように見える。 魔法を唱えたわけでもない。 だが、現実に何かが邪魔をしてディーゼルの体を吹き飛ばしていた。 ダメージ事態はほとんどない。 強固なフィールドに守られたディーゼルの守りを突破するには、それ相応の魔法でなければならないからだ。 だが、それでもクリーンヒットをこうも容易く貰ってしまったということにディーゼルは戦慄した。

「……あれ? これはラッキーだね。 危ない危ない。 今のでやられるかと思ったよディーゼル君。 ふふん、執務官といえども訓練室でコケるのだねぇ。 注意一秒怪我一生と言うし、気をつけ給えよ!!」

 ずびしぃっとディーゼルを指差しながら、心底驚いたという風にアピールしてエーリッヒは言う。 弾き飛ばされたままのデバイスを拾うこともせずに、だ。 その姿を見て、ディーゼルは今の攻撃は間違いなく彼が行ったモノであると考えた。 余りにもわざとらし過ぎるのだ。

(……何か、トリックがあるな)

 油断なく周囲を見据えるようにしながら、今度はブラストバレットを詠唱。 数は五十。 その様を見て、慌てた様子でデバイスをとりに向かうエーリッヒ。 レインボーダイヤのようなコアを先端に持つ彼の杖が煌き、再び魔法を展開していく。 展開された魔法は再び同じだ。 レインボー・シューター。 七色の弾丸を七つ放つ簡単な誘導操作型の射撃魔法。 

「な、なんという数だぁぁ!!」

 言いながら、涙目になってエーリッヒは魔法を放つ。 だが、絶望的に数が足りない。 次々と高速で飛来した青の爆裂弾が虹色の弾幕を食い尽くす。 轟音が次々と巻き起こり、周囲に粉塵を巻き上げる。 その様は爽快で、次々とエーリッヒの身体が爆発の衝撃と威力によって錐揉みされていった。 

「……ぐわぁぁぁ!! やーらーれーたー!!」

 模擬戦場に響く、悲鳴。 だが、それもすぐに止む。 ぐったりと倒れたエーリッヒ。 恐らく魔力ダメージでノックダウンしたのだろう。 ピクリとも動かないその姿を見て、ディーゼルは少しばかり拍子抜けする。

(なんだ? これは……本当に勝った……のか?)

 死んだ振りをしているのだろうか? いや、そういうわけではないらしい。 ブラストバレットは確かに彼に直撃した。 迎撃をいくつかされたが、それだけ。 残りはちゃんと”全弾”しっかりと命中している。 しかも、エーリッヒはシールドやバリアを張っていなかった。 バリアジャケットは破壊されており、訓練学校生の制服姿に戻っている。 これで、立ち上がったら彼は人間ではない。

「ふむ、勝負ありじゃな。 勝者、クライド・ディーゼル!!」

 ヴォルクも若干首を傾げるようにしながら、しかし気にしないことにした。 負けは負けだ。 例え、”対戦者”の中で始めてディーゼルに”クリーンヒット”を与えたのが彼だったとしても勝たなければ意味が無い。

「さて、彼は後で医務室へ運ぶとして……次の対戦者を呼ぶとしよう。 それで今日は終わりじゃ」

「れ、連続ですか?」

「なに、私事で君の時間を割くのはなるべく少ないほうが良いじゃろう? そうでなくても日頃の激務のせいで君も少しばかり疲れているとグレアム君から聞いている。 なるべく早く終わるようにペースを上げようというのじゃ」

「そ、そうですか」

 上司の暖かな援護に涙が出そうになったディーゼルは、エーリッヒを邪魔にならない場所へ寝かせると次の対戦相手を待つことにする。 だが、その頭の中にあるのは先ほどの不可解な現象についてだった。 理解できない何かをこの少年は持っている。 そう思う。 だが、考えれば考えるほどに訳が分からない。

「そうそう、次の相手はロウラン提督の孫の従兄弟らしい。 かなりできるらしいから、気をつけたまえ。 AAAは堅いと言っていたしな」

「は、はぁ、それはまた凄いですね……」

 まだまだ続く険しい戦いの道に、ディーゼルは疲れた笑みを浮かべながら答えた。 そして、ふと思った疑問を口にする。

「あの、そういえば何故さっきの学生も候補に? 今まで戦った人は全員普通の管理局員だったと思いますけど……」

「うむ、どこからともなくビフレスト提督が聞きつけてきてな。 私の孫はどうかと言ってきたのだよ。 色々と含みはありそうだったが、断りきれなくてな。 試験で勝てばということにした。 まあ、彼のレアスキル『マジックパレット』は美しく凶悪であるし、物は試しにという部分もあったが……やはり君には勝てんようじゃな」

「……」

 孫の結婚相手の、それも狙っている奴らを害虫駆除としてもしかして自分は片付けさせられているのだろうか? そう思うと、後顧の憂いを立つためにも利用されているようでディーゼルは笑うに笑えなかった。

――過保護な爺様の暗闘は続く。














――妹の夢は、父の力を寝こそぎ奪い取って家から追い出すことである。

 野心家であるといえば血のせいなのかもしれなかったが、その根源にあるのは優しい心からであることをエーリッヒは知っている。 彼らの母は臆病で気が小さい人だったが、それでも母はいつも気丈にも子供のためになら立ち上がる人であった。 だからこそ、余計にエーリッヒは傲慢にはならなかったし、妹のレインは何れ父を家からたたき出そうと画策するようになった。 外面はお嬢様の癖に、割とお転婆で純粋に育っている彼女を見ると自分もしっかりしなければと思うことが多々ある。 黒い部分が無いとは言わない。 だが、決して黒やグレーな選択を選ばないようにと彼女は心に決めている。 やるからには公明正大に真正面からを好む気質は、見ていて気持ちが良いぐらいだ。

――エーリッヒの夢は何者にも意思を歪まされずに静かに暮らすことである。

 花が好きな母のために、庭一杯に花を植えたことがあった。 押し付けられた家庭教師の教育の合間を縫っては土を弄った。 そんな姿は、力のある提督の子供としては少しばかり間違っているように周囲からは思われ、父親に雇われた家庭教師たちを困らせていた。 何度も何度も注意されたが、けれど決して花を愛でることをやめなかった。 色とりどりの花を咲かせ、天然の虹を作っては屋敷からあまり出られない母を楽しませる。 それは、ちょっとした勇気がもたらした成果だった。

 近くにあった花屋の老夫婦に花を育てるコツを聞き、実践し、少しずつ少しずつ屋敷の庭に四季の花を育てていった。 そうして、ようやく自分の庭園を築き上げた頃には彼は将来なりたいものが決まっていた。 無論、それは時空管理局などという野蛮な組織では断じて無い。 もっと穏やかで、静かなものだ。 あの老夫婦のように生涯を笑顔ですごせるような花屋をやってみたいと思ったのだ。 母のためにもその方が良いと思う。 少なくとも今のような精神的に無理をさせ続けるだけの家に閉じ込めておくことはできないと思っていた。

 だからこそ、まず必要なのが自立するための環境を整えることだった。 三年への進学を選んだのもそのための手段を模索するためであり、強いてはそのための勉強をするためであった。 正直、魔導師などどうでも良い。 それが彼の認識。 無理やり勉強させられたせいで、彼の力は十分に魔導師としてのものを備えていた。 中途半端に才能を持っていたせいもあり、少なくとも本気を出せば同格の人間にはそう簡単には負けはしない。 妹がクラスでも五本の指に入るほど優秀であったが、彼はそれよりも”さらに強い”。 つまりは、そういうこと。 ただ、そのことで妹に少しばかり誤解されていることも確かだった。 一番不味いのは、クライド・エイヤルの不可解さについて教えたことだろう。

 あの”シューティングアーツ”を使うクライド・エイヤルはおかしい。 少なくとも、彼が戦った感想で言えば三年でも強者にカテゴリーできうるだろうという程であったが、間違っても総合Sランクに届くほどの力を有しているとは思えない。 だが、現実には総合Sランクを倒したという噂が出回っているわけで、つまりは噂を信じるならば彼は自分のように力を隠しているということになる。

 そのことを告げると、レインは兄さえも注目するような強者なのだなと思ったようで逆に余計な興味を持ってしまった。 それが、恐らくはきっかけの一つだったことは間違いは無い。


 くしゃくしゃになった紙を握り締めた妹が自分の部屋へとやってきて、いきなり告白しようとして振られたといった。 まず一番初めに、その妹のアクティブな行動に呆気に取られ、さらにその相手が”例の彼”だということを知って二度驚いた。 さすがに、いつも道化の仮面を被っている彼をしてそれは想像もしなかったことだ。

「――は?」

「もう、お兄様ったら聞いていましたの? この私<わたくし>が代理人を寄越されて振られましたのよ!! まったく、腹立たしい限りですわ!!」 

 プンプンと頬膨らませて起こる妹。 全く寝耳に水の話に、エーリッヒは目を瞬かせることしかできない。

「あー、聞きたいのだけどねレイン。 誰に振られたのかな? クラスメイトかい?」

「いいえ、一つ下の男の子ですわ。 お兄様が以前注目していたあの少年です。 偶々彼と彼の友人がクラスの男子たちと戦っているのを拝見して、心を奪われてしまったの!! 見事なシューティングアーツでしたのよ!!」

 やや顔を紅潮させながら、レインは言った。 そのことにポカンと口を開けたままエーリッヒは思う。 誤解がさらに誤解を呼んでしまったらしい。 なんてことは無い。 エーリッヒとしては、別に妹が誰と付き合おうと構わないが、それでも誤解したままだというのは駄目だと思う。 既に、彼はクライド・エイヤルが誰なのかを”知っていた”から。

 なんてことはない。 あの執務官と戦った帰りに、彼はヴォルク提督からクライド・エイヤルのことを聞かれたのだ。 そうして、少しばかり話しをした。 それで、彼が陸士でもまだ珍しいスタイルであるシューティングアーツを使う珍しい少年だと言ったら、提督が首をかしげて彼の間違いを訂正した。 そして、そのときから彼は本物が誰なのかを探り、突き止めていたのだった。

 なんてことは無い、当時の担任だったミズノハ・サタケ教員に聞いてみただけだ。 すると、簡単に答えが帰って来た。 しかも、噂の真相つきでだ。 自分自身なるほどと疑問が氷解すると共に、一種の驚きを感じたのも確かだった。 それに加えてその彼があの妖精の少女の婚約者候補である執務官と戦うことになっているということをヴォルク提督から聞いていたので、彼ももしかしたら自分と同じようにあまり表に出たくない人物なのかと考えていたのだが、それにしてもやり方が少し好もしくないように思った。

 別にレインを振ること事態に問題は無い。 だが、例えレインの勘違いだったとしてもそれを訂正せずにそのままにしている状況に少しばかりの怒りを覚えた。 捧げられた儚い思いと、行動に要した小さな勇気の行き所としては最悪だ。 これでは全く意味が無い。 気持ちが本人に届いてさえいない。 なんてことだろうか。 すれ違いか何か分からなかったが、少しばかり人肌脱ぐべきかと彼は思った。

「……で、レインはどうしたいんだい? 諦めるのかい?」

「まさかですわ!! こうなったら絶対に振り向かせて上げますわよ。 恋愛は戦いですお兄様!!」

「はは、君らしいね」

 淡い恋心にしては少しばかり熱血しすぎかと思ったが、それでも本人がそれで良いというのなら是非は無い。 その自由を止める権利は無い。 いっそのこと行くところまで今のうちに行っておけば、政略結婚などに利用されずに済むかもしれない。 あの男ならば、それさえも行うだろうし……。

「まぁ、私としては反対する理由は無いし……応援するよ。 まあ、さしあたってはやることが一つあるのだけれどね」

「やること……ですの?」

「そう、まずは君のことを相手に知ってもらわなければならない。 恋愛は一人でするものじゃないんだ。 相手がいて、初めて意味がある。 一方的なもの、打算的なモノに価値なんてないと私は思うんだよレイン」

「……そうですわね。 お兄様の言うことに一理あります。 では、明日にでもまた彼が集まっているところに堂々と乗り込んでみますわ!!」

 やや行動力の旺盛な妹は、そういうと準備をしておくといって部屋を出て行った。 お転婆な妹のその姿に苦笑しながら、エーリッヒもまたそういうことならと、動くことにした。 なんてことはない、”真実”を妹の前に曝け出す手助けをするだけだ。 ただ、それだけのこと。

 それに、本物の彼にも少しばかり興味があった。 それだけは、確かだった。

「意思が伴っているのか否か……そして、本当に格上が倒せるのか見せてもらうよクライド・エイヤル君。 ただ歯がゆい思いをするだけで終わるつもりは、私には無い。 その可能性があるか否かを君が見せてくれるというのなら、見せてくれたまえ。 無論、お灸もすえたいと思うわけだが……」

 道化の仮面を被りなおすように呟くと、彼もまた明日に備えてベッドに向かった。















――その日、彼らがクライドの突然の休学を知ったのは朝のホームルームからだった。

「そうそう、エイヤルの奴今日からしばらくは”家庭の事情”で少し休学するそうだ。 学校の敷地内にはいるらしいから、会えないわけじゃないがな」

 正に寝耳に水の話だった。 クラスメイトの誰もがそのことを知らず、勿論親しいはずのリンディたちやフレスタ、ザースといった面子も聞いていなかったので担任のミハエルの言葉には少しばかり驚いていた。 ここ最近、というよりは少し前から生活態度が可笑しかったが、まさかそんなことになっていたとは。 一体どういうことなのか? 三人もざわめくクラスメイトに混じって色々と思考を巡らせた。

「……あいつ、何かあったのか? まあ、昨日は”俺のせい”で色々とあったんだが、さすがにそれで休むような繊細な奴じゃあないし……なんだってんだ?」

 ミハエルがホームルームを終えて去っていった後、教室内でザースが首を傾げるようにしながら呟く。 クライドは両親がいない。 そのことは聞いていたので、家庭の事情というのがいまいち分からない。 それに、養父やその使い魔とも仲は悪く無いと話していたしそんな休むような事情があるとは思えないのだが……。

「ねぇザース、貴方知ってた?」

「いや、俺も何も聞いてない。 ハラオウンはどうだ?」

「いえ、私の方も何も聞いてませんけど……」

 三人が知らなければ、恐らくは誰も知るまい。 クライドは人付き合いが悪い。 というより、そんなモノには興味が無いといった具合だ。 自分たちより詳しい人間がいるとも思えず、首を傾げるしかなかった。

「むぅ……怪しいわね」



「……まあ、色々あるんじゃないのか? あいつ、養父に育てられたって言ってたし。 でも……そんな悪い関係でも無いとか言ってた気がするんだがな」

「そうなんですか? ……考えてみれば、私はあまりクライドさんのことよく知りません」

「そういえば私もそうだわ。 だってあいつ、滅多に自分のこと話さないもの。 必要か必要じゃないかを全部自分で決めてる感じよね。 なんというか、うん、よく分からないを地でいく奴だわ」

「いや、答えられることは割と素直に話してくれるんだけどなあいつ」

 三人の中で一番理解しているザースが、苦笑しながら言う。 さすが、よくコンビを組むだけあって、二人よりはクライドを知っていた。

「まあ、でも分かっていることはあるわよ。 あいつってほら、変人じゃない? 最近は眼つきが犯罪者だし……不良になってるし……気をつけないとやばいかも」

「それもありますけど、駄目人間か物凄い人かを紙一重で行く人ですよね? 後ちょっと意地悪です」

「……お前ら、もう少しなんかないのか? こう……なんだ。 良いとこもあげてやれよな」

 ここぞとばかりに列挙されていく微妙な評価に、ザースだけは同情する。 だが、それも当然かと思った。 クライドはいつもそうだ。 少なくとも、そういう評価でも全く気にしない。 周りの目がどうでも良いという訳では無いのだろうが、許容範囲の尺度が普通の人間よりも多分に広いのだ。 だから、気にしない。 気にせずにいられる。

 良い意味で無頓着であるといえば良いのか、そんな気質がクライドにはあった。 だからこそ、”周囲”の目をある程度理解しながらも認識を変えさせずにそのままにする。 面倒くさいというのもあるのだろうが、”あいつ”の場合は気にしなくて良ければすっぱりと割り切れるドライさがあるからこそ無視できるのだろうとザースは思う。 歳不相応な無関心さがあるのだ。

 それに変わっているとか、そういう見た目の評価をそのまま抱き続けるのは恐らくは”彼女たち”がまだクライドの引いている防衛線を踏み越えていることを知らず、その本質にまだ触れられていないからだと思った。 なんてことはない、ザースとこの二人のクライドと共有した時間の差が、その認識の違いを生み出しているに過ぎないのだった。 ザースも勿論変な奴だという感想は持っている。 それは否定しない。 だが、あいつが変だと思うのは決定的に視点が違うからだと彼は知っていた。

(変だと思うのは、視てるものが違うからなんだけどな多分。 普通の人間と認識がズレているというか、俺たちより下と年上の視点をいったりきたりしてる感じがする。 そのせいで見えない部分が見えてるんだあいつには。 逆に、そのせいで俺たちが見てる部分が見えてなかったりするんで変に感じるわけだが……)

 子供っぽいところと、妙に達観した爺臭い部分。 そんなものをザースは感じていた。 クライド・エイヤルという人間を知れば知るほどその輪郭が目についてきたというべきか。

 それから考えると、彼はいつも何かに追われている気がする。 自らも最近”見えない影”に追われていたように思って色々と考えるようになっていたが、クライドの場合は”見える影”と戦うために常に何かを考えているように思えてならなかった。 格上を打倒する手段。 そういう小細工を所持しているのは明確な敵がいるからで、それに抗うために恐らくは”全部”をつぎ込んでいるのだ。 そのせいで、恐らくは彼には普通に目を向ける”余裕”が無いのではないだろうか。

(なんて……な)

 我ながら馬鹿な発想だとザースは思った。 だが、そんなに外れてもいないとも思う。 ザースには、クライドの防衛線がなんとなく見えている気がした。 そして、自分やフレスタやリンディはそれを超えているだろうということも感じていた。 だからこそ、クライドは三人が一緒にいても付き合い続けているのだ。

 特に明確なのはリンディだろう。 クライドの防衛網を短期間でこうも容易く踏み越えているのは、ある意味で快挙である。 クライド・エイヤルはそうそう簡単に手の内を晒すようなタイプの人間ではない。 涼しい顔をして水面下で小細工を弄してくるタイプである。 だというのに、彼はリンディには自分のやり方を教えたりして指導をしている。 それが、ザースには”信じられない”。

 もし、ザースが彼に何か強くなる方法を尋ねたとしたら恐らくはクライドは”ザース・リャクトン”が強くなるためだけの助言をするだろう。 決して自分のやり方は晒さずに……だ。 

(……マジで年下趣味とかじゃないよな? 世間的にはまぁそれぐらいの差はセーフなんだが……)

 年下は嫌いじゃあないといっていたが、はてさて本当のところはどうなのか。 どういう”意図”があるのか分かればこの構図にも納得できるものが出てくるのだが、さすがにそれ以上はザースにも分からなかった。 彼はクライドを彼女たちより知っているとはいえ、全部何もかも知っているというわけではない。 そこで、考えに詰まってしまった。

「良い所……良い所……なんかあったっけリンディちゃん」

「え? ええっと……ゆ、愉快犯な所でしょうか?」

「……ハラオウン、それは絶対に褒めてないぜ?」

 悩んで悩んで出した言葉がそれなのか? 弟子からの評価と考えればかなり哀れである。

「あ、あとあれで中々世話好きなところとかありますよ!! この前お見舞いに来てくれました!!」

「世話好きかしら? あいつにそんなところあったっけ?」

「あ、ありますよフレスタさん!! ね、ザースさんもそう思いますよね?」

「ん? ああ、まあそういうところはあるな。 正し、やったらやりっぱなしだけどな」

 苦笑しながらそういうと、ザースは時計を見た。 そろそろ授業開始まで余裕がなくなってきている。 移動を開始するべきだ。

「まあ、なんにしても学校内にいるんなら後で聞けば良いさ。 どうせいつもの時間にはあそこにいるだろうよ。 なんせ”世話好き”な奴だからな。 さて、そろそろ移動しようぜ。 遅刻扱いされちまう」

 それで、終りだった。 ザースは特に心配もせずにそれで会話を打ち切ると、二人を促して移動を開始する。 クライドが自分たちに黙っていたのは”少し意地っ張り”なところがあるからだろう。

(自分の問題に人を巻き込むのを嫌うというか、自分のことは自分でやるのが当然だと思っている節があるからなぁ。 だからこそ、あいつは”自分”ができることをやってしまわないと助けを呼ばない……かな。 一応、それとなく援護できるようにはしておいてやるか)

「昨日のこともあるし……な」

 真っ赤な顔で殴りかかってきた昨日の珍しいクライドの様子を思い出しながら、ザースはクライドにやられた胸部を撫でる。 初めて見た彼のブレイド。 まともにぶつかったら”互角”だとか何だとか言っていた癖に、本当に油断のならないことである。 この分だとまだ何か武器を隠しているのかもしれない。

「ビックリ箱だよなあいつ。 まぁ、だからこそつるんでて面白いんだが」

 苦笑しながらそういうと、ザースは次の教室へと向かっていった。















 
 いつもの訓練時間、何やらベニヤ板と木材にグラーフアイゼンを使って釘を打ち込んでいる少年とそれを手伝う守護獣が一人いた。 まるで工作に勤しむ少年たちという風だったが、二人はそんなことは気にも留めずにできることをやっていた。 その頭に巻かれたタオルが微妙に玄人臭さを演出してはいるが、そもそも彼はそういうことの経験が豊富というわけではない。 一応一丁前に設計図を見ながらの奮闘であったが、中々どうして形にはなっている。

 ベニヤ板は適当に使わないものを学校からパクリ、木材は近くの模擬戦場からシールドカッターを用いて伐採し、加工しただけの簡素なモノだ。 おかげで物凄く手作り感に溢れている。

「うーむ、後は紙に書いて透明なビニールで覆ってそれを貼り付けたら完成……だな。 いや、ここは思い切ってペンキを使うべきか……ザフィーラ、後で文字書いてくれるか?」

「む? 私がか?」

「俺、字書くの下手なんだよな。 ミッドチルダ語を書くシグナム級とは言わないが、酔っ払いが遊び半分で書いたぐらいの汚さだ。 ザースにお前のノートは解読に時間が掛かると言わせたぐらいだから、相当な腕前だと自負している。 無論、悪い意味でだが」

「……胸を張って言うことでは無いと思うがな」

 呆れたように言うザフィーラ。 とりあえず、作成予定数の三つが出来たら書くことにし、二人は二つ目の看板製作に入った。 グラーフアイゼンが泣いているような気がザフィーラはしたが、主のすることに提案することはあっても意見するようなタイプではないためそのことを無視した。 今度またヴィータにでも報復行動を受けるかもしれないが、それは主が追うべき責任であるし、守護騎士とのコミュニケーションが増えるというのなら、話題の種としておいておくのも吝かではない。 まあ、割と楽しそうな二人が見れるという楽しみも多分には含まれていたわけである。

「しかし、看板……か。 主もまた姑息な手を思いついたものだな」

「心理的効果を狙ってるだけだけどな。 魔法使用にそれで躊躇さえするようならそれで良い。 人柄を聞いたら、真面目で割と融通の利かないタイプだって話だ。 なら”少し”ばかり抵抗を与えておけば有利に働くかもしれん」

「本当、普通には無い斬新な攻め方を考えるな主は」

「実戦でも何でもルールは存在するからな。 なら、”勝手”にルールを作らせてやれば敵の行動は自ずと制限されるわけだ。 まあ、嘘八百がどこまで通じるか分からないけど……人の良い人間なら間違いなく躊躇する。 悪人や悪餓鬼は気にもしないがな」


 くくっと邪笑しながら言うクライド。 眼つきの悪さと眼の下も合わせれば誰がどう見ても確実に悪人である。 釘を打ち付ける腕に些か力が篭った。

「そして、主は悪餓鬼なわけだ」

「おうともさ。 社会人とは違うのだよ社会人とは!! 時空管理局に勤めるお高いエリート様には地味に効く攻撃だろうぜ。 向こうは社会道徳を気にせにゃならん」

 全部のベニヤ板を打ち付けたところで、少しばかり休憩することにする。 そろそろ連中がやってくる頃だろう。 昨日に色々あったせいで結局訓練は流れたが、そういう地味なのは続けてこそ意味がある。 リンディたちもそれを分かっているはずだし、今日は普通に訓練をされるだろうと思っていた。 地面にシールドクッションを二つ展開。 子狼姿になったザフィーラと共にそれぞれそれを一つ占領する形で休み始めた。 だが、その休憩は長くは続かなかった。


――そこへ、あろうことか昨日の上級生の女性と虹男が姿を現したのだ。


「ヘェイ、そこな若者。 少しばかり良いかね?」

「あん? ……げっ、昨日の美人さんと虹男!?」

「あら、美人とはまた嬉しい評価ですわね。 貴方、中々見る目があるようね」 

 金髪縦ロールの上級生は、そういうと優雅に髪をかきあげる。 そういう自然な仕草が様になっているところが侮れなかったが、クライドとしては何故その美人がよりにもよって虹男と一緒にいるのかが大変に気になっていた。

「ふぅん、昨日は私の双子の妹レインが大変君の世話になったようだね?」

「妹? ……ああ!? どこかで見た顔に似てると思ったらあんたに似てたのか!?」

 この前感じた違和感はそれだったのかと、クライドはようやく納得した。 よく見れば金髪もそうだが、顔立ちがどことなく似ている気がする。 性格は似ても似つかないだろうとは思ったが、それでもやはり兄妹だと思わせるだけのことはあった。

「……で? 今回は何の用なんだ? リンディにはもう近づかない約束だろう?」

「ああ、そうだね。 私は約束は守る男だ。 よって、アレ以来一度も彼女に近付いたことはないよ。 妖精に誓っても良いね」

「いや、リンディに誓われてもな……」

「まあ、前置きは良いだろう。 それより、今回は君に少しばかりお灸をすえたいと思って参上した次第さ」

「麗しい兄妹愛ってことか? だけどそれは――」

「ああ、分かっているよ”クライド・エイヤル”。 全ては勘違いなのだろう? それは知っているのだがね、何故そうと分かっていて君はそれを訂正しなかったのかな?」

「お兄様?」

「いや、訂正も何も、俺が何か言う前にえーとレイン先輩……でいいのか? 先輩が勝手に納得して勝手に帰っていったんだ。 そもそも、俺は初め”俺”宛てだと思ってたんだぞ?」

「ふむ……つまり、訂正する暇がなかったと?」

「そういうこと。 それに、こっちはこっちで混乱してたんだ。 ラブレターで”呼び出される”なんて男冥利に尽きる経験は悔しいことに初めてだったんでね」

 頬をかきながらクライドは憮然とした顔で言う。

「えーと……お兄様? 話が見えないのですけれどつまり、どういうことですの?」

「なに、今現在三年で噂になっている”シューティングアーツのクライド・エイヤル”という人物はそもそも存在しないということだよ。 なんらかの理由で彼らは入れ替わっていたんだ。 そうだよねクライド・エイヤル君? それに、シューティングアーツを使う人間は二年では彼のクラスメイト一人しかいないとミズノハ先生に聞いている。 その名前もね」

「そんな!? では、私の勘違いというのですの!?」

「――ザース・リャクトン。 それが、シューティングアーツを使うクライド・エイヤルの正体であり、レインが恋した少年の名前だ。 違うかな?」

「いや、違わない。 それで正解だ」

 内心で、虹男のあまりの変わりようにクライドは驚いていた。 これが地ということなのだろうか? あの時のあの変な性格からは全く考えられないような理知的な話し方を彼はしている。 仮面を脱いだ彼は酷く冷静で、用心深い性格のように感じられた。 そして、内心でそれを見抜けなかったことにクライドは舌打ちする。 見事な擬態であったと思わざるを得ない。

(……完璧に騙されてたってわけだ。 なら、あのザースとの戦いも本気じゃあなかったということか? 嘘を言っていないのであれば、だが)

「きっかけはアンタだよ。 えーと、なんて名前なんだ?」

「エーリッヒ……エーリッヒ・ビフレストさ。 彼女は私の双子の妹でレイン・ビフレスト。 まあ仲良くしておくれ。 とはいえ、”こういう風”に私が普通に話すことは稀だけどね。 私は虹男、変な性格の変な奴。 そういう仮面を態と被っているんでね、今後も普段はそういう風な奴だと思っていて欲しい」

「了解。 事情は聞かないよ。 どうでも良いし、俺が知る必要は無いんだろう?」

「ああ、それで良いよ。 それで、私がきっかけとはどういうことなのかな?」

「この前リンディ・ハラオウンにちょっかいを出してただろう? あの時まあ……ザースの奴が色々と自分の強さについて悩んでいたんで、上級生と戦わせてどれぐらい自分が強いのかを分からせてやろうと思いついたんだ。 だから、態々”クライド・エイヤル”だと誤解させたまま戦わせたんだ。 んで、まぁその後少ししてから三年の連中でリンディに興味を持った奴らが来たことがあったらしいんだが、それに偶々出くわしたあいつがリンディにちょっかい出すなら俺を倒してからにしろってかんじで影ながら厄介ごとから護衛することにしたんだ。 律儀にも俺の名前を使い続けて……な」

「……なるほど、それで私がきっかけということなのか」

 それが、シューティングアーツを使うクライドの生まれだった。 本物のクライドはシューティングアーツなど使えないし、使ったことも無い。 一人歩きした噂と、一人の少年の善意が生み出した架空の存在なのであった。

「で、ではクライド・エイヤルが総合Sランクの少女を倒したというのも……嘘なのですか?」

「ああ、それも厳密に言うと少し違う。 確かに、クライド・エイヤルが止めを刺したわけだけど、アレはそもそも一対一の戦いじゃあない。 リンディ・ハラオウンとクラス全員が戦ったからこそ成せた偶然に近い」

「……なるほど、そしてそれがリンディ・ハラオウンをクライド・エイヤルが倒したという噂の原点ということかい」

「そういうこと……だな」

 楽しげな顔で頷くエーリッヒと、何やら頭を抱えるレイン。 双子それぞれ違う反応ではあったが、それも当然だと思った。 特にレインは気の毒だろう。 そもそもが勘違いで人に恋をしたというのであれば、それはショックを受けてもしょうがないとクライドは思う。 だが、これが紛れも無い事実であり真実である以上は今更どうしようもない。

「さて、ここで一先ず問題を一つ片付けるとしよう。 レイン……一つ聞くけど君はこれからどうする? このまま彼を諦めるかい? それともまだ捕まえようとするのかい? もう彼には幻想など微塵も無いし、ここですっぱりと諦めるのも手だと思うよ?」

 エーリッヒは優しくそういうと、妹の肩に手を置いて答えを待った。 レインはしばらく考え込んだ後、しかし不敵に笑って答えて見せる。

「……お兄様。 この私を侮らないで下さいまし。 例え彼のイメージが幻想であったとしても、あのとき私がこの目で見たものは本物なのですわ。 それに、格好良いじゃあありませんか。 話を聞いてますます気に入りましたわ。 上級生数人を相手に一歩も引かずクラスメイトの少女を守るために黙って戦おうというその勇気と正義感。 そんな高潔な人こそ私が恋焦がれた”クライド・エイヤル”そのものですわ!!」

(ざ、ザース……なんて良い女を釣りやがったんだ……羨ましいぞこんちくしょう!!)

 一人身の男としては応援したいと思いつつも正直に言えば羨ましく思ってしまうクライドは、肩を竦めてエーリッヒを見る。 彼は決意を新たにした妹の決意を暖かく見守っていた。 別にザースに妹がアタックするというのに反対というわけではないらしい。 理解ある兄というかなんというか、個人の意思を尊重するタイプの人間なのだなとクライドは漠然と理解する。

「さて、じゃあレインの問題はこれでおしまいにしよう。 一件落着というわけではないけれど、これでようやく本当に始まるわけだ。 頑張れ、私は応援するよ」

「ええ、お兄様は二人の挙式には絶対に呼ばせてもらいますわ」

「き、気が早いなレイン先輩……」

「あら、やるからには徹底的にがモットーですもの。 中途半端な関係などこの私は求めませんわ」

「ふふ、羨ましいね。 私もそんな風に思える人に出会ってみたいよ。 ……と、さて後は私たち二人の問題だ。 すまないが、もうしばらく付き合ってもらいたい」

「まだ何か?」

「ああ、君が先ほど言ったじゃないか。 リンディ・ハラオウンに止めを刺したのが自分だとね。 だが、総合Sランクの称号は訓練学校生程度に破られて良い称号ではない。 今のようにリミッターをかけていたのなら話は別だが、彼女はそのときはSランクのままだったのだろう? そんな彼女を倒した君に私は興味を持っている。 願わくば一度私と戦ってくれないかな?」

「はあ?」

 何故そうなるのか、クライドは首を傾げる。 いや、確かに魔導師としての興味を満たすためだとか色々と意味があるのかもしれないが、仮面を被ってまで道化を演じていた彼が態々こうして自分とそれをすることの意味がよく分からなかった。 ちっぽけな好奇心だけで動くようなタイプに見えないので尚更不自然に思える。

「無論、君にもメリットをあげるよ。 私は先日”クライド・ディーゼル”執務官と戦った。 そのときの話を君にしようと思うのだがどうかな?」

「な!? どうして……」

 クライドが驚愕の視線をエーリッヒに送る。 何故、彼がそのことを知っているのか。 一体どういうことなのか理解できなかった。

「まあ、つまりは私もあの妖精争奪戦に参加させられたのさ。 その後でヴォルク提督と少しばかり話をして、そのとき君の話が出てね。 それで知ったんだよ。 だが、最後の壁が”クライド・エイヤル”だと聞いたときはさすがに私も驚いた。 普通ならありえない。 けれど、それでもどうにかしてしまう何かを君が持っていて期待されているのだとしたら、私はそんな君からその力を盗みたいと思っている。 どうだい? 対戦者の生の声だ。 戦ってくれるのなら勝っても負けても話してあげるが……どうする?」

 少しばかり考えるようにしながら、クライドは思考を巡らせる。 旨みどころの話ではない。 やはり、対戦した相手の生の声というのは聞いておきたい。 映像からだけでは分からないことなどいくらでもあるのだから。 しかも、相手は予想外に冷静に対応してくる人間だ。 有益な話を聞くことができるかもしれない。 だが、一つだけは絶対に確認しておかなければならないことがあった。

「貴方が”クライド・ディーゼル”と繋がっている可能性は?」

「ないよ。 彼と会ったのはこの前が初めてだし、今後付き合うことになるかどうかは分からないが、だとしてもそれは管理局に入ってからだろう。 現在私と彼の間には一切の関係は無いし君の事を喋るつもりは無いよ」

 嘘かもしれない。 だが、少なくとも目の前で妹を気遣っていた彼の眼には嘘は無いように見える。 クライドはその”自分”の勘を信じた。

「了解……じゃあ一戦だけですよ?」

「ああ、それで十分だ」

 お互い、軽く笑みを浮かべるとそのまま自然に握手を交わす。 商談成立であった。

「さて、ザフィーラ。 今日はこの辺で訓練やっててくれ。 荷物の番もよろしくな」

「分かった」

「あら? その子随分大人しいと思っていたのですけれど、貴方の使い魔ですの?」

「まあ、そんなようなもんだ。 ザースなら多分そのうちここに来るだろうからそれまでこいつと一緒に待ってるといいよ。 なんなら一緒に訓練してても良い。 あいつらに足りないところがあったら教えてやってくれると助かります」

「ふふ、話が終わった後ならそれも良いですわね。 ええ、考えておきますわね」

「さて、じゃあ行こうか」

 二人して森の中へと向かっていく。 それを見ながらザフィーラはお腹から抱えられるようにしてレインの腕に収まった。 子狼フォームでは割とそういうポジショニングになるので否はなかったが、よく知らない相手だったのでしばらくは口を開きづらかった。 だが、気になることがあったのでレインに尋ねた。

「実際、君の兄上はどれぐらい強いのだ? 一度ザースと戦っているところは見たことがあったが……そのときは手を抜いていたせいかすぐに負けていたのだが……」

「そうですわね。 三年の中では……恐らく最強クラスだと思いますわ。 私が五本の指に入るぐらいですけれど、お兄様には勝ったことがありませんもの」

「ほう? それほどに強いのか?」

「取得ランクは陸戦A- でも、お兄様は本当は空戦Aが取れる人なんですの。 態と陸戦ランクを受験したり、ミスしてギリギリで突破してみたり、本当……本気を滅多に出さない人なんですわ」

「君のランクは?」

「私は陸戦Aですわ。 訓練学校で三年でもここまでいくのはわりと大変なんですのよ? だから私、少しばかりクンフー自信がアリなのよ」

「そうか、頼もしいな」

 誇らしげに語る少女の胸に収まったまま、ザフィーラは思う。 事実だとしたら主にとってはかなり分が悪い戦いになるかもしれない、と。 訓練生レベルの低ランク同士の争いなら大して差は無いはずなのだが、どうしたものか。 彼にできることは主がボコボコにされないように祈るぐらいである。 夕日の赤が少しずつ辺りを染めていくのを感じながら、ザフィーラは主の命を全うするべくそのまま待機し続けた。















 純粋な力の差は技さえ殺す。 そう理解したのは、挑んでも挑んでも叩きのめされてきたからだったか。 昔は我武者羅に魔法を叩きつけることだけしか知らなかったけれど、目標があればそれを攻略するための方法を考え続けるのが人間である。 そう信じていたときがエーリッヒにもあった。
 だが、それもいつしか磨り減ってただの夢や幻に成り下がった。 どれだけの魔法を覚えても、どれだけの戦術を覚えても、決して届かない場所にいる父。 正直にいえば、疲れたのかもしれなかった。 差は歴然だった。 AAAランクの力を持つ父に大して、AAランクの資質を持つとはいえまだ幼かった彼が勝てる道理は無く、今でさえも到底届かない場所に父はいた。 魔導師として戦えば戦うほどエーリッヒには父の強さの根源が見えてしまい、その差が悔しくてたまらなかった。

――弱いなエーリッヒ。

 いつもそう言って倒れた自分を見下ろし、舌打ちする。 そうして、母に八つ当たりをしてから去っていくのだ。 そういうことがまかり通るのは、彼が強いからだとそのときに嫌でも思い知らされた。

 純粋なスペック<性能>の差だった。 技術だけならば、引けは取らないと彼は思っていた。 事実、その強い父でさえその年齢では習得していなかったというビフレスト家の技を覚え、使いこなせるまでになっていた。 そこだけは、ビフレスト家の跡取りとして十分な才能を備えていた。 だが、純粋な魔法の才能だけは少しばかり足りなかったのだ。

 魔力量。 全ての魔法に直結する大事な要素にして魔導師が絶対に避けては通れない頭痛の種。 こればかりは、元々持っているものの差でほとんど勝負が決まってしまう。 伸びしろがある人間の大抵は初めからこれを持っているものばかりで、”持っていない”人間には頑なにその恩恵にあずかることを良しとしない。 そして、さらに残酷なことに魔力量を多く持つ者の多くは総じて魔法の才能を潤沢に持っている。 これは一種の差別だとエーリッヒはずっと思っていた。 才能の神様という奴が、そのときの気分で適当に弄繰り回して遊んでいるのだと思うと、殴り飛ばしてやりたいぐらいだ。 多分、もしかしたらこれからもそう思い続けるのかもしれない。 そうずっと思っていた。

 技術ではなく力。 他者を凌駕する圧倒的な力の前には、ありとあらゆる小細工は無効化される。 法外な操作技術を持った誘導魔法を叩きつけても、魔力量さえ馬鹿に込めれば全周囲防御のバリアやフィールドで防ぎきることが可能であるし、それ以上の威力のある魔法を出そうとしても絶対に魔力量という力の源泉がネックになって撃てるだけの技術を持っていても撃てないなんて馬鹿なことが十分にありえる。 そんな世界に自分はいて、中途半端な才能のせいで勝てるのは自分と同じぐらいか下の人間だけ。 その無力感と絶望といったら全てを投げ出してしまいたいと思うぐらいだった。

 努力で差を縮める? 言葉にするのは簡単だ。 だが、縮められないモノにぶつかったらどうしたら良いのだろうか。 何を持って勝てば良いのだろう? 自分は魔導師で、だったら戦う武器は魔法に限定されてしまう。 だが、それでは明確な差がある存在を倒すことができない。 温厚な草食動物が獰猛な肉食動物に狩られるように、ただ黙って逃げることしかできないのだろうか?

 絶望が仮面を作った。 無力感がちっぽけな道化を生み出した。 だが、だからこそ一筋の光明に希望を持ってしまった。 噂だけの胡散臭い眉唾でしかなかった存在が今自分の目の前にいて、普通の人間が聞いたら馬鹿な妄想と思えることをやってのけたらしい存在がそこにいる。 あの魔導師の名門ハラオウンの、今現在の顔たるヴォルク提督さえ気にかける少年。 本当に”そんな奇跡”が起こせるのかどうか幻想が現実となって現れた今となっては確かめずにはいられない。 それが、自分にもう一度希望を持たせる起爆剤になるかもしれない。 諦めかけていた。 だが、それでもやはり諦めきれないものが確かにまだ道化の胸のウチには眠っていたのだ。

「まず初めに言っておこうか。 ミズノハ先生に確認を取ったのだけれど、現在の私の純粋な戦闘力と君の戦闘能力を比べたときスペックだけみれば単純に強いのは間違いなく私らしい」

「……へぇぇ、それは自慢って奴か?」

「いや、ただの確認だよ。 ”だからこそ”確かめたいのさ。 君が”我々の悲しい常識”を打ち壊してくれることを祈ってね」

 フッと笑うその笑みには確かな疲れが見え隠れしている。 クライドにはそれがなんなのかは分からない。 分かるはずも無い。 だが、”常識”を壊すという言葉に秘められた願いだけはなんとなく感じるものがあるように思えた。

 立場は違い、立ち位置も違う。 だが、二人に共通するものが一つだけあり、そしてそれが絶望的なまでにあり方を変えていた。 諦めてしまった少年と、なんとかギリギリで踏みとどまっている少年の差という奴だろうか。 みっともない悪あがきの果て、クライドが行き着いた答え。 それが”明確な希望”となるか否かが決まるのだ。 もう一度上を向くことが出来たら良い。 本心からエーリッヒはそう思った。

 虹色のバリアジャケットを展開。 派手で派手なそのセンスに加えて、今回は自分自身のデバイスも顕現した。 杖先にあるレインボーダイアのコア煌きが、夕日を反射させながら静かに輝く。

「……それがあんたの本物のデバイスか」

 対するクライドもまた、黒のバリアジャケットを展開。 さらに油断なく敵を見据えるようにしながら迷わずブレイドを抜いた。 今目の前にいるのは仮面を被った虹男などというわけの分からない少年ではない断じて無い。 冷静な目で戦場に立つエーリッヒ・ビフレストという名の魔導師なのだ。 そう判断し、未知の格上を相手にする心構えでもってそれに答えた。 発生する青の魔力刃が、静かに波打ち振るわれる時を待つ。

「さぁ、始めようか」

「ああ」

 十五メートルほど離れたところで、適当にその辺りの石ころを拾うとそれをエーリッヒが指で弾く。 夕暮れの空に弾かれた石が放物線を描いて宙を舞う。 なんとも分かりやすい合図だ。 クライドはエーリッヒの楽しげな笑みに頷いて腰を低くして前傾姿勢を取ると、石ころが地面に落ちた瞬間に飛び出した。

「レインボー・シューター!!」

 飛び出す黒<クライド>を迎撃するためにいつか見た虹色の弾幕をエーリッヒが放つ。 数は七つ。 足元に虹色の魔法陣を一瞬光らせて放ったそれはしかし、今まで直接見たどの誘導型射撃魔法より強烈だった。 無論、前回のリンディのスティンガーブレイドよりは劣るが、少なくともその制御能力はクライドの予想を遥かに超えていた。

 縦横無尽に空を切り裂く七つ星が、高速で飛来する。 クライドはそれを目で追うようにしながら高速移動魔法<ハイスピード>を展開。 魔法が直撃する前にその場から消えるようにして移動する。 目標を失った魔力弾が通り過ぎるも、クライドの残像を追って追尾する。 だが、それよりも先にクライドは既にブレイドの間合いに踏み込んでいた。

 青の光刃がエーリッヒの唐竹にするべく高速で迫る。 だが、それが届くことは無い。 瞬間、クライドの身体がくの字に曲がりそのまま後ろへと吹き飛んでいた。

「――ぐっ!?」

 腹部から感じる衝撃に、バリアジャケットが軋みを上げた。 全く予期しない反撃に、クライドの頭が真っ白に染まる。 

(ば、かな。 何をやった? 何を喰らったんだ俺は!?)

 ドンっと背中から地面に着地したクライドが、咳き込みながら転がるようにして移動する。 その後を追うようにして地面を強襲する虹色の弾丸が七つ。 捲れ上がる地面が土砂を巻き上げて視界を塞ぐ。 その向こう側から、さらに鳴動する魔力。 粉塵の向こう側からでも魔力の挙動から理解できる。 次の魔法が放たれようとしているのだ。 

「――ちっ!!」

 開始早々の一発で終わらされてはたまらない。 クライドが後退するようにしながらシールドを張り、さらにカートリッジをロード。 防御の構えを取る。 次の瞬間、青のシールドに寸分違わず飛び込んできた魔力弾を受け止めた。 だが、それも長くは持ちそうに無い。 カートリッジを用いて強化したシールドは、あのザースの一撃さえ防ぎきる。 だというのに、それを凌駕する威力の魔弾がクライドのシールドを対消滅させた。 砕ける青のシールドに驚愕の視線を向けながらも、クライドは動く。

 ラウンドシールドを周囲に七枚生成し、高速回転。 仕返しとばかりにシールドカッターとして変性し発射する。 獰猛な青が、虹とぶつかって両者の中心で凌ぎを削る。 だが単純に削ることを目的としていながらもその密度の関係から単純に強固なシールドカッターが七色の光弾を切り裂いて無に返す。

「ふむ、見たことのない魔法だね。 君のオリジナル……なのかな?」

 光弾を切り裂いて突き進むシールド。 それに少しの感嘆を覚えながらもエーリッヒは杖を握り締める。 振るわれる杖の先端にあるのはジャベリンの魔法だ。 執務官のジャベリンと比べると威力は劣るが、それでも十分な破壊力をもっているらしい。 虹色の槍が魔法相殺によって威力を落したシールドカッターを次々と叩き落していく。

 どうやら、近接攻撃もきっちりと習得しているらしい。 クライドはそこで、再び切り結ぶために前へ出ようとする。 だが、一歩踏み出す前に何かを察して首を捻った。 瞬間、耳元を掠める風の流れを感じるとともに、見えない球体が通り過ぎていくのを視た。 無論、通常の視覚で感じたのではない。 つい先ほど切り結ぶために展開した六メートルばかりのグラムサイト<妖精の眼>が丸い何かを捕らえたのだ。 まだ粗削りのグラムサイトではあったが、少なくとも領域内に危険なモノがあれば感知することぐらいはできる。 そしてそれがクライドを救ったのだ。

(やっぱり、魔法か。 だが……発動が確認できないのはどうしてだ?)

 通常、魔法の発動の瞬間には魔法陣が展開される。 それはミッド式でもベルカ式でも同じだ。 アルハザード式では魔法陣自体を発生させないように設定したり、魔法陣の図形を変えたりできるがそもそも”アルハザード式”などという魔法が表に出ているなど聞いたことが無い。

(発動の瞬間が見えない魔法……そういうレアスキルか? それとも幻影系かミラージュハイド辺りで隠匿している? だが仮にそうだとしても発動は隠せても弾丸は隠せないはずだ。 隠す前に一度見えるはずなんだが……)

 見えない以上、普通には迎撃はできない。 広域防御のできるバリアで防ぐか、グラムサイトの展開範囲を広げて知覚迎撃するしかないだろう。 だが、後者は無理だ。 クライドは原理を想像しながら攻撃を避けて見せたことに驚いているエーリッヒを見る。

「いやぁ、凄いね。 今のを避けられるのか君は……」

 本当にエーリッヒは心底驚いていた。 少なくとも、自分は任意では避けられない。 というより、よけられるはずがないのだ。 バリアやフィールドの出力次第で防御できるが、それだって偶々で任意でできることでは決して無い。

「まぁ……偶々だけどな」

 ブレイドのカートリッジを交換しながらクライドが苦虫を噛み潰したような表情で言う。 彼としても種が分かるまではこれで下手に動けない。 感知できるとはいえ、それでも絶望的に余裕が無さすぎる。 首を動かすぐらいなら良い。 だが、避け辛い胴などを狙われたらひとたまりも無い。 

「偶然でも凄いさ。 任意でそれをする方法なんて、私は知らないし教わったこともない。 魔力に物を言わせて防御するとか出鱈目に動いて偶然回避するとかしか普通の人間には不可能なはずだよ。 デバイスの光学センサーにも”姿”は見えないはずだしね……いやはや、中々興味深いね」

 ジャベリンを纏った杖を構えるようにしながら、エーリッヒが誘うように笑う。 と、ジャベリンの色が変わった。 虹色から赤へ。 さらに赤から青を経て白になりまた虹色に戻った。

「……魔力光が変わる? 任意で変更できるってことか?」

 クライドはその事象に眉を顰める。 魔力光は基本的に誰にも変更することなどできない。 それはアルハザード式でも不可能なことである。 魔力が持つ情報によって生まれながらにして個々に定められたその色こそ、その魔導師だけが持つパーソナルカラー<自分だけの色>なのだから。

「レアスキル『マジックパレット』……ありとあらゆる色に己の魔力光を変化させるレアスキル。 ビフレストの家系が受け継ぐべき資質だよ。 ここまで言うと、答えは分かってしまうかな?」

「まさか、透明色の魔力光も生み出せるっていうのか?」

「うん、そういうことさ。 このスキルはいくつかのことに利用できるけれど、戦闘に利用するとしたらこうするのが一番強力だ。 何せ、人間は視覚にどうしても重きをおいて生活している。 これはその重要な感覚を殺してしまうんだ。 これほど”弱者”からして怖いスキルは無いと私は思うよ」

「なるほど……確かに普通に見えないから対処方法が限られてくる。 しかも、単純に使用者より弱い魔導師にはそれをするのは厳しすぎる!!」

 クライドは内心の戦慄を抑えこみながら、舌打ちする。 全くもって馬鹿げている。 それをしようとした人間もそうだが、それを成しえてしまう希少技能<レアスキル>もまた恐ろしい。 見えないということは、任意で回避迎撃できないということであり、これはちょっとした恐怖だ。 放出している魔力から魔法の発動だけは感知できそうだが、見えなければどんな魔法でどんな攻撃を受けるのか理解できないためにまったく有効な対処ができない。 気がつけば全周囲を攻撃用のスフィアで囲まれているということも十分にありえるのだ。

 無論、術者よりも強ければ或いはこの限りではないだろう。 膨大な魔力で踏み潰すようにして罠を無視すれば良いからだ。 だが、弱者は違う。 そんなことはできない。 それは恐ろしく戦闘に有用なスキルであると理解せざるを得ない。

(グラムサイトがなければ反応さえできてなかった。 しかも相手にトリックを話すこの余裕……つまりは、これは俺では対処できないっていう余裕の表れ……か)

 内心で憤慨する。 いつかのように、そういうのがクライドは大嫌いだからだ。 冷めた目の向こうで、クライドの思考が回転していく。 その余裕こそがいつだって強者の最大の”弱点”であり悪癖だ。 どれだけ法外な力だろうと、”完璧”は存在しない。 していてたまるかものか。

「さて、仕切りなおしといこうか」

 ジャベリンの姿が消える。 そろそろ”本気で”やろうというのだろう。 間合いがこれでは読めない。 ジャベリンはある程度長さを操作することもできるのだ。 こういう狡猾な戦い方をしてくる相手とは久しく戦ってないだけに、クライドはこの未知の使い手との戦いに少しばかり迷った。

 だが、クライド<敵>のそういう戸惑いなどエーリッヒには関係が無い。 魔力がエーリッヒ周囲で高まり、見えない圧力を生み出していく。 何の魔法かは理解できない。 だが、攻撃してくることだけは理解できる。 ならばと、クライドは戸惑いを振り切って動き出す。 シールドカッターを四枚生成し、やや離れた位置で回転させるようにしながら盾にして出鱈目に距離を詰めるべく走り出していった。

 瞬間、クライドのグラムサイトが敵の攻撃を捉える。 シールドカッターが一枚無色の砲撃に飲み込まれる。

(ブラストバレットか?)

 至近距離での爆発の衝撃を感じたころには、次の魔力弾が着弾していた。 二つ目の衝撃。 肌で感じる衝撃がバリアジャケット越しに肌を撫でる。 フィールドを透過した空気の流れによって生じたそれが、危機感を次々と煽ってくる。 姿の見えない襲撃者。 その脅威を否が応でも感じてしまう。 だが、足は止めない。 頭の中で攻撃パターンを予測しながら、回り込むようにして再び高速移動魔法を展開する。 残像にそうようにして地面を抉る爆裂弾。 エーリッヒまで後数メートルというところで、クライドはさらに左側へと跳躍。 移動進行上に配置された”ブラストバレット”を避けると生き残っていたシールドカッターを地面に叩きつけるようにして破裂させる。

 巻き上がる粉塵。 その影から二人のクライドが左右から挟撃するようにして飛び出していく。 その手に纏っているのはシールドナックルだ。 高速で回転するそれが唸りを上げながら威嚇する。

(目には目を歯には歯をだ!!) 

 シールドナックルを纏った幻影が走り、二つが同時に爆発した。 見えない爆裂魔法が幻影を飲み込んだのだ。 だが単純に迎撃されるだろうことは百も承知である。 そのまま背後にミラージュハイドで背後に回っていた本物のクライドが、ブレイドを掲げて切りかかる。

「――後ろかい?」

 だが、すぐさま振り返ったエーリッヒによって無色透明の槍が忍び寄る刃から身を守った。 ミラージュハイドの隠密性能はかなり高いが、近付けば勘の良いものは気づくことができる。 見えているらしい癖に容易く爆裂魔法に飲み込まれたクライドのことを訝しんで警戒していたエーリッヒにはどうやらギリギリで察知できたらしい。

「ちっ、反応が良すぎるぜあんた!!」

 ブレイドの刃がジャベリンに喰らいつくが、エーリッヒの魔法の方が単純に強い。 奇襲したにも関わらず、鍔迫り合いの状態から押し返してくる。 ならばとその状態からカートリッジをロードする。 魔力を底上げする弾丸が、その封じられた力でもってブレイドの威力を底上げする。  

「――ベルカ式カートリッジシステムだね? 随分面白いデバイスを持っているんだね君は。 しかも君、ミッド式なのにそれを扱えるのかい?」

「あんたこそ、そのオーダーメイドのデバイスは反則だろうがよ!! こちとら手作りの簡易デバイスだぞこら!!」

「ふふっ、すまないね。 だが、この程度は君が相手にするはずの執務官と比べると可愛いものさ」

「はっ、違いない!!」

 力ずくで押し切ろうとするクライドに対して、エーリッヒはしかしそれ以上の硬直を望まない。 後ろに跳躍するようにして距離を取ると、そのままジャベリンの間合いで連続の突きを放つ。 二、三メートルほどに伸ばされた槍先が、クライドのグラムサイト圏内で次々と猛威を振るう。 高速で放たれるその突きを前に、しかしクライドは前へと果敢に攻め入った。

 一度懐に入ったのなら、離れるべきではない。 至近距離でなら爆発に自身を巻き込むブラストバレットは使えないし、射撃魔法を撃たせるような隙を早々に与えることはない。 できれば再び距離を取る前に倒したいとクライドは思う。

 こうも強気に出られるのは、恐らくはグラムサイトのせいだった。 領域内を無意識に知覚できるこの技術があれば、破格の反応速度を得ることができる。 いくらセンスが無くても、相手が訓練生レベルならばそれで十分に対応することができた。 事実、見えない槍に襲われているというのにクライドには対処ができないとは思えない。

 歳が一つ上であるといっても、その程度。 恐らくはエーリッヒ自身近距離戦闘重視の戦闘スタイルでは無いのだろう。 滑らかで十分見事な動きであったが、脅威を感じるほどではない。 彼の基本スタイルはやはり見えない魔法で相手を制圧する視認不可魔法戦術なのだ。 オールラウンダーとして戦えることは強みだが、突き抜けているわけではないので対処ができる。

「……やはり、君には見えているみたいだね。 私の無色が」  

「目で見てるんじゃない、感じてるんだよ!!」

 槍と刀を交えながら、軽口を叩くクライド。 次々と襲ってくる槍の洗礼を前に、一歩も引かないその姿勢にはエーリッヒもさすがに内心での驚愕を隠しきれない。 ジャベリンの伸縮特性を考えるとその驚きは当然だ。 少しずつ長さを変え、短くしたり長くしたりして間合いを狂わすようにしているというのに、クライドはそれに対応する。 フェイントで短くした槍がブレイドにぶつかる寸前に動きを止め、身体が硬直した隙を狙ってカウンターを狙ってくることなどからみてもやはりありえないはずのことが起こっている。

(……普通ではやはりありえない。 トリック……なのかな? それとも本当に感じているのか?)

 盲目の人間の感覚が常人より優れているように、単純に感覚が常人より鋭いのか、何らかの手段で知覚しているとすればそれは凄いことである。 今までそんなことができる人間をエーリッヒは知らないし、できるとも聞いたことが無い。 そう考えると、クライド・エイヤルという未知の魔導師とこうして戦える機会を得たことは良い経験になるだろうとエーリッヒは思う。

(やはり、人間やってできないことは無いのかもしれないな)

 微かな希望がその胸には蘇りかけていた。 もし仮に自分が見えるようになれば、それだけでグッと父に近付く。 あの無色の暴虐にさえ立ち向える可能性が真実味を帯びてくるのだ。 後は、力の差を埋める手段だが、それも少しばかり彼からヒントを得た。 噂にしか聞いたことが無いベルカ式カートリッジシステムとその威力。 魔力を底上げするという機能を有した確実な装置。 これを利用すれば、かなり差を縮められるだろう。 だが、そこまで考えてエーリッヒは次の疑問にぶち当たった。

(確かに、威力強化はされる。 されるが、これでもまだ絶望的に”Sランクには届かない”。 まだ、何かあるのか? だとしたら、是非それも拝ませてもらわないといけないね)

 静かに唇を吊り上げながら、エーリッヒは楽しげに笑う。 マジックパレットの恩恵は絶大なアドバンテージを生み出すが、こうも自分とやり合い続けられるのは格上以外では滅多にいない。 そしてその存在はまだまだ隠し事があるというのだ。 これで興味をそそられないはずがなかった。 振るう槍には、否が応でも力が篭った。

「いいね、楽しいよ。 魔法戦闘がこうも楽しく思えたのは久しぶりだ。 君はどうやら私の空虚を吹き飛ばせる何かを持っているらしい」

 互いに振るう武器が衝突するたびに、無色と青の火花が咲いて散る。 間合いでは圧倒的に有利なエーリッヒだったが、しかしその顔には余裕はあまりない。 ”ここまで”真正面からついてこられた経験が無いのだ。

「はっ、その余裕ごとぶっ飛ばしてやるよ!!」

 突き出した槍先を掻い潜り、ついにクライドが己の間合いへと侵入する。 回転する青の奇跡が空気を切り裂きながら縦横無尽にエーリッヒの懐で猛威を振るう。 袈裟に逆袈裟にと次々と振るわれるブレイドの刃。 カグヤのモーションを真似た息が止まるような連撃が、反撃とばかりに二人の間の空間を侵食する。

 カグヤの剣は基本的に相手に反撃を許さない速剣だ。 鋭さと速さと剣術をあわせた剣の結界に相手を捕らえ、反撃される前に押し切ることを念頭において構築されている。 シグナムの一撃必殺とはまた趣の違った剣だが、こと相手を封殺するという意味では凶悪だ。 もっとも、クライドの練度では彼女の足元にも及ばない。 しかも、微妙にシグナムの剣術と混ざっているせいで中途半端なものでしかない。 だが、それでも純粋な剣術を知らない、戦闘経験が豊富ではない人間に対しては十分な武器となりうる。 管理局の奨励している杖を使った近距離戦闘技術を一応杖を選んだ人間は習得はするが、それだって本当は重視されているものではない。 魔導師は魔法を使ってこそなんぼなのだ。 故に、毛並みの違うこうした純粋な剣術というのは酷く”普通の魔導師”は嫌っている。

(このまま押し切られるのは面白くないな……ならアレをやろうか)

 思い切りよく、エーリッヒはジャベリンの術式を霧散させ、杖を守るフィールドに魔力を注ぐ。 そうして、タイミングを計るようにしながら隙を伺う。

(ジャベリンが消えた? だが――)

 無論、クライドは槍先がなくなったことを感知していたがそれでも手を緩めることはしない。 何かを狙っているのだろうと考えていたが、それでも”下手な魔法”を撃たせる前に押し切れるだろうという手応えを信じた。

 エーリッヒからクライドへと移行した攻撃権。 これを維持しながら押し切れれば恐らくはクライドは勝てるだろう。 だが、そうそう簡単にはいかない。 ここまでの展開ならば”エーリッヒのクラスメイト”でも、そして彼の妹でも彼の間合いに踏み込むことだけならばできないわけではないからだ。 だが、エーリッヒにはこの状況でさらに上を行く戦術がある。 本当の単純なスペック差を使うだけの力押しだが、それをお恐らくはクライドが”普通”に破ることはできないだろう。 そうして、もしそれをクライドが破れたならばエーリッヒは認めるしかないとも思った。 彼が本当に”奇跡”は起こせるのだということを。

 青の剣閃をひたすらに観察し、その起動とタイミングを計っていたエーリッヒ。 その顔にあるのはポーカーフェイスだ。 道化の仮面も理知的な顔もそこにはない。 水面下で何かを画策する魔導師の顔だけがそこにはある。 そうして、さらに数合打ち合った頃には、エーリッヒが動き出した。

「そろそろ終わらせてもらうよクライド君」

「――つっ!?」

 ほとんど反射的にクライドがブレイドを振るう。 無色の弾丸が青の刃とぶつかり、一瞬しのぎを削って霧散する。 攻撃と攻撃の合間のほんの小さな隙を利用して、杖から手を離したエーリッヒが左手から抜きうちのシュートバレット<射撃魔法>を放ったのだ。 同時にエーリッヒが後方に飛びながら、あろうことか自身のデバイスをクライドに向かって”投擲”した。

「なに!?」

 さすがにこれにはクライドも驚愕せざるを得ない。 ”普通”の魔導師からすればほとんど選択しない行為を”平然と行う”ことにもそうだが、それでも戦えることを確信しているエーリッヒの笑みに騙された思いで一杯だ。 魔力を込められている以上、弾き飛ばさなければダメージを食らう。 ブレイドで弾いたころには、エーリッヒは彼にとって十分な距離をとっていた。

 魔導師がデバイスを使うのは普通に魔法の高速詠唱や、魔法の補助、威力強化、単純な武器にするためなどといった様々な理由がある。 だが、別に魔導師はデバイスなど使わなくても自分の身一つあれば魔法を行使することができるのだ。 速度も威力も普通は落ちるはずだが、だがそれでも人間の詠唱速度や威力が絶対にデバイスに勝てないというわけでは決して無い。

 人間の底力というのは、それさえも凌駕することができる可能性を秘めているのだ。 無論、それをするには行使する魔法に対する圧倒的な慣れと修錬が必要だ。 一朝一夕でできることではない。 だが、”普段から”簡易デバイスを使っている振りをして”自身の詠唱能力”を地道に強化していたのなら話は別だ。

「――スフィアプロテクション!!」

 無色透明の全方位バリアの壁が、エーリッヒを包み込む。 それは主に空間攻撃などの全包囲攻撃に対する魔法なのだが、”普通の訓練生”程度が使用できる魔法では決して無い。 空間攻撃という大規模攻撃魔法に対抗するための魔法であるのだから、通常の対人用魔法などの攻撃は簡単に防げるだろう。 対人魔法で破れないことは無いが、それ相応の攻撃力は必ず必要だ。 そんな法外なものを破るのに必要な魔法を習得している訓練生など普通はいない、つまりは普通に考えればクライドがそれを突破することなどできはしない。 さらに、そのまま防御を固めて一方的に無色魔法で殲滅する。 それで詰みだ。 少なくとも、エーリッヒはそう考えていた。 だが、だからこそ彼は次の瞬間に呆気にとられた。

「――なんだ、それだけか?」

「な、んだって――」

 理解できなかった。 通常の訓練生レベルを超える防御を前に、クライドは絶望するどころか獰猛な笑みを浮かべて笑っていたのだ。 ブレイドの魔力刃がいつの間にか消えていた。 そして、あろうことかスフィアプロテクションのバリアを前に距離を詰めるようにしながら走ってくる。

「アーカイバ!!」

 両手に待機状態だったグローブ型デバイスを装着するクライド。 その瞬間、感じる異様な魔力の胎動。 爆発的に増えたように見える魔力に、エーリッヒが目を見開く。

(馬鹿な、ありえない。 カートリッジシステムでさえここまでのものは無理なんじゃないか!?)

 クライドがエーリッヒの驚愕を無視しながら忍び寄り、無色のバリアに触れるか触れないギリギリの距離でブレイドを振るう。 瞬間、”普通”の訓練生レベルの魔法では決して破れないはずの魔法が切り裂かれる。 エーリッヒの思考は完全にそこで止まった。

「一体、君は――」

 辛うじて呟いた声を遮るようにして、黒い閃光<クライド>がエーリッヒに踊りかかる。振るわれた二度目のブレイド。 目に見えない刃がエーリッヒのバリアジャケットも切り裂き、無効化させる。 そも、それは当然だ。 あのスフィアプロテクションでさえ切り裂く攻撃を前にして、バリアジャケットが耐え切れるわけがない。

(そうか、これが妖精に止めを刺した彼の奇跡――)

「じゃあな、虹男。 起きたら後で約束を守ってくれよな」

 三度振るわれるブレイド。 青の刃を携えたそれが、エーリッヒの無防備な身体に斬撃を見舞う。それで、終りだった。 虹男の意識さえ断ち切るブレイドの刃。 その鋭い一撃を受けてエーリッヒの意識はそこで途切れた。

「ふう、しっかしやばかったな。 防御系じゃなくて攻撃系を撃たれてたらやられてたぞ」

 地面に倒れたエーリッヒを見下ろしながら、クライドは呟く。 格上だと初めに宣言していた言葉に嘘は無い。 少なくとも、単純な魔導師としての腕ではクライドを越えている。 だが、彼はクライドの力を見たがっていたからこそ、選択を間違えたのだ。 しかしそれはクライドから見た結論だ。 実際に試合に勝ったのはクライドだが、勝負に勝ったのはエーリッヒだった。

「……勝つには勝ったが、実際は負けだな」

 切り札を切るしか、勝つ手段がなかった。 少なくとも、クライドはそう判断している。 そしてそれをエーリッヒが望んでいた以上は、目的を達成したエーリッヒの勝ちである。 デバイスを待機状態に戻すと、クライドは肩を竦める。 目標を達成して満足した虹男の顔には、少しばかり腹が立った。











 その後、十数分して目を覚ましたエーリッヒと会話しながらクライドはいつもの場所へと戻っていた。 エーリッヒは約束どおりにディーゼルという魔導師から感じたことをクライドに伝える。 その一つ一つが対峙して初めて分かる生の声だけに、クライドは一々感心しながら頷いた。

「彼の攻撃だが、別段攻撃力という観点を無視すれば、対処できないということは無いと思うよ。 対処が威力故に難しいと思うけれど、感触的にはそれほど近接戦闘技術が並外れて高いという印象は受けなかった」

「なるほど、つまり同じレベルの殴り合いをしたなら俺たちでも勝てないことはない?」

「こればっかりは身体で覚えるしかないからね。 向こうのメインは魔法制圧であってやっぱり近接戦闘だけに突出しているわけではないという感じだね。 良く言えば万能。 悪く言えば器用貧乏。 オールラウンダーにありがちなタイプって感じだった。 だから、少なくとも管理局の杖術の教本をオーソドックスに練り上げたぐらいで達人級というわけではなさそうだ。 まあ、実際に対処するとしたらその魔力量と魔力強化された身体能力によって私たちには破格の脅威にはなるけどね」

「……まあ、それは向こうが高ランク魔導師だからしょうがないさ」

「それと、割と切り替えが早い。 ”未知”の攻撃を前にした場合にも少なくとも合理的に戦術を変える判断を下せる頭を持っていた」

「ふーん。 やっぱり執務官の資格は伊達じゃないと?」

「うん、そういうことそうだね」

「オーケー、大体分かった。 参考になったよ」

「そうかい? ならもう一つ忠告だ。 これはまあ年上からのアドバイスというよりは一個の人間としての感性の問題なんだけど……君はあの妖精の少女に恋をしているかい?」

「……ちょ、なんでそういう話になる!!」

 何の照れもなく真面目に話すエーリッヒに、クライドが若干焦ったように言う。 だが、そんなクライドの照れなど無視して、彼は続けた。

「好意があるというのなら、別段問題ではないよ。 ただ、そういうものが無いというのであれば、勝てる勝てないを考える前に君は戦うべきじゃあないと私は思う。 これはそもそも”君たち”の力を競わせるためだけのものなんかじゃあ決してなくて、リンディ・ハラオウンという一人の少女の未来に関係する事柄なんだ。 そこを”絶対”に間違えてはいけない」 

「……っ!?」

「ハラオウンの名に対する野心だけなら最悪だ。 そんな醜悪な感情だけで戦うというのなら、君は絶対にクライド・ディーゼル執務官に”勝ってはいけない”。 彼女のためには絶対にならないし、むしろ害悪でしかないからね」

 今までクライドが敢えて無視してきたことにズバッと切り込みながら彼は言う。 そういうもので得た男女は、決して幸せにはなれない。 その実例を一つ知っているからこそのエーリッヒの言葉だった。 クライドは照れという感情を通り越していきなり冷水を頭から被ったような気分になる。 鋭い虹男の言葉に、何か打ちのめされるようなものを感じたのだ。

 別段、クライドはリンディ・ハラオウンが嫌いというわけではない。 むしろ好きなほうである。 可愛らしいところや、真面目なところ、純粋なところなど良いところを上げればキリが無い。 だが、それらは決して”クライド・エイヤル”が焦がれて焦がれて病まないような強烈な感情をまだ引き出してはいなかった。 好意はある。 声を大にして言えるような、そこまで大きなものではないけれど、それがあることだけは確かだった。 だが、”リンディ・ハラオウン”でなくてはいけない理由はまだ無いのだった。

 無論、昨日決意しかけていた心に嘘は無い。 このどっちともつかない感情にきっちりと”答え”を見出すためにも今よりも一歩踏み込んだ付き合い方をしてみようかと前向きに考えていたということもある。 だが、これは違う。 互いを知るという段階をスッ飛ばして先に進んでしまう。 その事実を忘れてはならない。

「少し、アレだったかな? お節介だとは思うけれど、これだけは言っておきたかったんだ。 すまない、気を悪くしたなら謝るよ。 だけどね、当日までに考えてことに望んで欲しいと思う」

 静かにそう締めくくるとエーリッヒは口を閉じた。 黙って考え込むクライドの葛藤の答えを自分が聞く必要などないからだ。 ただ、それでも思う。 彼が父のような野望の人でなくていて欲しいと。

「……」

 しばしの沈黙が二人を包む。 と、進行方向から爆音が鳴った。 何かが破裂したようなその音には、クライドとエーリッヒが思わず顔を見合わせた。



「模擬戦……か?」

「多分、レインとザース・リャクトンが戦っているんじゃないかな。 アレでなかなかレインは漢娘前<おとこまえ>な性格をしているからね。 真正面から愛を勝ち取りにいったんだろう」

「こ、告白するのに殴り合いをするのか!?」

「なに、普通の一般人ならいざ知らず二人は魔導師だ。 それも、どちらも”格闘戦”がメインだからね。 はっきりと分かりやすく白黒をつけるためにそういう流れに持ち込んだんだろう。 だが……これは不味いな。 勝負に持ち込んだ時点でザース君の意思はこれで通せないかもしれない」

「はぁ? あいつ結構強いぜ?」

「だが、戦った私の見立てでは彼ではまだうちのレインには届かない。 ザース君は三年でも中クラス以上の力を持っていると思うが、それでも積み上げてきたものの差は如何ともし難いだろう。 たった一年の差だが、それでも明確な差だ」

「……あいつが格闘戦で負けるなんてのはあんまり想像できないんだけどな」

「気になるなら急いで戻るかい? 今なら決定的瞬間に立ち会えるかもしれないよ。 無論、君の参考になるかは分からないが愛を勝ち取るにも色々と方法があるんだなと知ってくれれば良い」

「……愛ねぇ。 まあ、レイン先輩の勇姿には興味があるかな」

 明言を避けると、クライドは走り出す。 それに苦笑しながらエーリッヒも続いた。 数分後には、森の奥から抜け出した二人はなんとか最後の瞬間だけは見て取れた。 交差するウィングロードの茶色の軌跡の上を走るザースと、宙を舞うレイン。 エーリッヒと同じく”マジックパレット”を行使したスタイルを構築しているレインが空中で対峙している。 と、同時に二人して動きだした。

 スターダストフォールによって加速するザース、それを真正面から迎え撃つのはレイン・ビフレストだ。 チャイナドレスのようなスリットの深い青のバリアジャケットをはためかせ、あのザースの突撃にさえ一歩も引かないその姿に、クライドは唖然とした。

「……まあ、極論でいえばザース君とうちのレインでは相性が悪かったということだね」

 既に結末を予期しているのか、エーリッヒは涼しい顔でそういう。 と、二人がぶつかり合った瞬間、盛大な爆裂音が二人の中間で炸裂した。 爆弾が爆発したようなその音と衝撃が、周辺に衝撃波を生み出して空気を震撼させる。 それで、終りだった。

「おいおい……ザースの負けかよ」

 ザースの右腕を掻い潜るようにして、そのレインの細腕がザースの胸板に触れられている。 それだけならなんということはないが、あのザースのローラーブーツの加速力と、スターダストフォールの突撃力そのものを完全に相殺するほどの威力がその腕には込められていたのだ。 どういう原理なのかはわからなかったが、クライドはそれだけで勝負がついたことを理解した。

「レインは元々爆裂魔法と格闘術が得意だったんだけどね、三年に上がったときにこの二つを融合できないかって考えて色々と研究をしていたんだ。 『爆裂拳』とでも呼べば良いのかな? まだ名前は決まってないらしいけど、爆発の衝撃に完全に指向性を持たせて、相手に直接全部叩き込むんだ。 ”マジックパレット”のせいで見えないけど、彼女の腕の前方にはブラストバレット数十発分の威力を持つ魔法が展開されてたんだ。 爆裂魔法の破壊力と打撃力。 この二つにさらに彼自身の速度が合わされば、ちょっと想像するだけでも怖い威力が簡単に出せるだろうね。 しかも、カウンターが得意だからねぇレインは。 ザース君、今頃意識が三途の川まで届いてるんじゃないかな」

 ぐったりと前のめりに倒れこむザース。 それを自分の豊満な胸で受け止めるようにしながら、抱きかかえるレイン。 それを見て、クライドはとりあえず一発ザースを殴ってやりたい衝動に駆られる。

「……羨ましい奴」

「ははは、青春だねぇ」

 クツクツと笑う虹男の楽しげな笑みに毒気を抜かれながら、クライドは周囲を見る。 どうやらザフィーラはリンディに抱かれた体勢で、番をしてくれているらしい。 エーリッヒの言葉が頭を過ぎさり、さらには昨日のこともあってか若干足を運ぶのがアレだったが、そんな自分の青さを自嘲しながら”いつも”のように対応することにした。

「よう、そっちは色々と面白いものが見れたみたいだな?」

「あら、クライド? なんでレインお姉様のお兄様と一緒なわけ?」

「に、虹男さん!?」

「はは、久しぶりだね。 今日ばかりはすまないが君の近くにいさせてもらうよ。 ちょっとばかり色々とあってね」

 軽くウィンクを飛ばすエーリッヒ。 その軽さにリンディがおずおずとフレスタの後ろに隠れるように逃げた。 どうやら苦手意識を持っているらしい。 まあ、初めてあったときがあのわけ分からない男だったのだから、その反応も止む無しである。 本人は別に慣れているのか、その姿に苦笑していた。

「ああ、気にするなリンディ。 虹男の仮面を被ってたらアレだけど、今のこの人は大丈夫だ」

「は、はぁ……」

「と、それよりフレスタ知り合いなのか?」

「知り合いも何も、レインお姉様は三年女子のリーダー格よ? しかも、この学校の女子のトップに立つ人なの。 二年女子を纏めてる私からすればお姉様もお姉様だわ。 無論、姉妹の契りを交わしているのは言うまでもないわ」

 孤高の男クライドにはよく分からない世界の話だった。

「……偶に思うんだが、女子のまとめ役ってのは勇ましいとかの資格がいるのか?」

「さぁ? まあ、優雅さと気品と美しさは必要よね。 レインお姉様は言うに及ばず、この私みたいにね」

 自信満々に言い切る暴君に頭痛を感じながら、クライドは思う。 ああ、つまりは我を通すだけの腕っ節が全ての世界なのだなぁと。

「あら、お兄様はもう用は済みましたの?」

「……よう、クライド」

 ザースに肩を貸すようにしながら歩いてくるレインが、戻ってきていた二人に言う。 その顔にあるのは満面の笑みである。 対照的にザースは居心地悪そうにしていたが、これは男のプライドの問題だろう。 

「おめでとうザース。 友人として君に彼女ができたことを”心”の底から祝福しよう」

「……まあ、負けは負けだからな。 潔く付き合ってみるよ」

「ふふ、今は形だけでも何れは貴方の全部を貰いますわザース・リャクトン。 指し当たっては――」

「あ!?」

「え!?」

「む……」

「は……」

「おやおや、これは熱いね」

 観客など関係ないとばかりに、レインの唇がザースのそれを塞いでいた。 ザースの目が面白いぐらいに狼狽している。 それほどの不意打ちだったのだ。 リンディが目を隠すようにして手で視界を塞ぎ、しかし興味があるのか指の隙間からしっかりと鑑賞。 フレスタもそれに続き、ザフィーラとクライドが眼を丸くして、エーリッヒだけはやはり楽しげに笑っていた。

 数秒……いや、十数秒その場が硬直しただろうか。 誰もが何もいえない中、艶かしい男女のやり取りが目の前で繰り広げられた。 やがて、少しばかり高潮した顔のまま離れたレインが、目を白黒させるザースの腕をとりながら言う。

「――今はこれで我慢しておいてあげますわ。 でも、私を本気にさせた責任を取ってもらいますから、覚悟しておいてくださいましね?」

 その綺麗で野心的な笑みに、ザースは不覚にも心を奪われた。 きっかけはどうあれ、少なくともこの二人の出会いはそうそう悪いものではなかったのかもしれない。 アレだけクラスから人気があり、そういうのを全部断ってきたザースにしても、こういうタイプの女性からのアタックは初めてだった。 そうして、だからこそ逆に興味を持ってしまったのかもしれない。

「ああ……まあ、お手柔らかに」

 頬をかきながらそっぽを向くザース。 友人の珍しすぎるそのシャイな反応に、周囲はとりあえず生暖かい視線を送った。

「あう――」 

 若干一名顔を真っ赤にさせながらあうあうとしているが、まあ年齢を考えれば当然か。 クライドは苦笑しながら、その少女の方に近づく。 悪戯心が刺激されたというか、その可愛らしい反応を見て苛めてみたくなったのであった。

「リンディ――」

「は、はい? な、なんですか?」

 そっと、クライドがかがみこむようにして顔を近づける。

「あ、え? く、クライドさん?」

 瞬間、昨日の言葉がリンディの中でリフレインする。 期待してたとか、決意がどうのこうのとかそういう単語が頭の中を埋め尽くしていく。 これはその現れなのか。 思わず目を瞑ってしまったリンディ。 自分でもよく分からなかったが、全身が温泉にでもつかったかのように熱かった。 と、しかし、いつまでたっても予想した感触が無い。 それどころかその額に予想外の衝撃が走った。

「あ、あう?」

「ちょっと無防備すぎるぞ? もうちょっと気をつけたほうが良いかもな。 でないと悪い奴に唇を奪われちまうかもしれないな? くく、あっはっはっはっは」

 ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべるとクライドはデコピンをした右腕を引っ込め、そのまま大笑いして距離を取る。 からかわれたことを理解したリンディが、再び妖精咆哮を上げるのは全てを理解した三秒後であった。

「――スティンガーブレイド・ジェノサイドシフト!!」

「ちょ、お前それ反則!!」

「問答無用です!! クライドさんの――」

 一瞬にしてクライドの全周囲に展開されていく膨大な数の魔力剣。 翡翠の煌きが、女の敵を断つ剣となって再びミッドチルダに顕現した。

「――馬鹿ぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 全力で放たれたその正義の刃を前に、クライドに抗う術はない。 さらに、援護射撃とばかりに放たれた”ペネトレーションバスター”が逃げ惑うクライドの足を打ち抜いた。 それで、おしまいだった。 いつもより過剰な女性陣の洗礼を浴びながら、クライドの意識が断絶していく。 全身を翡翠の剣によってハリネズミのようにされた愚者と、その愚者を容赦なく断罪していく少女。 その馬鹿馬鹿しくも楽しいやりとりを見て、エーリッヒは自分の心配が杞憂だったかなと思った。

「ふふ、やはり余計なお節介だったのかな」

 エーリッヒは彼らがどういう関係なのかは全く知らない。 だが、それでもここまで全力で触れ合える彼らを見ていると微笑ましいものを感じずにはいられなかった。

「頑張りたまえよクライド君。 君の敵は手ごわいゼ」 

 喧騒に踵を返すようにしながら、エーリッヒが道化の仮面を被る。 色々なヒントを得ることが出来たし、今日の邂逅は有意義なもので終わった。 願わくば、一番彼女のためになるような選択を勝者が選ぶことを祈りながら、虹男は模擬戦場を去っていった。


――その胸の内には、昔忘れかけていたものが確かに蘇っていた。


コメント
あれ、ちょい役の虹男が結構かっこよくなってる……。
それはそれとして、14.5話と15話の流れでエイヤル×リンディを盛り上げておいてエイヤルが死んだりフラグをへし折ったら一部暴動が起きますぞ?
【2008/07/16 11:10】 | 夕樹 #CaTeT4/2 | [edit]
虹男実は強かったの巻ですね。
ゲリラ戦とかじゃ圧倒的じゃないか、マジックパレット。エイヤル君が実に欲しがりそうだなぁ。とゆーかスールネタに噴いたww

ここで真面目にロリンディとのことを意識せざるを得ないエイヤル。数々のフラグを立ててるから死亡とかになりそうで怖いなぁ…ハガレン的な序文に不安感がひしひしと募る
【2008/07/16 12:14】 | サザナミ #M/EAJn/Y | [edit]
あ、あれ・・・?
ちょっと虹男かっこいいじゃないか・・・。

前半のクライド君の独白みたいなのもあって、虹男の葛藤と共に「未来をどう生きるのか、どうしたいのか」と考えさせられます。

虹男は父親という存在を乗り越える為。
クライド君は襲い来る脅威から生き残る為。

攻めと守りのような意識の違いはあっても、似通った部分があったんだな・・・。

だからクライド君はシールドが得意なのか・・・と思った今日この頃。


最後、立ち去るときには『虹男』に戻っていたことに、大きな衝撃を受けた。
今まで軽んじてて悪かったよ、エーリッヒ・・・。
【2008/07/16 14:35】 | リアン #- | [edit]
道化の成長フラグじゃなくて、そもそも仮面を被ってたとか、そんなの予想できるか! 実に良い!!
しかし、良く考えたらディーゼルとの対戦は“そういうこと”ですからね。
まぁ、本人たちの意思なしに決めることはできないんでしょうが、無視できる事柄では決してないですから。
まぁ、大丈夫でしょう。どんな奇策が用意されているのか楽しみにしています。

それと、自分は滅多に誤字指摘なんかはしないんですが、1つ気になったものが

>有料物件
いやいやw 笑うしかないじゃないですかww 一気に陰鬱な政略恋愛とか金銭恋愛とかそんなんになるじゃないですかwww
【2008/07/16 15:10】 | マイマイ #aReeLJcY | [edit]
虹男のレアスキルある意味最強ですね。
これでSランクだったらよほどの敵でなければ
負けないと思います。油断すれば駄目でしょうけど。
ここにきてクライド君はリンディに対してフラグを
立てていますけどへし折れるのかそのままゴールと
いくのか楽しみです。でも虹男との話でディーゼル君に
もし勝ったら花婿を辞退しなければいいですけど
これからも楽しみに待っています。
【2008/07/16 16:58】 | NAI #IgNuUUdA | [edit]
>>何やらベニヤ板と木材にグラーフアイゼンを使って釘を打ち込んでいる少年とそれを手伝う守護獣が一人いた。

おい待てwww、ここまで誰もこれにツッコミ入れないのか!?
アイゼンさんがとんかちになっちまってるぜ!!
何はともあれ虹男GJ、完全にリンディにフラグ立ってるのですが
他にも色々フラグ立てすぎてエイヤル君死にそうな予感が……
【2008/07/16 17:57】 | むっく #tSD0xzK. | [edit]
虹男がかっこいいなんて・・・。
これで本当に妖精争奪戦になるわけですね。

エイヤルはどんな答えを出すのか。ってか、勝てるのか!?

ってな具合に次回も楽しみにしてます。
【2008/07/16 18:24】 | NIKKA #TY.N/4k. | [edit]
一人を除いて皆虹男かまぁ作者ですら呼称が虹男だしどれだけかっこよくなっても最初の印象ってのは尾を引くもんですな。
 さて我らのエイヤルは決戦前に意図的に無視してた事を言及されてたじたじになっていたが、最後のコメディを見る限り虹男の危惧する最悪の事態にはなりそうに無いわな。

 後は、どれだけ愉快で卑怯な手でディーゼルを罠にはめるのかが楽しみですね、え?ザース?知りませんがなそんなうらや…
【2008/07/16 19:37】 | Tomo #Lis.ZDmI | [edit]
かくして虹男は「虹漢」になりましたとさ…。それにしてもザースとお嬢様が本当に付き合うことになるとは。
この人ならマイケル君たちしっと団も余裕で返り討ちにしてしまうんでしょうなぁ。
そしてこれからはリンディがエイヤル君を押し切ってゴールインする展開になると予測します。
【2008/07/16 21:18】 | 打刀 #- | [edit]
虹男が最初蛇男に見えて「ス、スネークですか?」と思った俺のバカorz

常人なら軽く5回は死ねそうなエイヤルに祝福アレ
勝ち組みなザースはしっと団の洗礼を浴びるべき
【2008/07/16 21:35】 | キクリG #ChF5jp6E | [edit]
なんか主人公が才能がないとか天才じゃないとか、くどく主張されてますけど私には十分才能ある天才に見えます。
例えば銀河英雄伝説のヤンウェンリーなんかは、肉体的にはからっきしでしたけど着眼点と類稀な発想による戦略で天才と称されていました。
なんていうかバリアを切り裂く技とか、人にはないそういうものが使える時点でもうそれは才能であり、さらにはレアスキルも所有……どこか凡才なのかと。
魔法量がないとか、名目上のランクが低いとか主人公を引き立てるだけの当て馬っていうか、完全な才能の世界といわれるSランクガンガン倒しちゃったり。
モスキート級がヘビー級に勝っちゃたようなもんだと思うんですよ。
それって物凄い天才じゃないですか?
そもそもこの主人公元の世界ではアニメ見てたそっち系の男なんですよね?
それがやたら努力をしてたり、戦いなれていたりとそこら辺がどうにも矛盾に思えてしまいます。
【2008/07/17 07:07】 | ぷりちー #nPp1QHwE | [edit]
あの世界の天才の定義は、魔力量の有無に尽きるからエイヤルにしろ虹男にしろ努力でそのアドバンテージを覆そうと血みどろになりながら精進してると思うんだが。 後戦いなれていて変と言うがエイヤルがこっちに来てからもう結構な月日がたつしそもそも猫姉妹のしごきもうけてるからそれで戦いからっきしだとそれはそれでだめだめすぎるだろう。
【2008/07/17 08:28】 | Tomo #Lis.ZDmI | [edit]
まあリリカルの世界は魔力ランクで大体判断されてしまうから。
魔力ランクBに届かない人間は程度はあれどどう見たって凡人なわけで。
力押しでなく小手先の技と知恵で切り抜けているエイヤルはやっぱりこの世界では「天才」足り得ないってことじゃね?
頭がよかろうが体術が一流だろうが金持ちだろうが魔力がなければ凡才なのさ。きっとな。
【2008/07/17 11:22】 | セン #PBEIbfow | [edit]
それよりも、ディーゼルvsエーリッヒの後に行われたカードのほうが気になる。
【2008/07/17 13:14】 | ぬこ。 #KD5XUSzs | [edit]
虹男に惚れたww
なんという虹男の凶悪レアスキル、初対面の相手に不意打ちで喰らわせたらほぼ完勝できる気がする。
クライドの作戦が想像つかない。いったいどんなのものなのか……、まぁ、勝てば官軍って感じに決めてくれると思いますがw


最近ミズノハ先生出ないから寂しいぜ……
【2008/07/17 21:58】 | 牛猫 #mQop/nM. | [edit]
虹男、なんだかいい男ですね。
しかしここのザフィーラは空気になっていなくて、もしかしたら守護騎士のなかでも一番活躍してるのではないでしょうか。

まだまだクライド君は弱いですが、いつか夜天の主として恥ずかしくない、立派な「主人<マスター>」になってくれるのを楽しみにしています。

そういえば、クライド、夜天の主となった影響で、不老不死というか、死ぬことができない無限コンテニュー状態(転生無限者?)となってるようですが、この夜天の書はアニメのように破壊は出来ないのでしょうか?、それとも原作での初代リインフォースは実は消滅していなくて、影からこっそり観察していたカグヤあたりが、転生しないように封印処置でも施したのか?。
【2008/07/17 23:10】 | rin #- | [edit]
夕樹さん サザナミさん リアンさん マイマイさん NAIさん センさん
むっくさん NIKKAさん Tomoさん 打刀さん キクリGさん ぷりちーさん
ぬこ。さん 牛猫さん rinさん

どうも感想ありがとうございます^^

今回、エーリッヒ<虹男>を書く上で色々と苦戦したんですが、なんとか
綺麗にまとめられてホッとしてます。 特に性格やレアスキルの辺りとか
特にそうですね。書いててあまりの凶悪プラス変貌振りにやりすぎかと思
ったものです。 ずっと道化にしておく選択肢もあったんですが、やはり
何か捻ったものが欲しいと思ってたんでこんな感じになりましたw
書き終わると逆にすっきりしてしまった実に不思議な奴です。

【2008/07/18 02:09】 | トラス・シュタイン #da/Koam6 | [edit]
初めまして。
ロリンディで検索してここにたどり着いた者です。
続きが気になってしまい、、ついつい表意奮闘記全話ぶっ通しで読んじまいました。

まず最初に。おいしすぎだろうザース、割れろ。
それはそれとして、虹男君に指摘されてようやく忘れてたことを思い出したエイヤル君ですが。

いいんじゃない、ディーゼル君に勝ちを譲っても。
ロリンディは可愛いとは思うが、エイヤル君のこれからに必要でしょうかな?
正直戦力としてと、コネと財力以外にロリンディが力になれるものが浮かばない。
それよりは、お互い人生賭けてるものがあって、互いに刺激しあえる関係の方がいいのでは。
具体的に言うとミーアとかミーアとかミーアとか。金もコネもそこそこ在りますし。
次点でリーゼ姉妹やフレスタでも可。

まあエイヤル君にも意地があるでしょうから、ディーゼル君と、リーゼ姉妹やグレアム叔父さん
あたりには勝ちを譲ったことが解るような「勝負に負けて相撲に勝った」みたいな形で。
ただ、ハラオウン提督には解らないように、と言うのが難題ですが。


さて、カプ厨ならではのアホな話しはこの辺にして。
闇の書ですが、都築さんの兵器=悪ともとれる設定が嫌いでした。
はやて周りの扱いも、なんかヴォルケンズに人格を認めてるのかいないのか、でしたし。
その点、道具に善悪を問うのは無意味、なここの設定は好きです。

自分は闇の書がゲッターや魔獣の親戚でヒドゥンをアザトースの欠片、という方向で
設定を練ってますが、管理局の露骨な矛盾をどうオチに持って行くかが問題。
ここの陰謀論は、わかりやすくて実に好きです。

さて、長話はここまでで。次回の更新も楽しみにしております。
【2008/07/23 06:32】 | 蓮葉 零士 #SFo5/nok | [edit]
エーリッヒさんカッコヨス!
もう虹男なんて呼ばせないぜとばかりに大暴れですね。
憑依奮闘記はそれぞれのキャラが、ばっちり自己主張して、物語を盛り上げてくれるんで、読んでてすごく楽しいですね。次回以降も期待してます。

追記
 細かいけど「腰を下ろす(降の字ではあまり使われないようです)」は『膝を曲げて腰の位置を低くする』という意味でも使われているようですが、一般的には『(立っていた人が)座る』という意味で使う方が多いような気がします。
【2008/07/24 07:16】 | Mk-2 #mQop/nM. | [edit]
蓮葉 零士さん Mk-2さん コメどうもです^^

>>ロリンディで検索してここにたどり着いた
マジっすかw
グーグルかな……ロリンディでたどり着けるんだここ。
 
>>エーリッヒさんカッコヨス!
人気投票で恐ろしいことになりそうで、ちょっと怖いですね。
彼の株が急上昇らしいしw
【2008/07/26 09:33】 | トラス・シュタイン #da/Koam6 | [edit]
初めまして、akiraです。
ネギまを調べていたら何故かココにたどり着いてました(ぇ。
まあ、リリカルもお気に入りに入ってるから暇な時にでも読んでみようと思って登録ww
後日拝見…………(汗汗ww
面白かった、内容ココまで濃くて尚且つこの分量。ックこれ程の掘り出し物数ヶ月ぶりですww
最強モノとかかなり苦手(駄目)ですねww
やっぱり小説はッグーーーッと引き伸ばして行くそして出すwwックーー。
エイヤル君のような頑張りやさん最高ですww定期見回りサイトとしてこれから見に来ます。
【2008/07/27 12:27】 | akira #wriFTfcY | [edit]
akiraさん どうもコメントありです^^

ネギまからっすかw 一体何がどうしてここになったのかw
期待に添えられるかどうか分かりませんが、暇つぶし程度に活用
してやってくださいな。
【2008/07/30 20:08】 | トラス・シュタイン #da/Koam6 | [edit]












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