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憑依奮闘記2 第四話

 2008-09-25
 人間、追い詰められていれば重要なことでさえ忘れてしまうものである。 例えば、夜中に寝ていたらいきなり地震が起きたとしよう。 財布や通帳を持ち出さなければいけないと普段なら冷静に考えつくだろうに、何を血迷ったか枕をさも重要物資のように持って逃げたりと人間はたまに大事なことを忘れて行動するときがある。 後から冷静に考えれば何をやっているんだと自己嫌悪することもあるだろうが、このときの俺もそうだった。
 なんというか、俺の場合はトールを忘れていた。 いやはや、そういえばそんなのもいたなと、カグヤに言われたときに思ったものだ。 元々向こうから滅多に話しかけてくるわけもないし、こっちも特に用が無いからここ数年まったく話しかけていなかった。 もしかしたら、安全な本局に篭っていたから平和ボケしていたのだろうか。

――ふむ、これがいわゆる放置プレイという奴なのだな。

 呆れながらこちらからの念話に応えたトールの第一声が、今でも脳裏を離れない。 まあ、なんにしても彼(?)のおかげで状況を少しは理解することが出来たのは幸運だった。

 トールが外の状況を知る術は夜天の書と俺の繋がりを利用したもの以外には今現在できないらしい。 できることといえば、今のところは夜天の書のシステム状況を見たりするぐらいだそうだ。 例えばザフィーラが戦った相手のことを理解できるというわけではないらしい。 だが、システム情報の中には夜天の書が計測している本体の次元座標があるという。 つまり、それを確認できるということは敵の行方を追えるということであり、それが直接分かるようになっただけでも格段の進歩といえる。

 それと今現在の守護騎士システムの様子も一応簡単には分かるらしい。 それで知ったことなのだが、どうも盗んだ連中は夜天の書の設定のいくつかを改変することができるようだ。 現在守護騎士システムは停止中であり、彼女たちは皆稼動していないという。

 そして、トールのこととは別にカグヤがもう一つ教えてくれたことがある。 それは、連中があくまで”正確な夜天の書”の情報を持っているのならば書の完成は少し遅れるだろうということだ。 どうも、俺が考え出したあのページ埋めの方法は元々想定されていないことらしい。 けれど、酷く馬鹿らしいがアレでも不完全には完成はするというお墨付きを頂いた。 フルスペックは勿論発揮できないそうだがな。

 なんでも、ページを666ページ埋めることで完成するようにプログラムが組まれているらしい。 元々の運用方法は勿論リンカーコアの蒐集であり、それを一ページ目からオートで蒐集するのが本来のあり方なのだとか。 故に、連中が夜天の書を知るものならばオートでの蒐集をする。 そして、それをするには魔導師が必要である以上は確実に一日や二日では完成させることはできない。

 大体AAAオーバーの魔導師で二十ページぐらいの蒐集効率だったはずだ。 正史で確か若き日に冥王様が蒐集されたときの台詞でそんなのがあった。 だとしたら、最低でも彼女クラスを。 約三十三人集めないといけない。 管理局の所属魔導師でさえ5%しかいないというそれクラスの魔導師をさらに在野から集めるとすれば相当な時間がかかると思われる。 一日一人集めたとしても、一月。 初めから三十人用意しているというのなら別だろうが、今現在反応が無い以上はそうそう簡単にいくわけでもないようだ。 無論、数で勝負に来る方法もあるだろうがそれで時間をかけすぎれば管理局に捕捉される危険性が出てくる。 やるとすれば、ある程度魔導師が集まっている場所をピックアップし最速の蒐集でもって完成を目指すか、あるいは誘拐して一気にとかか。 よくも悪くも、人を襲うというのはそういうリスクを孕むからこそ、いつもいつも管理局は闇の書の足取りを追えてきたわけだが水面下で動く輩にはどうしても弱い。 特に小規模かつ拠点なしで自由に動く奴らの場合は足取りを追うのが難しくなってくるだろう。

 となれば、俺がやることは決まってくる。 連中が完成させる前までに行動し、なんとしてでも取り返す。 この際、ある程度ページを埋められるのには目を瞑ろう。 問題は取り返すことにある。 そのために必要そうな武器の作成と、道具の調達。 後は最悪に対する保険。 それこそが俺がしておかなければならないことである。 まあ、さしあたっては……フレスタのデバイスの完成か。 アレで是非に欲しいデータがあるのだ。

「君、どうしても聞きたいんだけど何故僕がバインドで貼り付けにされているんだろうか? 事と次第によっては提督権限持ち出すよ? てか、階級差考えてこの暴挙に走れ!!」

「いや、だって御宅は今日は的<実験体>だからな」 

「あははは、ごめんねディーゼル君。 どうしても協力してくれそうな高ランク魔導師が捕まらなかったのよ。 今日は休日だって言ってたし、問題はないわよね?」

 てへっと小首を傾げながら、フレスタはディーゼルに拳銃の狙いを定めて狙い撃ちするような仕草を取った。 ハートを撃ち抜くつもりなのかどうか分からないが、二十二になった女性がする仕草としては物凄く無理があるとと思うのだが、どうやら彼の提督には会心の一撃だったようだ。 掌を返したように暴君に対して服従の姿勢をとる。

「そうか、なら仕方ないねフレスタさん」

「ありえん反応をありがとうディーゼル」

「元凶の君は黙れ」

 ニコリとフレスタに爽やかな笑みを浮かべるディーゼルだったが、俺には鋭い一瞥をくれやがった。 うむ、多分に温度差があるようだな。 だが、バインドに束縛されている今凄まれても対して怖くは無い。 が、このままでは癪なのでとりあえず自己主張はするべきだろう。 俺は反撃を試みる。

「俺がこん中だと階級が一番下とはいえ、あんまりな反応だぞコラ!! もっと後方の職員も敬え!!」

「紳士は婦女子の頼みを誠実に聞くものだ。 けれど、君に対しては今までのことも考えれば譲歩する理由がどこにも無い!! 僕はしっかりと覚えているぞ。 九年前の二回戦のアレとか、五年前のそれ、さらには一年前のアレだ!! 君に関わったら本当に碌なことが無い!!」

「俺が悪いみたいな言い方をするな。 全部元凶は爺さんだろう? それに、その後何度か飯を奢ってやっただろう?」

「僕は君に十二回は奢らされた!!」

「いいじゃねーか。 提督になって金持ちだろう? リンディと一緒に税金対策に貢献してやってるんだからいいじゃねーか。 ついでに言えば爺さんにいつもいつも立ち向う仲間じゃないか。 仲間を邪険にしたらいかんよ君」

「彼女に奢るのは僕の好意の問題だが、君には何一つ好意を抱いたことは断じて無い!! ついでに言えば、君がいつもいつもヴォルク提督を怒らせるから僕の方に火が燃え移ってくるんじゃないか。 いい加減自重しろ!!」

「あー、あー、聞こえねー。 最近耳が遠くなってな。 と、いうわけでフレスタ実験開始だ。 ガンガン撃ってデータ取りをよろしく」 

「ごめんねディーゼル君」

「いや、まあそれぐらいは別に大丈夫だよ」

「……エエ格好しいめ」

「エイヤル君……君煩い」

 ふむ、まあどうでも良いか。 これから提督殿は地獄を見るハメになるのだからな。 奴はどうして自分<高ランク魔導師>が選ばれたのかを真に理解していない。 通常の射撃データなど今更俺が欲しがるわけが無い。 そんなものは既に十二分に俺は所持しているのだ。 俺が真に欲しいのは普通のデータではない。

「ふむ、まあその強がりもすぐに消えるさ。 さあ、所定の位置についてシールドを張ってくれディーゼル。 フレスタまずは小手調べだ、小型の圧縮魔力カートリッジが封入されたマガジンAを使用して試射してくれ。 無論、全力全開でな」

「――は? 魔力カートリッジ?」

「ええと……こっちね?」

 通常のデバイスの射撃テストだと思っていたらしいディーゼルの顔が引きつる。 ベルカ式カートリッジシステムは今現在は広く広がっているタイプではない。 というより、ベルカの連中には広がっているもののまだまだミッド式の連中にとってはマイナーなシステムだった。 少なくとも、使いこなせれば凄まじい力の恩恵を得られると理解しているのはそれと相対して痛い目にあった連中ぐらいだろう。 普通はベルカ式とついている時点でミッドの奴は使おうとしない。 系統が違うから関係ないと考えるからである。 それに、恩恵よりも今のところは危険性の方が広がり過ぎているせいであまり流行っていないのだ。 慣れればあんなに使えるのにな。 まあ、コストの問題もあるにはあるわけだが。

「えーと、なんか質量兵器使ってるみたいねこれ」

 カシャンとマガジンを差込み、構えてみせるフレスタ。 まあ、似てるからこそ忌避される部分もあるにはある。 といっても、それはビジュアルが負のイメージと被っているだけであって全然違うのだが。

「とりあえず、カートリッジをロードだ。 感応制御の方での任意制御にしてるから簡単にできるぞ」

「ええと、こう?」

 カシャンと、飲み込まれた弾丸が圧縮魔力を開放。 薬莢を排出する。 その直後、フレスタが眉を潜める。いきなりシビアになる魔力制御に困惑しているのだろう。

「ふーん、ちょっと今までと感触が違うのね。 気を抜くと魔力が暴れる感じ」

「よし、後は狙って撃つだけだ。 試しに軽く撃ってみろ。 今までと威力が違うって肌で感じるはずだ」

「……ディーゼル君いくわよ?」

 バインドを開放されたディーゼルが、青いシールドを構える。 嫌な予感が拭えないのだろう。 侮ることなく全開で張っている。 そこへ、フレスタの十八番<スナイピングバスター>が放たれた。 高速で吐き出される魔力弾が桃色の軌跡を描いて空気中を突き進み、青のシールドにぶち当たって消えた。

「……驚いた。 結構強くなるものなんだね。 いつもより随分と重い砲撃だったよ」

「当然だろ。 リスク背負って弱くなったらたまらんよ。 で、フレスタそれ使いこなせそうか? 一応制御用のプログラムには拘ってみてるんだが……」

「ん、なんかこれ……癖になりそう」

 やや恍惚とした笑みを浮かべながら、フレスタは言う。 なんかウットリしてるあたりはかなり怖い。 やはり、砲撃魔導師にカートリッジシステムは麻薬なのだろうか? 放出する魔力量が増えるから、元々砲撃魔法にある独特の爽快感が倍増しされるのである。 砲撃に快感を覚えるタイプならジャンキー<中毒者>になるという危険があった。 まあ、稀だとは思うのだが。

「一応注意しとくけどな、一日に十二発以上はできるだけ使うなよ。 自前でカートリッジの補充出来るんなら別だけど普通は用意すんのに金がいるからな。 まあ、それ以上使うと反動が怖いという理由もあるわけだが……」

「……反動?」

「俺自身データ取るために限界まで試したことがあるんだが、身体に思いのほか疲れが溜まる。 使い過ぎたら身体にダメージが蓄積されるから危険だ。 しかもこれ、砲撃魔導師には中毒性があるっぽい。 今後カートリッジが進化して危険性が低下するまではここぞという時の一発に使うぐらいのが良いだろうな」

「うーん、威力強化は魅力的だけどちょっと怖いのねこれ」

「まあ、使い方次第で戦闘を有利に出来るのは魅力的だ。 普通には手が届かないものにも手が届くようになるだろうよ。 よし、じゃあ切り札いくぞ。 マガジンBだ」

「こっちはそのカートリッジシステムのとは違うの?」 

「ああ、それがそのデバイスの目玉だ。 俺が使ってる奴な」

 訝しむフレスタがカートリッジを覗き込むようにしている。 だが、機構自体に詳しいわけでもないからそれがなんなのかは分からないようだ。

「最大出力で二発しか撃てんが、威力はだいたいAAA相当の直射系魔力砲撃をノーリスクで撃てる。 ただし、これを撃つときは通常の魔法は使えない。 デバイスのリソース全部そっちの制御に回すからだ。 とはいえ、二発を”連発”できるから問題はなかろう。 二丁拳銃で使えば計四発叩き込めるわけだな。 無論、チャージ時間はほとんどいらん。 これをまともに食らって落ちないのはSランクオーバーぐらいだろう」

「……ちょっと待て!!」

 ディーゼルが聞き捨てならない言葉を聞いて目を剥く。 無論、そんなのは普通の魔導師にできるわけがない。 いや、高ランク魔導師で砲撃に特化していたとしたら分からないが、普通の魔導師には凡そ不可能である。 冥王様とレイハさんなら余裕ではあると俺は固く信じているがな。

「そんな法外なことがどうしてできるんだ!! ていうか、本当にそれ真っ当なデバイスなんだろうな?! ロストロギアだったら速攻で取り上げるぞ!!」

「ふっ――」

 冗談だろうと言うディーゼル。 俺が嘘つきであると知っているから疑っているのだろうが、俺はその取り乱す様を見て一笑した。 無論、できるだけ嘲笑するようにである。

「何を言うかと思えばディーゼル提督。 テクノロジーは往々にして進化していくものなのだよ。 貴方の旧い常識の中には存在しないかもしれないが、現にここにあるのだ!! まあ、デバイスというよりはもはや艦船に搭載されている魔導砲と同質の魔導兵器と呼ぶべきだが、デバイスの機能もあるのでデバイスの範疇に入るだろう。 うむ、何の問題も無い」

「か、艦船の魔導砲だって!?」

「えーと、つまりどういうわけなの?」

「魔力はそこのマガジンから取り出し、極限まで魔導砲の原理を簡略化した機構を持たせることでそれは生まれた。 魔法科学の産物である魔導砲は対艦船用なんかで航行艦では使われているが、それを撃つのは魔導師である必要は無い。 つまり、突き詰めれば機械制御されて誰しもに使えるようにされた魔導砲をデバイスサイズにまで落とし、その機能を搭載したのがそのデバイスなのだ!!」

「だ、誰でも使えるってそれ質量兵器の定義に抵触するだろう!!」

「ふん、言いがかりはよしてもらおうか。 それのマガジンを用意できるのは今のところ俺だけなのだから実際は誰でも使えるというわけではない!! しかも従来の艦船に搭載されている魔導砲には無意味だからという理由でオミットされた非殺傷設定まで与えてON・OFFする機能を与えた!! 弾体が物質でもない完全な魔力だし自然にも優しいクリーンな力だ。 これを否定するというのなら管理局は次元航行艦に搭載している全てのアルカンシェルと対艦用の魔導砲を即刻全て封印しろ!! 非殺傷設定も無く鍵捻ったりスイッチ押したら誰でも使えるそれらは良くて、これが駄目だという理論は通じないからな!!」

「相変わらずああいえばこう言う!!」

「くくく、今の管理局にそれができるのかな? いいや、できるはずがない。 ”誰でも使える”魔導砲たるアルカンシェルのその圧倒的武力によって平和を保てている今の管理局にはそれはできんだろう!! それをすれば、有事の際に対処できる戦力が泣くなり管理局が崩壊するからな!! これを禁止するということはそれらも例外なく禁止するということだ!! こればっかりはそれはそれ、これはこれは通させんぞ!! しかも、こっちは非殺傷設定付きだ!! ある意味パーフェクトだ!!」

 ぶっちゃけ、これは俺の渾身の作品である。 もっとも、俺の知識だけで作れたわけではないので胸を張ることはできない。 特に、魔導砲の理論はほとんどちんぷんかんぷんだったのだが、ペルデュラボーの蔵書によってその問題は解決した。 著者のテインデルという人には、是非とも挨拶しておきたいところだ。

 まあ、こういうのが俺の目指すデバイスの一つの答えであると言えるだろう。 ”誰でも”使えるこれは今のところは単一の機能、つまり魔導砲を発射することしかできないが将来的にはもっと汎用性があり、高ランク魔導師に毒のあるデバイスを作るつもりである。 現段階ではハード的な問題があってやはりこれ以上は当分無理なわけだが、それでも今完成しているだけでもこういうのを後一つ俺は所持している。 少なくとも、これらがあれば一対一ならば理論上は高ランク魔導師とも限定的には戦えるのである。 問題は、それだけの魔力を用意するのに時間がかかることか。 こればっかりはどうしようもない。 何せ現状維持の産物なので、俺しか作れないのだ。 携帯できるサイズの小型大容量魔力バッテリーが開発量産できれば問題は無くなるのだがなぁ。

「まあ、撃ってみればわかるわよね?」

「うむ、さあ常日頃の高ランク魔導師への鬱憤を全てこめて引き金を引きたまえ。 おっと、モード変更を忘れるなよ? デバイスモードから魔導砲モードに切り替えないと使えない。 それと反動には気をつけろ」

「ふむふむ、これね。 オーケー。 連発でいくわよディーゼル君」

「――オーケー」

 半ばやけくそ気味にディーゼルは頷く。 と、引き金を引いたフレスタの足元に魔法陣が展開されずに魔導砲を発射した。 青いレーザービームのようなそれは、俺の魔力光の輝きを放ちながら同じ青にぶつかっていく。

「く……反動がきついわ。 反動制御術式の改良が必要ね。 両手持ちでもちょっとキツイわ」

「んー、バリアジャケットの方に細工したほうが良いかもしれんな。 だが、検討しておこう」

「よし、それ二発目!!」

 再び発射される青の閃光。 いつもは桃色の魔力光だからこうやってみると少し不思議な気分だ。 まあ、魔力が俺のだからしょうがないといえばしょうがないのだが。

 マガジンの内部には基本的にチャンバー二つを用意している。 一発撃てば切り替わるのでほぼタイムラグ無しで二発目が撃てる。 普通の魔法に存在するタメがここまで少ないと、食らわされる方はたまったものではないだろう。

「うーむ、さすが本職。 俺は当てるまで少し訓練が必要だったんだがな」

 特にある程度離れたら俺は命中させることができない。 基本的に真っ直ぐ飛ぶが単純にそういう射撃技能が俺には無いからだ。 近距離に誘い込んでの零距離射撃かよほどの近距離でなければ俺は当てられない。 コレばかりは修錬の差だろう。

「く……これを連発はキツイな」

 なんとか耐え切った総合S+が、青い顔をして冷や汗を拭う。 二丁使用すればこれが後二発追加できる。 マガジンを取り替えればさらに数を撃てるのだから威力という点では申し分ないだろう。 だが、やはり無駄遣いはできない。 普通は一発に大体三日。 二発で六日なのだ。 四発で十二日とか燃費が悪すぎる。 とはいえ、それでも法外な効果をがあるわけで本当に最後の切り札にできるだろう。

「ふむ、驚いたな。 少し間があったとはいえ二発に耐え切るか……三発目は持ちそうか?」

「ちょっときついね。 防御力を重視していない人<高ランク魔導師>ならさっきので落ちる」

「そうか……じゃあ、そろそろ本命を出すかね」

「ま、まだあるのかい!?」

「当たり前だろう、拳銃タイプなんざ前座だ前座。 フレスタの本職は狙撃だぞ? 二丁拳銃なんて飾りだ。 偉くなったからってそんなことも忘れてしまったのかディーゼル。 無論心配しなくても、砲撃の威力はもっと上がるぞ? 燃費はさらに悪くなるがな」

「……勘弁してくれ」

 今にミッドチルダの魔導師界に下克上という名の革命を起こしてやりたい。 魔力資質など関係の無い、平等な魔法社会を到来させるのだ。 まあ、管理局最高評議会の三脳だとか犯罪組織とつるむような連中が上にいる間は怖くて広められないだろうし、こういうのを異常に怖がる連中に出る杭とばかりに叩き潰されそうではあるけどな。 あの某孫馬鹿提督とか、キレて襲い掛かってくるやもしれん。 そんときゃ、孫を人質にして逃げ切るしかないが……。

「よし、それじゃあ本命のデータを取るぞ」

 そういえば、この大型の狙撃銃も二丁拳銃もまだ名前つけてなかったな。 俺のネーミングセンスは安直でセンスが無いと不評なので今度自分でつけさせるか。

 そうして、悲鳴を上げるディーゼルをよそに、俺は着々と武器のデータを取り続けた。 無論、このデータは自分の奴にもフィードバックさせるつもりだ。 特に、遠距離狙撃系のデータはあっても困るものではない。 俺にとって長距離というのはほとんど手付かずの未知である以上は、本職のフレスタに期待するしかないのである。 ああ、超長距離狙撃ができるようになって危険を冒すことなく敵を潰せるようになりたいものだ。 それができれば、戦術の幅も広がるだろう。 後は、あの刀を上手く使えるかどうかだな。 有効に使いこなせさえすればアレは下手なデバイスよりも魔導師にとっては厄介な代物になりうる可能性を秘めているのだから。

――さて、後必要な武器はなんだ?










 

憑依奮闘記2
第四話
『未知と未知』





















「カルディナ……未知と出会った場合、貴女はどうするのが一番良いと思う?」

「ふむ、どうせ妾と同じように観察し理解するのが一番だとか言いたいのであろう」

 それは、とある金色の男と妙齢の女の会話だった。 互いが互い、お互いを信頼はしていない。 とはいえ、それでも信用はしていた。 結局のところ、二人の関係はギブアンドテイクである。 持ちつ持たれつの関係とでも言うべきか。 利用できるから、利用する。 旨味<メリット>があったからこそ共生する。 結局はそんな程度の関係であった。 もしかしたら奇妙な友情のようなものもあったのかもしれないが、さりとてそれは長らくお互いを利用してきた利害関係の延長のような感覚だった。

 少なくとも互いに男女の好意というのはなかった。 今もそうだ。 例え、男が”黄金マスク”の持ち主であろうとも、少なくとも彼女の鎧を抜くほどのものではないし種が分かっていればどうということはないのであった。

 男は、見たところ秀麗な容姿をしている。 黄金のような金髪とその微笑は、一見すれば人の良さそうな爽やかな印象を常人には与えるだろう。 年の頃は二十代前半というところか。 だが、滲み出す圧倒的な魔力は常人を遥かに超えている。 時空管理局の管理する魔導師の誰よりも、あるいは強大な力を持っているのかもしれない。

 対する女もまたそうだった。 それと比肩し得るほどの魔力と美貌を兼ね備えている。 美男美女のカップルと言われれば、初めて知った人は信じるだろう。 もっとも、今の姿は美女としては落第も良い所ではあったが。

「で、夜天の王にそろそろ仕掛けるのか? あんな回りくどいことなどせずとも良かろうに。 アレではなんだ……弱いもの苛めではないか」

「まあ、そう言わないで欲しいね。 連中の介在が有るのか無いのか。 それによっては、こちらも対応を変える必要が出てくる。 偵察という奴だよ」

「殊勝な心がけだな……自ら囮になると? 今まで逃げ隠れしていた貴公とは思えんな。 ふわぁぁぁぁ」

「……貴女は本当に自由奔放だ。 宮廷作法も何も全て修めているはずでしょうに」

 微笑を苦笑に変えて男が言う。 なんてことはない。 本当に目の前でフリーダムに自分の対応している女性を見ていると、そう思えてならないのだ。 少なくともお得意様の自分を前にしてもベッドから降りず、しかも寝巻き代わりの白ジャージを着たままボサボサの金髪のままで大欠伸をかましてくる。 無礼であるとか、そういう普通の常識を”持っていない”のだとしてもこれはやりすぎだろうと男が思ってしまうのは当たり前だった。 とはいえ、これはいつものことである。 気にしてもしょうがないし、そもそもこんな彼女でなければ彼はこうして今のような立場を得ることはできなかった。

 彼女は彼にとって数少ない未知である。 故に、どうしても彼は彼女には調子を狂わされる。 自分を好くでもなく嫌うでもない完全なる中道を行く存在など希少である。 故に、どこか彼女に便宜を図っている自分に彼は戸惑いを覚えていた。 そして、その戸惑いこそ彼女が今も彼女であり続けられる理由であった。

「つまらん宮廷作法なぞ、絶対たる風格を強者に求める下賎な民たちの妄想よ。 大体、元は同じ人間なのだ。 庶民のようにして何が悪い? それに妾はそもそも本物でさえないのだぞ?」

「ごもっとも。 それではそろそろ確認したいのですが、今回貴女はどこまで”関わり”ますかな?」 

「アルハザードや限界突破者<リミットブレイカー>には興味がある。 出てくるというのならクライマックスでは間近で見たいものよのう。 奴らは未知の塊じゃ。 もう一度あの理不尽を肌で感じたい。 無論、死んでは意味がないからな。 だから”このまま”ここで時を待とう。 無論、無関係であるというのなら別にそれでも構わん。 これは言うなれば怖いもの見たさという奴だ。 未知を知りたいという探求心か。 これも人間の持つ悪癖よな」

「……連中に恐怖を感じない貴女は、本当に生粋の強者のようだ。 尊い血のなせる業なのかな?」

「さてな、血ではないと思うぞ。 少なくとも、オリジナルは連中に確かな畏怖を抱いておったわ。 奉られた血族といっても、『眠れる獅子』に挑むことだけは生涯するつもりは無かったからな。 何せ、普通なら”どうやっても”勝てんからな」

 くつくつと笑いながら、女は挑発するように笑う。 その緑と赤のオッドアイが金色のそれと絡まるが、しかして男は不敵にも笑みを浮かべる。 その挑戦的な笑みこそ、彼と彼女を繋げたものであり、好奇心を刺激する未知だった。

「現在は一勝一敗といった所でしょう。 ですが、最後に笑うのは私だ」

「それが誇大妄想か、それとも現実になるのかを特等席で見させてもらうさ。 妾としては、どうなろうと別段どうでも良いのだ。 未知が見たい。 見たくて見たくてしょうがないのだ。 自由というのはかくも未知を渇望するものだとはあの頃は知らなかった。 古今東西の絶景、ありとあらゆる美術、物語に歴史に……言い出せばキリが無い。 無限に続く次元世界、その中でも無限を手に入れた妾にとって、そなたの紡ぎだす未知はまたとない楽しみである。 それに、今回の報酬はでかいでな、管理外世界の外の外へ行くまでの間は付き合うのも悪くは無いと思っておる」

「恐悦至極」

 慇懃に腰を曲げると、金色の男は微笑を晒す。 もはや変えられぬその微笑。 それは彼がどうしても外せないマスクである。 だが、それでもそのマスクには今だけは他の誰にも晒せない気軽さがあった。 どうして自分がそうしているのかは分からない。 いや、彼はもうそれの理由を知っている。 そして、同時にそれが自然にできることを自分が嬉しいと感じていることも理解している。 だからこそきっと、自分は彼女にアレの全てを譲ったのだから。

「さて、それではしばしごゆるりと『時の庭園』でのバカンスをお楽しみください王よ。 また一つ、貴女を楽しませる未知を献上するとしましょう。 もっとも、それが剣聖か難攻不落かそれともハズレかはまだ私にも判断はできかねますが。 なにぶん、相手は限りなく黒に近いグレーなもので」

「ふむ、噂の剣聖シリウスとも一度直接会ってみたいものよの。 ”妾”が届かないのか、是非試してみたい。 ”難攻不落”には完敗だったが、彼奴めとは趣が違うのであろう? あの脆弱なオリジナルは当時に最終的に勝てんと踏んでいたが、はてさて本当にそうなのか? 嗚呼、考えただけで楽しくなってくるな魔導王」

「彼女は強いですよ。 常に誰も届かない距離にいる。 そして、それを破るのは容易ではない。 もしかしたら、貴女様ならばそれができるやもしれませんが……初見では厳しいでだろうね」

「知識はある。 記憶がある。 だが、実感と直接的なデータが妾にはない。 倒し方の算段はつけておるが……はてさて、それが果たして妾にできるかな?」

「……」

 楽しげなカルディナの口調に、男はピクリと眉を潜める。 興味はあった。 だが、それを聞くことはせずに寝室を出て行くことにした。

「それでは失礼します王よ」

 彼自身も戦う方法は考えている。 勝つ算段というよりは、それは負けないための方法だったが自分がそれを今聞く必要は無いと彼は考えていた。

「ふむ? やはり、聞きたくないか? 散々殺されているらしいからなおぬしは。 自分の手でどうにかしたいというのは、プライドの問題か?」

「……さて、ご想像にお任せしましょう」

 一度だけ振り返っていつもの微笑を返すと、魔導王は去っていった。 その背を見送ると、再び彼女はベットに横になり目を閉じる。 もうしばらくは、退屈と戦わなければならない。 ここにいると既知ばかりで何も面白いことが無いのが辛く眠るばかりの毎日である。 まあ、一応”暇つぶし”に寝ながら様々なところを盗み見たりはしていたが。

 と、そうしてしばらく盗み見をしていたところにふと気配を感じて彼女は瞼を開ける。 そこには、いつの間にか部屋に入ってきていた女が一人。 その顔には不機嫌そうな表情が張り付いている。 またぞろ、あの男と何かあったのだろうとカルディナは苦笑してその手に握った白い槍眺める。

「何か用かラウム」

「……相変わらずまた昼寝かい? いいご身分だな……さすがはあたいらの王様だ」

「うむ、王様だからな。 さもありなん」

「でも姉御よぉ、いい加減にしないとニートって呼ばれるぜ?」

「アレは働かず勉強もしない輩を指す言葉だろう? 妾は王様を”やっている”のだ。 うむ、しっかりと働いているからその言葉は妾には当てはまらんな。 寧ろ寝ても起きても王様をやっているのだから、私ほど勤労意欲に燃えている人間もおらん」

「いや、そんな怠惰な王様民衆に反逆されるから」

「民など”初め”から私にはおらんよ。 今も昔もな」

「あー、そういえばそうだったっけか? まあ、いいや。 ほらほら、さっさと起きる起きる。 でないとあたいが下克上起こすぜ?」

「ふん、それができるのならいつでも掛かって来るが良いさ。 出来るのなら……な?」

 つまらなそうにそういうと、むくりと起き上がって渋々ジャージを抜ぎ去って着替えを始める。 どうにも、この槍の騎士は面倒くさい。 快活なところと一本木なところは気に入っているが、さりとてこうもマメに干渉してくるのはいただけないと彼女は思う。 まあ、そういう不自由という名の未知も気に入ってはいた。 それに、たった一人で”自分を殺し”に来たことがあるという点でも評価できる。 この女はやるとなったらやる女である。

「妾は王様じゃぞ? それが一介の騎士風情がよくもまあその眠りを妨げるものよな。 おぬしほど恐れを知らん騎士はそうはいまい」

「忠臣たればこそ具申する。 これ、騎士の常識です。 ちなみにあたいは元々放浪する自由騎士なんで、本物の騎士連中と比べられても困るぜ」

「だが、今は妾の騎士だろう? 無言で妾を全肯定するべきではないのか? フーガのようにな」

「アレは病気です。 盲目の忠誠をあいつが王様に送るのであれば、あたいが対立しなきゃあ王様は調子に乗り続けるでしょう? そうはさせませんぜ? あたいの眼が黒いうちなら尚更だ」

「ああもう、態々妾の怒りを買って戦おうとしても無駄じゃぞ。 今日はそんな気分ではないのだこのバトルマゾめ」

「ありゃりゃ?」

 当てが外れたとばかりに、ラウムは首を傾げる。 起き出してきたのはその気になったからではないのか?

「ふん、そんなに暇なのか? なら、”ドクター”を送るついでにおぬしも蒐集に行くか? もしかしたら強者と戦えるかもしれんぞ」

「そりゃあ楽しそうですけどね。 でも、連中は基本的に雑魚ばっかりだ。 管理局が来たとしても、部隊保有制限のおかげで大抵一人二人しか見所ある奴がいやしねぇし、つまらないものはやっぱり”つまらない”と思うぜ。 やっぱり一番楽しいのは王様でしょう?」

「なら守護騎士と戦うか? 剣の騎士と鉄槌の騎士あたりならお前の退屈も紛れよう」

「あー、そりゃもっと駄目ですぜ。 連中の自我消してるんでしょ? そんなのと戦ってもまるで意味が無い。 戦うだけ気分が萎えるんで逆効果だ」

「ええい、ならばシュナイゼルの奴にでも相手をしてもらえ。 どうせ奴もすることが無くて退屈しておるだろう。 ここにいるということは、根回しはもう済んでいるということだろうからな」

「――あー、それだけは絶対嫌だ」

 間髪いれず答えが返ってきた。 どうにも、二人の相性は悪いらしい。 というか、ラウムの方が生理的に受け付けないのだ。 理由を彼女は知っているが、まあこればっかりはしょうがないことである。

「まったく、あの男も難儀よのう。 度を越して好かれるか、嫌われるかのどちらかしかない。 ええい、分かった。 なら少しばかり相手をしてやる」

「お? ホントか姉御。 いやぁ、やっぱり持つべきものは王様だな」

「ふふ、そんなに嬉しいのか? まあ良い。 この前フーガに相手をさせたら弱すぎて話にならんかったからな。 おぬしなら、生真面目でないしもう少しまともに楽しめるだろうて。 ついて参れ」

「外でやるんですか? それとも、広間あたりで?」

「ん? ああそんなところではやらんよ。 遊戯室でやる」

「は? あそこはそんなに広くないぜ?」

「いやなに、あそこには人生ゲームがあるからな。 丁度良いから我が友と騎士を集めて興じるとしよう。 この前は一対一だったから酷く面白みが無かったが今回はどうなるかな?」

「……姉御。 魔法戦闘ではないんですかい?」

「勝つのは妾だと決まっておろう? 勝敗が決まっている戦いには興味も失せる。 もっともっと腕を磨いてから出直してくるのだな」

「ひでぇよ姉御……く、ならあたいが勝ったら今度こそ魔法戦闘で勝負してもらうぜ!!」

「うむ。 それができるならば褒美を取らせよう。 無論、負けたら罰を与えるがな」

 闘志を剥き出しにする騎士を引き連れながら、彼女は時の庭園の中を歩く。 本当は”勝手なこと”をしている奴を止めようかとも思っていたのだが、別段ことさらに気にする必要もない程度の些事である。 計画に支障が出るようなら始末すれば良いだけの話しであるし、またあのような事象が起こっているということで少しばかり面白いことになるのかもしれないと思っていた。

「しかし、何故に人生ゲームなんですかね?」

「人生とは未知の連続だ。 覚えておけラウム、それを楽しめる者こそが生きる資格とやらを手にするのだ」

「今度はどこの哲学ですか?」

「うむ、今ふと思いついたのだ。 今後の人生のバイブルとしよう」

「……いや、そんな適当に思いついたもんをバイブルにされても困りますぜ」

 微妙な表情で主に言うと、槍の騎士は自らの主君の後を追っていった。





















 無限の本に包まれながら、ただただ無言で三人は調べものをしていた。 すでに本局にやってきて数日が経過している。 本当はこんなことではなくてもっと別の何かをしたいと思っていたが、一番の当事者がそれを頑なに拒んでいた。 だから、思うところはあったけれど別の何かで手伝いたいと申し出たのだった。 それぐらいはしなければ、少なくとも自分たちが納得できそうにない。 そう言ったら、あの青年はただそうかと頷いて二つの頼みごとを彼らにした。

 一つは、夜天の魔道書についての情報収集。 そしてもう一つは、『時の庭園』と呼ばれていた遺跡のことを調べることであった。 彼が何をするつもりなのかは大体分かっている。 それを必要とするということは、そういうことなのだろう。 それが最善なのかどうかは自分たちにはわからない。 ただ、書を一人で追うことを決めたという彼を止められないということだけは分かった。

 本当はそれに同行したいとミーアもキールも思っている。 彼女たちに世話になったという義理もあった。 だが、それは彼が頑なに拒否した。 それは自分の仕事だと、危ないからといって断固として譲らなかったのだ。 ならばせめて自分を使えとアギトが言ったときも、やはり彼は首を盾に振らない。

『アギトはまた次にあいつに会うために我慢してくれ。 俺じゃあお前を上手く使えないし、何かあったらシグナムに俺が怒られちまう。 それに、うまく行けば別に戦う必要は無いからな』

 そういって苦笑を浮かべたクライドにアギトが憤慨したがやはり彼の決意を変えられはしなかった。 頑固だと思う。 いいや、あそこまで滅茶苦茶だとは思わなかった。 彼ならばまた、なんとか潜り抜けるかもしれないと期待する一方で嫌な想像をしてしまう自分がいることにミーアはため息を禁じえない。

 仮に敵の拠点が時の庭園だというのなら、忍び込んで闇の書を奪取してくると彼は言った。 そうして、絶対にそいつらの好きにはさせてはやらない、と。 ただ、ミーアにはどうしても分からないことがある。 それは、果たしてそこまで自分ひとりに拘らなければならないことなのだろうかということだ。

 まるで、ちょっと買い物にでも行って来るとでも言うような気楽さであった。 貼り付けた笑みはそのまま取れば余裕の現われとでも感じられるだろうが、目だけは笑ってはいない。 必要とあらばどんな手段をも取る覚悟をしているというようなそんな目だった。 管理局に協力を求めないのかと聞けば、出来うる限り避けると彼は言う。 あくまでも、自分の手で事を成すというスタンスを変えるつもりはなさそうだった。 確かに、それができるのならば一番最高だ。 だが、あまりにも危険すぎる。 敵は守護騎士の一人を倒すような相手であり、さらには”守護騎士システム”を停止させられるような連中なのだ。

 ありえないそれを可能とする未知の連中を前にして、果たして無事に帰ってこれるのだろうか? 彼はどこか無茶を強引に通してしまう男ではあるが、さすがに今回ばかりはSランクの執務官と戦ったあのときのように明確な勝ち方を用意できるわけでもなければ、あのバインドの魔導師と戦ったときのように優位な状況の中で戦えるわけでもない。 デスティニーランドのときのように、心強い味方がいるわけでもない。 なのに、それなのに一人に拘ることにどれだけの意味があるのか。 せめて、数人は手勢が欲しいはずだ。 管理局が駄目でも、ミッドガルズのフリーランスを雇うという手だってある。 このさい、あの襟首女の首に首輪でもつけて引っ張ってくるなり方法が無いわけではないのだ。 なのに――。

「ねぇキール……男ってさ、時々どうしようもなく馬鹿だよね」

「……さて、ね。 それを男の僕に同意を求めるのはどうかと思うよ?」

 微妙な顔をして、キールはミーアの言葉に作業の手を止めて首を向けた。 同じ男として、そういう気持ちが分からないわけではない。 合理的に、冷静に考えれば自分のその拘りが馬鹿なことだと理解することは簡単である。 ただ、それでも自分の手でどうにかしたいと思うのはきっと、そこに譲れない何かがあるからだろう。

 プライドとか矜持とかそういうものだと言って断ずることはできるが、それでもどこかでそうしたくなる気持ちがキールには理解できた。 彼のように自分の今を投げ出してもことを成したいという自分が確かにいたからだ。 けれど、それを自覚していながら無理にでもついていくという選択肢を選べないのは、きっと自分はもう彼にないものを背負ってしまっているからだった。 珍しく少女の姿を取っているミーアを見ながら、キールは思う。

 キール・スクライアの役目はミーア・スクライアの護衛であり補助である。 それが、彼に課せられている使命であるうちには勝手なことをすることはできない。 スクライア一族として、一族を危険に晒した自分のそれが罰でありまず第一に果たすべき贖罪であるのだから。 例え、守護騎士の一人に恋をしていたのだとしても先にやるべきことをしておかなければ動くことさえ許されない。 責任と使命に雁字搦めに縛られた自分がその背にある重みを捨てることは容易ではなかった。 それになにより、そんな自分勝手を彼女が認めてはくれまい。 ミーアを貴方が護ってあげてと最後に言われた。 それが貴方の成すべきことであり、所詮魔法プログラムの自分とは違う……人としての貴方の使命であると。

 悲しく、優しい言葉だった。 自分を追うことに意味は無い。 そういって静かに目の前で消えていった愛しい女性の姿をキールはまだ鮮明に覚えている。

 魔法プログラムだとか人間ではないとか、キールにはそんなことはどうでも良かった。 そう何度もこの数年で彼女に言った。 けれど、やはり最後には彼女はやんわりとそんな自分を嗜めた。 でも、それでも恋人だとは認めてもくれていた。 使命と自意識の板ばさみに彼女も悩んだのだろう。 自分もそれに似たものを感じていたが、彼女のそれはきっと自分のそれよりも重い。 それが彼女たちの存在意義だ。 主に仕える騎士の、真の姿だ。 自分を殺し、主に仕えるという騎士の崇高な生き様だ。 そういわれたら、自分にはそれ以上言い募ることは無理だった。 ただ、それでも一つだけ約束をした。

――もし今お互いの持っている仕事が全部終わったら、そのときは一緒になろう。

 困った顔で、それでも彼女はそんな奇跡が起こればと頷いてくれた。 もしかしたら、それは嘘だったのかもしれない。 けれど、彼女らしい優しい嘘だった。 それを馬鹿のように信じた。 過去に女性に酷い騙され方をした経験があったが、彼女のこの優しい嘘だけは信じ通したい。 叶う叶わないの問題ではないのだ。 そう思うことで、希望を持つことにこそ意味があった。 そして、いつかそんな日を迎えてみせると思っていたのだ。 馬鹿な男の馬鹿な願いだったが、それでもその馬鹿を通してみせる。 そう考えているからこそ、キールはミーアの側を離れることはできない。 それだけは、選ぶことができないし危険な目に彼女を晒すことは断じてさせない。 約束を護らなければならない。 優しい嘘を本当にし続けるために。

「ミーア……多分ね、男は馬鹿なぐらいで丁度いいんだよ。 そうできゃ、みんな男なんてやってられないんだ」

「私には分からないよ……ずっと……ううん、未来永劫分かりそうにないや。 アギトは分かる?」

「分かるわけねーよぉ。 分かりたくも無ねーさ。 そうやってあいつら男は自分勝手に満足して女を置いて逝きやがるんだ――」

「……アギト、貴女は誰かに置いていかれたことがあるの?」

「わかんねーけど、多分きっとあったんだと思う。 アタシは昔の記憶は残ってないけどさー、でもやっぱりそう思うってことは置いていかれたことがあるんだろうなぁ」

 アギトが腕組をしながら、パタパタと小悪魔の羽を振るわせる。 その頭の中にボンヤリと浮かぶのは顔も分からぬ騎士の姿だ。 紫の炎を纏うその人物の影が、シグナムに重なる。 その面影はシグナムとは違う、だが彼女に似たその騎士がもしかしたら自分の本当のロード<主>だったのかもしれない。 いや、きっとそうなのだろう。

 連中は卑怯だ。 自分の勝手を通すことで、他の奴がどういうことを考えるのかなんて少し考えれば分かる癖にそれでもなお押し通す。 それでも自分はそれで行くと、頑なにその我を通そうとするのはもはや馬鹿者をを通り越して愚かでさえあるというのに。

「まあ、けどねミーア。 結局最後に決めるのは自分だよ。 自分がどうしたいかこそが最後にその背を押す要因なんだ。 誰かと道を分かち合っているというのならそれをすることはできないかもしれない。 荷物の半分を持っている責任を果たさなければならないからね。 けれどね、彼の場合は初めから全部自分だけで荷物を持ってる。 何もかも全部……ね」

 誰か彼と荷物を半分持てる人がいればよかったのかもしれない。 そうすれば、きっとそんな自分勝手を躊躇するだろう。 背負わせるということは、同時に自分も背負うということでもある。 そうやって、人間は誰かと支えあって生きていくのが当たり前の普通なのだ。

「そういうの、意地っ張りって言えば良いの? ”自分の責任を自分で取ることは当たり前”だけどさ、このまま誰とも責任を分かち合うことを知らないまま一人ずっと一人で生きてくの? 家族はいないって言ってたし、初めから”頼れる”人がいなかったから……そのせいで頼り方を知らないから”頼って良い人”にも話せないんじゃないかって心配になるよ」

「……そうなのかもしれないね。 彼は僕たちにも極力迷惑をかけないようにしてきた。 変にそういうところが律儀なのは、確かにそういう臆病な部分があるからかもしれないな。 後は、ずっと黙っていたことへの負い目とかもあるのかもしれないね」

 或いは、それができる人間が一斉にいなくなってしまったからだろうか。 彼女たちにならば、彼は多分迷わずに協力を求めていたのだろう。 王と騎士は一蓮托生だからだというのもあるのだろうが、彼女たち自身が断固として介入するはずだ。 彼らの今回の王は彼なのだから。

「これは闇の書の呪いなのかな? まったく、調べれば調べるほど気が滅入ってくるよ。 まるで、呪いの連鎖じゃないか。 誰も彼も夜天の王は”例外なく救われない”」

 キールは自分の探していた闇の書関連の記録を見てため息をつく。 彼は自分が例外だと言っていた。 だというのに、世界はそれを彼に許さなかった。 そう考えると、酷くつまならいものがある。 主と周囲を生贄にして災禍を振りまきながら永遠を旅をする魔道書。 そんなものが生まれてしまったのは果たして偶然だったのか。 必然だったとしたらなお救えない。 そんなものに彼女が縛られているのだと思えば、やりきれない思いだった。

「……そういえばそっちはどうだいミーア。 『時の庭園』の資料はあったかい?」

「一応ね。 でも、そんなに重要なものではないみたい。 ミッド純正の遺跡……というか移動要塞だよ。 しかも、個人所有が許されるぐらいだから武装は全部外されてるし次元航行ができるぐらいしか今じゃあもう価値がなさそう」

「……再度武装の取り付けは可能そうかい?」

「無理じゃない? 随分前のだから規格合わせるのに大変でしょ。 ただ、一つだけ分からないことがある……アレ、次元航行が可能だっていっても航行艦とは速度が比べ物にならないぐらい遅いはずなんだよね。 質量が質量だし……でも、まだ管理局に見つかってないんだよね? 定置観測隊の人たちサボっているのかな?」

「……もしくは、管理局の監視網を潜り抜けられるだけの連中ってことか。 秘匿されている観測地点や網の目になってるって噂のその探索範囲を全部把握してなきゃ無理だ。 それとも、ロストロギアでも使ったのか……」

 果たして、一体何が目的なのか。 時の庭園はもしかしたら完全に別件かもしれないのだがキールにはどこかで繋がっているように思えてならなかった。

「古代ベルカのユニゾンデバイス<夜天の書>に、昔のミッドの遺跡……過去過去過去のオンパレード……案外、またあの連中なのかな」

「……古代の叡智?」

「可能性はあるんじゃないかな? 何がしたいのかよく分からない連中の筆頭だからね」

 彼らは反管理局の思想を持つ連中というわけではない。 連中ならば犯行声明なりなんなりを出して何らかの形で管理局の管理思想を挫くために動くはずだが、古代の叡智に関しては別にそんな風ではない。 管理局とブッキングすれば戦うなりなんなりするようだが、表立って反抗しているという事実はまだなかった。 キールの知り合いの局員にも聞いたが、少なくともここ最近は彼らのような死人が表に出たことは無いという。 九年前のあのデスティニーランドの一件でもしかしたら連中の活動にダメージを与えたのだろうか? だからこそ、彼に報復に出たとか?

(いや、まさかね。 そもそも考えが飛躍しすぎだ。 ユニゾンデバイス<夜天の書>繋がりという程度しか、連中との接点が思いつかないしだけだし……報復ならそもそも僕らも巻き込むはずだ。 当事者の中には入っているわけだし)

 となると、全く未知の敵なのか。 黙考し始めたキールは、それからも少しばかり考えてみた。 だがやはり情報が無さ過ぎて結局その考えることを放棄する。 もしかしたら、夜天の書を調べることで見えてくるかもしれない。 参考程度にしかならないとはいえ、無限書庫の知識は知らないものにとっては有用である。 本当か嘘かは分からないが、例え嘘でも未知になんらかの回答を出せるならば、あるいは状況に一石投じる光明になるかもしれない。

「さて、続きを急ごう。 できれば、今まで発覚している夜天の書関連の事件を全部洗い出したいしね」

「もうすぐこっちは片づくと思うから、そうしたら手伝うね」

「うん。 でも、急いでいるからって見落としはないように。 アギトも、ミーアのサポートよろしく頼むよ」

「おう」

 そうして、二人と一騎は黙々と作業を進めていく。 時折、同じく探し物をしているらしいグルグル眼鏡の少年を見かけたが、無限書庫を利用する人間は局員を含め考古学者のような民間人もいる。 別段気にもせずに彼らは調べものを進めていった。 






















 先に、それを知ったのは食堂での武装隊連中の話を聞いてからだった。

――闇の書がまた動き出しているらしいぞ。

 嫌悪感を剥きだしにしたような嫌な顔をしている連中の言葉を聞いたとき、クライドは思わず目を見開いた。 一瞬聞き間違いかとも思ったが、リンカーコアを蒐集されて医務室に担ぎ込まれた連中がいるという話が出た時点で眩暈のようなものを彼が感じたのも無理からぬことだった。

『トール!! 夜天の書に動きがあったのか!?』

『……そのような事実は確認できない。 現に一度止まってからは書になんら動きは無い』

『くそ、じゃあどういうことだ!! 夜天の書に類似するものが他にあるっていうのか!!』

 そんなロストロギアがあるとはクライドは聞いたことが無い。 とはいえ、そういうのが他にあっても不思議ではない。 一つあるということは、それのコピーや亜種、さらには原型となったものが存在してもなんら不思議ではないからである。

「室長、どうしたんですか?」

「あ、ああ。 いや……なんでもない」

 食器を片付けている最中に足を止めたクライドを訝しんで、グリモアが尋ねる。 紫銀の瞳が不思議そうに自分を見上げているが、頭をかきながら答えを濁した。 とはいえ、内心では非常に切羽詰っている。 予定を繰り上げるべきかどうか考えていた。

 できれば、万全の体制で望みたい。 自分だけで全部に片をつけることは最終的には無理だと理解しているが、さりとて重要部分では自分が成すと決めている。 そこだけは譲れないと思っているから尚更である。 仮に事件が何らかの形で繋がっているのだとすれば、管理局の早期介入はクライドにとって最悪になるだろう。

 そもそも、管理局にとっては闇の書など百害あって一利なしな代物という認識がある。 有用に使えるのであれば考えるだろうが、できるか分からないものに労力を裂く理由がそもそも無い。 もっと現実的に考えればとっとと消し飛ばすとか封印しようという風に結論を出しても不思議ではないからだ。 A級捜索指定ロストロギア『闇の書』。 数々の事件を引き起こしてきた曰くつきの魔道書にして、災厄の権化。 それが管理局員が普通に持つ認識である。 クライドのように考えるのは、そもそも彼が夜天の書の主とかそういう人間であるからであり間違ってもクライドの思考が普通の管理局員と同じであるはずがない。 まともな正義感を持つ人間ならば、前情報だけで判断すると闇の書というのは悪であり、許してはならない存在なのである。

「……さっきの局員の話が気になるんですか?」

「ん?」

「闇の書は”デバイス”ですからね。 室長が興味を引かれるのも無理からぬことかもしれませんが、首を突っ込もうとかは考えないほうが良いですよ」

「……そんなに気にしてた風に見えたかグリモア君?」

「はい。 気になって気になってしょうがないという顔でした」

「ふむ……まあ、興味が無いと言えば嘘になるな。 ストレージデバイスでありながらユニゾンデバイスであるデバイス。 正直、そんなもん任意では俺は作れんからな。 気にもなるさ」

「なるほど……じゃあこんな話は知っていますか室長?」

「ん?」

「闇の書が実は三大蒐集機の三番機とか呼ばれるものだってことを」

「――は?」

 一瞬、何を言っているのかクライドは理解できなかった。 目を瞬かせてグリモアを見る。 だが、そこにいるのはいつもの初めの頃のような感情が一切無いグリモアの顔であった。 雑踏の喧騒さえが遠く感じる。 よく分からない世界に、いきなり放り込まれたかのような錯覚をクライドが感じた頃にはグリモアはさっさと食器を片付けている。 狸に化かされたかのような気分だった。 クライドは急いで自分も食器を片付けると、すぐに話を続きを尋ねてみる。

「グリモア君、さっきの話は一体どういうことなんだ?」

「どういうことと言われても……そういう話ですが? 室長は知らないんですか?」

「ああ、まったく知らない。 てか、三大蒐集機ってのは何なんだ? 闇の書の類似品っぽいものだとは想像できるんだが……」

 さっさと研究室に戻ろうとするグリモアの後を追いながら、クライドは先を促す。 今、何か自分は決定的なヒントを得た気がしていた。 だからこそ、なおのことクライドはその話の先が聞きたかった。

「とはいえ、ボクもそれほど詳しくは知りません。 噂程度のものしか知りませんよ」

「いや、その噂事態聞いたことが無いから大変に興味がある」

「そうですか」

 少し考えるようにした後、グリモアは先を続ける。

「三大蒐集機というのは『杖喰い』、『蒐集詩篇』、『闇の書』などの魔法の蒐集機能を持つロストロギアのことです。 表向きは各地にいる高名な魔導師や希少価値の高い魔法を保存、研究する目的で作られものだそうですよ。 元々が法外な機能を持つデバイスでもあったんですが、後に改造されて別の機能も与えられたとか……」

「……別な機能?」

「闇の書のユニゾン機能とかそういうのですよ。 初めには無かったんですが、製作者が後で付け加えたんで生まれたという噂です。 元々の予定には無かった機能らしいんですけどね。 ただ、本当の製作理由も怪しいですね。 どこからどこまでが”本当”なのかどうか知っている人間は作った人だけでしょう。 『杖喰い』はデバイスをハッキングすることで魔法を蒐集する。 『闇の書』は魔法をリンカーコアから蒐集する。 そうやって、魔法を蒐集することが本来の目的だというのが通説ですが、それ以外にも恐らくは目的があるのでしょう」

「ハッキングで魔法を蒐集する『杖喰い』……か」

 デスティニーランドでの一件を思い出しながらクライドは頷く。 そういういえば、そういうロストロギアも確かにあった。  今でもそれについては非常識な奴だという認識は変わらない。 デバイスをハッキングするデバイスなど、存在してよいものなのなのか。 未だに明確な対策が思いつかないし、ブロックする方法をクライドは思いつけていない。 外部から干渉ができないように一定機能だけを持たせるすれば良いのか? 色々と考えるがどれもこれも通常のデバイスの利点を殺してしまう。

「『杖喰い』に興味があるんですか?」

「いや、デバイスをハッキングすることは不可能だってのがデバイスマイスターの通説だろう? 嫌な奴だなと思ってな」

「そうですか? 別にそれほど怖い相手だとは思えませんが」

「どうしてだ? 魔導師からすればいきなりデバイスをハッキングされたら勝負にならんだろう?」

「『杖喰い』と同じぐらいのスペックさえ持っていればハッキングは阻止できますよ。 一方的にハッキングされるのはそもそもがスペックが低すぎるからです。 ロストロギアとのスペック差が問題なだけでしょう」

「……いや、そもそもロストロギアに張り合えというのが無理な相談なんだが」

 デバイスは『最新こそ最強』である。 だが、そんな通説を吹き飛ばすのがロストロギア<古代遺失物>と呼ばれる過去の遺産だ。 アレこそがオーパーツ<あるはずがないもの>さえ凌駕する理解不能の産物である。 中には次元世界を崩壊させるようなものがいくつもあり、生み出した文明を滅ぼす災厄になったというものも数多く存在する。 無論、大したことの無いものから法外な奴までピンからキリだが、それでも現行の更に先を行くものが多い事実がある。 それらはとてもではないが現在のミッドの技術では追いつけない。

「普通は『杖喰い』などの三大蒐集機に関わる機会など無いから考えても意味がないでしょう」

「まあ、そうだろうけどな」

 それと戦った経験があるだけに、クライドは苦笑しながら相槌を打つことしかできない。 今ならばなんとか戦うこともできるかもしれないが、それでもやはり進んで戦いたいとは思えない。 下手をすれば、高ランク魔導師よりも数段性質が悪いのだ。

「しかし、『杖喰い』がデバイスから魔法を蒐集するんだろう? んで、『闇の書』がリンカーコアから魔法を蒐集する。 なら、『蒐集詩篇』って奴はどうやって何を蒐集するんだ?」

「『蒐集詩篇』も『闇の書』と同じですよ。 リンカーコアから”直接”です、ただ同時蒐集数は『闇の書』を遥かに凌駕します。 単純スペックでは劣りますが……」

「同時蒐集……複数同時に蒐集できるのか?」

「はい、やろうと思えば同時に666箇所で蒐集できるはずです」

「はあ?」

 一瞬、絶句したクライドが目を瞬かせる。 だが、次の瞬間それをも超える言葉をグリモアは言った。

「ですが室長、そんなことよりも一番恐ろしいのは蒐集詩篇と闇の書が組んだときでしょう。 元々”製作者”が同じなのでデータをコンバートすれば蒐集した魔法データのやり取りができるはずです。 そうすれば一気に闇の書を完成させることも夢ではないでしょうね」 

「……」

 本当か嘘かなどどうでも良い。 それが可能なのだとしたら、クライドの予定が大幅に狂う。 頬を引きつらせたクライドの背中を冷たいものが奔った。 もしかして完全に手詰まりなのだろうか? だとしたら、自分のやろうとしていることに意味はないのか。 難しい顔で思考を展開していくが、さすがに未知を前にして対策を推察することは難しい。 だが、この話は捨て置いて良い物では断じて無い。

「……しかしグリモア君。 そんなこと良く知ってるな? どこに行けばそんな噂を聞けるんだ?」

「蛇の道は蛇という奴です。 ボクの中に踏み込みますか室長?」

 グリモアが楽しげにクライドを流し見る。 どこか挑発するような、そんな楽しげな眼であった。 柄にもなくクライドは一瞬垣間見たグリモアの女性らしさにドギマギする。 とはいえ、クライドの鉄壁の自制心はそれで堕ちる程柔ではない。 リンディによって鍛えられたおかげかすぐに正気に戻ると、目を逸らして咳払い。

「……おほん。 まあ、とりあえずだ。 気になる話ではあったな。 おっと、俺は少し寄るところがあるから先に戻っていてくれ」

「――逃げましたね室長?」

 ジト目の助手の向けてくる白い目に気づかない振りをしながら、クライドはグリモアと別れて通路を歩く。 行き先など決まっている。 無限書庫にいる考古学者の一族に先ほどのロストロギアのことを聞くためである。 とはいえ、その足取りは重かった。 考えれば考えるほどマイナス要素しか出てこないのだからしょうがない。

「ちっ――」

 零れた舌打ち。 暗鬱たる感情がその中には込められている。  あまり時間をかけるつもりなど無かったが、さりとてあんな危険な可能性を知ってしまったからには予定を繰り上げるしかない。 一月は持つだろうと思っていた。 けれど、それさえも楽観であるかもしれないのだ。 時間が足りず、敵の情報も不鮮明。 まったくもって笑えない。 今この瞬間にも、完成させる準備を敵がしているのかと思えば焦るのも仕方が無かった。

「ピンチはチャンスだと言った友人が昔いたが、はは……博打しかないってのは嫌なもんだな。 勝ち目の見えないギャンブルはしない主義なんだぞこんちくしょう」

 それは、クライドの前の人生での親友の言葉だ。 自分はそれをついぞ信じなかったが、こうなってはもうそれに望みを託すしかないのか。 だが、しかし……。 踏ん切りのつかない自分の優柔不断さを今日ばかりはクライドは呪う。 やることさえ決めてしまえば、それに全力を尽くす性分だったが、やることを決められなければどうにもならない。 葛藤を胸にそれでも自分の取るべき道を模索しながら、クライドは通路を進んでいく。

 自分一人でどうにかするか、それとも叔父さんに頼るか。 取るべき道は二つある。 最終的には叔父さんに協力を求めることは決定だったが、今この段階でそれをするのは辛い。 手元に闇の書あれば問題はない。 だが、今手元に無いことが問題なのである。

 既に闇の書の噂が流れ始めているのだ。 蒐集をクライドがしたことはないし命じたことはないが、それが流れている時点でクライドの言葉を信用させるのは難しいと思われる。 叔父さんだけならば真摯に聞いてくれるだろう。 それだけの信頼を得ているとクライドは思っている。 だが、周りはどうだろうか? 通常の管理局員がどこまで自分の話に耳を傾けてくれる? 既に犯罪に直結しているかもしれないのに。 そしてそれを叔父さんがどこまで押さえられるだろうか?

 何もしていないならば、それが信用に繋げることもできた。 だが、もうすでにそれらしいことが起こってしまっているのだ。 それを否定するのは容易ではないだろう。 また、詳しく話せば確実にクライドはロストロギアの秘匿所持でお縄につく。 それはまあ仕方ないとしても、そのせいで後見人になってくれていた叔父さんの経歴に傷をつける可能性もある。 ことはそれほど単純ではない。 八方塞ではないが、それでも決断するには躊躇してしまうものがあった。

 自分だけの問題で済ませられるのならクライドは躊躇しない。 自分で決めたことならばどうなろうと納得するしかない自分の責任だけで済む。 だが、誰かを巻き込む場合はそうではない。 そこで葛藤してしまうのはきっと、彼が周囲に対して遠慮しているからだろう。 特に、養父たるギル・グレアムに関しては人一倍その念が強かった。

 クライド・エイヤルだと思って世話してくれていたということに対する負い目と、そのことで騙しているという負い目。 さらには、仕事が忙しくなるというのに自分のためにリーゼ姉妹を宛がってくれたりと様々な面で融通を利かせてくれた。 この恩はそう簡単に返しきれない。 だというのに、更に頼ってしまって良いのだろうか? 恩義という名の抵抗感がクライドの邪魔をしていた。

 だが、現状では他に頼れる人間がいないこともまた事実である。 例えば、ディーゼルに事情を話し協力を頼むという選択肢はありえない。 ”死亡フラグ”を潜在的に持つ彼を巻き込んだ場合どうやっても上手く立ち回ることができそうにないのだ。 しかも、彼はもう次元航行艦の艦長でもある。 クライドという名と次元航行艦。 ここに闇の書の案件だという事実を組み込んだらそれだけでアウトだろう。  単純にアルカンシェルで無差別に焼き払うというならば問題はないかもしれないが、それはクライドの望むところではない。 故に、後手に回った今では彼という選択肢はありえない。

 また、リンディを巻き込むという選択肢を”最初から”彼は考えていない。 そのままでいれば”命を危険に晒す”こともなく生活ができるだろう。 彼女のためを思えば自分の都合で巻き込むつもりなど微塵も無い。 クライド・エイヤルの矜持にかけてそれはしない。 無論、これもまた後手に回った今だからこその判断である。

「……どーすっかなほんと」

 時間がもうあまり残されていないかもしれない。 今にもトールからページの蒐集が始まったと言われても可笑しくないのだ。 状況が勝手にクライドをドンドンと追い詰めていく。 考えれば考えるほど億劫になってくる。 だが、それでもクライドは思考を止めることはできない。 それがきっと彼の責任であったから。

 そうして、それから数分後には彼は無限書庫へとやってきていた。 ドアを潜り、中へと入っていく。 視界に飛び込んでくるのは、毎度おなじみの大量の本棚。 そしてその中にある無数の本である。 重力制御は中へと進むほど無くなっていき、それに従って身体がどんどんと軽くなっていく。 ある程度先まで進めばもうそこは宇宙空間と相違ない。 重力の楔から解き放たれたクライドが床を蹴るようにして跳躍した。

「……ミーアたちは奥かな?」 

 さすがにこんな浅い区域にはいないだろう。 彼女たちは端から端まで巡ることもあるという。 少しばかり迷ったが、クライドは意を決して進むことにする。 と、そこまで行く前に見知った顔が本棚の影から現れクライドに向かって声をかけてきた。 その頭上に鎮座するグルグル眼鏡を見れば、すぐに分かる。 ペルデュラボーだった。 

「やあ、まだ昼休みなのかな?」

「ああそんなところさ」

 あまり時間に余裕は無い。 挨拶もそこそこに知り合いを探していると言ったクライドは、特徴を簡単に説明してみた。 知っていれば御の字と考えての行動である。

「ふーん、そういえば大分前にそれらしい二人組みを見つけたよ」

「そうか? どっちにいた?」

「向こうのほうだね。 ああ、そうそう。 丁度よかったよ。 今から少しだけでいいから時間をくれないかい?」

「いつものか?」

「それもあるけどね、実はもうここに来るのは最後にしようかと思ってね。 軽く君に挨拶をしておいこうかと思ったんだ」

「最後? 探し物が見つかったのか?」

「ああ、やはり”ここ”にあったよ。 もっとも見つけられただけで十分なんだけどね。 中身が無いものを見ても意味はないし……それに暇つぶしみたいなものだったのさ」

「暇つぶしねぇ……」

 こんなだだっ広い本の中から目当ての本を探すのは容易ではない。 事も無げにそういった少年に苦笑しながら、しかしクライドはしまったとばかりに額を押さえる。 そういえば、今日は本を持ってきていない。 

「あー、悪い。 今日は本持ってきて無いんだ。 今日はいつまでここにいるんだ?」

「ん、すぐに帰るよ。 貸していた本については……クライド君に上げるよ。 まだ君には必要だろうしね」

「住所教えてくれれば送るぞ?」

「いや、それには及ばない。 さて、急いでいるんだろう? 早く済ませよう」

 懐から取り出したカードをシャッフルしながら、いつもよりやや急いだ風に占いをしていく少年。 急いではいたが、最後だというのならばしょうがない。 黙々とカードを操る少年の顔を見ながら、クライドはしばしその場にいた。

「最後だからね、少しばかり深く占うよ」

「占いに深いも浅いもあるのか?」

「人にもよるんじゃないかな。 僕の場合は占うものによって変えるのさ」

「ふーん」

 興味が無いわけではないが、さりとて知っても意味はない。 いつもは虚空に数枚程度浮かぶカードが、今日ばかりは次々と虚空に並べられてはシャッフルされるカードの山に戻っていく。 ペルデュラボーの顔は涼しげだったが、その手順は中々に複雑であるようにクライドには思える。 だが、ある一枚のカードを引いたところでペルデュラボーがニンマリと口元を歪め、そうして腹を抱えて笑い出した。

「――く、あははははは、そうか。 これはそういうことか!! あの男、裏側ではなく表側でそれを成したか!! なるほどなるほど、それならば”納得”がいく……はは、これほど愉快なもの隠しておくとはあの男も人が悪いな。 く、あっはっはっは――」

「ぺ、ペルデュラボーが壊れた?」

 今まで見たことも無いような少年らしからぬ態度に若干クライドが頬を引きつらせる。 と同時に、一瞬クライドは蛇に睨まれた蛙のように彼の側から一歩引いた。 クツクツと笑う金色の瞳、その奥に狂気とも狂喜とも呼べる感情が眠っている。 だが、それだけではクライドは後ろには引かない。 そんなものよりももっと恐ろしいものを本能的に感じていた。

 例えば、カグヤの殺気は鋭い。 刃を終始首に当てられた状態を連想するほどに剣呑だったが、同時に彼女の場合はそれを制御する理性がある。 だが、彼は決定的に違う。 そもこれが殺気なのかどうかさえ分からないが、暗い暗い暗黒の闇を連想した。 全てが飲まれる。 恐怖も絶望も裸足で逃げ出すような正真正銘の”暗い闇”。 そんなものに引き込まれる。 視てはならないものを見てしまった人間のように、カタカタとクライドは無意識に歯を鳴らす。 これならばカグヤの殺気に中てられた方が数段マシだ。 理解不能な恐怖と、けっして常人が理解してはならない理<ことわり>が彼にはあった。

――○□■○



 どこかで、主を正気に戻そうとする声を確かに聞いた。 その瞬間、クライドは黒の○女を幻視する。 黒い○□スに身を包んだ□髪の■女がペルデュラボーの隣で彼に抱きつくようにして何事かを言っていた。 いや、それはもしかしたら白昼夢だったのだろうか。 瞬きをした次の瞬間には、そんな少□は居らず不思議そうにこちらを見ているペルデュラボーの姿がある。

「――どうかしたのかい? それとも、何かを”視て”しまったのかな?」

「あ、え? いや……なんでもない」

 気がつけば、不思議そうな顔でこちらを見る少年がいる。 クライドは眉間を軽く押さえると、先ほどみた何かを忘れようと首を振るった。 事実、気のせいなのだろう。 ペルデュラボーはいつも通りだし、周囲には自分たち以外の人影は無い。 では、やはり先ほどの何かは幻覚とか何かなのだろう。 いや、それ以前にあんなものを視てしまうのは精神的に疲弊しているからか。 やはり、色々と状況の変化によって疲れが溜まっているのかもしれない。

「顔色があまり良くないね。 仕事が忙しいのかもしれないけれど、きちんと休んだ方が良いんじゃないかな?」

「ああ、そう……だな。 ところで、占いは終わったんだよな?」

「うん、それはバッチリさ。 今回はかなり深く潜ったんで梃子摺ったけどね。 そのせいで”少しばかり本気”を出してしまったよ」

「本気……ねぇ」

「結果は僕の予想の範囲を大きく超えていたんだけどね。 嬉しい誤算という奴かなこれは」

 果たして、何を見たのか。 出てきた答えを知っているのは彼だけなのでクライドには分からないが、しかして満足そうな彼を見ているとそれでも良いかとクライドは思う。 そして同時にこれが最後であるというのなら、少しばかり寂しいという感情も感じた。

「さて、今日は生憎と本を用意してなくてね。 特に僕から君に返せるものがないんだけど……代わりに何か悩み事があるのならば相談に乗るよ。 参考になることを言えるかどうかは分からないけどね」

「……悩んでる風に見えたか?」

「それだけ眉間に皺を寄せていたら誰だってそう思うさ」

「そうか……気をつけないといけないな」

 顔に出しているつもりは無かった。 だが、そう見えたのであれば気をつけよう。 ため息をつきながらクライドは頷いた。 そうして、最後の相談をしてみる。

「実はな、どうするか悩んでる案件があるんだ。 その案件を解決するのに自分一人では厳しい、だがかといって誰かの手を借りるのは心情的に辛い……今それでどうするか悩んでいるんだ」

「ふむ、君はどうしたいのかな?」

「出来れば一人で解決させたいと思っている」

「けれど、それをするには抵抗あるいは問題があると……じゃあこういうのはどうだい?」

 ズボンのポケットに手を伸ばすと、ペルデュラボーは一つの金貨を取り出す。 管理局の通貨でなく、別の世界の通貨のようだ。 見たことが無い五芒星形の図柄があるようだったが、クライドは取りだされたそれをみてどうするのかと視線で先を問う。 ペルデュラボーはそんなクライドに急かされるようにしながら続ける。 と、彼は親指の上にそれを置いて弾いた。

 クルクルと回る金貨が、虚空へと飛び次の瞬間には”重力の束縛”を受けて落下する。 無論、この無限書庫には入り口はともかくとして重力などない。 その意味をクライドが不思議に思う前には落ちてきたその金貨を手の甲に乗せるようにキャッチすると、ペルデュラボーはニンマリと笑み浮かべてクライドに手を差し出す。 そうしてクライドに勿体つけるようにして見せた。

「……ふむ、絵柄の方が出たね? 意味はないけれど、こういうのもまた悪くはないだろう? こうやって運を天に任せるという手段もあると思うよ」

「適当に決めろと?」

「”君”だけで決められないのであれば、誰かに背中を押してもらえば良いという話さ。 別にそれは金貨<偶然>でなくても良いよ。 例えば君の友達でも、君の一番大事な人でも良い。 そうして、どうするかを決めて進めば良い。 君は今分かれ道の分岐点を前にして立ち止まった状態だ。 どちらにもメリットデメリットがあり、それは君の中で甲乙つけ難い選択肢となってそこにある。 本来なら第三の選択である新しい道が作られるのを待つ、あるいはそのまま立ち止まり続けるという選択肢もあるだろう。 けれど、君は今この二つのどちらかを”早く”選ばないといけないと決めているんだろう? ならば、強制的に背中を押す何かを用意して頼ってみれば良いよ。 たとえ相談できなくても、その人物に金貨を投げさせるぐらいは君にはできるだろう? 君にはそんな人がもういるはずだ」

「……」

「ああ、そうだ。 記念にこの金貨をあげるよ。 使う使わないはクライド君の自由だけど、そういう選択の仕方もあると僕は思う。 無論、それで納得できるのならという前提が必要だけどね」

 差し出された金貨を受け取って、クライドは睨むように金貨を見た。 金貨の放つ光沢とその魔性が、クライドの中で何かを囁く。 表<助けを求める>か裏<単独に拘る>か。 そのどちらかに確かに答えを強制的に出してくれるだろう。 だが、クライド自身にとって重要な案件をこんな一枚の金貨に委ねて良いものなのか。 答えを出すための道具として割り切るならば即決する要素にはなるだろうが、しかしそんな簡単に割り切る自信がクライドには無かった。

「それと、もう一つアドバイスをしておくよ。 結局、人間にとっては世界の中心に立っているのは自分なんだ。 そこに他人が入る余地などありはしない。 だから傲慢でもなんでも良いから人間は自分を貫こうとするんだ。 けれど、今の君は違う。 自分が中心に立っていない。 他人に遠慮をする必要などないんだ。 君の流儀で君の世界の中心に自分を立てよう。 後はそれを納得できるまで現実に擦り合わせる、それだけで自ずと答えは出るはずだよ」

「傲慢な考えにも聞こえるんだが……」

「それは当然さ。 僕は僕の世界の中心に立っている。 その隣には愛しい女性がいるけれど、それでも僕がやっぱり中心にいる。 この事実は覆りようが無い。 寧ろ、中心に自分がいない世界なんて無価値だろう? 僕たちは運命という名の何か、神様とかいう超越者の傀儡じゃあないんだ。 せいぜい好き勝手絶頂振舞って現実という名の舞台を台無しにしてやれば良いんだ。 その権利が僕たちにはある。 だから君も早くこちらに来たほうが良い。 ”そのまま”だとあの男のように無意味に溺れるだけだ」

「……」

 熱弁を振るうペルデュラボー。 彼が熱くなっている姿など見たことがなかったので、クライドは少しばかり言葉を失った。 だが、同時に嬉しく思う自分がいた。 付き合いが長いわけではなかったが、熱弁を振るうほどに心配をしてくれているのだと感じたからだ。

「――っと、すまない。 時間を少し取らせすぎたようだねクライド君」

「いや、まあ参考にしてみるさ。 一枚の金貨に運命を託すのもまあ……うん、ロマンがあるな」

「それは良かった。 少しばかり長居をした甲斐があったというものだからね」

 苦笑を浮かべると、ペルデュラボーは踵を返す。 もう無限図書を去ろうというのだろう。 だが、去る前に振り返って一言いった。

「じゃあまた会おうクライド君。 君とまた会えることを祈っておくよ。 そのときには、君もまた”世界の中心”にいられれば良いね」

「おう、またなペルデュラボー」

 ひらひらとお互いに手を振って、クライドは少年を見送る。 随分と軽いお別れであったが、男同士なんてのはいつも大体こんなもんだった。

「世界の中心ねぇ……そういう感じ方もあるってことか」

 その右手には面白い捉え方をしている少年から手渡された金貨がある。 運を天に任せる。 理詰めでものを考える場合には噴飯ものの考えではあるが、ただただ足踏みしている状況よりは大分マシだろう。 となれば、後はそれを投げるだけだが試そうとしてクライドはふと思いとどまった。

「ロマン……ロマンか。 こんなときに不謹慎だとは思うが、そうか。 自分の先のことも考えておくべきだよな」

 行動を起こしても生きていられなければ意味が無い。 そういう意味で、先の展望を持っておくことは悪いことではないし、それを励みにできればここ一番で精神的に違ってくる。 何か執着するものが自分にはあっただろうか?

(……そういえば一つだけあるな。 そうだな、あいつに背中を押して貰おう。 週末に休みがあれば良いんだがなぁ。 それまでにことが始まったら強制的に時間切れなわけだが……)

 どっちにしろ、すぐに突っ込むには準備が足りない。 ならば、最低限の準備期間としておいてそれまではひたすらに情報収集と戦力の底上げといこう。 ようやく明確な指針をくみ上げたクライドは焦りから脱却するように動くことにした。 ペルデュラボーが見かけたというあたりの方向へと漂いながら、クライドは二通りのプランを考える。 どう転んでも最善を手繰り寄せてみせる。 野心を静かに燃やしながらクライドはミーアたちを急いで探すことにした。 
















 世の中に不思議なことがあるとすれば、それはきっとこんなにも身近な所にも隠れているのだろうとレティ・ロウラン執務官は思う。 昼食後のコーヒーに異様なまでに砂糖を入れてコーヒーを嗜む同僚を見ていると、特にそう思えてならない。 一杯、二杯……以下省略。 ここまで来ると冒涜だといえるほどの甘さだろうに、本人だけはそれが正義だと言わんばかりにホクホク顔なのだ。 これを不可思議と呼ばずになんと呼ぶのか? 憎たらしいぐらいに幸せで緩みきった笑顔に、思わず彼女の鉄面皮が緩んだ。

 元々レティ・ロウランは微笑はしてもどこか堅い印象を受けるような表情をするタイプの人間だ。 だが、目の前の友人のせいで少しずつその堅さが無くなってきていた。 眼鏡の奥でキラリと光る冷徹な瞳が、数年前と比べて随分と優しい。 とはいえ、その微笑に若干の苦笑が混じってしまうのはどうしようもなかった。 まあ、いつものことといえばいつものことだったがこればかりは恐らく彼女がそれをし続ける度に思うことなのだろうと、もはや既に諦めている。

「貴女、本当に自重しないのね?」 

「なにがですか?」

「砂糖の量よ。 本当に貴女、糖尿病で近い将来倒れるわよ?」

「大丈夫よレティ。 これでも随分と我慢してるんだもの」

 そういうと、件の同僚はさらに砂糖を入れる真似をする。 自分も甘党だと思うが、彼女を見ているとその自信が遠い彼方へと追いやられていく。 管理世界広しと言えども、恐らくは彼女には誰も勝てまい。 と、そこまで考えて彼女は思い出したかのように口を開いた。 そういえば、もう一つ不思議なことがあったのを思い出したのだ。

「そういえばリンディ、貴女味覚だけじゃなくて男の趣味も変わってるわよね。 ディーゼル提督に一体何の不満があるのかしら?」

「えと……特に不満があるとかじゃあないんですが……」

 歯切れの悪い答えを返してくるリンディに、レティは相変わらずの戦況にため息をついた。 色々とレクチャーしてあげているというのに、全く彼らの関係は進展しない。 普通なら良きにしろ悪きにしろ何がしかの進展があって然るべきなのだが、生憎とリンディを取り巻く環境が微妙であったせいでそれはどうも友達ぐらいの関係で止まりきっている。 祖父によって婚約者(仮)を二人も持つなどという状態に置かれてしまった彼女は、二人の男の間を行ったり来たりしている。 いや、主に一人か。 その男のせいで、こんな状態が続いているのだ。 他人事ではあったものの、色々と男を制するための知恵を貸した手前気になるのは仕方が無かった。 特にディーゼルには執務官になるまでの間に世話になったという義理もある。 彼女としてはどちらかといえばディーゼルとリンディがくっつくほうが安心だった。

 少なくともクライド・ディーゼルという男は絵に描いたような良い人であることを知っている。 アレは無難に幸せを築いてくれるタイプだ。 ある意味安心して友人を任せられるだろう。 生真面目故に面白みは無いが、それでも実直で非常に紳士である。 さりげなく気を使うという人間関係に必要なスキルをしっかりと身につけているし、将来性も抜群だ。 所謂、文句なしの男という奴である。 だが、そんな男と比べれば対極に位置するような男がリンディは気になっている。 それがどうしても彼女には理解できない。

「クライド・エイヤル……貴女がそんなに気にするような男なの? まあ、ディーゼル提督とは比べ物にならないぐらいに愉快そうな人ではあったけど」

 記憶の中にある眼つきの悪い男のことを思い出す。 初めて会ったのは彼らが孫馬鹿の提督によって模擬戦をしたときだ。 偶々面白そうなのでリンディについていって戦闘を見ることになったのだが、あそこまで非常識だとは思わなかった。

「私は始めて見たわよ? 景品<リンディ>の後ろに回りこんで人質にしてから傷つけたくなければ降伏しろなんてのたまう男は」

 さすがに、そのときは愉快を通り越して唖然としたものだ。 どこの世界に婚約者を手に入れる戦いでその婚約者を人質にしてから戦おうとする男がいるのだ。 途中で孫馬鹿の提督がキレて模擬戦は流れたが、それにしたってやりすぎである。 本人に婚約者(仮)だという自覚が無いのか、どうでも良いと思っているのかは知らないがさすがにそんな男に友人が好意を持っているというところが信じられない。 最後には二人一緒になって逃げ出し、街へと遊びに繰り出していた。 どこのバラエティ番組なのかと、後になって呆れたものである。

「あ、あはははは。 まあ、それがあの人の持ち味ですからね。 それに、やっぱり逃げ切りましたし……」

「大事な大事な景品<孫娘>を持ってとんずら……しかも、ヴォルク提督を相手に。 その度胸は買うけれど、巻き込まれる人間は心臓がいくつあっても足りないわね。 断言しても良いわ、彼は一緒にいれば楽しいかもしれないけど家庭を築いたら色々と好き勝手して女を振り回すタイプよ」

「うう、否定できませんね。 クライドさんはそういうタイプっぽいです」

「でしょ?」

 しかも、あの男は色々と人間としての軸がブレているらしく勝っても台無しにするかしていつもいつものらりくらりと結論を出すのを避けていく。 ああいうのを見ていると、レティは酷くイライラしてくる。 白か黒かを求める場面で躊躇無く灰色や別の色を選ぶ人間を、どうしても彼女は好きになれないのだ。 なんというか、ああいう不条理さというかイレギュラーな存在は大変に動きが読みにくく扱い辛い。 執務官として部下を大量に指揮しながら組織力で勝負していく彼女にとって、ああいうのが一番困る。 故に、潜在的な忌避感をクライドに対して持っていた。 あれで可愛げがあれば問題はなかったかもしれない。 が、クライドにはそれさえない。 いいとこ無しという奴だ。

 さすがに、最初の出会いが強烈すぎてどうしても好意的な解釈をもつことがレティはできない。 自分がリンディのような扱いを受ければ、多分激怒するだろう。 そう容易に想像できるだけにリンディに忠告する口は止まらなかった。

「多分、貴女はあの男のマジックに引っかかってるのよ」

「マジックですか?」

「ほら、よくドラマとかであるでしょ? お嬢様っぽい人間が何故か生真面目な優等生よりも、素行不良な尖った人間に何故か惹かれるとかいうの。 貴女、もしかしてそういうパターンにやられてるんじゃないかしら」

「優等生と不良……言いえて妙だわ」

 無論、どちらが優等生でどちらが不良かは一目瞭然である。 いや、見るまでも無い。 眼つきが悪い方が間違いなく不良で、提督っぽいのが優等生だ。

「ね? 考え直しなさいな。 多分きっと貴女は苦労することになるわよ」

「――」

 今でもきっと苦労しているだろう。 何か言いたそうに口を開こうとして、しかし反撃してこない友人。 その目にある陰りが、彼女の疲れを物語っていた。

 追いかけても捕まえられない。 差が縮まっているかすらもわからない。 いや、徐々に縮まってはいると思う。 だが、それが決定的なものではない。 それが、酷く歯がゆかった。 けれど、どこかでそれでもと思う感情が邪魔をして今のようにずるずると続いてきた。 それを今更、変えるのは難しい。 明確な拒絶は無く明確な好意が無い。 はっきりとしていることは彼が婚約者(仮)ということだけだ。 それだけが、今彼と自分の関係を繋ぎ止めている要素だとするのなら、それは酷く恐ろしくてそして悲しいものだった。 そうではないと思いたい自分と、それ以外を明確に見出せないことが怖い自分。 レティの言葉に反論しようにも言葉を返せないのは、きっとそんな弱い自分がいるからだった。

「これは、重症かもしれないわね」

 ため息をつきながら、言葉を捜し続けるリンディをよそにレティはコーヒーを口に含む。 舌に感じるほのかな苦味と、砂糖とミルクの甘味が広がっていく。

「貴女たちって、もしかしたら今飲んでるコーヒーみたいな関係なのかもね」

「どういう意味ですか?」

「苦みと甘さを孕んだ関係ってことよ。 そうね、苦味が無くなるぐらいに一杯の砂糖とミルクを入れられれば良いわ。 貴女は元々激甘が好みだし、彼にそれができるのなら貴女には悪くは無いのかもしれない。 けどね、彼がそれに気づかなければ貴女はずっと砂糖の無いコーヒーの苦味を味わい続けることになるでしょ? ほら、コーヒーみたいな関係だわ」

「随分と極端なコーヒーもあったものですね」

「そんなものよ。 人生の苦味はコーヒーの苦味らしいけど、恋愛でそれを体現している貴女は今その苦味を味わっている真っ最中。 インスタントコーヒーとブランドもののコーヒーの差なのかな」

 皮肉っぽい嫌味にも取れる言葉であったが、レティは単純にリンディを心配しているだけである。 当事者たちではないからこそ言えることで、彼女が考えようとしていないことを突きつけることで現状に波紋を起こす起爆剤にでもなればと思って言っていた。 きっぱりと思ったことを口にして忠告する彼女らしいアプローチである。 普段はかなりドライではあるが、こういうところは親身になって言うところがレティ・ロウランの人の良さであった。

「……はぁ、色々と気が滅入りるわ」

 甘いだけのコーヒーを口に含むと、余計にそう思えてきた。 思わずもっともっと砂糖を投入してやりたい衝動に駆られたが、リンディは我慢していると言った手前それをせずコーヒーを飲んでいく。 ミルクのまろやかさと口いっぱいに広がる砂糖の甘さ。 確かにこんな甘い関係こそが理想だと思う反面、この苦味にもしかしたら自分は引き込まれているのかもしれないとも思った。 苦味と甘味の狭間にあって、今はただ苦味過多な現実。 リンディはずっとそれに砂糖が欲しいと思い続けていた。 甘さというのに、焦がれていた。

 そうと意識しだしたのは、いつ頃からだったのかはもう覚えてはいない。 ただ、彼が婚約者(仮)になったあたりから妙に意識していたような気がする。 その前は単純に意地の悪い兄を見守る妹のような心持だった。 姉と兄ができた訓練学校の日々と、それからもずっと様子を伺える位置にいた彼を意識するなというほうが無理だった。 婚約者という確固たる事実に追いつこうと色々と自分なりに大胆に接してみたこともある。 その度に彼は苦笑を浮かべながらも拒否をせず、ただ一線だけは越えないように常にかわしてきた。

 いつもいつもそんな繰り返しばかり。 空回りしているのは自分だけで、もしかしたら向こうは自分に興味が無いのかもしれない。 そう思うこともあったが、だとしたら彼はすぐにでも自分との関係を切っているだろう。 彼は無駄が嫌いだ。 彼はメリットが無いことはしない。 そして、彼はハラオウンの名にまったく価値を見ていない。 なのに相手をし続けてくれたのは”そういう”意識があるからではないのか? ただ、ぼんやりと浮かんだその答えに縋ってきた。

 ディーゼル提督は事実を真実にしようと小まめに動いてくれている。 どうやら、自分に執心するだけの好意を見出してくれているようだ。 それが偶に重いと思うこともある。 レティに言われずとも、分かっている。 彼が魅力的な男性であったことは。 もしかしたら、クライド・エイヤルという人物に会わなければ自分は彼に向けるような感情を向けていたのかもしれない。 けれど、どこかで何かが引っかかってしまう。 そして、そう思うのは一人だけだった。 だが、現実には想いは少しずつ欠けていっていた。 そうして、欠けたものをディーゼルが拾っていっている。 このまま欠け続けていたら、今の感情が反転するかもしれない。 それが、リンディはたまらなく怖い。 罪悪感にも似た後ろめたさと、空虚な感情が広がってきている。 胸の中に燻る冷めない熱が、ジクジクと彼女を苛んでいた。

 彼女にとってその熱は自分で自分が刻んだ呪いであり、想いであり、恋という名の感情であった。

「……ねぇリンディ。 いつまでもこんな調子じゃあ見てるこっちがイライラしてくるわ。 なんだったら彼にカマでもかけて試して見たら? 男女の駆け引きってのがあるじゃない?」

「……押して駄目なら引いてみろと?」

「それもいいんだけど……そうね。 じゃあ、ディーゼル提督と付き合うことにしたと冗談で言ってみたら? 喰いついてきたら脈ありで冗談といって誤魔化せば良い。 こなかったら脈なしで、彼のことはすっぱり諦めて嘘が本当になるようにすれば良いわ」

「それは……」

 感覚的に湧き上がってくる忌避感がリンディに難色を示させる。 権謀術数の舞台でならばともかくとして、プライベートにそういう駆け引きを持ち出すのは酷く心苦しいと思った。 懸想している相手だという事実も加えれば、まるで騙しているようで罪悪感が沸いてくる。 けれど、強引ではあるが彼の好意を計れるという一点に置いてのみ価値があった。 そして、だからこそ余計に悩む。

 レティにすればそれぐらいは許容範囲内なのかもしれない。 それが一般的にも普通なのだろうか?

「まあ、貴女のことだから貴女の好きなようにすれば良いんだけど……っと、そろそろ行きましょうか? お昼休みが終わるわ」

「あ、そうですね」

 時計を見ると、いつの間に時間に余裕が無くなっていた。 二人して席を立つと、食器を片付けて急ぎ部署へと戻っていく。 だが、その間もずっとリンディはレティに言われた駆け引きについて考えていた。 そういえば、そういう試すようなことはただの一度もしたことが無い。

 そうして、自分の席にたどり着いてしばらくは書類仕事を再開したときだった。 空間モニターにふと新着メールが届いた。 差出人を見る。 思わず数度目を瞬かせてすぐに開いた。 差出人はクライドだった。


――ようリンディ。  先週に引き続きまた今週の休みに時間を貰いたいんだが、まだこっちにいられるか? ああ、勿論無理にとは言わない。 時間があったらでいいぞ? 実は急に”二人っきりでデート”したくなってな、予定が空いてたらでいいから付き合ってくれないか? できれば今日の夜にでも返事をよろしく。 では、仕事頑張ってくれ。


「……二週連続?」

 小首を傾げる。 今まで、こんなことはなかった。 自分で誘ったことはあったが彼から二週連続でお誘いを受けたことは無い。 しばし呆然としたリンディだったがスケジュールを簡単に確認する。 断るというつもりはなかった。 確かギリギリで任務前の休みがあったはずだ。

「うん、やっぱり空いてるわ。 後は……」

 少し前にレティの言っていた言葉を思い出す。 男女の駆け引きという奴の話だ。 一年前のリンディならばもしかしたらそれをしようなんてことは考えなかったかもしれない。 だが、焦がれて焦がれた彼女はその誘惑に抗えなかった。 ずっとこのままが良いなんて考えていない。 欲張りな自分が、性急な答えが欲しいと胸の奥で叫んでいる。 その甘美な欲求が、デートに誘われるという”希望的事実”に後押しされ、そして彼女は決めてしまった。

 それがどういう結果を生むかなんてあえて考えないことにした。 恐怖が無いわけではない。 拒絶されたらどうしようと思う。 誰だってそうだろう。 しかしただ、ただ純粋に焦がれる感情の行き場所を求めた心は、それでも知りたいと切実に叫んでいた。


――葛藤に、答えが出る日は近いのかもしれない。 


コメント
グリモア君、エイヤルに対して重要なヒントを出しましたね
それに、アレイスターはやはりマスターテ…げほんげほん、とにかく例のあの人確定ですか
更新を停滞するそうですが、続きを首を長くして待ってます
【2008/09/25 10:38】 | ddd #1ZmDqKmk | [edit]
更新不能になるのは残念ですが、首を長くしてまっております。

それより、この展開だとリンディとすれ違って終わりそうで怖いですね。
【2008/09/25 10:43】 | r931 #- | [edit]
エイヤル君結構テンパってるようでグリモアに疑問を抱かない当たりがいつものエイヤル君らしくないですね、無理もないですが。

停滞される様ですがリアルの都合なら仕方ないと思います。
この作品は2、3年ぐらいなら待つ価値がありますから無理なさらないように。
【2008/09/25 11:59】 | 心慈 #i5RlUaH. | [edit]
やったーー、引っ越す前に乗せてくれてありがとう。これで一月くらいがんばれるよ。引越しお疲れ様です。一年くらいなら待っているよ~~~~~~(^o^)ノ
【2008/09/25 12:09】 | 名無しさん #qoLMz.1o | [edit]
リンディさん、それはフラグブレイクの魔法です!
キールとか、年月が経ってると恋愛関係も広がってますね。思えばミーアも年頃になっているんですよね。ティーゼルなんて女性に対しての顔が出来てるくらいですし。
三大蒐集器の存在が明かされても打つ手無し、不安しか見えませんね。
【2008/09/25 12:36】 | 悠真 #qx6UTKxA | [edit]
こんなところでストップとは…作者様は本当にエイヤルですッ!
リンディの…9年間も暖めていた恋する乙女の想いはBADENDフラグだってへし折れると信じてるッ!!!
…それでは帰ってこられるときまでお待ちしております。

【2008/09/25 13:22】 | 打刀 #- | [edit]
ここでストップとはもうこの鬼畜!
だがしかし待った分だけ楽しいということにして、次なる更新を待ちます。
【2008/09/25 14:51】 | ふくろう #v8QjPvAY | [edit]
リアルの事情とはいえこの状態で次回未定はきつすぎます。しかもリンディとすれ違いそうなのが

早い復帰を願います
【2008/09/25 14:56】 | 夕樹 #EBUSheBA | [edit]
ああああああ嫌な予感がするううううううううう
クライドだいぶ追い詰められてるから間違いなくすれ違い破局フラグ

蒐集詩篇の存在も判明して死亡フラグはどんどん強固に
闇の書と同じ蒐集系あったら噂はもっと広がるに決まっているだろうに、そんなことにも気づけないほど限界か…大丈夫なのか本当に?

しばらくの更新停止は残念ですが、復活を楽しみにお待ちしています
リアル生活もがんばってください
【2008/09/25 15:03】 | |・ω・) #LkZag.iM | [edit]
この状態でそれをいったらマズいって!
明らかにラスボス間近で言ったらマズいって!!
【2008/09/25 15:33】 | マイマイ #aReeLJcY | [edit]
これは破局フラグではなく死亡フラグではないかああああああ!?
エイヤル×リンディが好きなのでハートブレイクは覚悟しないといけないのか!?
更新のほうは首を長くして待ち望んでおきます
【2008/09/25 16:38】 | 天帝 #jtw.gl9w | [edit]
ヴォルケンズ、とっくに活動停止していたとは。

あぁ、本当にクライド君がBADENDに向けて驀進しているようで不安でたまりませんよ。
魔導王と聖王(どっちもコピー)、どっちにもクライド君、勝てそうもありませんし、頼れる女にも背を向けそうですし。
【2008/09/25 18:09】 | rin #mQop/nM. | [edit]
先週末にこの作品を発見し、つい先ほど全部読みきりました。
感想は面白いの一言に尽きます。こんな主人公が大好きだ。
更新停止は悲しいですが、復活することを願って毎週確認に来ます。
【2008/09/25 18:16】 | 華麗なる田中 #etbfE.eg | [edit]
このまま停止ですか・・・
待ちますが・・・やばいなぁ、泣けてきた(;;
憑依奮闘記面白すぎです。
超待ってます。
【2008/09/25 19:27】 | ぐらっぱ #SFo5/nok | [edit]
この話…おもしろすぎる!!!(脳内変換スネークの「うますぎ(ry…」)
おもしろいですw

①リンディがレティに言われて行うのがデートに行かない(焦らし)→エイヤル、タイムリミットで時の庭園へ→エイヤル重傷orもしくは夜天の書が管理局にばれて失踪(エイヤルは職場を気に入っているので選択しない気がしますが)→orz
②デートに行く→デートでリンディがディーゼルと付き合うことを言う→エイヤル苦笑してスルー→金貨が裏<単独に拘る>→エイヤル重傷or…→orz
③デートに行く→……→金貨が表<助けを求める>→orz

うーむ、③はorzではないですが、①②はドラマティックが溢れますねーw③は戦力が整いますがリンディは蚊帳の外…結局エイヤルとリンディはすれ違ったまま…ボタンをつけ間違えた関係が続くということですね(^w^)①②だとリンディが次元艦航に出て、次に管理局に帰ってくるまでエイヤルが居なくなったことに気付かない&その間にディーゼルがアタックしてリンディ惹かれる…やばいなぁ、続きが気になる!


第2位のアレイスターが■■ター■■オンなら第1位は世界最強の○○○○しかいない!!と思ったのは俺だけではないはず
【2008/09/25 21:22】 | kazu #.AUkuh/Q | [edit]
¥さてー、結果はどうなる~~。気になります。
更新待ってます。そう気長ーーーーに待ってます。でもハートブレイクなのか速く済ませてくださいね~。
『更新待つ』=『斬首待つ』ものですからね~(ぇええww
【2008/09/25 21:46】 | akira #wriFTfcY | [edit]
もう空気読まないロリコンがフラグブレイクしないかなぁ
【2008/09/25 22:21】 | 更新まってます1年でも #OARS9n6I | [edit]
 うーん、続きが気になるぅ(笑)。

 リンディとエイヤルとがうまくいってくれると良いのですが、やっぱりディーゼルとリンディのカップルになってしまうのか? エイヤル、死亡フラグやすれ違いフラグに負けるな(笑)!

 ところで、エイヤルが杖喰い(デバイスイーター)のことを知らない描写がありましたが、第一部13話「イレギュラー」において以下のような描写があります。


>>『――敵勢個体『杖喰い<デバイスイーター>』のハッキングを確認。プロテクト一部解除開始。閲覧可能情報増加による新着情報の確認を求む』
>>トールから、強制的に閲覧情報が送られてくる。何がどうなっているのか理解できないクライドは、それに縋ることしかできない。
>>その情報を確認した瞬間に血の気が引いた。

>>(な、なんだこれは!? んな馬鹿なこと――)
>>杖喰いとはカグヤが気をつけろと言っていたロストロギアである。並みの魔導師では太刀打ちできないと言うが、その理由がそこには列挙されていた。

>>(下位デバイスへの強制介入<ハッキング>能力に死者を五人は操るほどのロストロギア級のスペック? しかも……こいつは『対デバイス制圧用スタンドアローンデバイス』だと!? ふざけんな、そんなもの開発できるわけが――)

 つまり、エイヤルは少なくともデスティニーランドで対した相手が『杖喰い』であるということは知っていなければならないのでは? 「それらしいものと戦った」のではなく,「それと戦った」とエイヤルは断言してもよいのでは?
 まあ、昔のことだから忘れていた、ということかもしれませんが……。

 以上が気になりました。更新が出来なくなるとのことですが,いつまでもお待ちしますので、いつか続きを書いてください。それでは。
【2008/09/25 22:25】 | Y3S #bbxfQIXk | [edit]
あれ、いつの間にかキールにフラグが・・・
口調からシャマルあたりかな
守護騎士に脇キャラくっつけると後々話が作りづらくなるような予感
主人公モテモテ路線にはならないのか。
【2008/09/26 01:17】 | う。 #9L.cY0cg | [edit]
BADENDOフラグが、、、
クライドはどうだっていいですが、リンディには幸せになって欲しいのですw
でもそれだと、クライドが必要。
ううむ、難しいところですね。
これからどうやってまとめるか、期待して待っています。

追記
リアルのほうが大事ですので。こっちはあせらずにゆっくりとw

【2008/09/26 02:21】 | えせる #- | [edit]
ども、竜一です。 今回も時間忘れるくらい、引き込まれるな内容でした。
いつの間にかフラグどころかカップル成立で驚きました。多分シャマルの方かと思いますが、私は結構お似合いではないかと。

なんか某提督が面白い性格に・・・、彼がヘンな趣味に目覚めないか心配です。

なんか友達いたんだな、黄金マスクマン。彼は外伝とか読んでて悪い印象しかなかったけど、今回の彼はそれほどでもなかった。その内彼の背景が語られる日も来るのでしょうか?

初登場なレティさん、なんか普通に原作の印象そのままという感じですね。確かにエイヤル君との相性は悪そうだ。

そして今回最大の目玉、リンディのヤバイフラグ成立。このまま行くとどう転んでも碌な事にならない、BADENDフラグな気配がものすごいです。いっそデート中にマスクマン勢力の乱入とかでうやむやになってしまえばいいのに・・・

次回は第五話にして、二部の山場になりそうな予感。一月でも一年でも待っていられる作品なんで、リアルの方がんばってください。でも携帯とかで返信だけでもあったら、読者として感激です。

それでは、第二位のお方の『嬉しい誤算』に期待しつつ待ってます。お疲れ様です。
【2008/09/26 02:27】 | 竜一 #- | [edit]
おうおう、相変わらず読ませる展開ですなあ。
お忙しい中更新お疲れ様です。
私も文句言わず何年でも待ちますので。完結を期待してます。

ところで今回誰も明確に突っ込まないのはわかりやすいから共通認識としてスルーなのか? グリモアさんのやけに自然に自信ありげな杖食いについての会話と「やれる」という能動的なセリフから、グリモアさんが三大の一の<蒐集詩篇>であるに一票。スルーすべきポイントでしたらごめんなさいw
【2008/09/26 03:43】 | しろる #vHaYES/A | [edit]
これはいい!!
というか良すぎる!!

途中までいろいろ思うところがあったのに、やっぱり最後で全部吹き飛んじまったよ!!
まったくもって、渡る世間は未知ばかりですなwww
【2008/09/26 14:43】 | リアン #- | [edit]
今回もあっという間に読んでしまった…。
更新お疲れさまです。
自分も完結まで何年でも待たせていただきます。
なんと言うかリンディには幸せになって欲しい。やっぱり次回がとても重要な分岐点なんでしょうね。
自分はペルデュラポーの嬉しい誤算とやらがクライドにも良い方に働くことを願ってます。


最後に、今回の流れで リンディ、クライドを試す→クライド身を引いてしまい、リンディはディーゼルとゴール→その後、書を追いかけてたクライドと、それにかち合ったディーゼル→書が暴走して二人ともアルカンシェルでアボン→そして原作へ…
という鬱ルートを妄想した自分はもうダメだと思う。
【2008/09/26 22:48】 | 牛猫 #mQop/nM. | [edit]
クライド君はどうでもいいけど(ゑ)、リンディには救いを!
もう一人のほうはフレスタとくっ付いちゃえYO!(更にゑ)
【2008/09/27 09:50】 | 九景 #g49uma2w | [edit]
皆思い思いの感想を書かれてるので、自分も特に気になった部分をコメントしてみたい。
 キールの惚れた相手ってまさか"シャ○"なのか!(伏字の意味ねぇな)
ヴィータ最初に選択肢外れるしシグナムは基本別行動な上そうだった場合喋りに違和感があるし、残るは彼女しかいない。
 しかし、大変興味アルいべんとなのに、大部分が省略されてるのを読んでやはりシャ○だとおもってしまうのはなぜだろう…

遅れましたがお引越しがんばってください、おそらくここにいる人たちは自分を含め二年三年はもんもんとしながらも待てる猛者なのでごゆっくりしてくださいw
【2008/09/29 19:18】 | Tomo #Lis.ZDmI | [edit]
dddさん r931さん 心慈さん 名無しさん 悠真さん 打刀さん
ふくろうさん 夕樹さん |・ω・)さん マイマイさん 天帝さん rinさん
華麗なる田中さん ぐらっぱさん kazuさん akiraさん
更新まってます1年でもさん Y3Sさん う。さん えせるさん 竜一さん
しろるさん リアンさん 牛猫さん 九景さん Tomoさん

皆さんどうもこんちにわ。
暖かいコメントをありがとうございます^^

思えば、ぽつぽつと妄想してたら書きたくなったから書いてた憑依奮闘記ですが皆さんの空虚を少しでも一瞬でも埋められたのだとしたら幸いです。 いやはや、私も想像してる最中は本当に充実していた気がします。

今後、復帰できるかどうかは未定ですがまた復帰できたらお会いしましょう。
では、さらばです!!



追伸
BBSは迷ったんですが、放置しとくことにしました。
なんかもったいない気がしてw
【2008/09/29 20:52】 | トラス・シュタイン #da/Koam6 | [edit]
今回も面白かったです。
クライドはこのままだとすべてをなくしてしまいそうですね。
守護騎士、リンディ、そして自分の命。そんなことを考える
自分が嫌ですけど。
これからも応援していますので頑張ってください。何年でも待ちます。
【2008/09/30 08:01】 | NAI #IgNuUUdA | [edit]
はじめまして、にしんといいます。

リンディが立ててるヤバめなプラグにクライドの無限コンテニュウー開始、そして無印へ……。という流れが頭の中を駆け巡ってます。

アカーン、batendの匂いがぷんぷんだ



サイトの方も更新待ってます。

私は五つ星物語のコミックを揃い続ける者。
待つのは馴れてますw
【2008/10/02 14:02】 | にしん #JalddpaA | [edit]
>「それと、もう一つアドバイスをしておくよ。 結局、人間にとっては世界の中心に立っているのは自分なんだ。 そこに他人が入る余地などありはしない。 だから傲慢でもなんでも良いから人間は自分を貫こうとするんだ。けれど、今の君は違う。 自分が中心に立っていない。 他人に遠慮を>する必要などないんだ。 君の流儀で君の世界の中心に自分を立てよう。後はそれを納得できるまで現実に擦り合わせる、それだけで自ずと答えは出るはずだよ」

ここら辺は限界突破するためのヒントってヤツでしょうかね。
更新再開楽しみにしてます。
【2008/10/17 00:38】 | 黒猫 #wbvlsWA2 | [edit]
現在5話を読んでいる途中です。頑張ってください。
そしてもう1つ。
作家様のこの小説を翻訳したいんですが宜しいでしょうか?
【2008/10/27 04:33】 | jjiksol #- | [edit]
もう閉鎖に近い状況なのか?
それともまだ復活の予定あり?
てか、復活して欲しかったりする。
【2008/12/18 19:29】 | 自己中 #- | [edit]
閉鎖ではなく管理人の家庭事情による放置です。
ちなみに自分も小説の続きが気になります。
【2008/12/22 22:36】 | 一ヶ月ぶり #- | [edit]
はじめまして、三ヶ月位前に知り合いにこのサイトのことを教えてもらった打製戦記です。
二週間位前から読み始めて今さっき読み終わりました。
ありきたりの言葉ですが、面白かったです!!


いつまでも待ちます。完結できるよう応援してます。頑張ってください!!
【2009/01/24 10:43】 | 打製戦記 #- | [edit]
NAさんIさん にしんさん 黒猫さん jjiksolさん 自己中さん 一ヶ月ぶりさん 打製戦記さん

 どうも、コメントありです^^
近場のネカフェ(移動に三時間弱)からの返信です。
おそらく当分まだまだこんな感じになるかと思います。
がんばらんとなー俺w


――作家様のこの小説を翻訳したいんですが?

 翻訳ですか? えーと、日本語だから読みづらいとかってことですかね? それならばどうぞご自由にしてやってくださいなw


 しっかし、久しぶりにネット世界に帰って来ると何をしていいやらさっぱりわからなくなってるなぁ。 流行もわからんし……く、やばいっす。 かなりおいてかれてるかもしれないw
【2009/02/09 21:46】 | トラス・シュタイン #da/Koam6 | [edit]
初めまして~全部読ませていただきました!
先が気になるところで更新停止とは作者様はドSでございますね。もちろん私は待ち続けますが、時間かかっても完結して目指して欲しいところです。
【2009/04/10 19:29】 | クロトリ #- | [edit]
幾度か読み返すことによって思ったのこと。
……ここが分岐点の気がものすごくする。どちらも物語を綴ってほしいと思う俺は欲張りなのだろうか。
【2009/05/19 21:04】 | kazu #.AUkuh/Q | [edit]












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