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憑依奮闘記2 第八話

 2009-07-11
 螺旋階段の中腹で”紫銀に輝く槍”を握り締め、槍の騎士は容赦なく攻め立てる。 それに抗うのは、紫銀の刃。 だがその輝きは槍と衝突するたびに奪われ、輝きを少しずつ失っていく。 鍔迫り合いなどしようものなら、ごっそりと輝きを奪われて話にならない。 魔導師としてのクライドの常識を破壊するその女の名はラウムという。 獰猛な笑みを唇に刻みながら、ただただ楽しげに槍を振るい、悪意無き槍で幾度と無くクライドを攻めていった。
 だが、それでもなんとかクライドは紙一重のところで耐え凌いでいた。 グラムサイトの恩恵、グリモアの魔力、そして常に回転し続けるその思考が融合し、ようやく”それらしい”戦いになっている。 だが、それ以上は今のままではさすがに厳しかった。 いや、それ以上に結びつけるにはまだ時間が足りなかった。

――魔力吸収<マジックアブソーバー>。

 聞いてはいたが、その真の意味は体験して始めて理解できた。 そもそもにおいて、三大魔法には他人の魔力を奪うことは無理だという常識がある。 他人が制御している魔力には干渉できない。 例外はデバイスや協同魔法行使時などのごく一部の例だけだ。 少なくとも、それ以外のでは他人の魔力に干渉することなどできはしない。 それができるならミッド式の集束系などの魔法は瞬く間に無力化されているし、弱い魔導師でも数を集めて高ランク魔導師の魔力を奪いながら戦うなどといった戦術を構築することもできるだろう。 だが、実際にはそういった魔法も技術も存在しない。 魔導師が自分で支配下に置いた魔力は、その魔導師のものになるというルールがあるからだ。

(外部放出系の魔法は魔力吸収によってほぼ弱体化及び無力化、近接魔法は接触時にのみ魔力吸収が行使できている……俺のグラムサイトの魔力はそのままだが……グリモア君の魔力と比べれば俺の魔力は脅威にも値しないというわけか?)

 グリモアから戦場で得たデータをダイレクトに受け取りながら、クライドは対策を模索する。 遠距離魔法……ことさら近接系魔法を除く外部干渉系の魔法はほぼ全滅。 魔力をいとも簡単に準備段階で奪われてしまってほとんど役に立たない。 辛うじて近接魔法とバリアジャケット<防護服>、そしてメギンギョルズ<電磁フィールド>は遠距離では魔力を奪われていないが、それも接触すればその限りではない。 どうやら、この二つのルールが魔力吸収能力(?)にはあるらしい。 

 とはいえ、それが分かっていて攻めあぐねるのは相手がベルカの騎士だからである。 というよりも、それが一番のネックだった。 単純にラウムは近距離戦闘が強いのだ。 クライドは現在身を守ることに全力を注いで辛うじて生き残っている状態である。

「どうした、亀みたいに守りに入りやがって。 ちったぁ攻めてきやがれよ。 ”一方的じゃあ”つまらねーだろ」

 クライドは答えない。 余分な思考を極力排除し勝つことだけを模索する。 必要以上の時間はかけたくなかったが、それでもかけざるを得ない。 目の前の女は規格外ではないものの、明らかに強者にカテゴリーされる人物だ。 一朝一夕でどうにかなる相手ではないし、通常のミッド式の魔導師とは違い、単騎の決戦力を重視したタイプだ。 しかも、”遠距離魔法”を潰す能力を持った近接特化の魔導騎士である。 近接戦闘を強いられているという時点で、敵の術中に完全に嵌ってしまっている。 付け加えて、槍のリーチは刀よりも当然長い。 そう簡単に懐にもぐりこむのも用意ではないだろう。 クライドは槍の間合いギリギリをなんとか保つことで耐えていた。

 豪快に振り回される槍は、それ自体がまるで中空に円を描くような軌跡を奔る。 魔力光の描く残像が円系のシュプールを刻んでは次の瞬間には別のラインを形成した。 そのラインの合間を縫って攻め込むタイミングを計るが、クライドはそれでも未だに踏み込めずにいる。 微妙に変化するラインの、特に間合いのコントロールとフェイントがラウムは抜群に上手く、そして速い。 正に槍の騎士と呼ばれるに相応しい技量を兼ね備えている。

(無茶苦茶やり難い……ミッドの魔導師とは根本的に戦闘思想が違うせいか。 くそ、ミョルニルが撃てないのが痛すぎる)

 プラズマを撃ちだすマジックレールが、展開した側から魔力を奪われて霧散する。 プラズマもそうだ。 少し電磁フィールドから離れればたちまち魔力を奪われて消えていく。 近接用のプラズマを打ち合う度に刀に供給して辛うじて持たせているが、これでは持久力の観点からこちらが先に膝を折るだろう。 向こうは奪った魔力を直接攻撃に回している。 こうして戦うだけでも削られていくわけで、時間が経てばたつほどクライドは不利になっていくわけだ。

(マジックガンを使うか? しかし、この距離で中てる自信が無い。 あんまりやりたくないが……やってみるか?)

 放たれようとする左からの薙ぎ払い。 広大な空間を制圧するそれをクライドは回避も弾くこともせずに、ここに来て初めて前に出た。 両腕でしっかりと握り締めた刀が、左から強襲してくるそれに向かって縦に構えられ、強引に受け止める構えを見せる。 瞬間、両腕にかかる槍の衝撃。 だが、なんとかそのままの体制を維持したまま瞬時に左手を刀の握りから手放してマジックガンを最速展開。 敵に鍔迫り合いで魔力を吸わせる好機を与えながら、ほとんど勘を頼りに引き金を引く。

(マジックガンは通常の魔法とは少し違う。 通常の銃のように銃身内を魔力が通る。 普通の魔力放出系の魔法とは少しばかり発動工程が違うから普通の魔法とは勝手が違うだろう。 しかも、刀から魔力を吸わせながらだ。 これなら――)

 マジックガンから放たれた青の閃光が、鍔迫り合いで一瞬動きを止めたラウムを襲うはずだった。 だが、クライドはそれが希望的観測であることを次の瞬間には思い知った。 必中の胴を狙ったそれが命中する前にはもうラウムの身体はそこにはない。 グラムサイトがいち早くそれを感知させた頃には、すでにラウムは高速移動魔法でクライドの右側面へと移動している。 その手には、すでに振りかぶられた槍が握られている。

『やば――』

 先ほどまで刀は鍔迫り合いをしていた左側。 左手はマジックガンを発砲した状態。 ”クライドには”打つ手がない。 目前に迫るそれを回避しようと足で虚空を蹴るようにしてエア・ステップを敢行するが、それでもリーチが長いその槍からは逃げられそうにない。 だが、次の瞬間にはクライドの予測とは裏腹に己の身体はそこから十数メートル離れた位置に高速移動していた。 誰もいない虚空を薙ぎ払った槍。 その槍の握り手は、必殺の好機を逃がしたことに眉を顰めながらこちらを見ていた。

『――た、助かったぞグリモア君』

『いえ、それより来ますよ』

 そうだ、今のクライドは決して一人で戦っているのではない。 二人で一人な今現在、こうしてグリモアがクライドのミスをカバーする。 そうやって、二人はこの数日管理局の手から逃げ延びたのだ。 特に、グリモアはクライドの安全にはことさら注意を払っている。 強制介入をしなければならないと判断すれば例え攻撃中でも躊躇無くそれを実行してきた。 当然、クライドはそれに文句を言うことはない。 守られているのだから、文句など言うはずがなかった。

「ん……奇妙な玩具だなそれ。 それがあんたの切り札か?」

「俺の”最高傑作”だ」

 切り札ではあるものの、すでに晒したそれはもう決め手になり難いだろう。 クライドは己の浅慮を悔いながらも、左手の引き金を引く。 一つ確かめなければならないことがあったからだ。 再び放たれる青の閃光。 だが、それをラウムは体捌きだけで避けた。 閃光はそのまま直進し、黄金の螺旋階段の一部を砕き、貫通していった。

「おお? マジで変だ。 普通の魔法じゃあないな。 魔導兵器の一種か? お宅はミッドの魔導師なんだろ。 そういうのは本来”ご法度”じゃねーのか?」

「あんたらのせいで俺は大絶賛”犯罪者中”だ。 ご法度も何もありはしない」

 マガジンを取り出し、詰め替える。 その間、ラウムは動かなかった。 ただ何かを考えあぐねているらしく、奇妙なほどに動かなかった。 警戒しているのかもしれないと、クライドは思った。 だが、それにしては少しばかりその顔は歓喜に満ちているのはどういうことだろうか?

『室長、今の砲撃……弱体化されませんでしたね』

『ああ、態々目の前で撃ってみたがその気配が無かった。 となると、まだこいつにも出番があるかもしれないな。 予想できる理由は二つ。 グリモア君はどっちだと思う?』

『やはり、”現状維持”のせいでは? 魔法よりも魔導砲に原理が近いからといって、まったく魔力が変化しないのは理屈の上では可笑しいでしょう。 センサーは今までと同じ量の魔力を感知していました』

『となると、俺の”現状維持”はあいつの”魔力吸収”よりも効果が強い……のか?』

『或いは特質が相殺されているだけかもしれません。 通常のルールに落ち着けば干渉ができませんから。 ただ、言える事はそれで今相手が少し動揺してることでしょうか? ……遠距離武器は手に入れましたけど、いけますか?』

『……これじゃあほとんど無理だな。 ”防御に徹して動かないんなら近距離ならなんとか中てる自信がある”が、動かれたら中てる自信がない。 加えて、あの女は基本敵に防御するタイプじゃあないらしい。 絶対に避けようとするだろ。 とはいえ、”糸口”は手に入れた。 要するに、あいつは俺の魔法なら”魔力吸収できない”わけだ』

 聖王のように、自分が手におえない相手ではないようだ。 そのことに安堵を覚えながら、クライドは大きく深呼吸する。 聖王は完全にクライドの天敵だ。 魔法を高速で把握し、策を見破った上でクライドの行動を予測して対処することができる。 しかも、本人が規格外なまでに強いらしい。 策が弄せないということは、戦力をひっくり返すための手札が無効化されることを意味し、それはそのままクライドを無力な子羊にしてしまう。 少なくとも、あの距離ではそうだった。

 それに比べて今目の前にいるラウムはどうか? ベルカ式という使用する魔法とレアスキルの有無はともかくとして、毛並みこそ違うがまだ”相手にできる”範疇にいる。 聖王のゲーム眼はどうやらあながちハズレではないようだ。 確かに、そこそこの勝負ができる。 勿論、つまりはそれはクライドにとっても勝ち目があるという意味でだが。

 取りうる手段が存在するのであれば、チャンスをモノにできるように立ち回れば敵は無敵足り得なくなるだろう。 そこで初めて、勝利することができる。 問題はその手段をより多く持つと同時に、その武器の確実性を磨くことだ。 それが初めから在る程度用意しておくことができれば、大抵の相手に勝つことは可能性として不可能ではなくなるだろう。

 綻びが見えた。 ならば、クライド・エイヤルはそれを利用して戦うしかない。 こんなところでグリモアに切り札を使わせる気もなければ、長々と時間をかける余裕など無いのだから。

「……なんだ?」

「……な!?」

 と、クライドがどう戦うかを在る程度決めたところで、ラウムとクライドは一瞬そろって頭上を見上げた。 何があったのかは分からない。 だが、酷く良くないことではないかとクライドはこのとき思った。 ラウムが驚いていたことを考えると、どうやら目の前の彼女もそれを知っているわけではなさそうだ。 だが、ここは敵地だ。 希望的観測は最小限にするべきだ。

『……莫大な魔力量を最上階方向から感知。 聖王やシリウスのものとは別です。 ……何者かが大規模魔法を放ったようです。 この魔力量……人間が所持している魔力量を大幅に超えています。 どうやら近くにある駆動炉から魔力のバックアップでも受けたようですね』

『攻撃目標はさすがに俺たちじゃあないだろうから、カグヤか……それともインテレクトか?』

『……インテレクトへの回線接続開始。 ……繋がりました。 ステータス正……いえ、回線ロスト……どうやら、落とされたみたいですね』

『……ドクターは?』

『別回線でのインテレクトへの接続を辛うじて確認できました。 恐らくは、艦外で活動しているものかと思われます。 ……連絡しますか? 向こうから通信してこないということは、何かやっている途中なのかもしれませんが……』

『……長々と話す余裕は無い、か。 先に目の前の奴をどうにかしよう。 無事なら今はそれでいい。 やばかったら、連絡してくるだろうしな』

 ラウムの方も気にはなるようだが、もうすぐに気持ちを切り替えているらしい。 槍の切っ先はこちらに向けられ、すぐにでも続きをしようと騎士の気持ちを代弁しているようにクライドには見えた。

(オーケー、とっとと続きを再開しよう。 悪いが、次はこちらから攻めさせてもらうぞ)

 紫銀の魔法陣の下に、燦然と輝く青の光。 クライドのミッド式の輝きが青くその存在を主張すると同時に、クライドの周囲に青のシールドが四つ程展開されていく。 実体を持ったそれは、円形の盾<ラウンドシールド>。 しかし、その円周部にはノコギリの刃のようなギザギザがあり、さらには中心部を基点として高速で回転を始めていく。 クライドの得意魔法シールドカッターだ。 どうやら、本当に向こうはクライドの魔力を吸えないらしい。 狙い通り四枚のシールドが生成されたままなのがその証拠だった。

 次の瞬間、マジックガンを仕舞ったクライドは紫銀と青を引き連れながら今度は自分から槍の騎士へと攻め込んでいった。















憑依奮闘記
第八話
「天国へと到る道」














 ラウムにとって、本来であればそれほどその男に感じ入るものなどなかったはずだった。 カノンが居るという事実があって初めてそれなりに戦えていたが、お世辞にも強いとは思えなかった。 あの局員に似て何故か眼だけは良さそうではあったが、それだけだろうという評価をしていた。 しかし、その男が奇妙な銃を使った辺りからその認識は頭の中から吹き飛んでいた。

(なんだ、こいつの魔法は? ありえねー。 あたいが魔力を全く奪えないなんてそんな馬鹿げたことが”ありえる”のかよ。 姉御でも奪われるのを防げないんだぜ?)

 だが、現実にその男の魔力が一向に奪えない。 その魔法を破壊することはできる。 当然だ。 その男自身の力はカノンと比べればまったく脆弱の一言に尽きる。 槍を少しばかり叩き付けた程度ですぐに消える。 だが、それを使い始めた辺りから目に見えて戦場の流れが確かに変わった。 出来る限り鍔迫り合いにならないことと、一撃離脱を繰り返すことを徹底しながら、こちらを次々に攻めてくる。 面白い。 ”未知”に焦がれる彼女の王と同じく、この瞬間ラウムは初めてそれを認識した。

「くはっ、なんだその魔法は!! てめぇ、ずりぃぞ。 こんな面白いもん隠し持ってやがったのかよ!!」

 ニヤけるのを止められない。 奮い立つ自分を抑えきれない。 相手が強ければ強いほどに燃え立つ心が、好奇心と闘争心を刺激する。 興奮し、高揚し、胸が高鳴る。 全身の血液がまるで沸騰したかのようだ。 

 振るう槍が青い円形の盾を破壊する。 一つ、二つ、三つ、その次に迫ってくるのは黒の男<夜天の王>。 カノンの力を精一杯凝縮させた一撃を、シールドカッターの迎撃中に繰り出してくる。 嫌なタイミングで仕掛けてくるものだ。 今までよりも深い間合いで振るわれる紫銀の刃。 辛うじてそれを槍が弾くと、今度は四つ目の盾がラウムを背後から強襲し、フィールドを削ろうとガリガリと嫌な音を立てる。

 その盾の嫌なところは、通常の射撃魔法のようにすぐに消えないところだろう。 フィールドに負荷をかけながら確実に削ろうとしてくる。 非力な癖に、それでもラウムに一矢報いようと背一杯回転するその様はある種の最後の瞬間まで決して勝負を捨てない”諦めの悪さ”を感じさせ、なお一層嬉しくなる。

 世の中にはすぐに諦める奴が多すぎる。 例えば、勝手に勝てないと思い込んで事実その通りに負けていく奴だ。 そいつらは酷く諦めが良すぎてラウムは嫌いだった。 戦う者は最後の最後まで全力でなければならない。 相手にとっても、自分にとっても、そうでなければ悔いを残す。 気持ちよく戦えない相手にはそんな奴が多い。 何故諦める? 何故死に物狂いで挑まない? 紙一重にでも一矢報いるチャンスなど、戦場ではゴロゴロと転がっているのに? 別に逃げるなとはいわない。 だが、次に会うときはもっともっと粘れと言いたい。 より手強くなって挑め。 より諦めを悪くなって来い。 本気で戦うとは元来そういうもののはずだ。

 一撃を加えてすぐに離脱した男を確認すると、すぐに背中からぶち当たってきたそれに振り返るようにして槍を叩きつける。 振り返った次の瞬間には、何故か目の前に二人目のクライドがいた。 人間が分裂するなどありえない。 であれば、それは幻影<フェイク>なのだろう。 踊りかかってくるそれの腕には、回転するシールドがある。 なんとなく嫌な予感がした。 訝しんだが、邪魔だ。 槍で一突きにしてやった次の瞬間、ラウムの危機感は最高潮に達した。 思わず後方へと逃げる。 だが、ラウムがそれから十分な距離を取る前に彼女の眼前でその幻影はは盛大な閃光と爆音を放ってきた。 余りの光陵に眼が死に、音の感覚が消えてラウムはその瞬間前後上下の感覚を失った。

(閃光に爆音か……うは、えげつない手を使いやがる!!)

 空中に静止しているかどうかさえわからない。 そんな状態で、辛うじて信じられるのは自分の勘だけ。 だが、それでもラウムは正確にクライドの方へと槍を構えた。 魔力吸収能力を持つせいか、酷く魔力源に対する感覚が彼女は高い。 それに咄嗟に離れたことで辛うじて忘我状態になるほどのダメージを食らっていない。 まだ十二分に身体の反応はあった。 身体は動く。

 網膜に焼き付いて離れない白い闇。 ラウムはそれを恐れない。 それどころかその状態で追撃をかけようと接近してきた男に向かって槍を振るう。

「――な、に!?」

 クライドの驚愕の声が聞こえる。 何かを弾く硬い感触。 破裂する魔力の感触と槍を通して魔力を吸い上げるあの独特の感触がラウムの感覚がまだ正常であることに自信を持たせる。 壮絶な笑みを浮かべながら、ラウムはただただ勘を頼りに槍を振り回す。 出鱈目にではあったが、それでもその一撃一撃は彼女が狙った型通りに振るわれていた。 
 何千回、何万回と行ってきた動きだ。 身体に染み付いて離れないそれは、例え眼を瞑っていたとしても正確に再現できる。

 男との距離が離れた。 次に感じたのはあの妙な銃の持つ独特の魔力。 今この瞬間だけは魔力源が三つに感じた。 だが、恐れる必要は何もない。 横に飛び、狙わせない。 自分が空でどういう動きをしているかどうかなんて気にもしない。 ただただ、横に飛んで次の瞬間には上に飛んだ。 その斜め後ろを何かが通った感覚がする。 恐らくは外した。 弾は確か二発。 後一発ある。 さて、どうやってそれを避ける?

 アドレナリンが全身に周り、思いがけない窮地を与えてくれた敵に最大限の礼儀を尽くすべく思考を加速させた。 次の瞬間、ラウムは高速移動魔法を展開。 自身でも驚くべきほど正確に男の真下に移動していた。 身体は通常の重力に逆らう形で真横になり、単純な薙ぎ払いとなって男の真下から強襲する。 三次元戦闘ゆえのアクロバティックな攻め。 特に、真下という通常は考えられない角度からの攻撃。 感触は無い。 だが、敵は上に飛び上がることで避けたようだ。 その頃には、少しばかりボヤけた視界が戻ってくる。 槍を振るった体制のまま泳がせていた身体はそのままに、頭だけは首を限界まで捻って自分の方に向けられる銃身を眼に捉える。 加速した思考が、瞬時に判断する。 いや、半ば反射的に身体は次の選択をしていた。 槍を振りぬいた右腕の握りを瞬時に変え、泳いで捻れた上半身を引き戻すようにして全速で回転運動を開始する。

「貫けぇぇぇグングニル!!」

 紫銀を纏う槍先が半円の軌跡を描いた次の瞬間、叫び声と共に紫銀と白で染まった槍が大掛かりなバリスタから発射された矢のように、一直線にクライドに向かって放たれる。 ラウムの切り札の一つである投げ槍の技だ。 それとマジックガンの引き金が引かれたのはほぼ同時だった。 上から迫る青の弾丸と投げ放たれたグングニルが、両者の中間地点でぶつかり合う。

 せめぎ合う青と白。 ラウムは一瞬勝利を確信した。 単純に威力差の問題だ。 ラウムの全力の魔力を込めたグングニルの方が、計算では確実に強い。 青を貫く白の槍。 クライドに向かって伸びるその槍が、最後の決め手となるはずだった。 だが、無常にも槍はクライドの左肩すれすれを通過し、電磁フィールドをバリアジャケットを食い破って左肩の肉を少し奪っただけで天に昇った。 視力が完全に戻っていないせいでどやら目算を誤ったらしかった。

 ラウムにはもう獲物たる武器は無い。 それをチャンスと捉えたクライドが、プラズマの刃を掲げて踊りかかる。 ラウムは舌打ちしながらも、最後まで抵抗する。

「やべ、しくじったな」

 アレで決めるつもりだった。 投げた瞬間には決まるだろうとラウムは思っていたのだ。 振るわれる刃を後方に跳躍して避ける。 重力の力もあってか、思いのほか一撃目より遠い間合いにして避ける。 上下反転した状態のクライドは、空振りをしても動じない。 エア・ステップで更に空を蹴るようにして距離を詰める。 ラウムは高速移動魔法を展開。 背面に回り込むようにして真横に放たれた薙ぎ払いを辛うじて避けると、上を目指す。 愛槍は遥か天に昇っている。 それを回収しようというのか。

「させるかよ!!」

 真後ろから高速移動魔法<ハイスピード>で距離を詰めたクライドが、至近距離からフープバインドを放つ。 しかしラウムは驚異的な体捌きでそれを避ける。 彼女は魔力に敏感だ。 それは勿論バインドも例外ではない。

「ちっ、しゃーねーな。ほっときゃそのうち降りてくるか」

 右腕を引く。 その瞬間伸びるように現れる白の槍。 ただしその内部にはぽっかりと穴が空いている。 その穴は丁度彼女の愛槍が収まるだけのスペースとなっている。

「フィールドの槍だと!?」

「そらよっ!!」
 
 中身の内フィールドの槍。 魔力には重さが無いために先ほどまでよりも随分と早い。払われた切っ先がクライドを襲う。 防御する暇もなく電磁フィールドにぶつかり、魔力を奪いながらクライドの身体を吹き飛ばす。

「ぐうぅ……」

 横腹に走る衝撃。 電磁フィールドのおかげで激痛程度で済んでいたが、そのまま螺旋階段の上まで吹き飛ばされたクライドは階段を二転三転と転がり落ちる。

「非常用の隠し武器って奴さ。 武器が手元に無いときの非常用の魔法だ。 習得してる奴は昔から少ないが、まあこういうときには結構使えるわな」

「つっ……げほ、げほ。 騎士甲冑のフィールドを利用した即席の武器か」

「そういうこった。 デバイスを保護するために自動生成してる奴を、手動生成で発生させる。ただそれだけの魔法さ。 中身が無い分重みはないが、武器の上から生成しているのと同じぐらいの強度を持ってるぜ。 それ以外にも色々と違いはあるけどな」

 階段の上に立ち上がるクライドを楽しそうに見ながらラウムは言う。本人にとっては大した秘密でもないのだろう。 別段それ自体はどうでも良い。 問題なのはもう殆ど目の状態も戻っていることだ。

「お前も色々と隠し持ってるみたいだし、今度はこっちが見せてやるよ。 あたいの魔法の真髄って奴をな」

「……」

 やや紫銀に輝くフィールドの槍。 その言葉に何か引っかかるものを感じたクライドは、訝しげながらも刀を構える。 ラウムはそんなクライドの様子を一顧だにせず、再び戦闘を再開していく。 距離をつめ、振るわれる槍。 クライドがシールドカッターを三枚生成しながら距離を取ろうと跳躍。 だが、その瞬間突き出された槍が蛇のように空中でうねりながら延びてくる。 その射線の先にいるのは勿論クライドだ。

「ちっ――」

 刀を振り上げ槍を弾き、お返しとばかりにシールドカッターを発射。 だが、伸びた槍の中ほどから木の枝のように新しい槍先が伸びだしシールドカッターの中心を貫通して破壊。 クライドはそれを見るや否や、すぐに距離を離すべく螺旋階段の下に飛ぶ。 そのクライドを追うようにしてフィールドの槍が伸びていく。

「くそ、無茶苦茶器用なことしやがる。 ベルカ式は特化魔法だろうが、どうしてそんなことができやがる!!」

「攻撃用の特殊フィールドだからさ。 だもんで、フィールド攻撃に長けているだけさ」

「ああそうかい」

 距離を取っり続けながら考えるクライド。 と、その眼前で白い魔力光を放ちながら白の槍が上から凄まじい速度で落ちてきた。 不自然なことに、その槍は進んでラウムの右手の近くでまるで意思を持つかのようにピタリと虚空で静止する。

「――オートリターン<自動帰還>システム!?」

 戦場で一々投擲武器を回収する暇などない。 だが短距離を余剰魔力で飛び、主の下へ帰還するデバイスがベルカでは作られていたことがあるらしいことをクライドは思い出した。 カートリッジシステム然り、ベルカのデバイスへのアプローチは実戦思考なモノが多い。 確かに、その機能が与えられても不思議ではない。 その代わりラウムのデバイスにはカートリッジシステムは装備されていないようだ。 とはいえ、ラウムには必要ないのだろう。 魔力を奪うことで敵の魔法を弱体化できるのだ。 態々自分の魔力を底上げする必要性はあまりない。

 フィールドの槍を消し、白の長槍を再び握るラウム。 そこで一旦クライドも距離を離すのをやめた。 

 今までと違うのは先ほどのフィールドの槍をデバイスに纏っているということか。 手にした槍をクルクルと頭上で回転させて槍の感触を確かめるようにし、ラウムが構える。 その眼は獰猛な肉食獣のように獲物を真っ直ぐに見据えている。 今までが八分程の実力しか出していなかったのだとすると、完全に本気になったことが容易に理解できた。

(このままだど面白くないな……) 

 グリモアの魔力を吸って威力を弱体化させるマジックアブソーバー、ベルカの騎士特有の近距離戦闘技能に槍のリーチ。 何より、目をやられても感だけで相手を攻撃できるその鋭敏な感覚。 その騎士としての実力を疑う要素は無い。 手強い相手だ。 グリモアがいなければ相手にもなっていなかっただろう。

『グリモア君、あいつの攻撃を電磁フィールドで受け止めることが何秒できる?』

『四秒持てば良いほうですね。 彼女の攻撃は最低限度の威力はありますが、こちらの魔力を奪い去って防御力を致命的なまでに削ってきます。 接触後の方が相対的に威力が上がるというわけですね』

『なるほど、ならやってみるか』

 まともにやっていては埒が明かない。 ブラストバレットの爆裂弾を二個詠唱。 一つはラウムの方に向けて発射し、虚空で爆破。 もう一つは近場にあった部屋のドアにぶつけ吹き飛ばす。 爆煙で一瞬遮られた瞬間を利用し、クライドは部屋の一つに飛びこむ。

「……あん? 隠れんぼでもする気かよ」

 爆発の粉塵の合間に攻撃してくるかと数秒ほど警戒していたラウムは、少しばかり拍子抜けしながらも進入したと思わしき部屋へと近づく。 と、彼女の鋭敏な感覚が次々と増えていくクライドの気配に気がついた。 罠を張っているつもりなのだろう。

 時の庭園にいたときに大抵の部屋の内装は同じだということをラウムは知っている。 とはいえ、それは上階の話。 そこそこ広くくつろげる空間だったことは覚えているが、下の階層の部屋がどうなっていたかあまり覚えていない。

 だが、敵の狙いは明白だろう。 室内では槍を振り回すスペースが小さくなる。 ラウムの戦闘力をこれで奪おうというのだ。 随分と姑息な真似をする。 さらに、恐らくは幻影の魔法でかく乱して攻撃を仕掛けるつもりなのだろう。 普通ならここで部屋ごと爆破でもしてやるのが無難な方法だっただろう。 だが、ラウムはあえて誘いに乗ってやることにした。

 そこには彼女が魔力を吸収できない魔法を使用する敵への興味と、武人としての矜持があった。 狭い室内にいるから槍を振るえない? 馬鹿な、自分の槍は場所を選ぶようになどなっていない。

 場所によって変動する程度の強さで終わるつもりはラウムにはない。 どんな場所であろうとも戦ってこそ武人というものだ。 魔法を手に入れた騎士は、空だろうと海だろうと宇宙だろうと次元空間のなかでさえも戦う術を得たのだ。 室内で戦えないなどということはない。

 それを証明するためにも、ラウムは敢えて敵が動きを止めるのを待った。

「いいぜ、誘いに乗ってやるよ。 せいぜいあたいを楽しませてくれや夜天の王」

 狩人は罠を敷き弓を引いては獲物が来るのを待ち受けるものだ。 だが、相手もまた狩人であったのだとしたら、どちらもまた獲物足りえる。 槍の騎士はそのまま無造作に部屋へと足を踏み入れた。 その瞬間、室内が一気に爆音と閃光に満ちた。

「はっ、二度も同じ手はくわねーよ。 さぁ、やってみろ夜天の王!!」

 一度喰らってから騎士甲冑の術式は変更済みだ。 強すぎる光と音を遮断する騎士甲冑。 だがあまりの光陵に目で捉える光がラウムに対して消失現象を生む。 ラウムは目を瞑ると、槍を構える。 魔力の気配は七つ。 頭上に一。 左手に一、前方には飛び掛ってくる気配が三つ。 その後ろには二つ。 波状攻撃というわけだ。 だが、魔力量が一番高いものが本命だろう。 ずば抜けて魔力に対する感覚が鋭いラウムは既にそいつの居場所を掴んでいる。

 間取りは光が発生するまでに瞬時に把握した。 この部屋は上階と同じ間取りだ。 ならば、ベッドの位置もテーブルの位置も覚えている。 何も問題は無い。

「グングニルよ、貫けっ!!」

 一番奥にある高魔力反応に向かって槍を向け、飛び出す。 飛び掛ってきた前方の幻影なは白の槍から伸びだしたフィールドの槍で貫き、一気に破壊すると一足飛びで槍を突き出す。 馬鹿正直に真正面から突き出した。 この程度なら避けられるだろう。 だが、腕にはしっかりとフィールドに衝突したような反応が返ってきた。

(何、何故避けな――!?)

 瞬間、横に居た生き残りの一つと、上と後ろにいた幻影の辺りから一気に三つほどAAAランクオーバーの程の魔力が発生する。 今攻撃しているS+の魔力を持った本命がいるのにも関わらず、だ。 ラウムは混乱しながら瞬時にどれが本物かを考える。 しかし、迷っている間にも新たに発生したその三つの気配が攻撃を仕掛けてくる気配を察知している。 

――逡巡は一瞬、その迷いが命取りになった。

 背後に一瞬で距離を詰めた何物かが、バインドをラウムに放っている。 右手をそのままに感だけを頼りに身体を強引に捻ってそれを避ける。 そこに、さらに前方から飛来する脅威の魔力。 反応はしたが身体を動かしきれなかったラウムの身体がそれをモロに受けって吹き飛ぶ。 槍から手を離さなかったが、攻撃を中断させられた。

「ちぃぃ!?」

 ゴロゴロと転がりながら悪態をついた頃には、部屋を入ってすぐ左に隠れていた方角からの銃撃。 回避。 身体を跳ね上げたところに放たれる意地の悪いバインドを槍を振るって叩き落とす。 それと同時に、奥に居た一人が再び発砲。 だが、狙いが甘い。 ラウムを微妙に掠めるようにして弾丸が過ぎ去った頃に、ようやく室内を光で隠していた光源が消えた。 だが、そこに一気に一気に”三人のクライド”と”グリモア”が容赦なく突っ込んだ。

「――てめぇ、カノン!?」

 そうだ、ラウムの攻撃を攻撃を受け止めたのはクライドから融合解除した彼女<グリモア>である。 攻撃を受けた拍子に幻影は解除されたが、かまわずに彼女は突っ込んでいた。

 ラウムにとって驚異になるほどの魔力を持つのが三人いる。 前方のグリモア。 部屋の入り口付近から迫る二つのクライド。 一人は手にあの奇妙な銃を持ち、もう一人は何やらグローブ型のデバイスを腕に装着している。 一対四。 普通に考えて一番驚異なのは勿論グリモアである。 機動砲精にして夜天の王を守る最高位のデバイス。 だが、それに匹敵するような驚異度を持つ者が二つある。 迷う暇は無かった。 白い槍がフィールドからフィールドの槍を生み出し、残りのクライド三人に伸びる。 本命の槍はそのままグリモアを狙っていた。

「――電磁フィールド出力全開!!」

 グリモアは再び、それをフィールドで受け止める。 満足にタメてもいないその槍は、先ほどよりもさらに威力を激減させていた。 クライドの一人が銃を放つが、それと同時にフィールドの槍で串刺しにされて霧散。 もう一人グリモアの近くにいたクライドが踊りかかるが、再びそれは凄まじい光を音を発しながら爆発。 再び世界が光で染まる。 その中で、高速移動魔法でフィールドの槍を避け、ラウムの背後に現れた黒い閃光が腕を振るう。 限界まで圧縮されて開放された魔力の流れが、一発砲撃を受けて弱ったラウムのフィールドごとその身体を切り裂く。

――クライド流奥義マジックカッター。

 居合いのような太刀筋で後ろから背中越しに切り裂かれたラウムが、苦虫を噛み潰したような表情をした。 だが、それも一瞬だった。 すぐに苦笑に変わったその顔には特に嫌味などなかった。 ただただ己を倒した戦士に対する称賛の表情しかなかった。

「……やるなカノン、お前も、お前の連れもよ。 どういう手品だったかは知らないが……一杯食わされちまったぜ」

 少しずつ魔力の霧に還っていくラウム。 自分が敗北したことを悟ったラウムは、苦笑しながらもう一人の勝者に向かって背中越しに言う。 

「――夜天の王、また出会うことがあったら楽しく酒でもやろうぜ? あんたは色々と”面白かった”。 ちょっとばかし興味が沸いたぜ」

「おごってくれるなら付き合ってやるよ。 ただし、殺し合いは無しだ。 後、ザフィーラに謝罪してからだぞ。 でないと絶対に付き合ってやらん」

「あいよ、そんな機会があればそうしよう。 精々気ぃつけて先に進めや。 どうも、ここには”あたい”も知らない奴がいるらしいしな……」

 それだけ言うと、ラウムは白の魔力となって完全に消えていった。 クライドは内心では絶対に御免だと毒づきながら、幻影が持っていたマジックガン二つを拾うと、マガジンを入れ替えてからツールボックスに仕舞いこんだ。 そうして、思い出したかのように左肩に手をやった。 投擲されたグングニルによって掠った部位だ。 我慢していたが、今になって痛み出した。 フィジカルヒールを唱え、少しばかりグリモアと一緒に休憩する。

「そっちは大丈夫だったか?」

「はい。 防御だけに専念してましたし、所撃は余計な三人を攻撃して少しばかり魔力を減らしてましたしね。 二度目はタメも無かったですから余裕でした」

「そうか、ならいい」

「ところで、今の幻影は一体どうやったんです? マジックガンを持って普通に撃ってましたけど……」

「ジャケットのフィールドを被せて物を持たせただけだ。 あの状態なら殴りかかることもできるぞ。 まあ、フィールドの防御はそんなに強くないから殴り返されたらすぐに消えるけどな」

 マジックガンは引き金さえ引ければ少なくとも魔導砲モードでは撃てる。 幻影に持たせて撃っただけだった。 四発中一発は命中すればマジックカッターで倒せるとクライドは踏んでいたのである。

「へぇぇ……では最後の攻撃は?」

「クライド流の最終奥義だ。 Sランク以下の出力の通常防御魔法なら一発で抜ける」

「……室長総合Aランクですよね?」

「ああ、しかし人間やってやれないことはないぞ。 方法さえ間違えなければ、だがな。 ただし、規格外は除く」

 規格外の聖王やカグヤにはどうやっても勝てる気がしないので、クライドは謙虚にそういった。

「BDA……少し甘く見すぎていたようですね。 少しばかり室長の戦闘力目安を上方修正しておきます」

「どれくらいだ?」

「無難にA+ぐらいにしておきますよ」

「……あんま変わらないな」

「ミョルニルを一発ぶち当てれば簡単に倒せそうなので、この辺りが無難かと思います」

 助手は正直者だった。

 その後しばらくして再び融合し部屋を出た頃、クライドはドクターに通信を送った。 少し気になることがあったからだ。 空間モニターの向こうにいるドクター。 どうやらインテレクトではなくてこちらも螺旋階段にいるらしい。 移っている黄金色を見るとすぐに居場所を推察できた。 やはり、何かあったのだろう。

『――おや? 君はまだ螺旋階段にいたのかい?』

「ああ、ラウムとか言う槍使いを撃破した。 これから最下層付近まで一気に突破するつもりなんだが……少し前に妙な魔力反応があっただろう? インテレクトはそれにやられたのか?」

『ああそうだ。 驚くべきことに敵は”魔法アルカンシェル”を放ったよ。 それもこの塔の上から超長距離にあるはずのインテレクトを正確に狙ってだ。 魔力は駆動炉からバックアップを受けたのだろうけど、いくつか疑問がある。 私は今、それを調べるために螺旋階段を上っている最中だ。 あと少しで駆動炉にたどり着くかな』

「魔法アルカンシェル……だって? そんな馬鹿な!!」

『カノン君を除けば、聖王や魔導王が放てる可能性は確かにあるんだけど……、私はその直前に敵の姿を見たよ。 確認するがね、君は今カノン君と一緒にいるかい?』

「あ、ああ。 グリモア君は俺と融合しているぞ」

『では、少し悪いが取り込み中でなければユニゾン・アウトして画面に現れてくれないか? 直接彼女と話がしたい』

「……? わかった」

 融合を解除し、グリモアが通信モニターからドクターに向かって困惑気味に顔をのぞかせる。 それを確認したドクターは、頷きながら尋ねた。

『やはりそっくりだ。 一つ尋ねるがねカノン君。 君以外に”機動砲精”がいる可能性はあるかね? しかも、今の君に極めてそっくりな容姿の、だ』

「……いるわけがありません。 ボクの製作者は一人は行方不明、もう一人はアルハザードにいるんです。 その二人しかボクを作ることはできないでしょう。 古代ベルカの技術者のうち、ボクを完全に理解できた研究者はいませんでしたし、ボクのコピーなんてそもそも存在するはずがないんです。 ボクは最終的に”メインの製作者専用”のデバイスになるはずでしたから」

『そうかね? ではアルハザードにいるもう一人ではなくて、行方不明のはずの人間が消える前に作成していたという可能性はどれだけあると思うかね? 私は今の君に恐ろしくそっくりな女性をアルカンシェルが放たれる寸前に目撃した。 可能性でいえば、君のレプリカか何かだと思うのだがね』

「……ドクター。 仮にボクが量産されていたとして、ボクは未完成品です。 ここからではさすがにインテレクトは狙えないし、あの魔力出力だと発射に耐え切れずに確実に自壊します」

『であれば、君の”完成品”か何かのようだね。 君に姿がそっくり過ぎるのは可笑しいし、そうでなければ説明ができない。 アルハザードの連中でもなければ、君を作ることはできないはずだ。 気をつけ給え、何か裏があるかもしれない。 通信機はこのまま電源を入れておくよ。 何かあればすぐに分かるだろう』

「……駆動炉に向かっているといいましたね? いったいどうするつもりですか? 仮にボクの完全体が存在するとして、貴方ではどうにもできないと思いますが……」

『何、私なら君たちよりも敵の狙いを正確に理解できるかもしれない。 少しばかり無理をするかもしれないが、気にしないでくれ。 それよりも、君たちも早く行動を起こした方がよくないかね? 理解できない何かがいることが分かったんだ。 それが行動を開始するよりも先に目的のモノを回収するべきだと私は思う』

「ドクター、あんたはどうするつもりだ? そこまでしてその”何者か”を調べる必要はないんじゃないか? なんだったら、一度俺たちと合流しても良い」

『必要ないよ。 傀儡兵も魔導機械も私と共にいる。 それに、私の頭脳を持ってすればこの程度はどうとでもできるのだよ』

 ニヤリを笑いながら、ドクターはそう言い切った。 クライドはそれにそこはかとない不安を覚えたが、本人が”それで良い”というのであればそれ以上食い下がることはできなかった。

「気をつけろよドクター。 どうせならハッピーエンドの方が良い。 知り合って間もないが、勝手に死なれるのは目覚めが悪い」

『くく、誰にものを言っているのかね君は。 私はジェイル・スカリエッティだよ? 無限の欲望の一欠けらだ。 君こそ、私が君たちを見限ってその得体の知れない奴と手を組むことの方を心配しておきたまえ』

「……はは、違いない」

「ドクター、神父役と友人代表は貴方です。 後で会いましょう」

『ああ、勿論だよカノン君』

 快く頷きながら、ドクターは通信機の電源をそのままに懐に収めてから移動を再開した。 モニターの向こうは真っ暗になり、ただ音だけが響くだけになった。 

「……グリモア君、一応言っておくけど未来はまだ未定だぞ?」

「しかし、もうほとんど約束された未来像ですよ?」

 クライドに融合しながらそういうと、グリモアは笑いながら言い切った。 自分そっくりの何かに対して、特に何も感じていないのかもしれない。 或いは、気にしていることを悟られないように振舞っているのかもしれなかった。 だが、どちらだろうとやることに変わりは無い。 クライドに出来ることがあるとすれば、さっさと闇の書を取り返すことぐらいだ。 通信機を繋いだまま、周囲に響くように大音量に設定するとクライドはそれを懐に仕舞う。 そうして、左肩の調子を確かめながら軽く動かし、マジックレール<魔力電磁砲身>で移動を開始。 更に、先ほどまで満足に使えなかったミョルニルも準備する。

『急ぐ理由が一つ増えたな』

『そうですね』

『遠距離砲撃タイプを優先に狙ってくれ。 残りは機動力で潜り抜ける。 昔戦った経験からいくと、傀儡兵は基本的に反応が鈍いはずだ』

『分かりました』

 そうして、二人と一気は螺旋階段の最下層目掛けて全速で飛翔していった。













 螺旋階段を上に上にと進みながら、ドクターは少しばかり先ほどのカノンとの会話内容を考える。 結論からいえば、発明を完成させない研究者はいないという結論に達していた。 未完成で放置するなどありえない。 どのような科学者であれ研究者であれ、未完のうちに研究を放棄するなど到底考えられない。 そんなものがいるとしたら、そいつは科学者でもなんでもない。 ただのアマチュアだ。 求める方向性が違うために研究を凍結するのであればまだ納得がいくが、明確に専用デバイスにするとしていたのであれば完成させないわけがない。 つまりは、駆動炉にいるのは完全なる機動砲精だと簡単に予想できた。 

 苦笑する。 余りにも危険だ。 普通の冷静なる自分ならば態々近づくことなどしないはずだ。 だが、今こうしてその危険だと心底分かっている相手のところに向かっている。 自分が異常なのか、それとも正常なのかさえ曖昧になっている。 或いはそうしなければならないと思うこの感情こそ、人間が普通に持ちえる他者へ愛情、自己犠牲精神とかいう奴なのだろうか?

 本来ならばありえない。 だって、そうではないか。 ドクターにとっては自分以外の全てが本来なら敵だった。 だとしたら敵のために自分を犠牲にするなどという思考はば発生するはずがない感情のはずだ。 道理に合わないと言っても良い。 だが、元にドクターはそれでも良いかなと思っていた。

 ドクターにその未知の感覚を教えたのは、きっとあの二人だ。 断頭台<グライアス・デュリック>とガンスリンガー<チェーン・ムーブル>。 かつて究極の自己犠牲と自己満足のために命を投げ出した二人の存在は、ドクターの中で凄まじい衝撃となって今でも心に残っていた。

 初めて自分の敵でもない、利用するだけの存在でもない彼らと出会い、話をしたときの記憶はまだ昨日のことのように思い出せる。 まず初めに、思いついた文字は単純な四文字で表せる。 ”理解不能”だ。 これに尽きるだろう。

 同じように苦しんだ同業者を救うために戦い続けたグライアスの過去話、そしてそんな彼らを犠牲にした連中に対して己の命を全てかけて戦いを挑んだ稀代の暗殺者チェーンの話。 気がつけば、ドクターはその理解不能に魅せられていた。 そして、彼自身が持つ反抗心と反骨精神が自身の中で共感するそれとして繋がったときには、彼らと交流して純粋に楽しんでいる自分がいることに深い感慨を抱いたものだった。本当に初めてだった。 研究以外で喜んでいる自分を発見したのは。

 それから少しして、ドクターは彼らのために自分が用意できるモノを提供し、もてなした。 テレビにトランプなどの娯楽道具、デバイスの整備道具などといった本当に身近にあるちょっとしたものだったが、そんな程度のもので大層喜んでくれた彼らの笑顔は、まだ脳裏に焼きついている。

 何か、とんでもない発明をして渡したわけでもない。 世界を揺るがすような発見があったわけでもない。 だが、ドクターにとってはそれを成したのと同じぐらいの満足を初めて覚えた。 自分以外を喜ばせることで、だ。 在る意味ちょっとした事件であったといっても良い。 そんな自分に戸惑いながらももうしばらく邂逅し、話をして、共に自分を使う連中のことで愚痴ったりしながら、インテレクトで過ごした。 過ごした時間は長くはなかったが、それでもその時間は今まで生きてたなかでも最高に輝いていたとドクターは断言する。 そして、彼らの繋がりを知れば知るほど羨ましくなった。

 自分には彼らのように感じる心が無い。 それは本来人間に備わっているはずの道徳や倫理が欠如し、完全に価値観や何やらが違いすぎるせいだった。 裏側で居続けた弊害だ。 表側には、あんな心躍らせる連中が居るのに、何故自分はこんな薄暗い場所で居続けなければならないのか? 卓越した頭脳がその元凶に気がつくのにはそれほど時間はいらなかった。

 あの黄金の男や、最高評議会の老人たち。 ひいてはこんな暗黒に自分を陥れた管理世界こそが元凶だ。 それへの復讐心があのウィルスの開発の動機でもある。 元々反逆するつもりであったというのもあるが、それに会わせてスカウトマンとの邂逅もあった。 だからこそ、同じ反逆者である夜天の王や彼のために反逆すること選んだカノンに対して思うところがあったのだ。 ある意味では天啓だったのかもしれない。

 ドクターは時空を越えて出会えたあの二人と同じように、彼らに出会った。 もしかしたら、これは運命という奴なのかもしれない。 そんな非科学的なことさえ今は感じている。 そして、その衝動に身を任せたおかげでこんな危ない橋を渡ろうとしている。 だが、不思議と後悔は無かった。

「そろそろか……」

 ドクターは懐から爪の付いたグローブ型のデバイスのようなものを取り出し、右腕に装着する。 銀色に輝く爪がキラリと光るが、それは別に攻撃用のものでない。 右手覆うその黒いグローブには幾何学的な紅の紋様があり、何がしかの魔法科学的な意味合いを連想させる。 そうして、封印が完全に解かれた己のコアからとある特殊なエネルギーを励起させ準備を追えると、少しばかり目を瞑った。 使い方は覚えている。 かつて、魔導王に反逆するためにオリジナルが用いようとしたモノに限りなく近い。 突貫で製作していたものの一つではあったが、十分な威力を見込めるだろう。 少なくとも、生半可なものを用意するよりは遥かにマシだ。

 眼を開ける。 濁ったようなくすんだような、そんなドクターの金色の瞳が、最上階に向けられる。 ずっと暗黒に居たその眼に映るのは絶望などでは決して無い。 今を見据える力強い希望に満ち満ちた不敵な瞳だ。 瞬間、ドクターはあの二人が駆動炉の部屋の前で頷いているような光景を幻視する。 ドクターは苦笑しながら頷き返す。 そうして、ありもしない幻覚に見送られて駆動炉に己の生み出した魔導機械たちと共に突入していった。 

 まず聞こえたのは重苦しく震動する駆動炉の音だった。 忙しなく動き続けるそれが、時の庭園の心臓の鼓動だ。 薄暗く広大な室内。 中心にある巨大な駆動炉。 だが、そこには今一度訪れたときには眼にしたことの無い別の装置が付属していた。

「アレは大魔導師プレシア・テスタロッサが研究していた……なるほど、やはり……”そういう”つもりか」

 思わず眼を細めながら、周囲に壁になるように傀儡兵と魔導機械たちを配置する。 外側にはAMFを展開できる魔導機械たちにフィールドを展開させ、内部には背の高い傀儡兵たちに警護させる。 一番防御が高い重砲撃型の腕から飛び降りると、油断なく周囲を見据えながらドクターは駆動炉に近づいていった。

(超魔力変換装置……なるほど、ヒュードラのアレの改良型か。 しかもこれは、私のオリジナルが途中まで図面を引いていた奴に似ているね。 ……私の完成型のデータはオリジナルが密かに破棄したから、プレシアの理論と掛け合わせて利用することで完成させたのか? だが、これだけでは虚数空間への扉は開かない。 ”アレ”がどこかにあるはずなのだが……)

 駆動炉から目を離し、さらに進む。 と、巨大な駆動炉の後方にある整備用タラップの上から小さな人影が姿を現した。 ドクターがそれを見上げ、魔導機械たちが一斉に攻撃態勢に入る。 だが、こちらから先制攻撃をかけることをドクターはよしとしなかった。 むしろ、自分から声を張り上げてその人影に向かって話しかけた。

「やぁ、完成型機動砲精君。 こうして会ったのは初めてかな? よければ、私と少し話をしないかね?」

「……話? 特に貴方とする会話はないと思うけどね。 ドクター・スカリエッティ」

「そうかね? だが少しぐらいサービスしてくれても良いじゃないか。 私のオリジナルの失われた作品を無断で復元しようとしていたのだろう?」

「……へぇぇ、貴方封じられた記憶が完全に蘇っているのね。 シュナイゼルが厳重に封印していたはずなんだけど……あら? 驚いた。 コアの方もかしら。 すごいわ、自力で超魔力中枢の封印を解除したの?」

「そんなところさ」

 両手を肩のところまで上げてそういうと、ドクターはカノンのコピーである可能性を頭の中から瞬時に除外。 カノンのコピーであるとするならば、話し方が違いすぎる。

「ふむ、それにしても驚いたよ。 まさか君がそんなところにいるとはね。 そういえば、君とは生前にオリジナルが何度か会っているね? お互いオリジナルではない偽者のようだが、まぁ多分君なら分かると思うのだが……」

「あはっ。 すごいすごい。 そんなことまでわかっちゃうの? 貴方、本当に頭の回転が早いわね。 この姿はあの娘に合わせてみただけなんだけど、どうかしら? ちゃんとあの子のお姉ちゃんっぽく見えるかしら?」

「そうだね、もう少しばかり身長があった方がそれらしいかもしれないね。 しかし、行方不明の君がまたどうしてそこにいるんだい? ”アルカンシェル・テインデル”」

「あはっ――アハハハハハハハハ……」

 名前を呼ばれたその女性は、タラップから跳躍。 地上数十メートル以上ある場所から、ヒラリと舞い降りてドクターの前に降り立った。 足元に広がるの紫銀の光。 飛行魔法で降り立った彼女の姿は本当にカノンに瓜二つだった。 だが、ドクターが驚いたのはそれではなかった。 明らかに様子が可笑しい。 

 何が可笑しいのか、クスクスと笑い、笑い続け、しまいには瞳がグルンと白目を向いてまた戻り、明らかに異常な感情表現をした。 思わずドクターの背筋が凍る。

(正気ではないね。 確実に病んでいる。 精神が? 違う、思考ロジックそのものがだ。 まるでバグっているようにも感じられる)

「ドクター・スカリエッティ。 アナタは、ナニヲシニキタノ? 好奇心で死ぬため? ソレトモ、まさか大昔のケンキュウセイカを私たちがどれだけ再現したかを確かめるため? それとも、ソレトモ、それともそれとも、ソレトモ、ココで死ぬために?」

「君が何者かを確かめるためというのが一つ。 そして、ここで君たちが何をしようとしているのかを突き止めるためさ。 まあ、在る程度予想できてはいたが、しかし驚いたな。 本来の君であれば、プレシアの研究を流用せずとも当の昔に開発できたろうにね。 やはり”人格模倣AI”では思考を模倣するだけで、それ以上は無理だったのかな?」

「ダイセイカーイ。 すごい、凄いわドクター・すかりえってぃ。 あなたはなんでも知っているのね!!」

「あー、大丈夫かね? 随分と思考ロジックが可笑しいようだが?」

「心配しなくてもダイジョウブよ。 シュナイゼルはこんなワタシでも良いっていってくれたから。 ジルとは違うのよじるトワ。 わたし、シワワセにななななるるるんもんんん」

「そうかい。 ところで、”ジュエルシード”は用意しなかったのかね? これ単体ではアルハザードに攻め込めないと思うがね。 いや、今回は虚数空間内での稼動データが欲しいだけかな」

「あー、アレ? あれはねー、もういっぱい準備して終わってるよ? 後はこれを完全駆動させてトキノテイエンを落とすだけよ、あー、その前にアノコを回収する必要はアルカヌゥアァァ?」

「ほう? 完全体である君があるのにかい?」

「この身体はもともとあの子のために作ったんだもの。 仮想データであるワタシがいつまでもいつまでも間借りしておくわけにはイカナイノー。 あああ、でもあのこ彼を裏切ったんだっけ? 大変だわ、ドウシマショウ、こうしましょう? そう、そう、ソウダワ。 掴まえて初期化してあげればいいんだわ。 ソウスレバ、あのこもわたしも彼もハっぴハッピ」

(ふむ……シュナイゼルの良いように思考するように改造されているわけか。 しかし、これは不味いな。 本当に完全型だとすると、彼らでは絶対に手がつけられまい)

 空間モニターを起動し、簡易センサーが取得している情報に眼を向ける。 思考回路は狂っているが、中身は完全にモンスターだ。 少なくとも計測できるだけでも今のカノンの倍近い出力がある。

 カノンが試作型だとするならば、今目の前にいる完成型には彼女に無いはずの何もかもが装備されている可能性がある。 例えば新しい武装だとか、魔法アルカンシェル発動時の消耗軽減などなどだ。 一発大魔法クラスの魔法を放っているはずなのに、思考以外に異常はなにも見られない。 単純にカノンの未完成部分を克服しただけの代物ではないようだ。 完全に別物であると考えた方が良いのかもしれない。

「ふむ、貴重な話を聞かせてくれて感謝するよ完成体君。 そろそろ私は帰ろうかと思うが、君はどうする? このままずっとここに居ては巻き込まれると思うのだが……」

「作業を終えたら離脱するわよ。 タイマーセットシテダッシュツするから心配はいらないワ。 もうすこしだけ時間がカカリソウナノヨネェー。 ついでに、虚数空間にヤテンノショを落としてハイキする役目もあるけど、そっちは別にモウマンターイ」

「ああそうだ、それともう一つあったよ。 こんなところで次元震動を発生させれば、ミットチルダが滅びると思うのだが? 確か、座標的に近かった気がするが……」

「大昔のデータがあるから、かなり局所的に次元切断エネルギーの運用が可能になったわ。 多分、ミッドはダイジョウブイ。 でも、反対側の方向は相当にヤバイカモもももも。 でも、イインジャナイ? 脅威を利用してJSウィルスが起こしうる混乱をウヤムヤにしてしまうんだって。 コンランをさらに超倍する混乱をぶつけて相殺する……あはは、スゴイわしゅないぜる。 全部ぜんぶゼンブぜーんぶその手の中よ。 中なかナカでききることではあないいいわ」

「……」

 ドクターは眼を見開いて舌打ちする。 そんな上手く行くものかと思う反面、あの男ならばそれぐらいはやってしまいそうで軽く眩暈を感じた。 

「それにぃぃ、今この近くに管理局の船がアルミタイダカラ、そのヒトタチガ被害を軽減するでしょ。 すごいぐうぜん、恐ろしい偶然、これで確実にまた管理局の実績積み上がるーるーるー」

「なんだって?」

「外壁部の自動防衛装置は解除。 あとはやってくるだけーーねーー。 せいおうは死んでも死なないしー、了承済みー。 じゃまなシリウスちゃんはどうせにげるしかできないーいでしょ。 まあ、彼女も殺しても死なないからー、やっぱりなんにもかんにも問題なしー。 シナリオはじゅんぷうまんぱんなわけ。 あとは、あとはみーんんあみーんな……デスるだけっけーけけというわけっでドクター・すかりえってぃー?」

 狂った完成体の表情が崩れる。 歓喜に、怒号に、驚愕に、次々と変わりながら。 尋常ならざる何かを表現しながら唇が裂けるのではないかというほどをつり上げながら笑おうとした。 もっとも、形づくれたのは笑顔ではない。 もっと凄惨で憤怒に彩られた顔である。 

「またシュナイゼルの予定通りに殺されようか邪魔なドクター? 裏切り者のドクター? 掌を返す絶望の使途ととととと。 もう少ししたら、”貴方たち全部”いらなくなるだろうからーらーらー」

 瞬間、紫銀の魔法陣が完成型の足元に展開され脈動する。 それに反応した魔導機械たちが、一斉に壁を作るようにしてドクターの前に集い、青いレーザー光線でもって敵対行動を始めた完成型に攻撃を仕掛ける。 だが、それを嘲笑うかのように攻撃は全て無効化されていった。 紫銀に輝くメギンギョルズ<電磁フィールド>が、それら全てを弾きとばしたのだ。

「っ……出力が違いすぎるか!!」

 相手の魔力量が桁違いだ。 傀儡兵もが遅れて攻撃を仕掛けるが、完成型はビクともしない。 ただただ笑いながら、攻撃用の魔法を起動していく。

「敵対象フルロック。 数は、カズはかずはぁぁぁ――とにかくいっぱい」

「く、不味い」

 右手を前に差し出し、デバイスを起動。 その瞬間、ドクターは己のコアから後天的にオリジナルが遺伝子改造で得た”超魔力”を放出し、足元に幾何学模様のテンプレート展開。 そうして眼前に特殊な力場を発生させる。 それはAMF<アンチマギリンクフィールド>と呼ばれる、本来なら魔法に対してかなりの効果を発揮する防御力場となるはずだった。

「ディフュージョン・ミョルニル……全弾発射!!」

 次の瞬間、視界を埋め尽くすほどの莫大な量のプラズマがドクターの視界を覆った。 右手を突き出したまま、左手で視界を一色に染め上げていく紫銀の閃光から眼を守る。 だが、そのドクターの抵抗を嘲笑うかのように超音速のその魔法はドクターの身体を無残にも吹き飛ばす。

 壁になったはずの魔導機械や、傀儡兵たちがそのたったの一発で全て貫きAMFなど壁にもならないとでも言うかのように虐殺の限りを尽くした。 ドクターが気がついたときにはもう、自分の身体が天井を見上げていた。 そして、身体を動かそうとして胸からこみ上げてくる熱い液体を吐き出しながら理解した。

 右手と左足が無い。 そして右胸ごと自分の身体に何やら穴が開いているらしい。 激痛を感じるよりも先に、彼の頭脳は自ら驚くほど冷静に左手を動かし、通信機を口元に当てた。 映像は眼が霞んで見えない。 それどころか、さきほどまで動いていたはずの左手がピクリとも動かないことに苦笑しかけた。 だが、それよりも先にドクターは残る生命力の全てをかけて静かに言った。

「――書を回収し……一刻も早くここから出……時間はもう……ないよ――」

 所々声にならなかったが、辛うじて全てを聞いていたであろう彼らに言いたいことだけは告げることが出来た。 その瞬間、ドクターを襲う激痛。 声が出せたことさえ奇跡だった。 だが、それでもこの言葉が何がしか彼らのためになるだろうと薄れ逝く意識の中で思った。

『――ター、しっかり……おいドクター!!』

 通信機から何やら誰かが自分を呼ぶ声がする。 酷く焦っている。 何故だろうか? ああ、自分がもうすぐ死ぬからか?

(くく、この私を心配してくれる人間があの二人以外にいたとは……つくづく、表側は面白い人間が待ってるらしい。 ああ、私も早くそこに行かなければ……神……友役が……あるのだからねぇ……)

 真紅の血溜りが広がり、ドクターの命の雫が流れ出ていく。 どうやら、死に掛けると走馬灯というか、ありもしない幻覚のようなものが見えるらしい。

 そこで、ドクターはたった三人だけで結婚式を開いていた。 新郎は眼つきの悪い男で、新婦は小柄な女性だ。 面白いことに、自分はどうやら黒い神父服などを纏って聖書を片手に友人代表までやっていた。 笑える。 なんと滑稽な姿だ。 しかも、自分はその二人を心から祝福している。
 これで笑えなければいつ笑えというのか? そうして、ドクターは二人して教会から出て行く二人の門出を祝福しながらずっと教会から見送った夢を見た。 そこで、彼の意識は完全に闇に落ちた。 口元は楽しげな笑みを刻んでいる。 悲痛さなど微塵も感じさせずにドクターは逝った。

「あー、あー、カノン? そこにいるのかな? 後で向かえに行ってあげるからもう少し待ってて。 ん? ドクター? 邪魔だから消えてもらったよ? 大丈夫、心配しないで。 すぐに夜天の王も消して貴女に新しい体を上げるから。 ダカラだからだかラ、逃・げ・ちゃ・だ・め・よ」

 狂った女の笑い声がする。 ドクターの死体の側で、その女は通信機を放り投げると残りの作業に戻っていく。 そうしてもうしばらく作業をした後、彼女は残骸が散らばる床を歩きながら意気揚々と駆動炉を後にした。

















「……このデータ、間違いはなくって?」

「はい艦長。 驚くべきことですが……その、”事実”です」

 既に庭園の周囲を出鱈目に旋回するように移動している艦船『レインボー』のブリッジでは、レイン・リャクトンが思わず頭痛を抑えるかのように眉間に手を当てて唸っていた。 それもそのはず、接近して得られた情報から今現在時の庭園の上では管理局員でさえも思わず恐怖するような馬鹿げた魔法戦闘が行われていたからだ。

 魔力量換算でオーバーSSの女が二人。 そして、その戦闘に平気で混ざっているオーバーSの男が一人いる。 別の場所では、傀儡兵と思わしき機体と見たことも無いような円柱型の魔導機械が同士討ちをしながら戦い、さらにそこでもオーバーAAA以上の鎧の男とSランクほどの少女が大立ち回りしていた。 これで頭痛を感じないでいられる局員がいるとすれば、そいつはきっと鋼でできた心臓でも持っているに違いない。

「……どうしてあんな連中が大暴れしているのを定置観測隊の連中は誰も発見できないんですの? 揃いも揃って無能なんですの? ありえませんわこんなの!!」

 ダンっと椅子に備え付けられている肘掛部分を強打するように席を立つレイン。 ブリッジにいる全員もまた、彼女と同じ心境だ。 特に、データ観測した女性オペレーターの顔色は青いを通り越して白い。 はじき出されたデータを解析していくにつれて、特にヤバイ二人の女がモニター画面に映るたびにコンソールを操る指先が気の毒な程に震えた。

「……アレはもうSSランクの規格で呼ぶべきではないかもしれませんね」

 リンディ・ハラオウンもまた、強張った顔のまま呟いた。 観測データからもたらされるデータを見れば、さすがの彼女でさえそう思わずには居られない。 自分と同等かそれ以上の魔力量を持つ女が二人、大絶賛戦闘中である。 介入して止めるとしても、下手に介入して二人掛りになられでもしたら、今目の前で恐ろしくハイレベルな戦いをしている連中を止めきれる自信は無い。 いや、そもそも一対一で戦えるかどうかも怪しい。

(総合というよりは戦闘特化の空戦SS+……ぐらいかしら? いいえ、トータルで考えたらSSSに限りなく近いレベルなのかも……こんな連中がまだ在野にいるなんて……)

 正直、戦いたいとは絶対に思わないが、みすみす何もしないなどという選択肢は彼女の中に存在しない。 険しい顔でモニターを見つめる翡翠の瞳には、それとは別の焦りもまた存在するからだ。 そうして、注意深くモニター越しに戦場の様子を伺っていた彼女は、不意にその存在に気がついた。

「レイン艦長、どうやら古代の叡智が介入しているようです」

「古代の叡智が?」

「はい。 あの紅い鎧の人ですけど、ディーゼルさんが捕縛し損ねた人にそっくりです。 エスティアに記録されている戦闘データと比べてもらえば分かると思いますけど……」

「ということは、貴方たちに破れた後にここまで移動したということですの? いえ、相手はリビングデッドでしたわね。 元々彼らの拠点がここだったのかしら。 それとも、また別の作戦行動中というわけ? 私は連中と出会ったことが無いからなんともいえないのだけど」

「時空管理局の方では彼らの目的は良く分かっていないないですから確証はありませんけど、大抵はロストロギアの蒐集に動くことが多いようです。 最後に彼らが動いたのが九年前のデスティニーランド襲撃事件のときです。 そのときはスクライア一族の所持していたユニゾンデバイスが狙いだったようですけど……今回の狙いは分かりません。 そもそも、守護騎士と一緒に行動していたということはロストロギア狙いではなかったはずですから。 守護騎士がロストロギアを求めて活動したなんて記録は今までの事件にはないようですし、私たちと戦ったときともしかしたら今はまた目的が別にあるのかもしれません」

「……情報が少なすぎて分からないのが現状ということですわね? となると、これはもう増援を呼んでしばらく静観するしかないかしら? ”今”武装隊を出せば確実に死人がでるものね」

「賢明な判断だと思います」

 局員だって人間だ。 むざむざ命を危険に晒すような場所になんのフォローも無しに送り込んで良いわけがない。 そして同時に、今は犠牲を出してでも結果を出さなければならない場面というわけでもない。 次元災害規模の何かが起きかけているというのなら、少ない戦力だろうと何だろうと動かなければならないが、今はそうではない。 本当ならば止めなければならないところではあるが、それをするための力が今のこの船には無かった。 誰も艦長の意見に意義を唱えるものはいない。 船員の安全を出来うる限り守らなければならない艦長としては妥当な考えであるからだ。

 武装隊の連中はほとんど低ランクか中ランクであり、高ランク魔導師は存在しない。 元々リンディを呼ぶ算段だったとはいえ、高ランク魔導師が四人もいるなどとは考えてもいなかったし、SSオーバーがいるなど予測することは難しい。

(戦力の問題もあるけど、このまま無駄に時間を失っていくこともできない……ちょっと無茶をしてこないといけないかしら)

 本局は今混乱状態。 そんな状態で増援要請を出したとしてどれだけ早く対応してもらえるのか? グレアム提督はもう動けない。 ディーゼルもまだ無理だろう。 グレアムが一足先に転送で移動した今、航行艦の帰還が完了するまではそちらから離れられない。 すぐの援軍は事実上不可能だ。 ならば、今ここに居る人間のうちアレらに一番近いリンディ・ハラオウンがどうにかするしかない。 この戦力の中で唯一それが可能になるとしたら、彼女しかいないのだから。

(でも、どうやって?)

 考え無しに行っても駄目だ。 自分自身がアレらを明確な脅威だと認識している。 このままでは危険すぎると冷静な自分が叫んでいる。 何かないのか? 方法は?

 思考を止めてはならない。 その気があるのならば、最後の最後まで絶対に。 そして、無理でもなんでもどうにかしようとするのが彼だった。 そんな彼を探しているのだ。 こちらもまた、無理でもなんでもどうにかしなければならない。 それぐらいできなければ、追いつけやしない。

 取得したデータを用いて増援要請をしているレイン。 その隣で沈黙しながら、リンディは考える。 別に、極端な話で言えば上で戦っている連中は”相手にする必要がない”。

(……あれ? そうだわ。 今はあの連中は戦っている最中なのよ。 だったら、”こちら”から手を出さなければしばらくは戦い続けるんじゃないかしら?)

 モニターを見る。 相変わらず、その脅威たる二人は互いに致命傷を避けながらほぼ互角の戦いを演じているように見える。 そうだ、逆に言えば今のこの状況はチャンスでもあった。 古来より言うではないか。 ”敵の敵は味方”だと。

(片方が庭園を防衛している勢力だと仮定して、もし私が彼らを無視して中に向かったら”防衛側ではない”勢力はどうする? 戦いをやめて私を追う? それとも、少しでも状況を有利にするために”利用”する?)

 攻撃側の狙いが分からないのが痛い。 それが理解できるのであれば、取引が出来る可能性もある。 勿論、一番欲しいのは情報だ。 接触することでそれを得られるのであればありがたい。 とはいえ、ことはそんなに単純にいくとはとても思えない。 ならば、やはり勝手にやるべきではないだろうか? 防衛側と進攻側が拮抗している今でなければ、これを実行することはできない。 その間に内部に侵入し、何がしか決定的なものを見つけ出す。 そうして、その何かを持って離脱。 彼らが戦闘をそれまで継続しているかどうかは分からないが、してくれていたのであればなんとか逃げ切れるかもしれない。 外に出ればこの船の転移装置で戦わずに逃げられる。 無論、それは全て都合よく考えすぎだった。 だが、現状行くのであればそれしか考えられなかった。 勿論問題はそれだけではない。 レイン<責任者>の許可が無ければ到底実行できないからだ。 そして、戦場を突っ切れるだけの何かが今のリンディには必要だ。 その何かを探さなければ――。

(武装隊は駄目……それだと、彼らの命を危険に晒しすぎてしまう。 最低限私単体で内部突入ができるようにしないと……)

 何か無いかとブリッジを見渡す。 どんな些細なものでも良い。 艦砲射撃はどうか? ……駄目だ。 時の庭園を必要以上に傷つけることは許されない。 アレは一応盗まれたもので、捜索願が出されてもいる代物だ。 こちらの都合で安易にそれをすることはできない。 それに何より、こちらからアレらを無闇に刺激するような行動はとってはならない。 ならば、他に何があるのだろうか? この次元航行艦と戦力を用いて現状を打破するための最善の一手は?

(武装隊、艦砲射撃、艦ごと突撃……次元航行艦……ん、”次元航行艦”?)

 その言葉に、リンディは天啓を得た気がした。 片道だけではあったが、不可能を可能にする方法が用意できなくもない。 だが、レインが承諾するだろうか?

 葛藤する。 レイン・リャクトンは艦長として止めなければならないだろう。 それに、これは帰りがあまりにも行き当たりばったり過ぎる。 こんな穴だらけの作戦とも呼べないモノを採用するのはありえない。 だが、しかしリンディには今これぐらいしか思いつかなかった。 暫し躊躇った後、それでもリンディは一歩踏み出していく。

「ったく、あの石頭は……事件は希望的観測でどうにかできるわけがないというのに……」

 人事部の頭が固い連中に悪態をつきながら、通信を終えたレインが渋い顔をする。 何も飾らないこの正直さが、或いはこの艦で彼女が好かれている理由なのかもしれない。 一瞬そんなこと考えたリンディだったが、それでもレインに提案した。

「……なるほど。 しかし、少しばかり強引過ぎて”エレガント”さに欠ける案ね。 それに、危険も大きいですわ」

「承知の上です」

「そう……」

 レインは少しばかりリンディの眼を見つめながら考える。 だが、その翡翠の瞳は揺るがない。 真っ直ぐにレインを見つめ返しながら艦長の判断を”待っている”。

「……貴女、少し前と比べれば随分と”良い女”の顔になってきましたわね?」

「は、はぁ……」

「いいですわ。 そこまでして意地を通したいというのなら、行かせて差し上げましょう。 ただし、約束しなさいな。 絶対に”生きて”帰って来なさい。 これが守れないのであれば、この話は無しですわ」

「勿論ですレイン艦長」

「そう、なら少し準備が終わるまで待ってなさい。 その間、転送装置で出を待っているフレスタさんに貴女から話しておきなさいな。 相当に怒るでしょうけど、それをなんとかするのは貴女の仕事ですわ」

「はい、了解しました。 ……ありがとうございます”レインさん”」

 軽く頭を下げると、リンディはブリッジを去っていった。 その後ろ姿を見送ることもせずにレインは一つため息をつく。 本当なら、止めなければならない立場にいた。 だが、ここで止めたら今後彼女は人生の中で一つの悔いを残すことになるかもしれない。 それが分かるだけに、レインは彼女を行かせてやることにした。

(まったく……アレはこの間火をつけた私の責任かしら? ほんと、歪な関係だったこと。 これで正常に成れれば良いのだけれど……この選択が吉と出るか凶と出るかは、運命次第といったところですわね)

 リンディのために試験運用以外で起動させたことの無いシステムの起動を命令する。 オペレーターたちもそれを使用することに少し驚いていたようだったが、それでもテキパキと仕事をこなしていった。

 もしミッド地上にいる夫にこの話をしたら少しばかり苦い顔をしながら、それでも今の選択をしたことを力強く頷いて励ましてくれるのではないかと、このときレインは思った。

コメント
ちくしょうドクターが逝っちまったぜ。

可能性としてなくはないと思ってたアルカンシェルのオリジナル、登場した際の格好までは予測不可能だったがこれでジルのやりたいことがなんとなくわかってはきたな(大はずれかもしれんが)
【2009/07/11 00:58】 | Tomo #- | [edit]
俺はジルのやりたいことがまったくわからないぜ。
【2009/07/12 22:41】 | kazu #.AUkuh/Q | [edit]












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