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リバースリバースA'S

 2013-06-27
ちょっとだけ2











リバースリバースA’S
~それは角付きの悪魔、なの~








「こんばんわ」

 それは、小学一年生の聖夜のことやった。多分夜の零時は過ぎてたっけな。その日のことを、私こと八神はやては一生忘れることができそうにない。だって、アレやよ。アレったらアレや。誰かに肩を叩かれてると思って目を覚ますと、私の口を塞ぐ見たこともない大人の人がおるんよ。しかも、その人は頭から立派な角を生やしてたんや。

「んむぅぅぅ!?」

「しっ、静かに」

 私は困惑して、びっくりして、そして当たり前のように悲鳴を上げそうになったよ。寝るために電気も消してたせいで月明かりしかなかったけど、眼つきもなんか悪かったし、もしかしたら悪魔とかお化けかと思った。

 世間ではクリスマスで、これがサンタさんやったらとも思ったけどな。良い子かどうかは分からんけど、それでもできるだけ迷惑をかけないようにって過ごしてたのになぁ。咄嗟に覚悟を決めて目を閉じる。でも、どうしても怖くて泣きそうになった。そんなときや、その角を生やした男の人が私に言ったんや。

「メリークリスマス」

「んぇ?」

「や、悪いな起こして。ちょっと靴下の準備を忘れててさ。さすがに勝手にタンス荒らして変質者だと思われるのもアレなんで、ちょっと起きてもらったんだ。あ、俺通りすがりの魔法トナカイ。別に怪しいもんじゃないよ」

「んむむっ(嘘やっ)!?」
 
 その悪魔のような男の人はそう名乗ったんや。あ、よくみたらトナカイのパジャマみたいな服着てる。呆然としてると、証拠のつもりか分からんけどサンタさんを呼んだんよ。紅い帽子の紅いミニスカサンタ服を着た、私ぐらいの歳の黒髪少女サンタを。アレ? サンタさんておじいさんやないん? お髭もないよ。

「さぁ、サンタのお姉さん。この子に例のプレゼントを!」

「ねぇ、クラ……トナカイ。本当にクリスマスってこんな行事だったかしら。私の見聞きしたものと何かが少しずつ違っているような気がするのだけど」

「大体はこんなもんさ。独断と偏見で選んだ良い子の家に不法侵入し、ゴムをルーズにする勢いで無理やり靴下の中にプレゼントを詰め込む。 勿論、これまた勝手に選んだプレゼントだ。それだけを残して逃亡し、目覚めた子供たちをアッと驚かせる。それがサンタっていうサプライズ要因のあるべき姿だ!」

「違うやろ! 微妙にそのサンタ違うやん!」

 サンタさんて、もっとこう夢のある存在や!

「あっ、こら駄目だって騒いだら。施設の人が来ちゃうだろ。このミニスカサンタ女王が捕まったらどうするのだ。世界中の子供たちが泣いちゃうぞ!? そうなったら責任取れるのかね君は!?」

「そ、そんなこと言われても……えと、ごめんなさい?」

 なんで私があやまらないとあかんのやろう? 分からへんよ。この目の前の自称トナカイのおじさんの言うこと。本当に分からへん。縋る気持ちでミニスカサンタの子を見る。ちゃんとブーツは脱いだらしく、手に持ってる。妙に行儀いい子や。あ、トナカイの人も脱いでるわ。

 気が動転していたんだと今やったら思う。このときの私は、そんなどうでもいいことを考えて逃避してたんや。でもな、その次に出されたプレゼントに逃避先から連れ戻されたわ。

「プレゼントはこれね」

 ポケットからサンタさんが取り出したのは、ちっちゃい女の子のお人形さんやった。何故か今にも動き出しそうなほどに精巧やったよ。銀髪が長い、二十センチも背が無いぐらいの子や。髪飾りになんやバッテンの髪留めつけてる。ちょっとかわええなぁ。まるで生きてるみたいや。

「あれ? でもなんで袋からださんの」

「私は別に様式美に拘ろうとしているわけではないから」

 伝統は嫌いな子なのかな? サンタ業界も大変やなぁ。

「で、この子くれるんやね。ありがとうな」

「はいです! 今日から私ははやてちゃんの専属デバイスですよ!」

「――え?」

 人形が喋った。喋ったんや。ていうか、動いてる。動いてるよこの子!?

「リインはリインフォース・ツヴァイって言うです。これからよろしくですよー」

 サンタの手から離れ、空中に浮かぶその子は満面の笑みを浮かべていた。どうしていいか分からず呆然とするしかない私の前で、トナカイのおじさんがハンカチで涙を拭っている。

「よかったなぁ。優しいマイスターに出会えて。ツヴァイは幸せなデバイスだぞ。うう、ぐす――」

「一生懸命サポートするですよ! ヴィータちゃんたちとの特訓の成果を見せるです!」

 きっと、私にはわからへんドラマがあったんやろうと思う。状況がよく分かってない私を無視して、二人はしばらく涙ぐんでた。けど、すぐにそれもやめたよ。

「よし、プレゼントは渡したし帰ろう。サンタに長居は無用なのだ」

「他の子には配ったん?」

「玄関に袋ごとプレゼントを置いといたし、それでいいだろ」

 て、適当な。ていうか、トナカイの方が主導権持ってるサンタってなんやの本当に。小さいけどサンタの女王様やないん? え、もしかして傀儡政権が樹立してるのがサンタ世界なんか?

「これから二人で仲良くな。あっ、なんかあったら気兼ねなく連絡してくれればいいから。アフターサービスにはそれなりに充実しているつもりなんだ。したらな!」

 ガラガラと、窓ガラスを勝手に開けるとトナカイが空に浮かぶ。その肩に肩車で乗り込むのは、ミニスカのサンタさんや。角をガッシリと掴んで、まるで操縦桿みたいに握ると、足でトナカイの人に合図して夜空の向うに飛んでいった。

「え、煙突が無いからって窓から帰るなんて邪道やない? ――って、ちょい待って! 今本当にトナカイの人空飛んでたやん!? そこだけ合ってるってどうなんよ!」

「魔法トナカイさんですからね。魔法で空を飛ぶのは当たり前なのですよー」

 えっへんとばかりに胸をそらし、宙に浮かぶプレゼントがのたまう。私は思ったよ。これは夢やと。それから窓を閉めてもう一回寝た。そしたら――。

「おはようですはやてちゃん、いい朝ですよー」

 ちっちゃいお人形さんみたいな子が、元気に朝の挨拶をしてくれた。

(夢やなかったのは別にええけど……この子、どうしよ)

 孤児院の仲間や施設の人らにどう説明すればいいのか分からず、私はしばらく頭を抱えた。でも、それだけやなかった。あの二人は孤児院の玄関にプレゼントとメッセージカードを置いていってたんよ。おかげで、朝からその日は大騒ぎやった。「現代のサンタ現る!」なんて見出しで海鳴市のニュースや新聞にも取り上げられてもうて、しばらく全国の孤児院に寄付が増えたみたい。でも、私だけが知ってる。あの二人は、絶対にサンタでもトナカイでもない。ただの心配性な魔導師なんやって。









「良い夜やねぇ、リイン」

『はいです。今日も海鳴市は平和なのですよ』

 魔力で編んだ騎士甲冑を纏い、魔導書型ストレージデバイス『蒼天の書・レプリカ』、そして杖型デバイス『シュベルトクロイツ・レプリカ』を手に孤児院を抜け出して海鳴市の夜を行く。スレイプニール<飛行補助魔法>の黒翼が、私を重力の束縛から解き放つ。アレから一年とちょっと。私は小学三年生になった。

 通う学校は聖祥大学付属小学校。白くて可愛い制服の学校で、別のクラスにも本好きの友達ができた。今ではリインと一緒に孤児院で楽しい毎日を過ごしてる。さすがにリインのことは誰にも秘密やけど、私はそれでいいと思ってる。

 一応は隠蔽術式を起動し、光学、魔力センサーの両方からに自分の存在を隠してる。でないと、もし写真とかに取られたら困るやん。空を飛ぶ私を見て、一体どうするかなんて分からんし。それに時空管理局とかいう平和維持の人たちとか、次元犯罪者とか政府の怖い人たちに目を付けられるのも嫌やから、こっそりパトロールに出る毎日や。

『んー、そろそろだと思うのですけど。もしかしたらトナカイさんの杞憂かもですねー』

 融合し、私の魔力中枢の中に存在するユニゾンデバイス。リインの呟きが聞こえてくる。実は、リインにもよく分かってないみたいなんやけど私が三年生ぐらいの頃にすごく危険なモノが落ちてくるかもしれへんのやって。それで、できることなら魔法の力で私にどうにかして欲しいっていうのがあの胡散臭いトナカイさんの望みらしいんや。

『でも、いいのですか? 別にマイスターはやては無理に手を貸す必要はないです。リインだけでもなんとかできるかもですし。危ないと思ったら増援を呼ぶですよ』

「やけどリイン貰ったしなぁ。ちょっとぐらいなら手を貸したげるよ」

 魔法。リンカーコアに魔力素を取り込み、その魔力を用いて術式によって紡がれる特異な力。私にはそれを使う才能があるらしくて、ちょっと興味があったから習ってみたんやけど、ちょっとイメージしてたのと違った。空を飛べるのはそのおかげやけど、メルヘンがあんまりないんや。

 ミッドチルダ式とか、ベルカ式とか、アルハザード式とか、とにかく全部齧ってみてるけどそんな感じ。実戦経験はない。落ちてくるかもしれない危険物を封印する程度なら、危ない魔法とかいらないし、沢山覚える理由は私にはない。

 そういえば、この前グレアム叔父さんが遊びに来てた。何でもお婆ちゃんの戦友でペンフレンドだったそうや。亡くなる前に私のことを頼んでたみたいらしくて、よければ引き取ろうかって言ってくれたけど、私はここを離れられへんからって断った。でも、時々顔を見に来てくれるって言ってくれた。中々渋い英国紳士の人や。姿を隠してたリインに気づいて驚いてたけど、元管理局員さんだからって色々と教えてくれた。

 一応、トナカイさんの言ってたことも話してみたら調べてみるって言ってたけど……どうやら、知り合いだったみたいで何かあったらすぐに魔法で駆けつけると言ってくれた。やからたぶん、私は少し安心してる。何かあっても、私だけで解決せなあかんことはないんだって。リインのことも黙っててくれるみたいやし、きっと多分なんとかなる。

 興味があるなら、管理局と渡りをつけてもくれるらしいけど、外の次元世界にはあんまり興味がない。一度は旅行してみたい気もするけど、私が住んでるのはこの街。だからそれでええと思う。魔法の力を使うのはきっとこれっきりや。就業年齢が魔導師は早いらしくて、その文化に乗って早く自立したいっていう気持ちもあるけどそれは違う次元世界に行ってまで叶えたいものでもない気もするしね。

「んー、特になんか変わったことはないみたいやね」

 夜の肌寒さも、騎士甲冑が阻んでくれる。夜景を眼下に見下ろしながらの散歩も、そろそろお仕舞いかもしれへんね。危険を回避したらおしまいや。

『本日も異常なしです。いいことですよー』

「ふふっ、そうやね」

 空を飛んで孤児院の部屋へと戻る。その途中で、私はふととある大魔力の持ち主の家を見つけた。あれだけの魔力の持ち主なんて、彼女しかいない。

(確か、隣のクラスの子やったっけ。気づいたときに魔導師かと思って声かけそうになったんよね。そう、確か図書館によく来るすずかちゃんの友達で、名前は確か……高町……高町なんとかさ――)

『はやてちゃん! センサーに感在りですよっ!?』

「え? そんなまさか――」

 何も無いはずの夜の散歩。それで終るはずだった私の魔法少女物語は、突然私の前に現れたあの二人の異邦人と出会った夜と同じように、また唐突に始まったらしい。

『来るです!!』

 感応制御システムからの警告に従ってセンサーを確認。これは……真上!?

 睨むように夜空を見上げる。そんな私を嘲笑うかのように、その物体は私の額にポテンッと落ちてきた。攻撃力は皆無やったけど、とにかく出鼻を挫かれた感があった。金ダライではなかったことだけが、唯一の救いやね。

「なんやの、これ」

 青い宝石みたいな結晶体。おでこに落ちてきたそれを手にとって見てみる。中に何か模様みたいなものが描かれてある。綺麗やけど、危険物にはどうしてもみえへん。

『あー! それです。それですよマイスターはやて! それが危険物のジュエルシードです!』

「これがそうなんか。でも全然危険物って風にはみえへんな」

『とんでもないです! それが完全に励起して起動したら一個でも海鳴市が壊滅的な被害を被るですよ! 複数一緒に起動したら次元振動どころか、次元を切断して虚数空間を発生させたりしてとんでもないことになるです!』

「ほぇぇ、よー分からんけどすごいんやねこれ」

 私に必死に警告するリインなんやけど、なんか……こうも呆気ないと拍子抜けしてしまう。えーと、とりあえず封印かな。蒼天の書を開き、封印魔法の呪文を目で追って読み上げる。

「なんや長いなぁ。えーと、封印されしは……むにゃむにゃ……ジュエルシードシリアル20……封印!」

 シュベルトクロイツが輝き、一瞬光を放ったかと思うと魔導書の中に吸い込んだ。

『一発成功! さすがはやてちゃん! これで暴走することも誰かに拾われて思念体が発生することもないですよ』

 はしゃぐリインやったけど、私はこんな簡単でいいのかと思った。そしたら案の定リインが言ったんや。

『それじゃあ残りのジュエルシードも探すですよ。きっと街中に落ちたです』

「どうやって他の探すん?」

『決まってるです。レーダーとセンサーで……あれれ?』

 センサーにはもう、反応はない。そもそもさっきの反応はジュエルシードやなかったように見えたんやけど……。

『あっ、今のは次元空間から単に通常次元に復帰したときの反応だったみたいです。励起して無いから反応もないし、こうなると後は目視かエリアサーチでもしてこつこつ探すしかないです』

「ふーんそうかぁ。ちなみに、後何個あるん?」

『ふぇっ? えーと、た、多分沢山ですよ!』

「そうかー、沢山なんかー」

 どこにあるかも分からず、一個でも最悪海鳴市を吹きとばせるぐらいの代物が沢山落ちた? そしてそれを私一人でどうにかするん? ……ちょっと待って。それはちょっときつーないかな。しかも全部で何個あるかも分からんのやろ。

 その時、トナカイの人がデバイスに残した説明が圧倒的に足りないメモデータを思い出した。『君らなら楽勝』って書かれてたけど、絶対に嘘や。「ファイトですよーはやてちゃん。えい、えい、おー」と気合を入れているリインには悪いけど、これは素直にピンチやと思う。とにかく、心の体制を立て直すためにも今日は一度帰ることにして明日にでもグレアムさんに相談することにしよか。

「一度帰ろか。あんまり夜更かししたら明日遅刻してまうし」

『そうですね。すぐに危険があるわけでもないですし、了解ですよー!』

 あ、すぐにどうにかなるわけじゃないんやね。やっぱり。










リバースリバースA’S
~転校生現る? なの~










「いってきます」

「いってくるよ」

「おーう。いってらー」

「気をつけるんだよ二人とも」

 小学生二人の保護者が新聞紙を広げながら欠伸をする。その向うでは、オレンジ髪の女性もまた見送っていた。転校にはもってこいの朝だった。フェイトとジェイスはペットオーケーのマンションを降り、新しい学校のスクールバスが来るのを待つ。

 白と黒の制服は、ヴァルハラで通っていた学校にはなかったものだ。新しく用意された服をどこか恥ずかしそうに見下ろすのは当然だったかもしれない。ここは第九十七管理外世界の惑星地球の極東にある島国だった。

「えーと、同じような制服の子たちが乗ってるバスに乗ればいいんだよね?」

「そのはずだ」

 バス亭の位置は前日にチェック済みだ。他の学生と同じように、二人は聖祥大学付属小学校のスクールバスに乗り込む。すると、友達同士で語らう学生たちの姿が目に入ってくる。適当な席に揃って座ると二人もまた会話しながら到着を待つ。バスが発進し、また停止位置で学生たちを拾いながら何人もの学生を集めて行く。

『あ、もしかして今奥の方へ言った子がそうなのかな?』

『さて、それは学校を確認してからのお楽しみさ』

 フェイトが振り返れば、金髪の少女と青い髪の少女の所へと走って行く子が居た。楽しく談笑している様子をチラリと見て、少しだけ首を傾げる。

『あれっ一人のはずだったよね? 後ろの三人、全員魔力反応があるよ』

『君と同レベルと言っていたから、一人だろう。秘密にしてるんじゃないかな』

『それもそっか。この世界は魔法が無い世界だもんね』

 パラパラと隣で本を読んでいるジェイスの隣で、フェイトは少し感心した。既にジェイスは、この国の文字で書かれた本をスラスラと読んでいたのだ。しかも、難しい漢字で書かれた本を、だ。これにはさすがにフェイトも唸る。

『よく読めるよね』

 翻訳魔法を聞かせれば一応は読むことはできる。しかし、ジェイスが使わずに読んでいることをフェイトは既に知っていた。

『努力の差だよ。君が魔法の練習をしている間、私は勉強をしていたのだからね』

『体を動かすのは好きなんだけど……苦労するかなやっぱり』

『どうせ戻るのに一年も掛からないさ。適当にすればいいんじゃないかね』

『かな? でもどうして私たちを呼んだんだろうね』

『何か思惑があるのだろう。ロストロギア『ジュエルシードの回収の手伝い』だけではないな。他にも狙いがあると思ったほうがいい』

『そうなのかな』

『こちらの通貨を用意するためにしばらくフリーランサーの仕事をしていたようだしね。まったく、本業をあそこまで疎かにする科学者も珍しい』

 実戦テストを兼ねているのかもしれないが、それにしたって無軌道すぎる。しかも基本的には立てこもり犯などから人質を救う緊急依頼が多かったようなのだ。ソードダンサーと組み、“絶対領域”を効果的に展開して人質を救出する問答無用の救出作戦で一儲けしたと言っていた。ジェイスに言わせればカノンの計画はどうなっているんだと問いたい気分である。

(このままだと、神父役は当分はお預けか。まぁ、いいのだがね)

 どういうわけか遠足のお弁当を用意してくれるようになったマーマのことを考えながら、ジェイスはとりあえず本を読むことにした。しばらくして、フェイトが国語の教科書をムムムッと睨んでいたが勿論聞かれるまで教えることはしなかった。









 三年生ともなれば、それなりに落ち着いてくる頃合だ。そうジェイスは思っていたのだが、突然の転校生の登場に教室が荒れた。特に外国人という設定がきいているのか、二人は休み時間の度に声をかけられていた。

 淡々とした受け答えをするジェイスと違い、どこか緊張気味に質問に答えるフェイトはすぐに友達に囲まれるようになった。それを横目で確認し、とりあえずジェイスはトイレに向かう振りをして教室を出る。

「特に次元を超えても子供たちのあり方に変化はない、か」

 文化や文明レベルに差は勿論あるが、子供たちにそれほど大きな差はない。身体能力や学力についてはまだ未知数だったが、休み時間にドッジボールなる遊戯に参戦した感触から行けば、こちらもまた同じだった。この転校でジェイスが探求するべきはやはり、文化の違いによる風習や精神性の差だろう。国民性とも言って良いそれを生み出す土台になった歴史もまた重要だ。惜しむらくは小学校ということで、それほど難しい勉強をしないことだ。飛び級制度が無いというのは残念だったが、これからの生活でクライドの狙いを突き止めるのも面白い。

(とはいえ、さしあたっては協力者を探すことだね)

 魔力量を考えれば会えば分かるはずだと、クライドは二人に言った。詳細に言わなかったのは二人の成長を確かめるためなのか。しかし、デバイスのセンサーを使えばすぐに特定できる。この聖小の中で同じクラスに居る“彼女”を超える魔力の持ち主は確認できていない。つまり、答えなど一目両全なのだ。他にも数人魔導師になれる子供が居たが、比べるべくもなかった。

(……いや、待てよ?)

 協力者とやらは魔導師なのだ。ジェイスはそのことにどこか引っかかりを覚える。確かに、今居るクラスの一人が普通に学校最大の魔力を持っているのは間違いない。しかし、自身と同じように出力リミッターか何かで偽装していたらどうだろうか?

「ふむ。さすがに考えすぎかな」

「――そういえば、はやては昨日のテレビ見た?」

「んー、私ははよう寝るからなぁ」

「えー、その割りには眠そうじゃないのよー」

 呟いた頃には、隣のクラスから出てきた女子生徒たちとすれ違う。その中の一人と一瞬だけ目があったような気がしたが、気にせずにジェイスはそのまま歩き去る。目的は校内の把握と、他のクラスの確認だ。待機モードのデバイスを携帯していたらそれが証拠になる。偽装していない限りはデバイスには魔力反応が出るが、思い返してみれば目をつけた子からはそんな気配は無かった。そのまま上級生や下級生のクラスの近くも通ったが、やはり何も感じない。

 時計を確認すると、次の授業のチャイムが近い。ジェイスは一旦教室に戻ることにする。

「あ、ジェイスどこ行ってたの?」

「地理を把握しておかなければ色々と不利だからね。少し見てきたのだよ」

「そっか。あ、そうだ。あの子たちもジェイスとお話したいって」

 見れば、当たりをつけた子たちのグループが手招きしていた。

「こんにちわ。私はアリサ・バニングスよ。よろしくね」

 どこか勝ち気そうな雰囲気の少女が言う。フェイトと同じ金髪だったが、ツインテールにしている彼女とは違って両端を少しだけ跳ねさせた感じの髪型をしていた。個性という奴なのだろう。どこの世界も女性は髪に拘るらしい。

「私は、月村すずか」

「私は高町なのはだよ」

 それに続いて、大人しそうな子供――黒髪のロングウェーブの子供と当たりをつけていた栗色の髪の少女が自己紹介を始めた。

「ジェイス・ハーヴェイだ。この国のことはまだ余り知らないから、色々と聞くこともあると思う。リフェラー君共々仲良くしてくれればありがたいね」

「そういえば、あんたたちって仲良さそうだけど知り合いなの?」

「ああ。一応、戸籍上は兄妹になるね」

「え、そうなの?」

「あくまでも戸籍上の話しさ。血のつながりはないし、お互いどちらかといえば友達のような感覚だから気にもしていないがね」

「ふ、複雑なご家庭なんだね」

「そうかな? 私たちそんな風なのかな」

「意識したことがないから私に聞かれてもね」

 世間一般の感覚ではないことだけは確かだった。勿論、話しを聞いていた三人や他の子供たちにとっても関係はない。遊びに誘う子も居れば、ゲームの話し、携帯電話の番号を聞いてくる子も居た。だが、すぐにチャイムがなってそれぞれ席に戻って行く。次の授業は社会だった。









リバースリバースA’S
~暗躍の大人、なの~









「それで、結局は事故だったと」

『そうらしい。どうも、地球への航路がここ最近不安定になっているようでね』

 偶にあるのだ。次元空間が不安定になるときが。その際、航行艦が不安定な空間と接触して座礁することがある。結局はそれに気づかずに渡航した輸送業者のミスだという結論が出ていた。何の前触れも無く急に来ることもあるので、航行艦乗りからすれば悪夢以上の何者でも無い。が、真相はどちらかだろうという話しだった。

「ふーん、そういえば航路が安定しない時ってのがあるんだっけか」

 クライドはそんなこともあるかと、一先ず納得することにした。もはや忘れさった記憶の彼方より、記録としてデータを抽出した中に原作知識がある。所詮は演算された可能性でしかないが、それでもフェイト・リフェラーの件もある。予想外の何かが代替として機能し、フラグを立てるかと思っていたが酷く単純な話しに落ち着いたことに安堵のため息をついた。

 可能性としては次元海賊の強奪事件、或いはどこかの魔導師が次元空間跳躍魔法の練習をしていて流れ弾があたったとか、ジュエルシードで願いを叶えようとした何者かがやったとか、色々と想像もしていたのだが、海<次元空間>が荒れているせいだと言われれば妙に構えていた自分が馬鹿らしくなる。それが顔に出たのだろう。古巣とコンタクトを取って確認したグレアムが、予定を聞いてくる。

『結局は君の予言通りになったわけだが……すぐに解決ができるかね』

「すぐは無理ですかね。エリアサーチかけたりもしてるんですが、どうにもそれらしい反応がないんですよ。励起していないせいだと思うんですが、ちょっと時間がかかりそうです」

『民間人への被害は?』

「拾って思念を読み取られ、その果てに巻き込まれるってのならあると思います。まぁ、その状態なら反応するみたいだから一つずつ対処していくしかないかな。管理局員で専門の観測チームでも送ってくれれば解決は早くなると思いますよ。結局はマンパワーと監視体制の有無でしょう。生憎とこっちは昼間動けない学生とフリーのデバイスマイスターぐらいしかいないんで」

『管理局の方は地球への航路が安定しない限りは増援は来ないと思ってくれ。転送事故の危険も零ではないから、船も魔導師もしばらくは動けないだろう。通信する程度なら問題はないから私の方から状況は伝えてはおくがね』

「助かります」

『それと、彼女の件なのだが……』

「八神はやて、ですね?」

『そうだ。手に余るかもしれないということで相談されたよ。あの年頃の子なら、正義感に借られて自分だけで解決しようとしそうなものだが、アレも君の仕込みかね』

「いいえ。本人の素養では? 俺は単にデバイスを渡してもしもに備えてもらってただけなんで」

『そうか。それにしてもグラシア君も形無しだな。君の“占いのような何か”はどうにもピンポイントではあるが的中率が高い。教会の“あの件”で彼は君の警告の意味を思い知ったようだしね』

「俺も驚いてますよ。ただ、別に本当に予言してるわけじゃないんでそんな能力持ちだと勘違いはしないでくださいよ」

『ソース<情報源>は聞かないさ。とはいえ、くれぐれもあの子の安全には気をつけてくれたまえ。君の禊の一環だというから任せてはいるが、本当なら魔法などに関わらせたくはなかったのだ。両親を失い、祖母を失い、身寄りもないせいで孤児院暮し。だというのに、こんな危険なことに巻き込むのは正直避けたかった』

「善処します」

『うむ。それと、私も彼女に相談された手前、一度様子を見に来日するよ。転移することも考えたが、君が大丈夫だというなら不法入国をする必要は無い。エアのチケットを手配するから、後で予定を詰めようか』

「宿はどうします? 退役したから局からもう経費が出ないわけでしょ。部屋一つ空いてますから使ってもらっても構いませんよ。狭いですが」

『そうかね? んー、猫が問題ないようならしばらく世話になろうかな』

「大丈夫です。今、家に犬のような狼が居ますから」

『はっはっは。それなら安心だ。では頼もうかな』

「はい」

 通信が切れる。と、背後に気配が現れる。振り返れば、カグヤが居た。

「貴方の言った通りだったわ。デバイスを引っつかんですぐに渡航したって。書置きが残されてたらしいわ」

「あー、勇敢というか真面目というか……行動力旺盛だな」

「一応、本局に捜索願いを出すみたいよ」

「今日びの子供はすげーな」

 彼だとて、単独で次元転移をしたのは管理局に入ってからである。民間の、それも多次元世界の遺跡を発掘している一族とはいえ、普通の九歳児の行動ではない。

「ミーアがびっくりしてたぐらいだから、行動力はあの子を上回るかもね」

「んー、この一件が片付いたら落ち着くんじゃね? 帰ったら拳骨じゃすまないだろうし」

「無限書庫の刑に処されるかもね」

「さすがにそれはないだろ」

 無限書庫は数年前に自爆処理された。それ以後、純粋にデータベースとして復旧させる動きがあったらしいが、データ入力と整理のために集められた資料が膨大すぎて担当職員がエンドレスワルツ<終らない仕事>を踊っているらしいと噂されている。しかも、資料請求が各部署から毎日のように届いているとも。もはや忙殺を通り越しているので悲鳴も上がらない職場なのだった。

「まぁ、その子は書庫の救世主になれる器かもしれんが」

 司書長として上り詰められるぐらいの力量があるのだ。ある意味天職なのかもしれないが、本人がそれを望むかどうかは別の話しだ。そう、『八神はやて』や『高町なのは』と同じように。

「それで、関係ない子を巻きこんでどうするのよ」

「勿論、選んでもらうのさ」

 魔法に関わり続けるか、それともこの世界にとどまり続けるか。選択肢を奪うのは簡単なのだ。しかし、それは傲慢だろう。得られたかもしれない可能性を、自ら選択する前に奪い去るのは。そもそも存在していないのであれば考慮する必要はないが、存在しているのだから考慮する。それが、結局自分の心の平穏を保つためだとしてもクライドには必要だった。故に、この行為はただの禊なのだ。

(勿論、好奇心もあったわけだがな。三人娘集合とか実に冥利につきる。あ、久しぶりにレイハさんにも会えるんだよな。ま、まずいぞ。最高級のワックスで出迎える準備ができてない!!)

 デバイス用の整備機器も簡易的なものを持ち込んではいたが、手抜きだと思われてはデバイスマイスターの名折れである。ピッカピカに磨き上げる仕事だけは、『高町なのは』にだって譲れない。

「カグヤ、ちょっとアルハザードに連れて行ってくれ。忘れ物があったわ」

「街の監視はどうするの」

「アルフに頼む。アルフ、ちょっといいか?」

 ドタバタとフローリングの床を鳴らしながらリビングに居るだろう狼娘の元に向かう。その男は、着々と暗躍し御神体を迎える準備に併走した。













リバースリバースA’S
~お節介は斜め上に、なの?~












「さっきからぼーっとして、どうしたですか?」

 ツヴァイが宿題に立ち向かっていたはやてに言った。ジュエルシードも気になるが、宿題も大切だ。とはいえ、それに加えて気になることがあったのだった。

「いやな、学校でちょっと気になる子をみつけたんよ」

「気になる子、ですか」

「んー、なんていうんやろう。一人はAAAオーバークラスの魔力を持ってる女の子。それで、もう一人がなんか不思議な感じの力を持ってる男の子や。魔力のようで魔力やない。そんな不思議な感じの力を感じた。こっちは、それほど凄そうな量じゃなかったけどな。どっちも外国からの転校生らしいんやけど、気になるなぁ」

「んー、リインは最初の子の方が気になるですけど……男の子の方はもしかして超魔力持ちの人かもしれないですね」

「超魔力?」

「はいです。現在の主流である魔法科学の天敵、虚数空間内でも問題なく作用したり、AMFだって無効化する魔力を超えた魔力です!」

「へぇー、すごいんか?」

「凄いというか、珍しいのですよー。リインも一人だけ知ってるですが、その子意外だと持ってる子を見たことないです」

「ジュエルシードが落ちてきてから大魔力持ちの子と超魔力持ちの子が転校生として現れる。なんや、怪しい感じやな」

「その子たちが関係あると思ってるですか?」

「どうやろな。魔法使ってるとこでも見れたらそう思うかもしれへんけどな」

 まさか、そんなことはないだろうと思いつつもはやてにはその可能性は捨てきれない。リインが一度何者かの次元転移を確認したからであるし、ここ最近、捉えたはずのジュエルシードの反応が突如として消えることが何回かあったのだ。

「でも、私ら以外にジュエルシードを集めてる誰かが居るのは間違いないで」

 ニュースでも不審な事件が海鳴市で起こっていることが報道されていた。電線が切れ、道路が不自然に陥没していたり、奇妙な生物を見たという人まで現れている。極めつけは、昨日無作為に放たれたSOSの念話だ。

「昨日の念話もそうや。助けていう割りには場所も言わずにすぐに声が消えてしもうたし、なんか出力が弱かった感じやった。でも助けを呼ぶってことは仲間がおるってことかな? んー、そうやなかったとしても座標も逆探知できへんかったしな。まるで途中から隠蔽されたみたいや。んー、どうなっとるんやろうな」

 今のところ、街がとんでもないことになるほどのジュエルシードが励起した例はない。現地生物がジュエルシードを取り込みんで影響されたり、周囲の思念に晒されて実体化。化け物のような姿で街を徘徊することはあっても、その程度だ。被害が無いわけではないが、それでもどうにか対処できている。

 一旦宿題をする手を止め、情報を纏めるために用意したノートを開きメモを増やす。ついでに、社会の授業用の地図帳を開いて唸る。海鳴市にジュエルシードが落ちたわけだが、見つけた分だけでも随分と広範囲に散らばっている。空を飛べるから良かったが、もし歩いて現地に向かうようなことになっていればクタクタになるのは間違いない。

「後は、授業中が問題やね。さすがに何の理由もなく学校の外にはいけへんし。いなくなったら先生らが心配するし……」

「そこはリインがカバーするですよ。はやてちゃんは学生さんなんですからしっかりとお勉強するです。さしあたってはほら。目の前の宿題ですよー」

「あはは……それ言われると急に現実に戻された気分になるなぁ」

「ちゃんと学校を卒業しないと、大人になったとき苦労するのははやてちゃんですよ。さぁ、勉強勉強!」

 職員の人が言うをの真似しているのだろう。遊んでいる子を嗜めるようなその言い方が、全然大きさに似合わない。だが、悪い気は当然しない。

「ん、がんばろか。終ったら一緒にグレアムさんから貰ったおかし食べような」

「はいです!」












「あのー、そろそろ離して欲しいんですが……」

「いいや、まだだ! まだ終らんよ! 食料を提供するからもうしばらくそのままでよろしく!」

 僕ことユーノ・スクライアは、恩人(?)のようなそうでないような、よく分からない通りすがりの黒髪魔導師さんに胴体を鷲掴みにされていた。かなり気を失っていたようで、一日ぐらい寝ていたそうだ。その間、この黒髪の魔導師さんが周囲に結界を張り、簡単に手当てをしてくれていたらしい。

 フィジカルヒール系の治癒魔法だと思うんだけど、目覚めてからずっとこんな感じだった。一応、危害を加えるつもりはないというのは分かるんだけど、左手で僕を拘束したまま、現地の食べ物を差し出してくる。

「あれ? そういえばフェレットってジャガイモとか食えるのか?」

 フライドポテトとかいう、マスクドバーガーにも似たポテトのセットらしいんだけど、延々とそればかっかり差し出してくる。お腹が空いてたから助かるんだけど、そろそろお水が欲しい……って、そうじゃない。そうじゃないよ!

「大丈夫か分からないものを食べさせてるんですか!?」

「でも人間形態なら普通に問題ないだろ。大丈夫さ、多分」

「いえ、あの……僕は基本人間なのでフェレットの状態が本物というわけではないですから心配しなくても大丈夫ですが」

「あ、ああー、そういえばそうだったな。心配する必要はないのか。すまん、すまんなユーノ君」

「その、なんで僕の名前を知ってるんですか?」

「君の一族に知り合いが居るからだ」

「えーと、あれ? もしかして僕を連れ戻しに来た人ですか? 具体的には、その、管理局員の方とか……」

「いや、違うぞ。 俺はただの紳士なデバイスマイスター兼広域次元犯罪者だ」

 呆気らかんと言うその男の人は、驚いて動きを止めた僕の口にまたもポテトを差し出してくる。

「あの、通りすがりの魔導師なのでは?」

「そうでもあったな。なに、たいした違いはないさ」

 HAHAHAと笑ってるけど、つまり、僕は今犯罪者の手の内に捕らえられ、治療されて保護された上にポテトを食べさせられているわけだ。……わけが分からないよ。

「えーと、ここは公園ですよね」

 話題を変えよう。何をするにも情報だ。それに、僕も落ち着きたい。だからポテトはいいですって!

「うん。君が昨日SOS出してた場所だ。なんだ、もういらないのか。 んじゃ、残りは俺が食っちまうぞ」

 「そういや、フェレット形態って燃費いいんだよなぁ」などといいながら、彼は残りのポテトを食べ始める。でも、やっぱり僕を手放してはくれない。

「しっかし、なんで君がレイハさんを持ってきたんだろうな」

「レイハさん? あ、レイジングハートのこと……ですか?」

「そうそう。アレって、確かミーアが持ってたと思うんだが」

「あの人を知ってるんですか!?」

 ミーア・スクライア。次元世界の遺跡を発掘しながら流浪している僕たちスクライア一族の生活を激変させたっていう人だ。スポンサーの人から船団の船を中古で貰い<それでも十分に新しい>、古くなって老朽化が進んだ艦を一変させ、更に色々と仕事を振ってもらったりして財政的に貢献する契約をさせ続けているという凄い人だ。なんでも、そのあまりのラブリーさに世にも恐ろしい女性に命を狙われているとかいないとか。若い頃は御付の人を困らせるほどに次元世界を渡り歩き遺跡探索の武者修行に出ていたとか。 若い世代だと目標にする子も居る。

 ただ、余りにも落ち着きが無いものだから船団から今も抜け出してフリーランサーの友人と一緒に遺跡に潜ったりしているみたいだ。スクライア一族で集まって集団発掘するよりは、個人で動く方を好んでいる人らしい。

「知り合いだ。んー、カロリーブロックから始まった仲、みたいな感じだ。で、どうしてレイハさんを君が?」

「よくわからないんですが、魔法少女を卒業したから次代のキュートな子に使って欲しいって、部族の人に預けてたみたいなんです。でもその、出所不明のデバイスで、しかも使いこなせる人がいなくて……でも、使わないのがもったいないから僕が貰ったんです。一応、封印魔法も登録されてますから強力な防御結界やちょっと変わったサバイバル魔法に、シールドを使った攻撃魔法なんかも登録されているから結構使えるんですよ。処理速度も段違いですし」

「ふ、ふーんそっか。そういえば卒業するとかなんとか言ってたな。どうせなら俺にくれればいいのに。そうしたらもっとレイハさんを強化したのになぁ」   

 あれ? 今、レイジングハートが嫌がってたような……気のせいかな?

「まぁ、なんにしても君が持ってたのは俺としても好都合だからいいんだけどさ」

「はぁ」

「後は、アレだ。なんで一人で来たんだ?」

「それはその、アレを発掘したのは僕ですから」

 ジュエルシードは危険なんだ。だから、発掘された21個のそれらは時空管理局に預けるため輸送業者の人に頼んだ。でも、事故が起こってジュエルシードはこの第九十七管理外世界に落ちてしまった。

「だから、僕は……」

「気持ちは分からんでもないが、危険だろ。それに、今は航路だって安定してないんだ。下手したら転送事故で死んでたぞ。管理局に通報されてたんだから、君が動く必要は――」

「でも! 管理局の人もすぐには動けないじゃないですか!」

「それはまぁ、そうなんだが……」

「旧暦の次元災害みたいなものが、もし何かの拍子に起こったら大変じゃないですか! しかも、ここは管理外世界! 封印できる魔導師がいないんですよ! 誰も、誰もです! 僕は、僕が発掘したものでこの世界の何も知らない人たちが死んでしまうかもしれないって思ったら、いてもたってもいられなくて!」

「……悪い、ちょっと無神経だったな。知った気になって、余計な説教しちまった。君は漢だ。間違いなくな。俺みたいなのが言う必要はなかったな。さすがはスクライアの子ということか」

「い、いえ。僕のほうこそ、いきなり怒鳴ってすいません」

 心配してくれてるのだろう。それは、僕にだって分かる。きっと、部族の人たちもそうなのだろう。帰ったらきっと怒られる。でも、それは、この世界の人たちの安全が確保されてからでいい。いくらでも怒られていいから、一日でも早く回収しなきゃ。誰もやらないなら僕が。せめて、僕だけでもやらなくちゃ。

「しかし、参ったな。そうなると君、現地の住人に協力してもらうのとかって嫌か?」

「それは、はい。現地の人に接触するのはあまり良いことじゃないですから」

 所詮、僕たちは異邦人。この世界の人たちにはこの世界の生活がある。止むに止めない事情はあるけど、それを壊すことはできない。でも、考えはしたことだけは確かだった。

 今、僕はリンカーコアが魔力の不適合を起こしている。現地の魔力素が肌に合わないせいで、ちょっと慣れるまでは満足に動けそうに無い。だから、魔法の力を持つ人に助けてもらうしかない。でないと、大変なことになるかもしれないんだから。そのせいでちょっとSOSを発信したけど、でもその考えはお終いだ。

「でも、必要ないですよね。だって、今は通りすがりの貴方がここに居ますから」

「うえっ!?」

「レイジングハートのことを知ってるなら、使えるってことですよね。だったら、お願いします。僕の変わりに、ジュエルシードを集めてください。お礼は、僕にできることだったら何でもしますから!」

 倒れていた僕を助けてくれた人だ。ミーアさんの知り合いなら、多分悪い人じゃないんだろう。あつかましいかもしれないけど、今の僕にはこれしない。

 必死にお願いする僕を見下ろすその人は、なんだかとっても困った顔をしていたけど深くため息をついて頷いてくれた。そうして、おもむろにポテトに手を伸ばしてまた僕の口に突っ込んだ。

「失敗した。マジ、失敗した。悪い、君の男気と俺の目論見が結果として予想の斜め上に突っ走っちまった。不幸な事故だった。許せ、ユーノ君」

「ふぁい?」

 僕を見下ろしていたその人の視線が、ゆっくりと反れていく。同時に、僕の胴体を握っていた左手が動かされていく。なんとなくポテトを齧っていた僕は、ようやく彼が謝った意味に気づいた。何故なら、僕と男の人の視線の先には、口を大きく開けてこちらを指差している現地住人の少女が三人も居たんだ。

 アレ? 結界、張ってましたよね。今も張られたままだけど、どうしてこの子たちは位相がズレたはずのここにいるのさ?













リバースリバースA’S
~仲良しは放っておけない! なの~













「――フェレットの子が喋ってる!?」

「ささささ、最近のおこじょって喋るのね。ててていうか、ポテト齧ってるし」

「え、問題はそこなのアリサちゃん?」

 決定的瞬間だった。誰がどうみても喋ってるとしか思えない状況だった。意図しないこの状況。その意味を把握するのに、さすがの彼も時を要した。

「ハローワールド」

 どこか観念したかのようにクライドが言った。少しだけ後悔しているような、そんな面持ちだったことをユーノは知らない。何せ、小さな少年の決死の覚悟を読み違えた。それに気づかなかった自分に、苛立ちを感じていたのだ。

「やぁ、いい天気だなお嬢さんたち」

 結界のせいで夕闇が広がった空を見上げるようにして、男が言う。すっと目を閉じた男だったがすぐに自分の肩にフェレット姿のユーノを乗せた。

「見ての通り彼は喋っていたが、彼は魔法使いが変身したフェレットだから問題ない。そうだろ?」

 必殺のドヤ顔である。ハードボイルドに決め、事態をうやむやにしようと直球をぶちこんだ。これには当然、ユーノが絶叫した。

「ちょ、ちょっと待ってください! せめてそこは誤魔化すか何かしてくださいよ!」

「いや、でももう無理だろ。三人とも皆、君に興味津々じゃないか」

 少女たちの視線が、相変わらずユーノに注がれている。

「はい! そこのオジさん、その子に触っていいですか?」

「ちょ、ちょっとアリサちゃん!」

「なによ、なのはも気になってるでしょ」

「それはそうだけど……」

「ふっ、触るだけでいいのか? 別にもふってしまってもいいんだぞ。それどころか飼ってもいい」

「え、えぇぇぇ!?」

 再び鷲掴みにされたユーノを手に、クライドは近寄ってきたアリサの眼前にフェレットを突き出す。突き出された彼はどうすることもできず、少女を見上げた。少女は戸惑わなかった。掌を伸ばしてユーノの頭を撫で撫でする。

「ねぇ、あんた名前は?」

「ユ、ユーノ・スクライアです。あっ、スクライアは部族名ですけど……」

「腹話術じゃないみたいね」

「当然だ。さっきも言ったが、この子は魔法使いなのだ」

「ふーん。魔法ねえ……」

「あわわわわ」

 現地住民との接触に頭を悩ます彼をそのままに、クライドは会話を続ける。しばらくすると、一緒に居たなのはとすずかもユーノを触り始める。指でつっつき、撫でまわし、揉みくちゃにする。三対一のせいでユーノは手も足もでない。

「この子のことは分かったけど、じゃあおじさんはなんなのよ」

「俺? 俺も魔法使い。厳密には魔導師って言うんだがこの子と似たようなもんだ」

「じゃ、証拠見せてよ」

「ほい」

 大げさに青の魔法陣を足元に刻み、空に浮く。当然、少女たちの頭が上を向いた。下降すれば下がり、また上がれば視線も上がる。「ふぇぇ」なる呟きが三つ上がり、反復運動が三往復したところでクライドは地面に降りた。

「ワイヤー! ワイヤーはどこ!?」

「ない、ないよ!?」

「すごーい。ほんとに魔法なんだ!?」

 まだ疑う者、驚愕する者、単純に受け止める者と三者三様であるが、ここまですると十分だろう。

「さて、証拠はもう十分だろう。実はこの子はちょっと魔法を使いすぎてヘバッていてね。そこの君、そう君だ。良ければこの子の手伝いをする“魔砲少女”をやらないか? バイト代は出せないが、君の実家の売り上げに貢献しよう」

「ふぇぇぇ!?」

「ちょ、なんでなのはだけ!?」

「三人の中で一番魔力が高いからさ。ん、君なら間違いなく即戦力だ。光るモノを感じる。鍛えればエースも間違いなしだ」

 未来のエースオブエースである。さもありなん。

「まぁでも、別に断ってくれてもいいんだ。どうやらこの子は俺に動いて欲しいらしいから」

「当たり前です! 非常時ならともかく、素人の子に任せるなんて!」

「大丈夫。レイジングハートが導くさ。というわけで、レイハさん。ゴー!」

「そんなわけ、ってレイジングハート!?」

 ユーノが首に巻いていた紐から、紅い宝石のような玉が飛翔する。明滅しながら驚く少女をそのままに、眼前に浮遊。起動呪文を求める。

「あ、やっぱパスワードいるんだ。ユーノ君、教えてあげてくれ」

「だ、駄目ですってば!」

「あ、そう。じゃ、俺が教えるわ。――っと、その前に確認だ。やるかやらないか、選択して欲しい。大丈夫。君がやらなくても俺がやる。何も心配することはないさ。君はただ、選んでくれればいい」

「よくわからないんですが、私はその、魔法少女っていうのをやればいいんですか」

「そうだな。業務内容を教えないのはフェアじゃないか。説明しよう。いいかい? 今この海鳴市には――」





「……分かりました。やってみます!」

「おお、それは助かる。おもにこの子が」

「だから、僕は反対だって言ってるじゃないですか!」

「すまない少年。これもまた運命だと思って明らめてくれ。君にとっても悪い経験にはならないさ」

「そ、そんなぁ……」

「では、まとまったところでなのはちゃん……いや、ここは敬意を込めてなのはさんと呼ぼう。なのはさん、なんか可愛い服でもイメージしながら俺の言う言葉を復唱してくれ」

「は、はい!」

 我、使命を受けし者なり。
 契約のもと、その力を解き放て。
 風は空に、星は天に、そして不屈の心はこの胸に。
 この手に魔法を――


「――レイジングハート、セットアップ!!」

――stand by ready. set up.


「おお! 成功だ!」

 一瞬、桜色の魔力光に包まれた高町なのはだったが、すぐに白いバリアジャケットに包まれ、杖状に展開されたレイジングハート・エクセリオンもどきを手に立っていた。魔導王事件の後にクライドに魔改造されており、マガジンはまさかのドラムマガジンが洒落で装備されていた。

「な、なのは? あんた、服変わってるわよ。それに、その手に持ってる杖何なのよ。もしかしてさっきの紅い玉なわけ?」

「どこか聖祥の制服に似てる……よねそれ」

「ほんとだ。えーと、作業服みたいなもの、なのかな。制服をちょっとイメージしてみたんだけど……サイズぴったりだね。驚いちゃった」

 少女たちは当然のようにまた驚き、少年だけは違う意味で驚く。

「な、なんでパスワード知ってるんです! それに、れれれ、レイジングハートが僕を無視して応えるなんて? ちょ、え!? なんでー!」

 ユーノ君もびっくりの所業である。クライドだけはウンウンと頷き、さすが管理局のエースなどと呟きながらレイハさんの勇姿と少女の勇気に感動していた。この余韻を大事にしたかった彼は、混乱するユーノを優しくなのはの肩に乗せる。妙なこだわりでもあるのか勿論左肩だった。

「よし、完璧な構図だな。これで安心だ。新しい魔法少女よ。海鳴市の未来を頼んだぞ!」

 敬礼し、回れ右して去って行くその男。無駄に満足げな理由は、その男しかわからない。しかし、その男が足を進められたのはたったの三歩だけだった。

「ちょ、待ちなさいよ!」

 金髪の少女だった。男が着ていた白衣を掴んで、シナリオの流れに任せて逃亡を試みようとする無責任男の歩みを止めた。

「え? もう用はないぞ」

「おじさんに無くても、私にはあるの! な、なのはだけじゃ心配だし、しょうがないから私も手伝ってあげるわ!」

「――えっ?」

「わ、私も! ですから、私たちにもデバイスっていうの貸して下さい!」

「――ええっ!?」
 
 事態は、遂にクライドの予想を完全にぶっちぎった。それは間違いなく少女たちの友情だった。クライドは悩んだ。五秒ぐらい悩んで、ユーノのどこか攻めるような目から顔を背けて決心した。

 そもそも、この魔導師以外が入れない結界に足を踏み入れた時点で高町なのは以外にも魔法の才能が少なからずあることは明白だった。

 アニメ二期において、月村すずかとアリサ・バニングスの二人は結界で隔離されたはずの世界に取り残され、なのはとフェイトによって広域に広がるスターライトブレイカーから守られたことがあった。

 魔導師だけが侵入できる空間を作り、なのはとユーノを邂逅させようと画策したのに二人も一緒だったのはそのせいなのである。ならば、二人もまた魔法少女をやる資格があったのだ。

 当然、クライドは二人の少女の熱意に負けて三日も経たずに用意した。その間、ユーノ君はなんだかよくわからないうちになのはさんにお持ち帰りされて高町家に迎えられた。彼が普段どんな生活を送っているかなんて、当然クライドは気にしない。














リバースリバースA’S
~それぞれの思惑、なの~












「可笑しい、可笑しいでリイン」

 友達の家から帰って来た私は、思わずリインに尋ねた。だって、おかしい。本が大好きな隣のクラスのすずかちゃんが、遊ぼうって家に誘ってくれたのはええ。でもなんでその子のうちの猫が巨大化? お手洗いに行ったと見せかけて敷地内に飛び出し空を飛んで近づこうとしたすずかちゃんだったけど、猫ぱんちされて地面に叩き落とされてたな。猫はすまなそうにペロペロしてた。じゃれ付いてただけなのかもしれへんけど、さすがに心配になってその時は私も窓から飛び出そうと思うた。

 でも、そこで更に不思議なことがおこった。今度はすずかちゃんの友達の子がいきなり空から現れて「いくわよ、フレイムアイズ!」とか叫びながら手に持った刀剣型のデバイスみたいなものから炎を顕現。そのまま突っ込んで猫の魔の手からすずかちゃんを奪還した。猫の子は怒って威嚇してたけど、その後にどこからともなく飛来した桜色の長距離砲撃で昏倒や。ジュエルシードと分離させられて、やっぱり空を飛んできた高町さんのデバイスに封印されてた。

……なんでや?

 しばらくするとなんでもない風を装って友達連れて戻ってきたんやけど、見られないように結界張ったり、出力リミッターで魔力を隠蔽したりとか全然してなかった。 普通に窓から見えてたよ。アレ? 魔導師は闇から闇に潜む者やないんか、トナカイのおじさん。メモと違うようなんやけど、そこんとこどうなっとるんや? まさか私、騙されてる?

「ほぇぇ、猫さんが巨大化ですか。アレ以上大きくなるとかわ怖いいです。リインなんてきっとパクっと一口ですよ」

 そりゃ、リインは小さいからなぁ。

「いつからか分からんけど、多分最近やなアレは。ちょっと探ってみたけど明らかに隣のクラスの高町さんたちのグループ、すずかちゃんも含むんやけどいつの間にかデバイスっぽいモノと念話してるし、転校生たちはそれを見てすっごく声をかけたそうにしてた。アレ絶対に気づいてるで。なんなの? 海鳴市では最近魔導師を増やす政策でも行われてるんか? もしかして隣のクラスって魔導師が集められた特別なクラスなんやろかな」

 普段は頼りない日本政府の陰謀やろか。それとも、ただの偶然? とにかく、全てがジュエルシードが落ちてきてからの出来事や。関係がないって考えるのはもう無理や。でも、あんなもの集めてどうするんやろう? アレって、触れた人の願いを叶える機能があるらしいけど、基本的に不発弾らしいし……。

「なぁリイン。ジュエルシードって有益な使い道ってあるん?」

「んんー、リインは知らないです。でも、発掘された品だったら大昔に世界一つを虚数空間に沈めたときに使われたのの、不発弾だろうって言われてるですよ?」

「物騒やけどそれだけの力があるんやから何かの動力に利用したりできへんのかな」

「やろうと思えばできるかもしれないですが、研究中に暴発でもしたら大変です。普通はしないですよ。次元災害といえば、普通の人ならぜぇったいに忌避するものなんですからね!」

 「だから、書に封印したので実験しようとしちゃだめです」なんて言われてしもた。ちょっと、願いを叶えてくれるっていうところが興味あったんやけど、やっぱ駄目かなぁ。

「それに、願いを叶えるっていっても基本的にはブービートラップ機能の誤作動ですよ? だからあんな滅茶苦茶なことになるんです。いい迷惑ですよー」

 人の思念に影響されたり、拾った生物を取り込んで願いを叶えたり、とにかく願いの叶え方が真っ当やない。言われてみればそうかもな。あの猫は例外かもしれんけど、犬に取り付いた奴なんて強くなりすぎで犬のカテゴリー外れて触手生やしてたし。強くなりたいって願いを持ってたんかもしれんけど、なんか違う。

「でも願いが叶うんだとしたら、試してみたいっていう気持ちは捨てきれへんなぁ。リインもなんかない? 大きくなりたいとかそんな願い」

「大きくですか? 別にジュエルシードに叶えてもらわなくても簡単ですよ。ほら!」

「え?」

 数秒もかからへんかった。突然光ったかと思えば、リインが大人のお姉さんになってた。しかもナイスバデー。この子の体、一体どうなってるん?

「リインにはちゃーんと、おっきくなる機能が搭載されてるですよ!」

「ちょ、ちょいまち! そんな機能聞かされてなかったで!」

「でもリインの取扱説明書に書いてあるはずですよ」

「待って、ちょっと確認してみる」

 まさかとは思うけど、自爆装置とかついてへんよね? えーと、蒼天の書・レプリカに簡単なメンテナンス道具と一緒に収納されてたはずやよな。ん、あったあった。えーと、何々……ほんまや。隅っこにちょこっと書かれてるやん。後は保証書と、修理連絡用の次元通信番号とかも書かれてるけど……気づかんかったわ。

「ちゃんとあったですか?」

「ん、あったわ。それにしても、今更な機能やね。知ってたら私ぐらいの大きさになってもろうて学校の友達とかって紹介したら普通に外で遊べたのに」

「おおー! そんな手があったですか!」

 目を輝かせるリイン。やっぱり、この子ちょっと抜けてるとこある? いや、可愛いからええんやけど……それにしても……。

「あれれ? どうしたですかマイスターはやて。リインの胸に何かついてるですか?」

「このふくらみ、これってまさかトナカイの人が設計したん?」

「違うです。これはモデルになった人のを参考にして作られたせいですよ。あとリインを作ったのはトナカイの人の助手さんです。あの人は製作依頼を出しただけのはずですよ」

「そうなんか。まぁ、なにはともかくチェックやね」

「は、はやてちゃん? どうしてリインの胸を揉むですかぁぁ!?」

 知的好奇心を満たしたいからや。それに昔の人はドヤ顔で言ったそうや。そこに山があるから揉むんやと。








「おかしい」

 ジェイスは唸る。見つからないのだ。クライドが言っていた魔導師が。学校生活の間に色々と探ってみたがそれらしい気配がない。確かに、魔力を持っている者は数人程居たが、全員が聞かされていたほどの魔力がない。

 一度、高町なのはに面白い玩具として嘘発見器を使い、魔法関係の話題を振ってみたのだがまったく微塵も反応がなかった。そのおかげで、完全に魔力が凄いだけの一般人だと判明していた。
 
 ならばやはり、自らの存在を隠蔽している魔力量相応の力量を持つ凄腕の、それも油断も隙もない魔導師だと考えていたところに高町なのはが突如としてデバイスを持って現れ、数日後には他二人も所持するようになっていた。

 念話を傍受してみれば、マルチタスク機能で授業を受けつつさらにデバイスのシミュレーター訓練を脳内で行っているようだった。

(どういうことだい)

 魔法少女が増殖するなんてこと、理論的に考えてありえない。つまり、何者かが暗躍しているということだ。管理局ではない。航路が安定しないせいでまだ来ていないと聞いている。では、誰だ?

「ねぇ、ジェイス。聞いたほうがよくないかな」

「早計だねそれは。あの三人は監視されている可能性がある。どこでどうやって魔法の力を手に入れたのかは分からないが、もし次元犯罪者が関わっているのなら我々が危険だ」

「えっ! なら尚更助けてあげないと!」

「駄目だ。少なくとも君の前に堂々と送り込んでくるぐらいだ。デバイスを手に入れたことで君に対する彼女たちの目も変わっているようだし、もしかしたら君が狙いかもしれない」

「わ、私?」

 プロジェクトFの成功体。記憶転写技術さえ使われていないとはいえ、それでも生きているクローン体。しかもあのアリシア・テスタロッサのクローンだ。狙われないほうが可笑しい。また、ジェイスが狙われる可能性は低いはずだった。超魔力のことは一般にはまだ浸透していない。それよりは彼女の方が狙われていると考えた方が確率が高そうだ。

「気をつけておきたまえ。彼女たちが洗脳されていないとも限らない。しばらくは私の側から離れないようにね。今ならまだ、私のことはノーマークのはずだから対処できる」

 ただし、それは彼女を安心させるための呟きにすぎなかった。

(リフェラー君とは違ってリミッターもかけているし、戦力としては侮るだろう。魔導師ではないと判断してくれればいいが……知り合いだから仲間だと思われてはいるだろう。困ったな。授業中も気が抜けないじゃないか。ここは大人しく、ペン回しをしつつ国語の漢字に悩む外国人を演じなければね。スリルな授業になったものだ)

 無力を装うのは案外難しい。特に普通の子供とは違う反応をしてしまうジェイスにとって、かなり無理難題であることは間違いなかった。オーバーアクションは得意なのだが、人の機微には疎いのだ。

「とにかく、気をつけるんだ。いいね」

「う、うん。でも、絶対に助けてあげなくちゃ!」

 せっかく出来た新しい友達だ。フェイトは燃えた。ジェイスが控えるように言ってもお構いなしに話しかけ情報収集に励んでいる。

(友情か。甘くみていたようだね。まさか連中は、彼女の優しさにつけこんでことに及ぶつもりか? くっ、だとしたらこれはまさか、入念に計画された犯行というわけか!)









『ねぇ、ねぇアリサちゃん、すずかちゃん。最近、フェイトちゃんがすっごく私を見てる気がするんですが。これって、気のせい?』

『あ、やっぱりあんたもそう思う? 私もそんな気がしてたのよね』

『多分、なのはちゃんともっと仲良くなりたいんじゃないかな』

『そうなのかな? えへへ』

 念話でこっそり話す三人は、じゃあ今度遊びに誘おうか、なんて計画する。

『そういえば、今度皆で温泉に行くって話しあったじゃない。どうせだから、フェイトちゃんとジェイス君も誘うのはどうかな』

『いいんじゃない?』

『私も賛成、かな。あ、どうせなら隣のクラスのはやてちゃんも誘ってもいいかな』

『この間すずかの家に来てた子ね? いいわよ。動物好きに悪い子はいないものね』

『じゃ、決定! とはいっても、お父さんたちにお願いしないとだめなんだけど』









リバースリバースA’S
~陰謀渦巻かない温泉旅行、なの!~







「いやぁ、すいません。どうもうちの子たちを誘っていただいて」

「いえいえ、こちらこそうちの子がお世話になってます。お互い、楽しみましょう」

 クライドと保護者の高町士郎がお互いに挨拶を交わす。子供たちはその様子を眺めながら、ニコニコと笑顔を浮かべていた。表面上では。

(なのはたちは私が絶対に助ける!)

(やるね。親御さんや別のクラスの子も既に取り込み済みか。当然、パーパも警戒しているのだろうが運が悪かったな。ふっ、こんなこともあろうかとソードダンサーも呼んでいるのだよ。何かあれば、全力で排除してもらう手はずは整えている。さぁ、どこからでも来たまえ。表返った私が、後悔させてあげようじゃないか!)

 無駄に燃える二人だった。 

「さて、車はどうわけましょうか。子供たちは一緒にしてあげたいんですが」

「そうですね」

 親父二人が子供たちを見る。

 小さい子はなのは、すずか、アリサ、はやて、フェイト、ジェイス、カグヤと七人だ。他にもすずかの姉やメイドさん、高町家の家族が三人も居るため割と多い面子になってしまっている。

「さすがに、多すぎますか。とりあえず、移動はそれぞれの家の子にしますか?」

「そうしますか。希望があれば変えるということで。本番は温泉ですからね」

「それじゃ行きましょうか」

 結局、はやてがクライド一家の車に乗り込むということで決着が付いた。帰りはまた変わるかもしれないが、それは子供たち次第ということにして、一同は出発した。












「しっかし、驚いたわ。この二人がトナカイさんの関係者とはなぁ」

「ジェイス君とソードダンサーさんの二人とも久しぶりなのですよー。もう一人の子は知らないですが、仲良くするですよー」

 はやての用意したリュックサックから顔を覗かせたリイン。ジェイスはここに来てようやく己の勘違いを悟った。

「てっきり、俺はうちの子たちと顔合わせは終ってると思ったんだがな」

「そういわれてもなぁ。言われてないんやから、しょうがないやん」

「……つまり、アレかねパーパ。全ては君の掌の上ということかね」 

「あっはっは。その通り。お前らが気にしてた陰謀論なぞ、この次元世界には存在せん! ジェイス、お前は頭が良すぎたのだよ!」

「人が悪いことだ。警戒して損したじゃないか」

「というか、絶対に黙ってて楽しんでましたよねハーヴェイさん」

 結局のところ、問題などないわけである。このときばかりは自身の慎重さと発想力がジェイスは憎い。フェイトともども運転するクライドの後頭部を睨む。

「まぁ、なんだってええけどな。それで、すずかちゃんたちのデバイスもトナカイさんの仕業なんやね?」

「そういうこと。あ、ちなみに名前はクライド・ハーヴェイな。トナカイはクリスマス限定だ」

「了解や。で、そっちのサンタのお姉さんは?」

「カグヤよ」

「んー、カグヤちゃんかぁ。よろしゅうな」

「ええ」

 ソードダンサーをちゃん付けである。はやてとカグヤ以外の四人が一瞬、ギョッとした目ではやてを見た。

「な、なんやの?」

「いや、まぁ、いいんじゃね?」

 横目で見たクライドの隣には、助手席で大人しくしている黒髪の少女が気にせずに海鳴温泉のパンフを眺めていた。彼女をちゃん付けする猛者など、社長しか居ない。もっとも、肉球で勝負をかける女性は居るのだが。

「何を驚いているのか知らないけど、クライド。貴方運転免許を持っていたかしら」

「おう。ちゃんと偽造してもらってるさ。オートマ最高!」

「ぶふっ――」

 八神はやてが飲もうとしていたお茶が、奇襲よろしく気管を攻める。

「は、はやてちゃん? 大丈夫ですかー」

「ごほっごほっ。わ、私のことよりもあのトナカイ男を全力で止めようなぁ。死人が出るで」

 だが、リインはもとより他の面子も一斉に顔を背けた。その男が、言われた程度でどうにかなるとは到底思わなかったからである。当然、全員がバリアジャケットを展開する用意をした。








 結局、子供たちは全員お互いが魔導師であることを理解した。同時に、ユーノ・スクライアがフェレットではないという認識を持ったことで、何故ユーノがクライドに連れて行かれたのかを理解して胸を撫で下ろしていた。高町なのはだけは自室に連れ込んで世話をしていたので、とにかく「ふえぇぇ!」と声を上げて絶叫。何事かと家族の視線を集めるなどといったハプニングを提供したが、最後には吹っ切れて温泉旅館を楽しんでいた。

「ふわぁぁ、何度入っても癒されるなぁ」

「本当に効能と成分が気になるね。湯の持ち帰りはできないのだろうか?」

『いいのかなぁ。街はピンチなんだけど……』

 露天風呂を堪能していた男たちである。既に高町家の男衆は引き上げ、意中の女性達とイチャイチャしていた。子供たちも大変である。気を使うようにそそくさと立ち去るという小粋な技を披露して桃色な空気を守っていた。

「そういえば、女湯を覗くという儀式は行わないのかね。成人のための儀式だとどこかの本に書いてあったが……ふむ? 私の勘違いだったかな」

『ええっ!? ここってそんな文化があるんですか!?』

 考古学を探求する一族の少年が、フェレット姿で驚きの声を上げた。

「ないない。どこをどうやったらそんな勘違いするんだ」

「そうなのかね? まぁ、覗いたからといって何かが劇的に変わるわけもないか。見て楽しいものではないだろうしね」

「え?」

『ええ!?』

 今、この男はなんと言った? クライドとユーノが信じられない者を見た。

「ジェイス、その発言は不味い。不味いぞ色々と各方面に!」

『そ、そうですよ!』

 ジェイスには常識がない。だからといって、この発言はどうなのか。こいつは紳士を超えた何かだった。

「いいかジェイス。男と女は互いに価値を認め合っているからこそ人間なのだ。それは当然、裸も性格も全部だ。だから、画家はその美しさを描こうと裸婦画なんてものを書こうとするわけだ」

「ふむ? 言われてみればそうだね。しかし、それは趣味の世界のことなのではないかね。人それぞれ価値観が違う。そういうことなのだろう。私は他人の趣味をどうこう言うタイプではないよ」

「だとしてもそれ以前の問題だ。男の本能がお前にはないのか」

「本能? ああ、所謂三大欲求のことかね。それなら持ち合わせているよ。食欲、睡眠欲、研究欲だろう?」

『えーと、その、ハーヴェイさんお願いします……』

 考古学の遺跡のなかに、夜の生活を綴った石碑などもあったのかもしれない。少年は耳年増だった。だがさすがにいたいけな少年にそれ以上を説明させるわけにもいけない。汚れ役は大人の仕事なのである。

「お前の頭の中には子作りの概念がないのか? 研究欲じゃなくて最後のは性欲だぞ。ああ、そうか。保険の授業まだだったんだなお前」

 元悪のドクターに保険の授業が必要だとも思えない。つまりは、そういうことなのだろう。

「授業など関係ないと思うがね。そもそも、私は子供など簡単に造れる」

『ええ!?』

「お前、彼女なんて居ないだろ。居たとしてもガールフレンドだろ。絶対にお前が考えていることと俺らが意図していることは違うはずだ。とりあえず説明してみろ」

「この私の知識を疑うのかね? ふむ。良かろう。作り方は簡単さ。まず受精卵を用意し、人工子宮に――」

「待て。そこが既におかしい! その受精卵はどこから来た!」

「ふむ? ああ、コレは裏の知識なのかな? 受精卵というのは――」

 保健的、というよりは生物学的な用語を用いて懇切丁寧に説明される。そこには、生命の神秘へに対するロマンも無ければ愛も無かった。ユーノとクライドは処置なしだと理解した。この少年は、重症だ。それも致命的に重症なのだと。

「おっと、さすがに難しすぎて付いてこれないようだね」

「覗きの話しをDNAの話しにまで繋げられるとはさすがに誰も思わん。この際塩基配列なんざどうでもいいんだよ。原点に返るぞ? 何故覗くのか。それは、男にとって女とは神秘でありロマンだからだ。以上! ただし犯罪だから普通はやらん。やるなよ」

「簡潔すぎてまったく理解できないのだが……ふーむ」

「恋でも体験してこい。そうすれば円周率や凹凸の偉大さ加減も理解できる。なぁ、ユーノ君」

『そ、そうですね。それが一番だと僕も思います』

「ふーむ。番<つがい>を見つけるための前段階かね。円周率が関係するなんて知らなかったが、確かに、私には必要な経験かもしれない。まだ研究してない分野なんだよそれは。愛を探求するときにまとめて、とも思っていたのだが……重要度を上げるべきかね」

「人間の男を理解するためには外せん」

「……ふむ。そこまで言われると大事かもしれないとも思える。誰か、番になるよう頼んでみようか。しかし困ったな。女性の知り合いはそれなりに居るのだが、誰に頼めばいいのか基準が分からないのだよ。確か、私の居住している世界は一夫一妻が基本だったと記憶している。必然的に一人に絞らなければいけないわけだ。ならば当然、基準が設けられて然るべきだが、分からないね。それが分かれば早いと思うのだが……」

 適当に知り合いの名前を挙げて行くその少年は至って真面目だ。不真面目さなど欠片もない。当然、愛や恋という単語がその頭脳の中には欠片もない。

『あの、多分手に負えませんよ僕たちじゃ』

「……そうらしいな」

 基本は放任主義だったが、もしかして自分は誰よりも違う意味で手が掛かる養子を設定とはいえ得たのではないか? 温泉に浸かりながらクライドは思った。












リバースリバースA’S
~ジュエルシード封印作戦! なの~










 平凡な小学三年生だった私、高町なのはに訪れた運命の出会い。偶然にも手にしたのは魔法の力。次元の彼方からやってきたジュエルシードとかいうロストロギアから海鳴市を守るため、友達の子たちと一緒に私は魔法少女をやってます。

 やってるのですが……真っ黒い服を着た男の子がハーヴェイさんを逮捕しようとがんばってます。私たちの目の前で。

「管理局法により、貴方を逮捕します。広域次元犯罪者クライド・ハーヴェイ!」

「ぬぉ!? さすがディーゼルの息子だな。生真面目さもあいつ譲りか!」

 次々と飛来するブラストバレットやバインドに対処しながら、ハーヴェイさんが逃げ惑う。男の子は速攻で片をつけようとしているらしく、容赦しません。ふぇぇ、すっごいよあの子。息つく暇もないほどに攻めてる。

 爆音が結界内に木霊し、衝撃破がビリビリと空気を震わせています。流れ弾が海に着弾し、次々と水柱を立てていくのは結構すごい景色です。結構離れてるつもりなんだけど、私たちの居る防波堤まで風がガンガン来ます。すごいんだね。管理局の人って。

「あわわわわ。当たり前のように公務執行妨害……それに逮捕って、あの人一体何をやったんだろう。いやもう、何をしてても驚かないけどさ」

 ユーノ君が私の肩の上で震えてます。アリサちゃんとすずかちゃん、それにはやてちゃんもびっくり。でも、ジェイス君とフェイトちゃんにアルフさん。後、リインちゃんとグレアムさん、それとリーゼロッテさんは生暖かい目で空を眺めてます。なにげに温度差が凄いようです。かくいう私も驚いてはいるのですが、ハーヴェイさんが楽しそうなのであまり心配はしていません。

「ふはははっ。まだまだだなクロノ・ディーゼル君。いや、管理局執務官! やはり君も史実よりも弱体化しているのだ! 想定していたものよりも能力が低い! 嫌なバタフライ効果だが、俺は謝らん! 謝らんぞ!」

「は? 一体何の話だ!」

「今の君はリーゼロッテとリーゼアリアに揉まれてはいない! そう、あの愉快恐ろしい二人にだ! バインドの錬度が温い、近接戦闘の判断が遅い、術式の強度が甘い、そして何よりも! キスマークの跡がない! そんな程度で君の父親を翻弄し続けた俺をどうにかできるものか!」

 あ、なんか語りが入りました。しかも結構意味不明です。ハーヴェイさんのことはよく知らないのですが、レイジングハートを困らせたり、私に必殺コンボとかいうバインドから集束砲撃の話しをしたりと、聞いてもいないことを教えてくれます。今回もそのようです。きっとあの子にアドバイスしているのかな。

 一応、先輩魔導師さんの助言だと思ってフェイトちゃんに頼んでこっそり言われた戦術を練習させてもらったんですが、えーと、この訓練は危ないって言われました。主に受ける側が。非殺傷設定でも痛いものは痛いそうなので、さすがに私も止めました。フェイトちゃん涙目だったし。それにジュエルシードに全力全開の砲撃をする場面ってあんまりないし。でも、フェイトちゃんは怒らずにそれ以後も私の稽古相手をしてくれるんだ。優しいよね、フェイトちゃん。

 なんでも、訓練してくれてる人たちの中に似たようなことをやる人が居るんだって。目のハイライトを消しながら教えてくれたよ。魔導師さんの訓練って凄いんだね。私ももっとがんばらないと!

「ふーん。私らがクロノを鍛えたら強くなるんだ。今度やってみようか父様」

「ん、ディーゼル提督もその方が安心だろう。存分にやってあげなさい」

「はぁーい♪ じゅるり」

 その今度はいつかは分からないですけど、多分きっと、酷い目に会うような気がします。そして何故舌なめずりをするのかがわかりません。観戦している私は、思わずあの黒い子のことを心配しました。

「リフェラー君、君なら勝てるかね?」

「どうかな。魔力量はともかく、クロノって人結構上手いみたいだし……」

 ジェイス君が尋ねます。フェイトちゃんは私たちの中でもトップクラスに強い。なら、きっと私たちだと手も足も出ないかな。必殺コンボを嵌められたらどうか分からない気もするんだけど……それ以前の問題かも。やっぱり、経験かな。

「んー、ハーヴェイさんの戦いって初めてみたけどなんか魔力反応が複数あるなぁ」

「あっ、はやてちゃんもそう思う? ユニゾンしたはやてちゃんみたいな感じだよね」

「あー、なるほど。そういうことか。外から見たらあんな風なんやね、私ら」

『トナカイのハーヴェイさんはすっごく強いユニゾンデバイスさんを持ってるです。ほとんどその子のおかげなのですよー。魔力資質なんて関係ない代物ですー』

「なによそれ、狡いわねぇ」

「私もリインちゃんみたいな可愛いの欲しいなぁ」

 アリサちゃんが憤慨し、すずかちゃんがちょっと羨ましそうにした。私はレイジングハートに不満はないからいいんですが……それを聞いてすずかちゃんのデバイス――親指、人差し指、中指に爪があるグローブ型デバイス『スノーホワイト』さんがちょっと拗ねてます。慌てて宥めるすずかちゃん。仲が良いようで微笑ましいです。

「そういえば、他の管理局員さんたちの姿が見えないけどどうしてるのかな?」

「広域に結界を張ってるから分散してるみたいだよ。まぁ、普通の人に見せるわけにもいかないしね。でもこれは凄いことだよなのは。あの黒い子、他の大人の人たちを差し置いて単独で戦ってるわけだからさ」

 ユーノ君がそう解説してくれる。管理局のことはよく知らないのですが、実力さえあれば就業年齢がぐっと下がることもあるって言ってたけど本当なんだね。

「でも、ハーヴェイさんって結局なんなんだろう? なのはたちを巻き込んだり、はやてに「げっ」ていうぐらい高価なユニゾンデバイスを与えたり、一体どうしたいんだ。行動がさっぱり分からないや」

「海鳴市が心配なんじゃないのかな?」

「それはあるかもしれないね。でも、態々君たちを巻き込むようなまねをした意味が分からない。あの人にはフェイトたちが居たし、協力者を募る必要はなかったんだ」

「そうやね。その辺は気になるなぁ。グレアムおじさんはなんか知ってる?」

「さて、あの子が何を考えているのかは知らないよ。けれどあの子がやることにはあの子なりの意味があることが多い。私はそれに期待しているよ」

「犯罪者だけどねー」

 リーゼロッテさんが、愉快気に笑う。

「それで、結局私たちはいつまでこうして見学していればいいんでしょうか」

 尋ねてみると、グレアムさんは笑顔を浮かべて教えてくれた。

「彼らが飽きるまでだね。おっ、クライド君が動いたね」

 再び視線を空に向ければ、今度はハーヴェイさんが攻めていた。接近して張り付いて刀を振り回している。黒い子が必死に防いでいるけど、なんだろう。ハーヴェイさんはとてもいい笑顔だった。そして、黒い子とつば鍔迫り合ったかと思えばカグヤちゃんに後ろから奇襲させてた。あ、気づいて振り返ったけど遅いや。背中から切られて海に落ちてっちゃった。落ちる前にハーヴェイさんのバインドで拘束されてるけどぐったりしてる。正々堂々一対一の戦いじゃなかったけど、いいのかなぁ。

『ふははは! 聞こえるか管理局員! この幼き執務官の命が欲しければ、全力で俺を見逃しつつロストロギア封印大作戦に協力しろ! 三分だけ時間をやろう! その間に決めるが良い!』

 オープンチャンネルでの念話なんだけど……なんなんだろう。あの人、刀を男の子に突きつけて管理局員さんたちを脅してる。だ、大丈夫なのかな信じて。あっ、何かが結界を抜いて落ちてくる。アレは、翡翠の光?

 転移光が消えた次の瞬間、笑顔を浮かべた女の人が翡翠がかった透明な羽を羽ばたかせながらハーヴェイさんに近づいていきます。すると、ハーヴェイさんはすぐに武装を解除して黒い子を担いで逃げ出しちゃいました。

『クライドさん! 冗談でもやっていいことを悪いことがありますよ! どうして貴方はそう、誤解を招くようなことばかりするんですか!』

『先に突っかかってきたのはそっちだろ! 正当防衛だ!』

『もう、今日という今日は絶対に許しませんからね!』

 それは沢山の弾幕でした。黒い子なんて目じゃないほどの魔力で、大量の魔力弾や魔力剣が空を翡翠に染めていきます。あっ黒い子が盾にされてます。「懐かしの執務官シールド!」だそうです。しかも衝撃で目を覚ましたのか、自分の置かれた立場が分からなくて焦ってます。

「リ、リンディ提督が来たんだ。しかも、バックアップ受けてる……」

 フェイトちゃんが遠い目をしています。良く分かりませんが、きっと似たような目にあったことがあるんだと思います。

「えーと、誰なのかな。提督ってことは偉い人なの?」

「うん。それでその、なのはは驚くと思うけどハーヴェイさんの奥さんなんだ、あの人は」

「ふえぇぇ!?」

「えぇぇぇ!?」

 私とユーノ君は、声をそろえて絶叫した。








「皆ごめんなさいね、うちの人がいろいろと迷惑をかけて」

 クライドをバインドで縛り上げたリンディは、随分と申し訳なさそうな顔で集まった子供たちに謝罪した。クロノだけは、バリアジャケットを修復しながら苦虫を噛み潰したような顔でクライドに杖型のデバイスを突きつけている。

「それで、何か申し開きはありますか?」

「滅びるかもしれなかった管理外世界を救いに来たのにこの仕打ちはあんまりだ!」 
「それは現地の子たちを危険に晒しながらすることなんですか?」

「それはそれ、これはコレなのだ」

「まったく、この人は……で、一体皆さんに何をさせるつもりなんですか。意味も無く集めたわけではないのでしょう?」

「グレアム提督から報告が行ってると思うが、ジュエルシードが落ちてる。街中だけじゃくて当然海にもな。だから、そっちを解決させるためにも人手が欲しかっただけだ」 

 海中を一々潜って探すなんて、クライドからすればありえない。だから、無理やり海に魔法をぶちこんで無理やりジュエルシードを刺激し、反応させて場所を突き止めてから封印、回収する。原作の焼きまわしだが、それをより安全に行うために必要な人材を集めた。ただそれだけのことである。無論、他にも狙いはあったがそれを口にすることをクライドはしなかった。むしろこっちの理由はついでだったが、今となってはもっともらしい言い訳に彼らには聞こえた。

「お前が居れば被害は抑えられる。そのためにもお前を呼んでもらったんだぜ。随分と時間かかったけどな。これでようやく作戦が実行できる」

「仕方ないじゃない。航路がなかなか安定しないんだから。おかげで遠回りして来たんですよ」

「ご苦労さん。じゃ、後はよろしく」

 バインドブレイクでバインドを破壊し、皆が何かを言う前にカグヤに捕まれて移動。ミラージュハイドで雲隠れする。その際、全員に回収プランのデータを送るのも忘れない。

「もうっ」

 すぐ近くに隠れているのはリンディには分かっている。だが、気づかない振りをしながらデータを確認。それを少し修正してからプランとして提示する。

「せっかくお膳立てされているわけだし、やっちゃいましょうか」








 作戦は滞りなく行われた。フェイトが広域攻撃魔法サンダーレイジで海に魔力電流を叩き込み、ジュエルシードを刺激。その後でそれぞれ魔法少女たちが刺激されて位置が特定できたジュエルシードを封印しに行く。

 桜色の砲撃が、炎の鞭が、氷結魔法が、広域砲撃が。その他の管理局員たちが影響を出さないように結界を張って作戦を遂行して行く。危なげないその様子に、隠れて様子を伺っていたクライドが終始満足げな様子で頷いている。一応はデストーションシールドを張る準備を整えているリンディは、それを視て言った。

「満足そうですね」

「人数少ないと危ないが、これだけ揃ってると安心して見てられるからな。エース級がこれだけいれば、どうとでもなる」

「本当に、よくこれだけの子たちを探し出しましたね」

「ラプラスの恩恵さ。ただ、不自然ではあるが」

「あの子たちが?」

「いいや、ジュエルシードの落ち方が」

「……事故ではないと?」

「さぁな。それは俺には調べようがない。ただ――」

 輸送されていたジュエルシードが落ちた。それはしょうがない。それはしょうがないのだが、ではそれ以外の積荷はどうなったのか?

「なぁ、乗組員は無事だったんだよな?」

「ええ。船体の、格納庫付近に穴が開いただけだったみたいですから」

「それでジュエルシードだけがピンポイントでここに落ちたって? 臭いなぁ」

「……他の積荷もいくつか失われてはいます」

「あ、やっぱりそうなんだ。俺はジュエルシードが落ちたってことしか知らないから他のは探してないんだが……やばいのはあるか?」

「無かったと思いますよ。少なくとも次元災害を起こすようなレベルの代物は」

「なら、一先ずは安心だと思っていいか」

 密輸品があったかどうかなんてのも気にはなった。が、さすがにそこまで心配するのはパラノイアかもしれない。第三期時間軸においてドラマCDで機動六課がこの世界で何かを探していたというストーリーがあったのでクライドは気にしていたのだが、杞憂ならそれでよかった。

「あ、そうだ。多分ジュエルシードな、盗まれる可能性があるぞ」

「誰にです」

「三脳だかスカリエッティのどっちかに」

「また予言ですか」

「さぁ、どうなるかは未定だよ。きっと何かあっても、その時その場に居る連中がどうにかしてくれるさ」

 偶然にか、運命に導かれてかは分からない。しかしきっと、そうなるだろうとクライドは考えていた。もしかしたらそれを成すのは今、目の前に居るあの子達かもしれない。そう思うと、もうしばらくは暗躍しようかという気にもなる。

「そうだ、もう一つ予言してやろうか?」

「それも悪い予言ですか」

「どうだろうな。その子にとってどうかが分からん。あの少女たちの中に、未来のエース・オブ・エースが居るかもしれない……なんてのはな」

「それは、確かに良いか悪いか分かりませんね」

 結局は本人が決めることだが、それでもクライドは思うのだ。喫茶店の店長になろうと、エースになろうと、誰かのお嫁さんになってもいい。後悔しないように好きに選んで、そうして、幸せになってくれれば。












リバースリバースA’S
~スタンバイ・レディ~











 結局、海鳴市で起こった事件は大した被害もなく海での封印作戦を最後に終わりを迎えた。

 リンディ提督率いる航行艦。アースラって言うらしいけど、そこに皆で招かれてちょっとだけお茶して、簡単な注意事項なんかを聞かされた。エイミーさんっていう面白いお姉さんにも会えたし、リンディ提督の甘過ぎるお茶も堪能した。次元空間も見れたよ。

 その後は早々に撤退指示を出して帰っていったっけなぁ。しばらく航路が安定しないとはいえ、仕事はその間にもたまっていくらしく一秒も無駄にできないそうや。やからどこからともなくカグヤちゃんと一緒に現れるハーヴェイさんの相手をするのは、税金と時間と魔力の無駄やと思ってるんやろうな。

 クロノ君はハーヴェイさんを捕まえられないことに憤慨してたけど、アレは多分無理や。護衛してるカグヤちゃんが居る限りどうにもならん感じやし。

 本人も分かってるみたいやけど、どうにも性分らしい。そこに犯罪者がいるのだから、捕まえるのが義務みたいなスタンスは崩せないようやった。真面目さんなんやね。まぁ、気持ちは分かるし正しいと思う。あれであの人無害そうやけど、何をするか分からん感じやんハーヴェイさんは。クロノ君のお父さんもそれで苦労させられてるそうやし、親子二代に渡って捕縛対象にされるのも冥利に尽きるとか訳の分からんことをあの人は言っとった。非常識な人やなほんまに。

 結局事件が終って一月ぐらいしてから、ジェイス君やフェイトちゃんたちはハーヴェイさんと一緒に別の世界へと帰っていったけど、連絡先を交換してるからなんかあったら連絡は取れる。なのはちゃんとフェイトちゃんはすっごく仲良くなってたから、時々遊びに来る約束とかしてたっけな。

 というか、今実際に休みを利用して遊びに来てるんやけどな私ら。

「あっ、オリジナルのリインさんとヴィータちゃんです! お久しぶりですよー!」

「おわっ、なんだ。ツヴァイじゃねーか!」

「久しぶりだな。それで、そちらが主はやてか」

「はいです!」

「こんにちわ。どうも、リインがお世話になってたようで……」 

「まっ、ゆっくりしてけよな。それで……おお?」

 ヴィータって呼ばれたちっちゃい子が私の持ってるぬいぐるみにロックオン。すっごく目を輝かせてる。……えと、ハーヴェイさんに言われて買ってきただけなんやけどなこの『のろいうさぎ』。

「えと、お土産にあげよか」

「ほ、ほんとか!?」

 商品名にどこか怪しさを感じる一品やったけど、喜んでくれてるみたいで何よりや。

「はやてちゃーん、フェイトちゃんがお部屋に案内してくれるって!」

「わかった。今行くからな」

 フェイトちゃんの部屋か。それはそれで気になるね。

「ふふ。言ってくるといい。しばらくはこっちに居るのだろう? 話しはその時にでもできる」

「あ、はい。それじゃ行ってきます。リインのこと、しばらく頼んでいいですか」

「おう!」

「任されよう」

 快く頷いてくれた二人にリインを任せて、私は二人のところへ駆け出した。アリサちゃんとすずかちゃんは都合が付かなくて今回は休みやけど、またそのうち来るかもしれへん。これへんかった二人のためにも、沢山話せること見つけとこかな。

 それにしても、やっぱり魔法がある世界っていってもなんも大して変わらない感じやね。ここヴァルハラやなくて、ミッドチルダもこんな感じらしいけどメルヘンとは程遠い感じや。魔法に次元世界。普通は知れへんことやったかもしれへんけど、私らは知ってしもうた。

 そして同時に、ジュエルシードなんていう危険なロストロギアが私たちの知らないところで存在しているという事実と、それをどうにかする力が私らにはあるってことも。

 本当は一回こっきりで終るつもりやったけど、どうしようかな。少し、迷いが出ているのは確かや。なのはちゃんはハーヴェイさんに管理局に行くなら絶対に気を抜かずに背中に気をつけろって口すっぱく言われて困惑していたっけな。リーゼロッテさんに武装隊がお勧めとか言われてたけど、どうするつもりやろう。

 フェイトちゃんも色々と複雑な立場らしいけど、クロノ君に色々と話しを聞いてたみたいやし、こっちはこっちで悩んでるのかもしれへん。ジェイス君は興味なさそうやったけどなぁ。まぁ、ええか。私は私で色んな人に話しを聞いて、それから自分のやりたいことを見つけよう。さしあたっては、後でリインのことを聞くのとあわせて、さっきの二人に話しを聞いてみようかな。

――勿論、フリーランサーでデバイスマイスターで犯罪者の人のお話もな。














あとがき

 無印リバースリバースがフェイトさんのお話なら、A’Sははやてと海鳴市の方々です。まぁ、無理やりですのでダイジェスト風味ではありますがw

 あと、クライドのせいで基本的に三人娘が原作よりも弱体化してます。

弱体化キャラ
フェイトさん→プレシアのためにがんばってない。
はやて   →闇の書の魔力が体に解けてない。
なのはさん →フェイトさんとお話しするために猛特訓してない。
クロノ   →親父が死んでなく、猫姉妹の教導を受けてない。


強化キャラ(?)
レイハさん  →この時点で魔改造されてる。
バルディッシュ→やっぱり魔改造されてる。
アリサ    →魔法に出会った。
すずか    →魔法に出会った。
ツヴァイ   →オリジナルと作成者のせいでやや魔改造?

とまぁ、こんな感じですかね。

それにしても原作キャラの特に三人娘が難しいですね。
なのはさんの幼少時はですます口調? はやての関西弁チックな口調、まだフェイトの方がマシかな? でもやっぱり一番難しいのはなのはさんでしょうか。ユーノの方がまだそれっぽい気がします。



コメント
フェイトそんの強化指導員があの面子なのにフェイトは弱体化してるんでしょうか?
【2013/07/11 00:31】 | とり #GXwcLYx. | [edit]
とりさん こめアリです!

強化指導員があの面子なのに……

原作とは違ってプレシアのためにがんばってないのがまず一つ!

二つ目は訓練項目が増えすぎたこと!

そして最後!

学校に行くようになったので宿題に追われ、友達と休日に遊んだりもするので訓練時間がそれほど多く取れ無くなってしまったという致命的な理由があるのですよー!

魔法少女も学校と時間の無さには勝てないっすORZ

【2013/11/22 18:18】 | トラス・シュタイン #da/Koam6 | [edit]












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