憑依奮闘記 プロローグ
2008-03-13
※注意これは魔法少女リリカルなのはの二次創作小説です。 無印シリーズよりも前に、原作登場キャラっぽい人間に憑依した主人公が適当に生きる物語です。 独自設定や原作設定無視、多数のオリキャラ登場など色々と改変が行われる予定ですので、そういうのが苦手は方は見ないことをお勧めします。 許容できる人だけどうぞ。
憑依奮闘記
プロローグ
世の中には不可思議な現象というのが多々ある。 小説なんかの主人公だけが味わうはずの理不尽な仕打ちという奴が正にそれだ。 人外に襲われて妙な力に目覚めるとかその典型。 けれど俺の場合は少し違う。 よくあるパターンとして、横断歩道を渡っている最中信号無視して突っ込んでくる大型トラックにぶつかって即死。
そして、普通ならそこで俺の物語は終わりだってのに、なんという不思議。 気がついたら俺はどこの誰とも知れぬ少年となっていた。 これにはさすがに驚いた。
「クライド君、これから君は私が引き取ろうと思うが……どうだろう?」
目を覚ましたときに呆然としたが、この身体の持ち主の知り合いらしい三十台っぽい男性が俺を引き取ってくれるらしい。 何があったのかは漠然としか知らないのだが、この身体の持ち主はとある犯罪に巻き込まれて両親を殺害されたらしい。
そして、俺はかなりの怪我を負っていたがなんとか命を取り留めた少年。 事故のせいで記憶の混濁が見られる不幸な少年クライド・エイヤルとして扱われている。
微妙にこの身体の持ち主の記憶が残っていたらしく、漠然と認識ができる。 俺を引き取ってくれたのはギル・グレアムという魔導師。 家が近くにあり、偶々知り合ったことで付き合いがあったために俺を引き取ってくれたのだ。 どちらかといえば後見人として俺の面倒を見てくれるらしく、家はそのままにしておいてくれるそうだ。
「……よろしくお願いします」
「色々と手続きもある。 今日はそのまま休んで早くよくなるんだよ」
優しい微笑みを浮かべ、病院の病室から去っていくグレアムさん。 俺はベッドに身体を倒しながら混乱する頭をなんとか治めようとしていた。
特に、一番混乱したのは彼の名前と自分の境遇だ。 なんとここは俺の世界でアニメとして描かれていた世界っぽいのだ。 そして、彼の名前を俺は覚えていた。 俺自身の名前も微妙に違うが、記憶にある。 ただ、ファミリーネームが少し違うだけだが彼が結婚したときに婿養子になったのなら可能性として該当することになるだろう。 ただ、そいつは死亡する運命にあるキャラだったのが怖い。
「まだ、現実かどうかわからないけどさすがにこれはまずいな」
もし、記憶どおりの展開だとしたらマジでやばい。 俺は二十代という若さで死ぬことになるのだ。 だが、本当にそうか? そもそも俺が憑依している時点でその未来は死んだようなものなのだが……。
「不安……だけど、まあなるようにするしかないか」
これが夢ではないことだけははっきりしている。 起きて早々小さい体だったので自分の頬を引っ張ってみたら、痛みを覚えたのだ。 夢でなければ現実でしかありえないだろう。 奇妙な現実だったが、しかし俺はその運命を受け入れることにした。
一度アニメのキャラとして色々と美味しい役どころを味わってみたかったのだ。 しかも、この世界には俺の世界とは違って魔導師なる存在が魔法を使って犯罪者を取り締まるような世界なのだ。
俺自身にも魔法の才能があるかもしれず、詰まらない日常を暮らしていた俺にとってはこれほど面白そうなことはない。
「やってみるか……」
死亡フラグを回避し、なおかつ俺のしたいように過ごせる未来を掴み取る。 未来が未知であるならば、俺の行いによって変えられるだろう。 もし決定しているのなら、どたんばで違う行動を取ればよい。 幸い、どういう経緯でもって死ぬのかは知っている。 そうならないように行動すればなんとかなるだろう。
楽観視で漠然とのしかかる死の恐怖を頭から追いやりながら、俺はゆっくりと目を閉じた。 少年の身体は、どうやら眠気を抑えきれないらしい。 睡魔に抵抗することをせずそのまま眠ることにする。 もし、これが夢なら次に起きたときにはこの夢は覚めているかもしれない。 なんて、詰まらないことを考えながら。
「けど、このままこの世界が続くなら、少し努力って奴をしなきゃな」
なにせ、この世界は俺の常識は通じないのだ。 この世界、”リリカルなのは”の世界では。
結論からいえば、やはり現実だったらしい。 次に目を覚ましたときには俺はグレアムさんの使い魔二人にもみくちゃにされていた。
「もう、心配したんだぞクライド君」
「無事でよかった」
「うわっぷ」
グレアムさんの使い魔リーゼロッテとリーゼアリア。 確か、元気なほうがロッテで落ち着いているほうがアリアだ。 二人は猫の使い魔であり、優秀な使い魔である。
今は十六、七ぐらいの少女の姿をとっているが、チョコンとある猫耳とお尻からはえているしっぽが可愛らしい正体の名残として残っている。 記憶ではロッテがフィジカル担当、アリアが魔法担当として恐ろしいほどの力を秘めているはず。 きっちりと役割分担しており、戦闘では特化したスタイルを利用して効率的に相手を戦闘不能にすることができる。 可愛い外見とは裏腹に、凶悪なポテンシャルを秘めている二人だった。
「ちょ、ちょっと苦しいよロッテ」
7歳ぐらいの少年の身体の現在、年上っぽいのお姉さんにハグされるというのは嬉しいことだ。 しかし、かなり力が入っているので苦しい。
「あははは、御免よクライド君」
もっとも、身体に当たる柔らかな感触は男としてラッキーだったが。 しかし、俺自身にこういうスキンシップをされた経験がないためどうしても恥ずかしい。 しかも、俺は専門学校生だったのだ。 小学生のような扱いをされれば、さすがに羞恥心が沸くというものだ。
少し力を緩めるロッテ。 アリアは離れてから持ってきていたリンゴを手に取ると、持参していたナイフで皮をむき始める。 どうやら、振舞ってくれるらしい。
「はい、クライド」
「あ、ありがとうアリア」
口元に差し出されたリンゴ。 子供らしく食べさせてもらう。 無茶苦茶恥ずかしいがそれもしかたないことか。 できるだけ子供らしく振舞うしか俺には手がないのだから。 記憶の混乱が見られるなんて診断を受けていたが、それでもいきなり地を出すなんてことはできない。
シェクシェクとリンゴを食みながら、その甘酸っぱさを堪能する。 綺麗な少女に食べさせてもらっているのだと思えば、余計に美味しく感じられた。
――コンコン。
と、そのとき扉を叩くノック音。
「はい、どうぞ」
「クライド君、失礼するよ」
現れたのはグレアムさんだ。 色々と手続きが必要だったのか書類をいくつか手に持っている。
「早速だが少し話しをしようか。 君のこれからのことなんだが、私の養子にしてもいいんだが……君には君の家がある。 君の両親とも交流はあったし、色々と偲びないのでね。 私は君の後見人の立場でいようと思う。 君がひとり立ちしてから、どうするか決めるといい」
「うん、ありがとうグレアムさん」
「ふふ、気にすることはないよ。 それと、そうだ。 当分はロッテとアリアを交互に君につけよう。 色々と一人では大変だろうからね。 ロッテとアリア……クライド君を頼むぞ」
「うん、わかったよ父様」
「わかりました」
頷く二人の使い魔。
「さて、そろそろ失礼するよ」
「仕事?」
「ああ、時空管理局は慢性的な人手不足なのでね。 魔導師はどこでも引っ張りだこなんだよ」
苦笑しながらそういうとグレアムさんは病室を出ていく。
「じゃあロッテ、今日は貴方がお願い。 私はお父様の手伝いに行く」
「おーけー」
「バイバイ、クライド」
「うん、また明日」
後を追うようにして出て行ったアリア。
「さて、病院は退屈だろうから私とお話でもしよっか」
「うん」
「うーん、どんなお話にしようかな。 何かリクエストってある?」
「そうだ、じゃあ魔導師とかデバイスマイスターの成りかたを教えて。 僕もグレアムさんみたいに管理局員になりたいんだ」
そういうと、ロッテはやや驚いたように目を瞬かせた。 が、すぐに頷くと色々と教えてくれた。 まず、魔導師になるには適性検査を受けないといけないらしい。 それで魔法が使えるほどの魔力があると判断されなければならない。 ここで落とされた場合、厳しいそうだ。 最低限の魔力量を検査する段階で弾かれるわけだから当然か。
「で、その後は魔法学校を出て訓練学校へ行く……これが一番ポピュラーかな」
「ふーん」
「例外があるとすれば、それは物凄い才能があった場合だね。 お父様とかがそう……ランクAAA以上なら文句なし。 まあ、そこまで才能がある人って少ないんだけどね」
「さっきグレアムさんがいってたみたいに、人手不足だから?」
「そう。 魔法を使える人間は少ないんだ。 ミッドチルダでも少ない確率でしか生まれない。 時空管理局は魔導師の数を確保するのに躍起になってるんだ。 クライド君に才能があったら、多分努力すれば管理局の魔導師になれると思うよ。 まあ、最低限の魔力はあるみたいだから大丈夫だろうね君は」
「本当?」
「私が保証してあげる」
「やった、じゃあ今度魔法教えて」
「あはは、そんなに焦らなくて良いよクライド君。 でも、そうだね。 元気になったらアリアと一緒に教えてあげるよ」
「うん、約束だよ」
アニメを見た限り、ロッテとアリアはかなりの使い手だ。 もし師事を受けることができるのならばかなり期待できる。 某黒介が良い例だ。 ただ、色々とスパルタっぽいらしいから気をつける必要はあるだろうが。
それから、色々と話をして一日が終わった。 もし一人で病院にいたら酷く退屈だったろうけど、ロッテが退屈を紛らわすために色々と付き合ってくれたおかげで退屈にはならなかった。
数日後、退院した俺は自分の家へと連れられていった。 相変わらず忙しいグレアムさんは顔を出すことはなかったけれど、アリアが付き合ってくれていた。 少しずつクライド自身の記憶を思い出すように、蘇ってくる映像を幻視する。 クライドという少年の両親との思い出らしい記憶が頭をよぎっては消えていく。 そのことに、少し罪悪感を覚えた。
(俺は、この少年の人生を奪い取ったのだろうか? だとしたら……)
だとしたら、酷い話だ。 死人のはずの俺がクライドという少年の未来を奪い取ってしまったのだから。
(お前の分まで、幸せになってみせるぞクライド)
部屋に飾られていたアルバムを眺めながら、この身体の持ち主に誓う。 願わくば、死亡フラグが回避できますように。 クライドに憑依して生きることになった俺の運命との戦いがこうして始まった。
プロローグ
世の中には不可思議な現象というのが多々ある。 小説なんかの主人公だけが味わうはずの理不尽な仕打ちという奴が正にそれだ。 人外に襲われて妙な力に目覚めるとかその典型。 けれど俺の場合は少し違う。 よくあるパターンとして、横断歩道を渡っている最中信号無視して突っ込んでくる大型トラックにぶつかって即死。
そして、普通ならそこで俺の物語は終わりだってのに、なんという不思議。 気がついたら俺はどこの誰とも知れぬ少年となっていた。 これにはさすがに驚いた。
「クライド君、これから君は私が引き取ろうと思うが……どうだろう?」
目を覚ましたときに呆然としたが、この身体の持ち主の知り合いらしい三十台っぽい男性が俺を引き取ってくれるらしい。 何があったのかは漠然としか知らないのだが、この身体の持ち主はとある犯罪に巻き込まれて両親を殺害されたらしい。
そして、俺はかなりの怪我を負っていたがなんとか命を取り留めた少年。 事故のせいで記憶の混濁が見られる不幸な少年クライド・エイヤルとして扱われている。
微妙にこの身体の持ち主の記憶が残っていたらしく、漠然と認識ができる。 俺を引き取ってくれたのはギル・グレアムという魔導師。 家が近くにあり、偶々知り合ったことで付き合いがあったために俺を引き取ってくれたのだ。 どちらかといえば後見人として俺の面倒を見てくれるらしく、家はそのままにしておいてくれるそうだ。
「……よろしくお願いします」
「色々と手続きもある。 今日はそのまま休んで早くよくなるんだよ」
優しい微笑みを浮かべ、病院の病室から去っていくグレアムさん。 俺はベッドに身体を倒しながら混乱する頭をなんとか治めようとしていた。
特に、一番混乱したのは彼の名前と自分の境遇だ。 なんとここは俺の世界でアニメとして描かれていた世界っぽいのだ。 そして、彼の名前を俺は覚えていた。 俺自身の名前も微妙に違うが、記憶にある。 ただ、ファミリーネームが少し違うだけだが彼が結婚したときに婿養子になったのなら可能性として該当することになるだろう。 ただ、そいつは死亡する運命にあるキャラだったのが怖い。
「まだ、現実かどうかわからないけどさすがにこれはまずいな」
もし、記憶どおりの展開だとしたらマジでやばい。 俺は二十代という若さで死ぬことになるのだ。 だが、本当にそうか? そもそも俺が憑依している時点でその未来は死んだようなものなのだが……。
「不安……だけど、まあなるようにするしかないか」
これが夢ではないことだけははっきりしている。 起きて早々小さい体だったので自分の頬を引っ張ってみたら、痛みを覚えたのだ。 夢でなければ現実でしかありえないだろう。 奇妙な現実だったが、しかし俺はその運命を受け入れることにした。
一度アニメのキャラとして色々と美味しい役どころを味わってみたかったのだ。 しかも、この世界には俺の世界とは違って魔導師なる存在が魔法を使って犯罪者を取り締まるような世界なのだ。
俺自身にも魔法の才能があるかもしれず、詰まらない日常を暮らしていた俺にとってはこれほど面白そうなことはない。
「やってみるか……」
死亡フラグを回避し、なおかつ俺のしたいように過ごせる未来を掴み取る。 未来が未知であるならば、俺の行いによって変えられるだろう。 もし決定しているのなら、どたんばで違う行動を取ればよい。 幸い、どういう経緯でもって死ぬのかは知っている。 そうならないように行動すればなんとかなるだろう。
楽観視で漠然とのしかかる死の恐怖を頭から追いやりながら、俺はゆっくりと目を閉じた。 少年の身体は、どうやら眠気を抑えきれないらしい。 睡魔に抵抗することをせずそのまま眠ることにする。 もし、これが夢なら次に起きたときにはこの夢は覚めているかもしれない。 なんて、詰まらないことを考えながら。
「けど、このままこの世界が続くなら、少し努力って奴をしなきゃな」
なにせ、この世界は俺の常識は通じないのだ。 この世界、”リリカルなのは”の世界では。
結論からいえば、やはり現実だったらしい。 次に目を覚ましたときには俺はグレアムさんの使い魔二人にもみくちゃにされていた。
「もう、心配したんだぞクライド君」
「無事でよかった」
「うわっぷ」
グレアムさんの使い魔リーゼロッテとリーゼアリア。 確か、元気なほうがロッテで落ち着いているほうがアリアだ。 二人は猫の使い魔であり、優秀な使い魔である。
今は十六、七ぐらいの少女の姿をとっているが、チョコンとある猫耳とお尻からはえているしっぽが可愛らしい正体の名残として残っている。 記憶ではロッテがフィジカル担当、アリアが魔法担当として恐ろしいほどの力を秘めているはず。 きっちりと役割分担しており、戦闘では特化したスタイルを利用して効率的に相手を戦闘不能にすることができる。 可愛い外見とは裏腹に、凶悪なポテンシャルを秘めている二人だった。
「ちょ、ちょっと苦しいよロッテ」
7歳ぐらいの少年の身体の現在、年上っぽいのお姉さんにハグされるというのは嬉しいことだ。 しかし、かなり力が入っているので苦しい。
「あははは、御免よクライド君」
もっとも、身体に当たる柔らかな感触は男としてラッキーだったが。 しかし、俺自身にこういうスキンシップをされた経験がないためどうしても恥ずかしい。 しかも、俺は専門学校生だったのだ。 小学生のような扱いをされれば、さすがに羞恥心が沸くというものだ。
少し力を緩めるロッテ。 アリアは離れてから持ってきていたリンゴを手に取ると、持参していたナイフで皮をむき始める。 どうやら、振舞ってくれるらしい。
「はい、クライド」
「あ、ありがとうアリア」
口元に差し出されたリンゴ。 子供らしく食べさせてもらう。 無茶苦茶恥ずかしいがそれもしかたないことか。 できるだけ子供らしく振舞うしか俺には手がないのだから。 記憶の混乱が見られるなんて診断を受けていたが、それでもいきなり地を出すなんてことはできない。
シェクシェクとリンゴを食みながら、その甘酸っぱさを堪能する。 綺麗な少女に食べさせてもらっているのだと思えば、余計に美味しく感じられた。
――コンコン。
と、そのとき扉を叩くノック音。
「はい、どうぞ」
「クライド君、失礼するよ」
現れたのはグレアムさんだ。 色々と手続きが必要だったのか書類をいくつか手に持っている。
「早速だが少し話しをしようか。 君のこれからのことなんだが、私の養子にしてもいいんだが……君には君の家がある。 君の両親とも交流はあったし、色々と偲びないのでね。 私は君の後見人の立場でいようと思う。 君がひとり立ちしてから、どうするか決めるといい」
「うん、ありがとうグレアムさん」
「ふふ、気にすることはないよ。 それと、そうだ。 当分はロッテとアリアを交互に君につけよう。 色々と一人では大変だろうからね。 ロッテとアリア……クライド君を頼むぞ」
「うん、わかったよ父様」
「わかりました」
頷く二人の使い魔。
「さて、そろそろ失礼するよ」
「仕事?」
「ああ、時空管理局は慢性的な人手不足なのでね。 魔導師はどこでも引っ張りだこなんだよ」
苦笑しながらそういうとグレアムさんは病室を出ていく。
「じゃあロッテ、今日は貴方がお願い。 私はお父様の手伝いに行く」
「おーけー」
「バイバイ、クライド」
「うん、また明日」
後を追うようにして出て行ったアリア。
「さて、病院は退屈だろうから私とお話でもしよっか」
「うん」
「うーん、どんなお話にしようかな。 何かリクエストってある?」
「そうだ、じゃあ魔導師とかデバイスマイスターの成りかたを教えて。 僕もグレアムさんみたいに管理局員になりたいんだ」
そういうと、ロッテはやや驚いたように目を瞬かせた。 が、すぐに頷くと色々と教えてくれた。 まず、魔導師になるには適性検査を受けないといけないらしい。 それで魔法が使えるほどの魔力があると判断されなければならない。 ここで落とされた場合、厳しいそうだ。 最低限の魔力量を検査する段階で弾かれるわけだから当然か。
「で、その後は魔法学校を出て訓練学校へ行く……これが一番ポピュラーかな」
「ふーん」
「例外があるとすれば、それは物凄い才能があった場合だね。 お父様とかがそう……ランクAAA以上なら文句なし。 まあ、そこまで才能がある人って少ないんだけどね」
「さっきグレアムさんがいってたみたいに、人手不足だから?」
「そう。 魔法を使える人間は少ないんだ。 ミッドチルダでも少ない確率でしか生まれない。 時空管理局は魔導師の数を確保するのに躍起になってるんだ。 クライド君に才能があったら、多分努力すれば管理局の魔導師になれると思うよ。 まあ、最低限の魔力はあるみたいだから大丈夫だろうね君は」
「本当?」
「私が保証してあげる」
「やった、じゃあ今度魔法教えて」
「あはは、そんなに焦らなくて良いよクライド君。 でも、そうだね。 元気になったらアリアと一緒に教えてあげるよ」
「うん、約束だよ」
アニメを見た限り、ロッテとアリアはかなりの使い手だ。 もし師事を受けることができるのならばかなり期待できる。 某黒介が良い例だ。 ただ、色々とスパルタっぽいらしいから気をつける必要はあるだろうが。
それから、色々と話をして一日が終わった。 もし一人で病院にいたら酷く退屈だったろうけど、ロッテが退屈を紛らわすために色々と付き合ってくれたおかげで退屈にはならなかった。
数日後、退院した俺は自分の家へと連れられていった。 相変わらず忙しいグレアムさんは顔を出すことはなかったけれど、アリアが付き合ってくれていた。 少しずつクライド自身の記憶を思い出すように、蘇ってくる映像を幻視する。 クライドという少年の両親との思い出らしい記憶が頭をよぎっては消えていく。 そのことに、少し罪悪感を覚えた。
(俺は、この少年の人生を奪い取ったのだろうか? だとしたら……)
だとしたら、酷い話だ。 死人のはずの俺がクライドという少年の未来を奪い取ってしまったのだから。
(お前の分まで、幸せになってみせるぞクライド)
部屋に飾られていたアルバムを眺めながら、この身体の持ち主に誓う。 願わくば、死亡フラグが回避できますように。 クライドに憑依して生きることになった俺の運命との戦いがこうして始まった。