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語られざる歴史を捏造して語ってみる05w

 2007-08-20
注意
 少し実験的に、文章の書き方を変えてみてみました。 見づらいとか言われたら修正するかもしれないので、とりあえず今回はこれであげて見てます。  



「ふぁーあ……」


遠ざかるミッドガルズの城砦。

その光景を見ながら、欠伸を一つ。

疲れているのだろう。

ダオスの看病に、エドワードの協力をとりつけるために毎日宿と兵舎を往復したこの4日。

一日たりとて気が休まる日など無かったウィノナは、マントのフードをかぶりながらウトウトと船を漕いでいた。


「かなり疲れているようだね?」

「うん……そうかも」


隣に居るミュラーに答えながら、馬車の中のベッドで寝ているダオスに視線を落とす。

そういえば、ダオスのおかげでユニコーンに会いに行くことができなかった。

彼の旅に巻き込まれていなければ、自分は今どうしていただろうかというIFをつい考えてしまった。

ユニコーンに出会い、願いをかなえてもらえただろうか?

それともユニコーンには出会えず、途方にくれて奇術団に帰ったのだろうか?

IFは無限の幻想を孕んでいる。

考えればキリがなかった。

けれども、それは夢想に留めるべきだ。

ウィノナは既に関わっており、今更彼をほっぽりだすようなことをする気は毛頭ないのだから。


「ここ最近慌しかったのだから、少し休むといい。 ダオスは俺たちが見ていよう」

「ん……じゃあ頼もうかな」


アキトが渡してきた毛布を被ると、そのまま座ったまま眼を閉じる。

馬車に揺られる中では少々寝心地が悪かったが、それはいつものことである。

既に旅慣れているウィノナにとって、それでも揺り篭足りえた。


――どうか、安心して眠れますように。


胸の奥で呟くと、ウィノナの意識は静かにまどろみの中に落ちていった。










語られざる歴史

第5話

                「悪夢」









赤い水溜りが地面を赤く染めていた。

その近くには、剣のような何かで斬り飛ばされたと思われる細身の腕が無造作に落ちている。

さらに周りを見渡せば、広がる肉、肉、肉。

焼き焦がされ、異臭を放っているモノもあれば、上半身ごと体を吹き飛ばされたモノもある。

さらにさらに周りを見渡せば、地面から生えた土でできた槍に四肢を貫かれ、事切れている肉塊が存在する。

肉塊からは血が滴り、ともすればこの場所がどこかの戦場であるかのように思わせる。

だが、ふとウィノナは思う。


――これは違う。


こんな景色と情景があるなんてこと、存在することになるなんてこと認めたくなんて無い。

と、肉塊ではないモノが憎悪の雄叫びを上げた。

その言葉は、ウィノナの心を恐怖させる。


「――故郷を救うため、この世界から病巣を取り除く。 世界の救済の始まりだ!!」


血の海の中、たたずむダオスの宣言だった。

ならば、この惨劇を起こしたのは彼だというのか?

その宣言の前にいるのは、エドワードと見たこともない兵士の男とその彼が引き連れているであろう部下たちの姿。

多勢に無勢。

だが、ダオスの眼には恐怖などなかった。

あるのは憎悪と、ただただ猛る感情だけだ。

いや、その中には確かに優しさも存在した。


「……だめ、だめだよダオス……」


ギリギリで彼を踏みとどまらせようと、ウィノナは腕を押さえながら彼を説得しようと左手を伸ばす。

だが、その先にはあるはずの腕が無い。

肘から先にあるのは痛みと、赤い血だけだ。

気を失いそうな激痛が走り、ウィノナは痙攣しながら力尽きそうになる。

だが、それで気を失うなんてことはなかった。

気力を振り絞り、限界の体に鞭打って意識を繋ぎ続ける。

みっともなく地べたを這いずり、少しずつダオスの元へと向かう。


自分しかいないのだ。

彼を踏みとどまらせることができるのは。

他の誰でもない、ウィノナ・ピックフォードにしかできないことなのだ。

だから、痛みなどどうでもよかった。

意識が繋ぎとめられるなら、それでダオスを踏みとどまらせることができるならば――。

焦点の定まらない視線を泳がせ、ダオスの姿を探す。

ぼやけた視界、けれど彼の姿だけははっきりと見える。

長い金髪に、長く見続けていれば頬を染めてしまいそうなほどに美しい顔。

優しく自分を見てくれる金色の瞳。

例えその手が真紅の血で汚されていようと、決して損なわれない気高さを持つ彼の姿がそこにはあった。

ゆっくりと、彼がこちらに近づいてくる。

ウィノナの腕を見て一瞬だけ悲痛な顔をするが、すぐに彼女だけに見せる微笑を浮かべて。

エドワードたちが見る中、ダオスはゆっくりと膝をついて右手を差し出す。



――血に染まった腕が近づいた。



「共に来て欲しい。 君と、世界を救うために」


激痛にもだえるウィノナ。

彼女はその腕を掴もうとして、しかし一瞬と躊躇してしまう。

それは、彼の腕についている真紅の血に対する恐怖だった。

ただ、それだけだったのに――。


「……そうか。 確かに、君がこの血塗られた手を掴む必要もない……」



――躊躇を拒絶、怯えだとダオスは見て取った。



彼の優しさ故の錯覚だった。

誤解であり、悪夢のようなすれ違いだ。

微笑みがかげり、寂しさが顔に出ていた。

だけれども、彼はやっぱり最後は笑顔で微笑んだ。

人間は嫌いだ。

けれども、それでもウィノナのことは本当に好きだったから。

必死に自分のためを思ってくれた彼女に、最高の笑顔を見せて去りたかったのだ。

そしてそれで未練を断ち切るように、彼は――。

















――ウィノナに向かって背を向けた。















「ち、違うよ!! ダオス、違うの!! そ、そんなつもりじゃ……うぐ……ない……から……おね……わた……も……一緒に――」


立ち上がろうと、懇親の力を足に伝える。

だが、血を多く失い、朦朧とする意識はそれ以上先には進ませない。

這うように彼を追おうとするが、今度はもう体はいうことを聞かなかった。

がくりと倒れるウィノナ。


「……ウィノナ!? ダオス!!」

「ちぃ、邪魔者を捕らえろ!!」


その後ろで、黒ずくめの誰かが大声を張り上げたように聞こえたが、ウィノナにはそれが誰であったのかを知ることはなかった。

ただ、去っていくダオスの背中を追うことしかできない。

「くそ、邪魔をするな貴様ら!!」

剣を振り上げて襲い掛かってくる兵士たちと手に持った剣を打ち合わせながら、黒ずくめは必死に叫ぶ。


「待て、ダオス!! 行くなら彼女も連れて行ってやれ!! ウィノナにはお前が必要で、お前にはウィノナが必要だ!! だから、彼女を悲しませるような真似をするんじゃない!! 自分自身を救うのを諦めるな!!」


怒号のように、紡がれる真摯な叫び。

けれども、ダオスは振り返らない。

ただ一言、


「彼女を頼む…………友よ」


と、本当に一言だけ言い残して閃光となる。

それは、彼が時間を越える能力を行使するときの光だった。


「待てよ、ダオス!! ダオスゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!」


儚き閃光が周囲を照らし、時を超ゆる光となる。

その光に身を委ね、消えるダオス。


「馬鹿野郎がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


打ち合う剣戟が激しさを増し、多勢に無勢の剣士の退路を奪っていく。

――そこでようやく、悪夢は終わりを告げた。













「はぁ、はぁ、はぁ……」


夢は残酷で無邪気だ。

見る者のことなど考えもせず、ありとあらゆる幻想を見せる。

制限の無い夢ほど無秩序なものはなく、安らぎと苦しさを同居させるそれはウィノナはあまり好きではなかった。

とくに、いきなりなんの前触れもなく知っている誰かを巻き込んだ夢などは。

思わず、左腕に視線を向ける。


「……ある……はは、よかった……」


思わず涙が出そうになった。

本当に、神様はどんな権利があってこんな残酷な夢を自分に見せるのか。

苛立ちが募る。

これではまるで悪魔のようだ。

願いを聞き届けず、人の不幸をただ楽しみのためだけに嘲笑っている悪魔に相違ない。



――何もしてくれない神様なんて嫌いだ。




「あ、そうだダオス……」


まだ、馬車は揺れている。

アレからどれだけたったのかは分からなかったが、月明かりが見えるところからどうやら真夜中に目覚めたらしい。

だが、それでよかったかもしれない。

アレ以上悪夢の続きなど見たくもないのだ。


「ねぇ……ダオス。 私を置いて行っちゃ嫌だよ?」


規則正しく呼吸しながら、眠りについている金色の青年。


「絶対、絶対に駄目なんだからね? 約束だよ」


眠っている彼が答えるはずなんかない。

それは分かっていたけれど、ウィノナは一方的にでもそうしておきたかった。

不安に押しつぶされないために。

これ以上、悪夢に翻弄されないために何かに縋りたかったのかもしれない。

椅子を持ち、毛布も一緒にダオスのベッドの近くに向かう。

そうして、眠りについた彼の腕を両手で包み込むと、眼を閉じる。

これで、悪夢をまた見たとしても彼がいなくなっているなんてことはないだろう。

手にある暖かさを感じる限り、安心して眠れそうな気がする。


「おやすみ……今度は楽しい夢が見たい、な――」


純粋でちっぽけな願いだった。

けれど、その程度の願いさえ叶わない。

神様はいつだって、特定の誰かのために願いを叶えるようなことはしないのだ。

結局、その日は寝たり起きたりを繰り返し、ウィノナが満足に熟睡できることはなかった。

気のせいか、失っていないはずの腕が痛むような気がした。














エドワードと別れ、フレイランドで船に乗り換え数日進んだ頃になると、ダオスの体調はかなりよくなっていた。

どうやら、船で向かう先の大陸はマナが豊富なようだ。

時間は深夜、だがいつもダオスの手を握って眠っていたウィノナの姿が無い。

訝しんでダオスはベッドの近くにあった杖を取る。

万全ではない体は、気を抜けば倒れてしまうこともある。

皆に迷惑をかけないために、用意してもらった杖だった。


「……探してみるか」


微妙に揺れを感じる船の中、ダオスは慎重に足を進める。

と、そこで漆黒の衣を着た男を見つけた。

どのような拘りがあるのかはダオスは知らないが、アキトは黒をよく好んだ。

さすがに船内ではボディーアーマーとマントを外しているし、いつもの戦闘用の服装ではない。

しかし、あの目や顔を隠すためのバイザーと呼ばれる黒い眼鏡の一種と、黒一色の服装は彼を見間違うことのない一種の目印とな

っていた。

ウィノナやミュラーがたまには他の色を着るようにと説得していたが、彼は黒を捨てない。


「アキト、ウィノナを知らないか?」

「ああ、ついさっき甲板の方へと向かっていたのを見たぞダオス」

「そうか……」


軽く礼を言い、言われた通りに甲板へと向かおうとする。


「俺も一緒に行こう。 少し、剣を振りたかったところだ」


手に持っていた剣を見せながら、アキトはダオスの隣に立って歩を進める。

旅に出てから、アキトは剣を毎日欠かさず振るっている。

自身のために、そしてダオスと旅をするためにだった。


「……無理して付き合おうとしてくれなくても構わぬぞ?」

「これは俺が決めたことだ。 それに、これから住むことになるこの世界を見て回るのも面白そうだからな」


ダオスは体が癒えれば旅をしようと思っていた。

この星から別の星へと旅をするための力はもうないが、それでもこの星の中に彼が捜し求めるものがある可能性がある。

何事にも例外はあるし、この世界にマナという概念があるならば彼が求めるモノやそれに似たようなモノがあるかもしれない。

それを探すためにも、旅に出るのは当然の選択だった。

それに、彼は奇術など持っていない。

誰かに見せるための芸などないのだ。

ウィノナたちのところで、いつまでも世話になるわけにもいかないだろう。

ウィノナが誘ってくれていることを考え、少し悩んではいたが。

全国公演している奇術団の一座と行動を共にするということは、各地を旅することと相違ないからだ。

本当なら、悩む必要など無いのかもしれない。

彼女と奇術団の好意に甘えることもできる。

けれども、本当にそれでいいのか?

自分はこの星の人間ではないし、体も彼らと同じようにはできていない。

彼らが向かう先がマナが希薄な場所ならば、ダオスは足手まといになってしまう。

ウィノナには今でも大変な迷惑をかけている。

自身の時空転移に巻き込み、さらには看病までしてくれている。

優しい時間をくれた彼女たちに、ダオスは何も返すことができないのだ。


「……どうかしたのか?」

「いや、なんでもない」


少々考えすぎていたらしい。

黙り込んだダオスを見て、アキトが怪訝そうにしている。


「体がやばいなら、ベッドに戻ったほうが良い。 ウィノナに用があるんなら、俺が探しておくが……」

「いや、体調は悪くない。 万全ではないが歩き回るぐらいならできるようになっている。 それに、彼女を看病で疲弊させてい
るのは私だ。 ならば私がウィノナを探すのが筋であろう」

「そうか、だがどうしてもやばくなったら言え。 そのほうがよっぽどウィノナを精神的に疲弊させることになるだろうからな」


どうやらアキトも最近のウィノナの様子に気がついているらしい。

「理由はわからないが、彼女は最近あまり眠りについていないようなのだ。 私が目を覚ませば大抵は私の傍にいてくれている。私の目覚めが昼間だろうと夜中だろうと関わらずだ」

「……そうか。 お前のことが心配なのか、それとも眠れない理由でもあるのか……一度聞いてみたほうがいいかもしれないな」

「ああ、”彼女”は恩人だからな」

「ははっ、確かに」


厳密に言えばアキトもミュラーも恩人になる。

恩人にして被害者だ、とでも言うのだろうか。

ダオスとしては、自身の旅で誰かを不幸にするなど考えてもいなかった。

無論、希望を抱いて出た旅路である。

探しているモノを得るためのあらゆる障害には覚悟をしてはいたが、誰かを巻き込むような覚悟は想定外だった。


――故郷を救う。


そのために、命をかけて旅をしてきたのだ。

だが、そのために誰かに迷惑をかけていいはずがない。

自身の時空転移に巻き込んでいいはずがないのだ。

彼らには自身を恨む権利と、自分を罵る権利がある。

そのように考えていたというのに、彼らは一度もダオスを攻めはしない。

取り返しのつかないことをしたのだということをダオスは認識している。

ウィノナは数日で済んだが、もし十年や二十年単位で巻き込んでいたならばそれは彼女の人生を破壊したことになる。

そう考えてゾッとして、同時に彼女の人生を壊さなくて済んだことに安堵を覚えた。

だが、ウィノナに関しては安堵してもいいかもしれないが、隣を歩く男とここにはいないあの銀髪の女性に関して言えば、ダオス

はその人生を破壊してしまったという事実はかわらない。

一人の人生を台無しにしなかったからよかったとしても、それだけですむ問題ではないのだ。

一瞬の安堵、その後にやってくるどうしようもないやるせなさ。

気がつかねばよかったのかもしれないが、そういうところをうやむやにできる程ダオスは図太い神経はしていない。

どちらかといえば律儀で、そういうことを深く考えるタイプの人間である。

何度も謝罪するような無粋な真似こそしなかったが、内心ではいつも彼らには謝罪していた。

だが、それを何度も何度も表に出すわけにはいかない。

二人がそれを望んでいないことなど、少し考えれば分かることで、彼はこの話題をあまり振らないようにと考えていた。


――コツコツと、二人の歩く足音が響く。


すでに夜も遅く、彼らのほかにすれ違う人影もない。

木造の床を踏み鳴らし、階段を上る。

甲板へと続く床が軋みを上げるが、それはいつものことだった。

ランプの明かりが途切れ、暗い闇の中へと二人は進む。

暗い闇といっても、星や月明かりがあるために完全な暗黒ではない。

だが、慣れぬ者には暗闇に対する怯えの感情ぐらいはあっただろう。

そんな闇の中、二人は見た。

ぼんやりと頬杖をつきながら、海の彼方を見る少女を。

微動だにせず、何かを考えているのか彼女は遠くを見続ける。

その先に暗闇と海しかなくとも、何も見るものがなくとも、彼女には何かが見えているのかもしれない。

それは目に映る景色ではなく、頭に思い描かれた情景。

きっとその類のものだ。

静寂と同化した暗黒が、そこにはあった。


「――ウィノナ、眠らないのか?」


声をかけられて、ようやく彼女は気がついたらしい。

静寂の中に響いた、木造の床の軋む音には気がつかなかったようだ。


「――眠るのがね、夢を見るのが、怖いんだよ」


振り返って問いに答える。

少女の表情は疲れきっていた。

いつもの朗らかな笑顔はなく、消耗し、彼らが見たことがないような顔を晒す。

ダオスもアキトもそのウィノナの様子に息を呑む。

ダオスの看病が疲れたというのなら分かるが、眠るのが怖いというのはどういうことか。

悪夢に魘されていたというのなら分かるが、ここまで疲弊することなどありえない。

ただの夢は所詮夢でしかなく、一度しか見ないものが多いだろう。



目が覚めれば消える泡沫。

さめれば薄れ抜け落ちる幻想の断片。

夢とはそういう類のモノであろう。



「不眠症というわけではなさそうだな……夢を見るのが怖いのか?」

「うん、私は夢は大嫌いなの」

「しかし、眠らなければ君が病に伏せる」


それは正論だ。

眠らなければ人間は回復しない。

これは道理であり、摂理だ。

もしその摂理に反するならば、ウィノナのように疲弊していくのは当然。

ダオスも、自身を看病してくれていたこの献身的な少女がこれ以上やつれていくのは見たくなかった。


「時々ね、こんな風になるんだ。 大丈夫、そのうち元に戻るから心配しないで二人とも」

「……わかった。 しかし君がそんなだと皆も私も心配するから、早く治って欲しい」

「あまり長く続くようなら、医者に相談する方がいい。 船医の一人や二人はいるだろうからな」


労わるダオスとアキト。


「ははっ、二人とも心配性だね。 大丈夫、大丈夫だよ。 私は……ね」


そういうと、ウィノナはんーっと言いながら背筋を伸ばし天を仰ぎ――一言呟いた。


「ねぇ、ダオス。 貴方は今どこにいるのかな? こっちの側? それとも向こう側?」


それは、質問の意図が良く分からない質問だった。

ダオスもアキトも、唐突な質問の意図がわからず困惑した。


「あー、やっぱり今の質問は忘れて。 これじゃ電波って言われてもしょうがないし」


何か意図があったらしいが、ダオスにもアキトにもウィノナが求める答えが分からない。

ウィノナ自身にさえ、その自身の問いの意味不明さに呆れているぐらいなのだから、それは答えようが無い問いだった。


「……質問の意図はよくわからないが、私はおそらくは君の側だ。 それだけは決まっていると思う」


曖昧な問いに、断定はできない。

推測で答えるダオスは、しかし真顔でそういった。

それ意外の側というのが想像できなかったし、ダオスにはウィノナがその答えを欲しているような気がしていた。


「……そっか、私の側だね?」


安堵のようなため息をつきながら、ウィノナはゆっくりと目を瞑る。

反芻するようにその言葉を記憶し、意味を理解して安堵の笑みを浮かべる。

何か一つの問題が、今の問いで解けたのかもしれない。

質問に答えるだけでウィノナに活力が戻るのなら、ダオスはいくらでも質問に答えようと思う。

いつもの笑顔に戻ったウィノナにダオス自身も不思議と安堵を覚え、自然と笑みを浮かべた。


「さて、よく分からないがもう大丈夫そうだな。 もう夜も遅いし、二人で船室に戻るといい」

「アキトは戻らないの?」

「俺は少し剣を振ることにするさ。 少々眠が覚めてしまってな」


甲板の中央に向かいながら、二人に向かって剣を掲げる。

模擬刀が星の光を反射し、一瞬だけ輝いた。


「ん、じゃほどほどにね。 おやすみアキト」

「おやすみウィノナ、ダオス」

「ああ、貴公もな」


ブゥン、ブゥンと、闇夜を斬り裂く音が響く。

その音を背に、ウィノナとダオスは連れ立って甲板を後にした。













「ほんと、私ってお節介だよね」


ダオスに肩を貸して歩くウィノナが、呟く。

得体の知れない男を拾い、看病する。

今の状況を考えれば、自身をそういう定義に当てはめてもおかしくはなかった。


「同属庇護の感情が動いているのかもしれぬな。 私は帰れず、君も帰れない。 故郷に帰れないもの同士、互いの姿を鏡に映し
ているように見えているからこそ、助けたいのかもしれぬ。 そうすることで、自らも救われる気がするのだろう」

「似たもの同士……ね。 じゃあさ、私が困ってたらダオスは助けてくれるの?」

「当然だ」


迷い無く言い切るダオスに、ウィノナは少し目を瞬かせ――。


「……うん」


――頬を染めて俯いた。

真面目なダオスが、本当にそう考えているというのは分かる。

分かるが、こんな至近距離で、こんな暖かな笑顔は反則だ。

少女であるウィノナは、自分が彼を助ける理由に他の理由もあるんじゃないかと思ってしまった。

だが、それは決して不快な感情などではない。

足りない何かが埋まっていくような、パズルを少しずつ埋めていく感覚であり、出来上がっていく何かがあったように感じる。

肩を貸すために触れている場所が熱い。

ダオスの暖かさがとても心地良かった。


――だから、今日こそはしっかりと眠ってみよう。


心配をかけるのは嫌だったし、今日は一つ懸念が晴れた。

なら、何も心配することはないのだから。

例え夢の続きを見ようとも、そんな未来はダオスがウィノナの側にいる限りありえないだろうから。

その日、ウィノナは久し振りに熟睡できた。

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